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日経新聞夕刊、中外新聞 掲載
1月22日(金)の日本経済新聞、夕刊1面コラム「あすへの話題」に、佐々木幹郎先生がスパイラル声明公演のことを書いてくださりました。



幹郎先生には、学生のときに「詩のリズム」という授業で教えていただきました。先生はいつも、私の創作の大事なときに大事な言葉をくださって、次の作曲への道筋を照らしてくださいます。先生の言葉の力強さに、音と言葉での思考をまた一からやり直さなければと思わされます。

日経新聞電子版のリンクは以下です。
http://www.nikkei.com/article/DGKKZO96417430S6A120C1MM0000/

幹郎先生のツイッターにも記事全文が載っています。
https://twitter.com/alicejamjp/status/691192731155050497


また、中外日報2016年1月15日号に記事が載りました。



記事の一部とカラー写真のリンクは以下です。
http://www.chugainippoh.co.jp/religion/news/20160115-006.html

ぜひご覧ください。



スパイラル聲明コンサートシリーズvol.24 「千年の聲」
螺旋曼荼羅海会


日時: 2016年1月9日(土)、10日(日) どちらも20:30開演 (20:00開場)
会場: スパイラルガーデン (青山スパイラル1F)
料金: 前売4,300円 / 当日4,500円 (全席自由・入場整理番号付・税込)

『螺旋曼荼羅海会』
・法螺貝、古典声明 (云何唄、散華、対揚)
・「風の歌」「夜の歌」作曲: 桑原ゆう
出演: 声明の会・千年の聲 (迦陵頻伽聲明研究会と七聲会による)
構成・演出: 田村博巳
https://www.spiral.co.jp/e_schedule/detail_1725.html

◆迦陵頻伽聲明研究会 (真言宗)
新井弘順、平井和成、大平稔雄、川城孝道、斎藤説成、小路耕徳、
塚越秀成、塚田康憲、田中康寛、沼尻憲尚、戸部憲海、孤島泰凡、
多田康雄、青木亮敬、新井弘賢、中山宥義、堀内明大
◆七聲会 (天台宗)
末廣正栄、室生述成、玉田法信、杉山幸雄、鈴木亮仁、豊田良栄、
宇佐見孝昭、蝸コ伯、小野常寛


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今後の作品発表予定 / concert schedule: *click*
 2016/01/25 18:32  この記事のURL  /  コメント(0)

スパイラル声明公演を終えて
スパイラル声明公演が終わって、1週間が経とうとしています。第2夜も事故は多々ありましたが、第1夜に比べ音楽的にまとまったものになったと思います。私にとって、とても大切で嬉しくて楽しくてしょうがない2日間でした。その翌日はあまりに気持ちが高ぶっていて、何かしようとするとそのたびに涙が出てくるものですから、自分で自分自身が使いものにならなくて、それに自分で呆れました。

5年前、あのスパイラルガーデンでスパイラル聲明シリーズを見て大感激し、あの空間で新作を書くことが大事な夢のひとつになりました。お稽古や法要で勉強させていただきながら、もしいつかその時が来たらどんな作品を書こう、あんなのかなこんなのかなと考えていたら、スパイラルシリーズの最後で作品を書かせていただけることになりました。出来上がってみたらあまりにも難しい曲で、その楽譜を初めて見たお坊さまがたの目を点にしてしまったり、ちょっと量が多すぎて部分的にカットしないといけなかったり、色々ありながらも、お坊さまがたがとても熱心にお稽古してくださって、何とか形にすることができました。お稽古しているうちにだんだん面白さがわかってきた、会場で実際にやってみて曲の意図が初めて理解できたなどと言っていただいて、私の頭のなかにあったものがだんだんと共有されて作品が形になっていく過程、さらにそれが聴いてくださる方々にも共有されていく喜び、これが作品をつくる醍醐味で、このために作曲を続けているんだなと改めて思ったりしました。

ナバホの詩と曼荼羅供という土台を作ってくださったのは演出の田村先生です。この土台があったからこその作品でした。私はスパイラルの螺旋空間、ナバホの創生神話と詩の言葉、曼荼羅、そして声明でやることの意味の全てを結びつけることをとにかく目指して作曲しました。新作と古典の関係性、新作部分の中の構成、また、音の要素の細部まで、ナバホの創生神話とそれに基づく砂絵の儀式をとにかく学び、それにならい、今回のテーマである螺旋と曼荼羅に意味付けることを徹底的にやりました。
ネイティブアメリカンの儀式については、詩を読み込んだり、神話や砂絵の意味について調べて勉強したり、音源をできる限り聴いたりはしましたが、やはり実際に儀式を見たりその場に行ったりしたことはないので、一生懸命思い出すように思い浮かべ、想像上の儀式を声明で翻訳するようにしました。ナバホの詩と古典を違和感なく行き来することにはかなり注意を払いました。それから、曼荼羅の形式の中に自然で音楽的な流れを作ることにもこだわりました。空間配置については、ナバホの風の動きと曼荼羅の動きが同じだと気がついたことによって、説得力がもたらされました。行道もそれによって多層的な意味を持って成り立ちました。
特に聴いていただいた方から反応が大きかったのは、声が少しずつ重なりながらクロマティックに音程の上がっていく部分です。これは位置関係を変えて、繰り返し出てきます。あの部分には「風のうず」という名前がつけられていて、天台宗の古典のユリ上げという旋律系を組み合わせることによって成立しています。少しずつ音のずれていく様子を聞かせながら、クロマティックな動きで螺旋を描く方法、しかも、声明の古典的な音づかいのなかでそれを成り立たせる方法はないだろうかと考えていて、この方法でできるかもと気づいたときには、あまりの大発見に、私すごい!と自分で思ってしまったくらいです。

今回やっと地に足のついた作品を書くことができたようで、なんだかやっと、作曲家になれたという実感があります。導いてくださった先生方、お坊さま方、舞台をつくってくださったみなさま、公演を聴いてくださったみなさま、そして、音楽を始めてからこれまで、お世話になってきたたくさんの方々に感謝の気持ちでいっぱいです。

私が書きたいのは祈りの音楽なんだなと、2日間の演奏を聴いていて改めてわかりました。演者が聴衆のために音楽をするのでなく、無心、あるいは何かに唱えるために音楽をする、それが祈りだと思うのですが、聴衆はそれに同調して祈るように音楽に参加します。そういうことの自然とできる音楽を作れたらと思います。
音と言葉の試みを続けつつ、今後もっと考えていきたいのは、そこで得たものをいわゆるクラシックの編成の作品にどのように生かすかということです。もしいつかそれに答えをちゃんと出せたら、日本人として西洋音楽をつくる意味がわかるような気がします。私の曲は今まで、特に構成面で力がとても弱く、それを苦手意識として持っていたのですが、落語や声明など日本の芸能の成り立っていくさまを体験してきたことの蓄積から、この1年で急にいろんなことが見えてきて、それは最近の作曲に反映されています。これからもずっと勉強させていただいて、自分のすべきこと、書くべき音楽について考えていきたいと思います。また日々の作曲をコツコツと頑張ります。本当にありがとうございました。

スパイラル声明公演の作曲については2つのブログを書きました。
作曲の詳細 http://apalog.com/yukuwabara/archive/249
声明の楽譜について http://apalog.com/yukuwabara/archive/251
ぜひ読んでみてください。



スパイラル聲明コンサートシリーズvol.24 「千年の聲」
螺旋曼荼羅海会


日時: 2016年1月9日(土)、10日(日) どちらも20:30開演 (20:00開場)
会場: スパイラルガーデン (青山スパイラル1F)
料金: 前売4,300円 / 当日4,500円 (全席自由・入場整理番号付・税込)

『螺旋曼荼羅海会』
・法螺貝、古典声明 (云何唄、散華、対揚)
・「風の歌」「夜の歌」作曲: 桑原ゆう
出演: 声明の会・千年の聲 (迦陵頻伽聲明研究会と七聲会による)
構成・演出: 田村博巳
https://www.spiral.co.jp/e_schedule/detail_1725.html

◆迦陵頻伽聲明研究会 (真言宗)
新井弘順、平井和成、大平稔雄、川城孝道、斎藤説成、小路耕徳、
塚越秀成、塚田康憲、田中康寛、沼尻憲尚、戸部憲海、孤島泰凡、
多田康雄、青木亮敬、新井弘賢、中山宥義、堀内明大
◆七聲会 (天台宗)
末廣正栄、室生述成、玉田法信、杉山幸雄、鈴木亮仁、豊田良栄、
宇佐見孝昭、蝸コ伯、小野常寛
 2016/01/16 22:43  この記事のURL  /  コメント(0)

スパイラル声明公演の作曲について2
スパイラル声明公演第1夜、事故はいくつかありましたが、なんとか無事に終えることができました。お坊さまがたがとっても悔しがっておられたので、今夜はもっといい舞台になる予感がします。昨晩の公演後、スコアをどのように書いているかに興味を持ってくださった方がたくさんいらっしゃったので、声明の楽譜について少し書いてみたいと思います。

古典の譜、声明の楽譜は博士といいますが、このようになっています。(画像を載せて問題があったら、お坊さまがた教えてください!) これは今回の公演内でも唄われる真言宗豊山派の対揚です。



文字の左にある線や点が博士です。線の向きが音の高低を表しています。以前孤島先生に教えていただいたのですが、博士の線が太く記されるのは、さまざまな種類の声が合わさっていることを意味しているのだそうです。
こちらは天台宗の対揚です。



天台宗の本には回旋譜も載っています。五線譜ばかり読んできた私にはこちらのほうがとっつきやすいです。



ただやはり、唄い継がれて伝わってきたものなので、細かいところは譜にあらわされません。実際に聴かないとわからないことがたくさんあります。特に譜に明確に表されていないのはリズムと音の長さです。大まかに、長くや短くなど、わかるように書かれているものもあったり、節の決まったパターンがあってそれによって大体決まってきたりしますが、唄う方によっても違います。そこが面白いところでもあります。

ただ、今回は、普通ユニゾンを基本とするのが声明だとわかってはいるのですが、作品のある部分において、かなり細かく節を組み合わせたアンサンブルをしてみたい(読経でケチャをする!みたいなイメージでもありました)という構想もあり、時間軸の表せる楽譜を書く必要がありました。古典の節のつくりを分析し、自分なりに理解するために採譜を重ね、徐々にフォーマットを決めていきました。




そして、私の新作部分はこのような楽譜に落ち着きました。








見にくいですが、グレーの点々のグラフ用紙をつくり、芯の太さの違う2本のシャープペンを使って線から書き込んでいます。点と点の間1つ分が1拍という考え方で音の長さとリズムを示しました。音程も調も明確に書いてありますが、声明では正確な音高を出すことに意味はなく、相対的な音高で唄っていけばいいし、お坊さまがたはそういう音感を鍛えられているので、それに対応できるようにしました。
講式風の唱えの部分は、古典の書き方にならっています。














こんな普段見慣れない楽譜が40数ページあったわけで、それに加えて古典もあったので、お坊さまがたは本当に大変だったと思いますが、毎回熱心に、そしてとても楽しくお稽古をしてくださって、形にすることができました。

そういえば、ひとつ前のブログには書ききれなかったのですが、今回は真言宗と天台宗の混合グループによる公演なので、その宗派の声明の違いの面白さも活かした作品にすべきだと思いました。
真言宗の節は割とテンポが速め、ユリ(トリルのようなもの)も比較的素早いものが多く、全体に音の輪郭がはっきりとしていて「男節」と言われます。天台宗の節はテンポが遅め、ゆるやかで弧を描くような形をしています。ユリもゆっくりとして音の移り変わりの間隔が広く、更に特徴的なのが、塩梅といって音の始めと終わりに引っ掛けたり引き伸ばしたりする音がつくことで、これがかなり印象的です。天台宗の節回しは真言宗に対して「女節」と言われています。
実はナバホの砂絵では、イメージの描かれる方位によって男と女の特徴が施され、向かい合うもの同士が同じ性別になります。それを踏まえ、四方に分かれるセクション(ひとつ前のブログに示した「夜の歌」A2、A3にあたる部分)は、向かい合う東と西が真言宗の節を中心に、南と北は天台宗の節を中心に、と、宗派の違いがテキストの意味とも繋がりを持つように書いてみました。また、作品の全編にわたって、真言宗と天台宗それぞれの節回しの特徴を活かしつつ組み合わせたり、その両方の特徴の混じったような節にしたり、色々と工夫して作曲しました。

ひとつ前のブログには作品の作曲について詳しく書きましたので、ぜひご一読ください。

昨日より今日の方が席に余裕があるはずで、当日券も出るようです。スパイラルのあの空間のための作品です。空間自体が螺旋のパワーを持っているような場所で、その場で聴いていただかないといけない作品です。ぜひ聴いてください!どうぞよろしくお願いいたします。



スパイラル聲明コンサートシリーズvol.24 「千年の聲」
螺旋曼荼羅海会


日時: 2016年1月9日(土)、10日(日) どちらも20:30開演 (20:00開場)
会場: スパイラルガーデン (青山スパイラル1F)
料金: 前売4,300円 / 当日4,500円 (全席自由・入場整理番号付・税込)

『螺旋曼荼羅海会』
・法螺貝、古典声明 (云何唄、散華、対揚)
・「風の歌」「夜の歌」作曲: 桑原ゆう
出演: 声明の会・千年の聲 (迦陵頻伽聲明研究会と七聲会による)
構成・演出: 田村博巳
作曲: 桑原ゆう
https://www.spiral.co.jp/e_schedule/detail_1725.html

◆迦陵頻伽聲明研究会 (真言宗)
新井弘順、平井和成、大平稔雄、川城孝道、斎藤説成、小路耕徳、
塚越秀成、塚田康憲、田中康寛、沼尻憲尚、戸部憲海、孤島泰凡、
多田康雄、青木亮敬、新井弘賢、中山宥義、堀内明大
◆七聲会 (天台宗)
末廣正栄、室生述成、玉田法信、杉山幸雄、鈴木亮仁、豊田良栄、
宇佐見孝昭、蝸コ伯、小野常寛
 2016/01/10 15:47  この記事のURL  /  コメント(0)

スパイラル声明公演の作曲について
今日、明日といよいよ、スパイラル聲明シリーズ vol.24「螺旋曼荼羅海会」の初演となります。私にとってとても大事な公演で、いつにもまして緊張します... その作曲について書いてみます。

初めて声明というものを認識したのは、2009年2月の酒塚250周年祭酒塚涅槃会 (沼津市日緬寺) のために声明作品を書くことになったときでした。その2、3年前に初めて能に触れ、能の謡のための作品を書き、日本の言葉の音の響きやリズム、日本語を発声すること自体に興味を持ち始め、文化の古今と東西をつなぐ試みを続けることが今後の自分の創作の重要なテーマになるだろうと感じ始めた時期で、声明という日本の音楽の根本に挑むことに大変なやり甲斐を感じました。そして、20名の日蓮宗を主としたお坊さまと2名の仏具打楽器奏者のための「レクイエム」という約20分の作品を書きました。
残念ながらその作品はそれきりになってしまいましたが、その後も声明の勉強を続けたいと思っていた時に偶然見つけ、初めて聴きに行ったのがちょうど5年前のスパイラル聲明コンサートシリーズでした。その鳥養潮先生の「阿吽の音」に大感激し、いつか私もこの空間でこんな作品を書けたら...と密かに想っていました。不思議な縁があって、その後すぐにお稽古や法要で継続して勉強させていただくようになり、今回念願の作曲の機会をいただきました。

今回の公演は「螺旋曼荼羅海会」と名づけられています。天台宗と真言宗の二箇法要 (にかほうよう: 云何唄、散華、対揚を法会の中心部の前にお唱えする) の曼荼羅供の形式からスパイラルガーデンの螺旋空間を立体曼荼羅に見立てる、という演出の田村先生からの構成の土台があり、唄に入る前の導入部分、古典が入って法要の中心部分、そしてその後もう一度古典が入った後の最後の部分を作曲するということになりました。テキストはネイティブアメリカンのナバホ族の創生神話に基づく儀式歌「夜の歌」「風の歌」を用いることになりました。ナバホ族の創生神話によると、われわれ人間の祖先は風の神がおつくりになり、その風のうずのしるしが、指紋に残っているということなのです。その世界観とスパイラルの螺旋空間と曼荼羅とが重なるわけです。


風の歌 (構成: 桑原ゆう)

深い海の下に 洞穴の口があって
あらゆる風はみな そこで生まれるのだ

すべて生きるものに 生命を吹きこむのは風
白い風の神 かれは海の下からやってきて
はるかな空の高みにまで 登っていく

かれはすっくと立って 腕をのばす すると
かれの一本一本の指先から 風が起こる

はじめに 白い風
つぎには 赤い風
それから 青い風
そして 小指からは 黒い風

すべて生きるものに 生命を吹きこむのは風
胎内に息ある限り 生命はある
これはみな風の神にあたえられた風なのだ
胎内の風吹きやむとき 人は言葉を失い
そして 死ぬ

白い風の神
かれがすっくと立って 腕をのばすと
かれの一本一本の指先から 風が起こる

はじめに 白い風
つぎには 赤い風
それから 青い風
そして 小指からは 黒い風

かぜは指先のハダに生命の息吹をあたえる
生命のうず
指先をじっと見るがいい
どの指先にも
風のあとのうずが 見えるだろう


夜の歌 (Jerome Rothenberg『Shaking the Pumpkin』より SOUND-POEM No.1)

オホホホ へへへ ヘイヤ ヘイヤ
オホホホ へへへ ヘイヤ ヘイヤ
エオ ラド エオ ラド エオ ラド ナセ
ホワニ ホウ オウオウ オウエ
エオ ラド エオ ラド エオ ラド ナセ
ホワニ ホウ オウオウ オウエ
ホワニ ホワニ ホウ ヘイエイエイエ エイエヤーヒ
ホウ オウオウ ヘイヤ ヘイヤ ヘイヤ ヘイヤ
ホーワ へへへ ヘイヤ ヘイヤ ヘイヤ
オホホホ ホウエ ヘイヤ ヘイヤ
オホホホ へへへ ヘイヤ ヘイヤ
ハビ ニエ ハビ ニエ
ハヒュイザナハ シヒワナハ
ハハヤ エアへオーオ エアヘオーオ
シヒワナハ ハヒュイザナハ
ハハヤ エアへオーオ エアへオーオ エアへオーオ エアへオーオ エアへオーオ




スパイラル聲明シリーズでは今までに「螺旋曼荼羅」という公演が2度あり、1度目は藤枝守先生が、2度目は寺嶋陸也先生が「風の歌」「夜の歌」に作曲されています。
「風の歌」は、お二人の先生が使われたテキストと、同じ神話をもとに作曲された間宮芳生先生の「白い風ニルチッイ・リガイが通る道」の間宮先生の構成によるテキストと、その全ての元になった、ポール・G・ゾルブロッド著、金関寿夫、迫村裕子訳『アメリカ・インディアンの神話 ナバホの創生物語』を踏まえ、作曲しながら再構成しました。「夜の歌」は、お二人の先生が使われたテキストと、引用元の金関寿夫著『魔法としての言葉ーアメリカ・インディアンの口承詩』には、さらにその元となったジェローム・ローゼンバーグの「SOUND-POEM No.1」(『Shaking the Pumpkin: Traditional Poetry of the Indian North Americas』より)の前半のみとなっていたので、「SOUND-POEM No.1」の全文を『魔法としての言葉ーアメリカ・インディアンの口承詩』の「夜の歌」にならってカタカナに読み替えました。

「風の歌」「夜の歌」の3作目として同じテキストに作曲するわけなので、お二人の先生とは違うアプローチをしたいということと、今までに国立劇場やスパイラルシリーズのために作曲された新作声明をふまえ、自分なりの新しい視点を示したいという考えがありました。毎回こういう作曲で思うことですが、勉強すればするほど、古典の素晴らしさにはかなわないという気持ちはどんどん大きくなります。古典の節付けを自分なりに分析し分解し、その組み合わせのバリエーションとアンサンブルの面白さで、新しい音楽の形とリズム感を声明に持ち込んでみようと思いました。
でも、それよりももっと大事なのは、スパイラルの螺旋空間とナバホの創生神話の意味をつなげる法会の中心となる音楽をつくらなければならないということでした。ナバホの創生神話に描かれている、白と黄の二本のトウモロコシに風の神が生命を吹き込み、われわれ人間の最も古い祖先がつくられたときの儀式を、声明の形式で翻訳し再現するような作曲を目指しました。全体の構成から音の要素などの細部に至るまで、ナバホの創生神話とそれに基づく砂絵の儀式に学び、且つ、今回のテーマである「螺旋」にこだわりました。

「風の歌」「夜の歌」は砂絵の儀式につかわれるチャントなのですが、砂絵はこのように色々な色の砂をつかって描かれ、儀式が終わると消してしまいます。(「風の歌」「夜の歌」の砂絵はどうしても見つからず、画: フランク・J・ニューカム、テキスト: グラディス・A・レイチャード、構成: 鈴木晢喜、訳: 鈴木幸子『ナバホ「射弓の歌」の砂絵』より)



これは一例で、砂絵の構成にはいくつか種類がありますが、ひとつの砂絵のなかに世界全体とひとつの物語が閉じ込められています。どのモチーフにも、描かれる位置にも、すべてに意味があり、また、ひとつのイメージは頻繁に描かれれば描かれるほど強度を増していきます。曼荼羅にとてもよく似ています。
ナバホの創生神話とそれに基づく砂絵の儀式、砂絵自体から学んだことをもとに、まず冒頭の「職衆は四つのグループに分かれ、東、南、西、北の四方角をつかさどる」というアイデアが決まりました。神話にあるように東のかすかな声から始まり、次いで南、西、北と、声がめぐって音楽が動き出すようにしようと思いました。ナバホの創生神話においては、あらゆることがまず東から起こり、南、西、北の順に方角を変えて四度繰り返されるからです。四方角をスパイラルの空間とリンクさせ、観客席で音がめぐる様子を聴かせたいと、スパイラルにコンパスで確かめに行くところから作曲が始まりました。

法会の全体は、古典声明も含めて、螺旋と立体曼荼羅を合わせたような形を意識しました。昨年6月の常楽院での御影供で理趣三昧を体験したときに、私は法要の「この部分」をつくらないといけないんだ、と身体でわかりました。それまでも数回御影供を経験していたはずですが、そこでやっと自分の勉強が少し追いついて、体験と合わさったような感覚があり、自分のすべきことがわかり、作曲すべきものが具体的に見えてきました。

以下に全体の構成を表で示します。初めて声明を聴かれる方はどこが新作声明かわからないということもあるかもしれませんので、私の作曲部分は青色で示します。

<螺旋曼荼羅海会 全体の構成>(青色が新作声明の部分)

[新作声明 第1部: 約20分]
・夜の歌 A1
・風の歌 1
・夜の歌 A2 


[古典声明: 約30分]
・法螺
・云何唄 (天台宗)
・散華 (天台宗)
・云何唄 (真言宗豊山派)
・散華 (真言宗豊山派)
・対揚 (天台宗)
・対揚 (真言宗豊山派)

[新作声明 第2部: 約30分]
・風の歌 2
・夜の歌 A3
・夜の歌 B1
・夜の歌 C1
・夜の歌 A4
・夜の歌B2
・夜の歌C2      

[古典声明 省略形: 約5分]
・法螺
・云何唄 (真言宗豊山派) 省略形
・散華 (真言宗豊山派) 省略形
・対揚 (天台宗) 省略形

[新作声明 第3部: 約8分]
・夜の歌 B3
・風の歌 3


「風の歌」は散文風のテキストで、これは言葉の意味がしっかりと伝わらないといけません。表白を意識した講式風の節付けをし、ソロで唱えることに決めました。
「夜の歌」には大きく分けてA、B、Cの3つのバージョンを作曲しました。Aは、テキストを引き延ばし、四方位で受け渡して音がめぐっていく、そして、その間隔がだんだん短くなり、音域も螺旋をえがくように徐々に高くなり、少しずつリズムが生まれていく、というバージョンです。Bは、この作品で1番やりたかった部分、核となる音楽で、オホホホ ホホホ… という呪文のような言葉の音とリズムを最大限に活かそうとしたバージョン。Cは、読経のように唱え、行道を伴う動きのある部分です。上の表を見てお分かりの通り、「風の歌」「夜の歌」とも、少しずつ変化しながら何度かめぐって現れるようになっています。

また、「夜の歌」のB、Cでは、太鼓を用います。それは、音源を聴くことのできたいくつかのネイティブアメリカンのチャントが、ドラムのリズムとともに唄われていたことに基づいています。太鼓のセットは台から譜面台から何から何まで、太鼓師をつとめてくださる塚越さんがご用意してくださり、お稽古にも毎回持ってきてくださいました。この太鼓のリズムがないとお坊さまは唄えないという、とても重要な役割を果たします。



また今回、古典声明は、真言宗のお坊さまも天台宗のお坊さまも全員でお互いの声明をお唱えするという形がとられ、それも大きな聴きどころとなっています。

長くなりましたが、ナバホの世界観と曼荼羅と、そして螺旋を声明でえがくことに自分なりにこだわった作品で、スパイラルガーデンの空間のための作品です。このブログをヒントに、ぜひ本番をお楽しみいただければと思います。


スパイラル聲明コンサートシリーズvol.24 「千年の聲」
螺旋曼荼羅海会


日時: 2016年1月9日(土)、10日(日) どちらも20:30開演 (20:00開場)
会場: スパイラルガーデン (青山スパイラル1F)
料金: 前売4,300円 / 当日4,500円 (全席自由・入場整理番号付・税込)

『螺旋曼荼羅海会』
・法螺貝、古典声明 (云何唄、散華、対揚)
・「風の歌」「夜の歌」作曲: 桑原ゆう
出演: 声明の会・千年の聲 (迦陵頻伽聲明研究会と七聲会による)
構成・演出: 田村博巳
https://www.spiral.co.jp/e_schedule/detail_1725.html
 2016/01/09 15:15  この記事のURL  /  コメント(0)

いよいよ...!螺旋曼荼羅海会
ゲネプロが無事に終わりました。










お坊さまがた、お忙しいなか宿題をしっかりやってきてくださって、クリスマスの日のお稽古よりずっとパワーアップしていました!!本当に感謝です!
ついに明日...というか、今日、明日と、本番、初演です。どきどき。

スパイラルのこの空間を大事に作曲しました。空間自体が螺旋のパワーを持っているような場所で、この場で聴いていただかないといけない作品です。
当日券も若干枚出るようです。明日はもうパンパンで、10日の方がどちらかというと余裕があります。ぜひよろしくお願いいたします。


スパイラル聲明コンサートシリーズvol.24 「千年の聲」
螺旋曼荼羅海会


日時: 2016年1月9日(土)、10日(日) どちらも20:30開演 (20:00開場)
会場: スパイラルガーデン (青山スパイラル1F)
料金: 前売4,300円 / 当日4,500円 (全席自由・入場整理番号付・税込)

『螺旋曼荼羅海会』
・法螺貝、古典声明 (云何唄、散華、対揚)
・「風の歌」「夜の歌」作曲: 桑原ゆう
出演: 声明の会・千年の聲 (迦陵頻伽聲明研究会と七聲会による)
構成・演出: 田村博巳
作曲: 桑原ゆう
https://www.spiral.co.jp/e_schedule/detail_1725.html

◆迦陵頻伽聲明研究会 (真言宗)
新井弘順、平井和成、大平稔雄、川城孝道、斎藤説成、小路耕徳、
塚越秀成、塚田康憲、田中康寛、沼尻憲尚、戸部憲海、孤島泰凡、
多田康雄、青木亮敬、新井弘賢、中山宥義、堀内明大
◆七聲会 (天台宗)
末廣正栄、室生述成、玉田法信、杉山幸雄、鈴木亮仁、豊田良栄、
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 2016/01/09 02:58  この記事のURL  /  コメント(0)

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Profile
桑原ゆう (くわばら・ゆう)
桑原ゆう, Yu Kuwabara

作曲家。1984年12月7日生まれ。
2007年東京藝術大学音楽学部作曲科卒業、2009年同大学大学院音楽研究科(修士課程)修了。在学中より国内外の音楽祭、セミナー等に参加し作品発表を始め、Akademie Schloss Solitude (ドイツ)、武生国際音楽祭、impuls (オーストリア)、ミラノ国際博覧会、ロワイヨモン作曲講習会 “Voix nouvelles” (フランス)、ルツェルン音楽祭 (スイス)などで作品が取り上げられている。第74、75、78回日本音楽コンクール作曲部門入選。一部の作品は Edition Wunn (ドイツ)より出版されている。2009年度トーキョーワンダーサイト国内クリエーター制作交流プログラムに選抜され、トーキョーワンダーサイト青山クリエーター・イン・レジデンスに滞在して活動。
近年は声明や民俗芸能等の取材を重ね、それらを扱う作品を精力的に発表、また、同世代の演奏家と立ち上げた「淡座」で古今亭志ん輔氏との公演を重ねるなど、日本の音と言葉を源流から探り、文化の古今と東西をつなぐことを主なテーマに創作を展開している。他、NHKラジオドラマ、ファッションブランドのランウェイショーなどの音楽を作曲し、様々な分野と交流して創作活動を行う。池田雅延、茂木健一郎の両氏による、小林秀雄を学ぶ『池田塾』1期生。

-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-

随筆「音楽の起りと歌の起り」
小林秀雄に学ぶ塾 同人誌「好・信・楽」創刊号 (2017年6月号) 掲載

-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-

<今後の作品発表予定>
2017.07.07-16, Bobbio (Piacenza), Italy
Divertimento Ensemble International Workshop for Young Composers V edizione

2017.07.15 (Sat) 21:00-22:30, Auditorium Santa Chiara, Bobbio (Piacenza), Italy
十の聲 (2017) 世界初演
I concerti dell’International Workshop for Young Composers
Divertimento Ensemble, Sandro Gorli (cond)
詳細はこちら

2017.07.24 (月) 19:30開演 @六本木クラップス (東京都港区六本木3-16-33 青葉六本木ビルB1)
Bill Evans《Waltz for Debby》/ Jimi Hendrix《Purple Haze》(2017) 委嘱編曲・世界初演
音和座
演奏 / 邦楽ゾリスデン [吉澤延隆 (箏)、福田智久山 (尺八)、本條秀慈郎 (三味線)、前川智世 (箏)]

2017.08.12-28, Luzern, Switzerland
LUCERNE FESTIVAL ACADEMY Composer Seminar

2017.08.19 (土) 19:00開演 @東京アートミュージアム (調布市仙川町1-25-1)
二つの聲 (2017) 委嘱新作・世界初演
うつろひの花 / ソプラノトランペットと笙のバージョンによる (2014)
東野珠実・曽我部清典デュオ「真夏の夜の星筐」
演奏 / 東野珠実 (笙)、曽我部清典 (トランペット、ゼフュロス)
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2017.07.26 (Sat) 15:00-16:30, KKL Luzern, Lucerne Hall, Luzern, Switzerland
影も溜らず (2017) 世界初演
Identities 5 | Ensemble of Lucerne Festival Alumni
Lucerne Festival Academy Composer Seminar Performance
Ensemble of LUCERNE FESTIVAL ALUMNI, Yutaka Shimoda (solo vn), Johanna Malangre (cond)
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2017.08.30 (Wed) 21:00-, RADIO SRF 2 Kultur NEUE MUSIK IM KONZERT
《影も溜らず》ラジオ放送
Werkschau des《Composer Seminar》
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2017.09.16 (土) 17:00開演 @市田邸 (東京都台東区上野桜木1-6-2)
セレナード (2017) 世界初演
かたち、あや、あるいはすがた (2017)
Rush《ホケトゥス風ライムライト》(2016) 編曲
作曲者不詳《おいらが、小っちゃな餓鬼の頃》(2017) 編曲
〜新秋の市田邸で、『“げん”結び―音楽と文学―』を愉しむ!〜「十二夜、あるいは、タイムトラベル!?」
演奏 / 柴田友樹 (朗読)、市川泰明 (テノール)、佐藤翔 (チェロ)
主催 / NPO法人たいとう歴史都市研究会
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2017.09.25 (月) 18:00-19:00, NHK-FM横浜放送局
NHKFM横浜放送局「横浜サウンド☆クルーズ」出演
バックステージツアー〜音楽堂・県民ホール〜
FM横浜81.9MHz、小田原83.5MHz
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2017.09.39 (土) 14:30開演 @公演通りクラシックス (東京都渋谷区宇田川町19-5 東京山手教会B1F)
George Gershwin《I Got Rhythm》(2017) 委嘱編曲・世界初演
眞美子とゆかいな仲間達 vol.3『Trioでおくる 紺碧のとき』
演奏 / 寺井真美子 (ピアノ)、佐藤翔 (チェロ)、齋藤綾乃 (打楽器)
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2017.11.02 (Sat) 19:30-21:00, French Parlor, Founders Hall, USD: University of San Diego, U.S.
Mystische Miniature (2017) 委嘱新作・世界初演
New Musical Geographies II
Christopher Adler (khaen)
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2017.11.04 (土) 15:00開演、14:30よりプレトーク @神奈川県立音楽堂 (神奈川県横浜市西区紅葉ヶ丘9-2)
月の光言 (2017) 委嘱新作・世界初演
神奈川県立音楽堂・伝統音楽シリーズ 聲明「月の光言(こうごん)」
出演 / 声明の会・千年の聲 (迦陵頻伽聲明研究会と七聲会による)
構成・演出 / 田村博巳
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2017.11.05 (日) 15:00開演 @ノワ・アコルデ音楽アートサロン (大阪府豊中市服部本町2-5-24)
三つの聲 (2016) 関西初演
ルツェルン音楽祭アカデミーメンバーの演奏で聴く 〜スウェーデンと日本の未来のクラシック音楽〜
演奏 / レン・アンサンブル | Paula Hedvall (ヴァイオリン)、桑原香矢 (ヴィオラ)、大西泰徳 (チェロ)
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2017.11.18 (土) 13:30開演 @東京国立博物館内応挙館 (東京都台東区上野公園13-9)
もみぢつゝ (2017) 委嘱新作・世界初演
音和座「もみじして」
演奏 / 宮田まゆみ (笙)、本條秀慈郎 (三味線)
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2017.11.18 (土) 15:00開演 @京都市立芸術大学 大学会館ホール (京都市西京区大枝沓掛町13-6)
三つの聲 (2016)
パウラ・ヘドヴァル 北欧の作曲家とヴァイオリン現代奏法レクチャー&コンサート
演奏 / レン・アンサンブル | Paula Hedvall (ヴァイオリン)、桑原香矢 (ヴィオラ)、西村まなみ (チェロ)
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2017.12.22 (金) 19:00開演 @新宿FACE (東京都新宿区歌舞伎町1-20-1 ヒューマックスパビリオン新宿歌舞伎町7F)
Moon Spell (2017) 委嘱新作・世界初演
アンサンブル室町 in 歌舞伎町!ー祝10周年ー
演奏 / アンサンブル室町
詳細はこちら



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