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プログラムノート
今度の日曜日22日に、作品の初演があります。

 望月豪 × 橋爪皓佐 ジョイントリサイタル
 http://ppp.fakesky.com/

 4月22日(土) 14:00開演
 新大久保スタジオヴィルトゥオージ
 チケット / 一般2500円、学生1500円
 演奏 / 望月豪(マンドリン)、橋爪皓佐(ギター)
 プログラム / 久保田翠 2重奏曲(委嘱新作)
       桑原ゆう 2重奏曲《Arabesque》(委嘱新作)
            ギター曲《Love song IV》(日本初演)
       関口忠人 マンドリン曲 《D TYPE》(委嘱新作)
            ギター曲《Slowly》(日本初演)
       高橋東悟 ギター曲《Reply》(日本初演)
       田口和行 マンドリン曲《a frozen doll》(委嘱新作)
            ギター曲《楓》
       壺井一歩 2重奏曲《Elegy》(委嘱新作)
            ギター曲《Zapfinino》(日本初演)
       中堀克成 ギター曲《It can’t be helped...》(日本初演)
       難波研  マンドリン曲《Twilight - Spell》(委嘱新作)
            ギター曲《Fragment II》
       橋爪皓佐 マンドリン曲《Temporal Axis I》(初演)
            ギター曲《Petit a Petit》(日本初演)
       藤倉大  ギター曲《Sparks》
       藤田友人 2重奏曲《代助の落城》(委嘱新作)
            ギター曲《若き日の夢は儚く過ぎ去った》(日本初演)



こちらの公演、なんとチケットが売り切れとなってしまったそうです!現在キャンセル待ちの受付のみになります。ppp@fakesky.com からお伺いしているそうですので、ご興味のある方はご連絡ください。
また、同じプログラムの大阪公演が、5月12日(18:45開演)に大阪市中央公会堂小集会室でありますので、お近くにお住まいの方はぜひそちらにいらしてくださいね

私の曲は《ラブソングW》と《アラベスク》です。《ラブソングW》はコンサート前半の真ん中あたり、《アラベスク》はコンサートの最後の曲となる予定です。

《ラブソングW》は昨年2011年に作曲した、ギターソロのためのとても短い作品です。以前ベルギーで初演されていて、今度が日本初演になります。この曲については、そのときに少し書いていますので、以下のリンクからそちらをご覧ください↓
ベルギーでの新曲初演。
《ラブソングW》の映像と《EtudesU》の初演。

また、ホームページのこちらのページでも、《ラブソングW》のプログラムノートと映像を載せています。今回は橋爪さんが演奏してくださるので、また全然違った音楽になると思います。録音を送って頂いたのですが、橋爪さんの演奏は音色と言葉をとても大事にしてくださっている印象で、とても楽しみです。


《アラベスク》は今回のリサイタルのために作曲しました。マンドリンとギターの二重奏のための作品で、世界初演となります。

「アラベスク」という言葉には様々な意味がありますが、唐草文様を「自身の世界観や精神性を表現する模様」と解釈し、その意味でタイトルとしました。「あらゆる模様のうちでアラベスクはもっとも観念的なものだ」というのはボードレールの言葉。そして、澁澤龍彦は「唐草物語」という総題の12の物語を書いています。それらからのインスピレーションもちらりとあります。

私の作曲において、音に対する最初のインスピレーションは、音程ではなく触感や質感のイメージによります。音や音のかたまり、音の集合を、触感や質感のイメージをもとに判断し、様々に組み合わせていくというやり方をします。音程はそのイメージをバリエーションするためのひとつのパラメーターなので、イメージを音に翻訳するときに考慮します。

マンドリンやギター(特にギター)は「隙間」の多い楽器だと思います。「隙間」という言い方が適当かどうかわかりませんが、ふたつの楽器は他の楽器に比べて、演奏する人にたくされている部分がかなり多いように思う、ということです。マンドリンやギターの音で私が特に魅力的に感じるのは、右手で弦を弾く音より左手でフレットをおさえた音、無意識に楽器に手が当たったときの音、何かに弦やボディが反響した音、などです。二次的に発生してしまった予期されない音に惹かれます。その「隙間」の音を編み込みながら、マンドリンとギターから様々な手触りのする音を発生、共鳴させ、余韻までも細かくコントロールし、音にまつわる現象が複雑に絡み合った立体的な模様をつむぐ、というのがこの曲のコンセプトです。

とにかく難しい曲になってしまいましたので、最初の合わせの前日に望月さんが体調をくずされたと聞いて、これは私の曲のせいだ、と思いました 技術的な難しさに加え、私のスコアはどうも神経質なスコアに見えるようで、それも演奏してくださる方を追いつめることになっているようです
作った本人は音を神経質に書いているつもりもなく、許容範囲も広いので、これは今後スコアを書くうえでの課題です。ただ、私の曲はとにかく緊張感が命で、スコアから演奏者の緊張感をひきださなければならないということもあるため、あまりフリーな書き方をしてしまって曖昧な部分が増えるのもいやで、これはなかなか難しい問題だなといつも思っています。

でも、望月さん橋爪さんは本当にすばらしい演奏家のおふたりなので、委嘱をいただいたときも書いているときも書き終わった後も、なんにも心配はなく、大船に乗ったような気持ちでおります。とにかく本番が楽しみ、そして、他の作曲家のみなさんの曲を聴くのもすごく楽しみです。

望月さん橋爪さんによる若手作曲家の新曲ずらりの超意欲的プログラム、どうぞご期待ください


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 2012/04/19 23:01  この記事のURL  /  コメント(0)

真景累ヶ淵公演
12日に国立演芸場で志ん輔師匠の会があり、淡座は『真景累ヶ淵 其の一』で助演をさせていただきました。さすが師匠の会、キャンセル待ちのお客様がいらっしゃるほどの大盛況でした。

 国立演芸場「志ん輔の会」
 2012年4月12日 (木)
 開場 18:00 / 開演 18:30
 演目 /「代書屋」鈴々舎風車
    「真景累ヶ淵 其の一 (上)」古今亭志ん輔
     仲入り    
    「稽古屋」古今亭志ん輔
    「紙切り」林家正楽
    「真景累ヶ淵 其の一 (下)」古今亭志ん輔
      作曲: 桑原ゆう
      助演: 三瀬俊吾 (ヴァイオリン)、藤井泉 (チェロ)、本條秀慈郎 (胡弓)

「真景累ヶ淵 其の一」はスタジオイワト公演と同じく、前後半に分けて口演されました。スタジオイワト公演のレポートはどうぞこちらをご覧ください

スタジオイワト公演では、演奏陣はスタジオの角にそれぞれ配置され、音が空間を包み込むような印象でした。今回は演奏陣の場所を決めるのがなかなか難しく、師匠も悩んでいらっしゃいましたが、結果、師匠の後ろに3人がならび、紗幕でさえぎってシルエットだけ見せる、という演出になりました。スタジオイワト公演とは違い、音がストレートに客席に届いていました。
私は会を最初から最後まで客席で観させていただいたのですが、国立演芸場はなかなか難しい空間だなと思いました。ステージが額縁のようで、真景累ヶ淵にかぎらず、ステージと客席が分断されているような印象を持ちました。寄席などとも違う雰囲気です。ちょっと気になったので、落語に詳しい方にそれをお尋ねしたところ、やはり国立演芸場は特にそういう傾向にあるということでした。いつも舞台を観ると思うことですが、空間は作品の印象にかなりの影響を及ぼします。ですから、ハコの選択は舞台をつくるうえでとても大事なのですが、作品のためだけに選ぶこともできないので、難しい問題だと思います。

写真はリハーサルのひと幕。これは斜幕が上がった状態です。師匠の高座には、試しに会場の係の方が座っていらっしゃいます。



斜幕をおろし、照明が入るとこのように。



3人の姿がなにかの影のようで、妖しい雰囲気になりました。

師匠のお噺はますます磨きがかかって、本当に素晴らしかったです!淡座の演奏陣は、慣れてきたのが悪い方向に行かなければいいなと思い、お稽古のときから少し心配していました。即興的な曲なので慣れすぎても怖いのです。後半は良かったと思います。前半は緊張しているなと思いました。

お稽古から本番、打ち上げまで、本当に大切な勉強をさせていただいています。師匠はいつも、どうしたら観客の皆様に気持ちよく聴いていただけるかということを、考えながら噺し、演出されています。真景累ヶ淵の今回の演出もそれが理由のひとつのようです。芸はどこまでも高いレベルを追究し、だれかに見せるときにはその見せ方を工夫する、これはどの分野の芸術においても大切なことと思います。
改めて、こんな試みにたずさわれるなんて、本当にすごいことです。私たちにとっては、国立演芸場で音が出せるのも貴重なこと。そしてコンサートの時とは全然違う観客のみなさまに聴いて音を頂けるのも嬉しいです。


おもしろいなと思ったのは、偶然か意図されてなのかわからないのですが、真景累ヶ淵から最後まで、ずっと音にまつわる演目だったことです。稽古屋ははめものが入るし、正楽師匠の紙切りも裏で三味線がずっと鳴っている状態。師匠の噺が音楽と関係性が深いことを象徴しているかのようでした。
師匠とお稽古しているとわかるのですが、噺の途中で何か音が入ると、それに合わせて師匠の声の音程が微妙に変化するのです。また、音が少し主張すると、そのタイミングを読んで、噺のテンポやリズム、間が変化します。師匠は音を本当によく聴いてらっしゃるのです。すごいです。

打ち上げで印象的だったのは、読売新聞の方が教えてくださった正楽師匠のお話です。正楽師匠の切り絵、私はこの会で初めて観たのですが、素晴らしかったです。全体の構図も細かい部分も、あんな短時間にその場で思いつき、そのまま手が動くなんて、と本当にびっくりしたのですが、出来上がった作品もとてもきれいで詩的なのです。スカイツリーに富士山が重ねられるなんて、だれが思いつくでしょうか。しかし、その方からうかがった話によると、正楽師匠はできあがった切り絵の作品そのものには執着心がまるでないのだそうです。だから、作品はすぐだれかにあげてしまうし、作品として展示するようなこともないそうです。出来上がった作品よりも次の仕事の方がおもしろい、と正楽師匠はおっしゃっているそうです。
作品として自分から切り離されたものはもう過去のもの、そして、そのときから作品は作品として育っていく。作品にとらわれるのは自分にとらわれること。自分にとらわれず、どんどん次のことを考える。正楽師匠のそういう姿勢、そしてそれを当たり前にされていることをうかがって、自分のこれまでの作品に対しての考えをあらためる必要があると思いました。

真景累ヶ淵公演ですが、次回 其の弐は、淡座の助演はお休みということに決まりました。全体を見ての師匠のお考えです。其の弐でも助演するとお伝えしておりましたので、変更になりましたのは申し訳ありません。其の三でまたご一緒させていただく予定ですので、それを楽しみに、パワーアップしておかなければと思います。
でもその前に、其の弐の師匠の熱演を拝見するのがとても楽しみです!


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 2012/04/18 23:40  この記事のURL  /  コメント(0)

4月の公演のお知らせ
「真景累ヶ淵」公演、明日です。

 国立演芸場「志ん輔の会」
 4月12日 (木)
 開場 18:00 / 開演 18:30
 演目 /「代書屋」鈴々舎風車
    「真景累ヶ淵 其の一 (上)」古今亭志ん輔
      作曲: 桑原ゆう
      助演: 三瀬俊吾 (ヴァイオリン)、藤井泉 (チェロ)、本條秀慈郎 (胡弓)
     仲入り    
    「稽古屋」古今亭志ん輔
    「紙切り」林家正楽
    「真景累ヶ淵 其の一 (下)」古今亭志ん輔
      作曲: 桑原ゆう
      助演: 三瀬俊吾 (ヴァイオリン)、藤井泉 (チェロ)、本條秀慈郎 (胡弓)
 ご予約、お問い合わせ / 03-6670-8649 (志ん輔の会)


プログラムが当初の予定から変更されています。「真景累ヶ淵 其の一」は前半後半に分かれ、あいだに仲入りと他の演目が入ります。
公演の予習には、ぜひスタジオイワトでの「真景累ヶ淵 其の一」のレポート (こちら) をご覧ください。

また、6月30日に予定されているスタジオイワトでの「真景累ヶ淵 その弐」も予約が始まっています。

 スタジオイワト いわと寄席番外
 古今亭志ん輔独演会「全段真景量ケ淵 其の弐」
 6月30日(土) 14:45 開場 / 15:00 開演
 出演 / 古今亭志ん輔
 作曲 / 桑原ゆう
 演奏 / 三瀬俊吾(ヴァイオリン)、藤井泉(チェロ)、本條秀慈郎(胡弓)
 木戸 / 3500円(当日受付での御支払いとなります。)
 予約制 60人
 ご予約とお問い合わせ / haru@jazz.email.ne.jp
            08054523165(平野)


詳細はこちら。人数限定での予約になりますので、お早めにお願い致します。


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そして、今月はもうひとつ。

 望月豪 × 橋爪皓佐 ジョイントリサイタル
 4月22日(土) 14:00 開演
 新大久保スタジオヴィルトゥオージ
 チケット / 一般2500円、学生1500円
 チケット予約、お問い合わせ / ppp@fakesky.com
 演奏 / 望月豪(マンドリン)、橋爪皓佐(ギター)
 プログラム / 久保田翠 2重奏(委嘱新作)
       桑原ゆう 2重奏《Arabesque》(委嘱新作)
            ギター曲《Love song IV》(日本初演)
       関口忠人 マンドリン曲 《D TYPE》(委嘱新作)
            ギター曲《Slowly》(日本初演)
       高橋東悟 ギター曲《Reply》(日本初演)
       田口和行 マンドリン曲《a frozen doll》(委嘱新作)
            ギター曲《楓》
       壺井一歩 2重奏《Elegy》(委嘱新作)
            ギター曲《Zapfinino》(日本初演)
       中堀克成 ギター曲《It can’t be helped...》(日本初演)
       難波研  マンドリン曲《Twilight - Spell》(委嘱新作)
            ギター曲《Fragment II》
       橋爪皓佐 マンドリン曲《Temporal Axis I》(初演)
            ギター曲《Petit à Petit》(日本初演)
       藤倉大  ギター曲《Sparks》
       藤田友人 2重奏《代助の落城》(委嘱新作)
            ギター曲《若き日の夢は儚く過ぎ去った》(日本初演)

望月さん、橋爪さんという素晴らしい演奏家のおふたりが、若手作曲家による新作を弾きまくる、という超意欲的プログラム!詳細はこちら特設ホームページをご覧下さい。東京公演は80席となっていますので、ぜひお早めにご予約ください。
私の曲はギターソロのための《ラブソングW》日本初演と、マンドリンとギターのデュオで《アラベスク》世界初演です。作品についてはコンサート前にまた書こうと思っています。
また、同じプログラムでの大阪公演が、5月12日大阪市中央公会堂小集会室でございます。関西方面での作品の発表はかなり久しぶりで、そちらもとても楽しみです。


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 2012/04/11 18:02  この記事のURL  /  コメント(0)

常楽会
今日4月8日はお釈迦様がお生まれになった日ですが、お亡くなりになった日は2月15日だといわれています。
2月の終わりのはなしですが、書いておこうと思います。真言宗豊山派のお寺での常楽会(じょうらくえ)を見学させて頂きました。常楽会は涅槃会(ねはんえ)ともいい、お釈迦様がお亡くなりになったとされる陰暦2月15日に合わせて行なわれる、お釈迦様をしのび敬う法要です。





奥にちらりと見えていますが、常楽会の法要のときには、涅槃図(ねはんず)という、お釈迦様がお亡くなりになったときの様子をあらわした絵が掲げられます。娑羅双樹の下で、お釈迦様は頭を北にして西を向き右脇を下にした姿で横たわり、その周りで、駆けつけた菩薩さまたちやお弟子さんたち、動物や虫などが嘆き悲しんでいます。上には十五夜の満月が光り輝いています。この絵1枚に、仏教のたくさんの教えが凝縮されているそうです。

午前中いっぱい遺教経(ゆいきょうぎょう)がとなえられ、お昼をはさんで、午後は遺跡講式(ゆいせきこうしき)がとなえられました。
遺教経は、お釈迦様がお亡くなりになられる直前に遺言としてのこされた教えで、通常は1年に1回、常楽会のときだけにとなえられます。つまり、なかなか聴けないものなのです。私も初めて聴きましたが、今までに聴いたどの声明とも違う節のつくりで、ちょっとわらべうたのようでした。
遺跡講式は、お釈迦様にまつわる聖地についての物語です。講式は、声明の種類のひとつですが、物語や教えの文章を節をつけて語る、今日耳で聴くことの出来る最も古い語りもの音楽です。平曲(琵琶法師の音楽)や謡曲(能の謡)、浄瑠璃などのもとになったといわれていて、私にとって声明のなかでも特に興味のある分野です。今回初めて講式を生で聴くことができました。

朝から夕方までと、ほとんど1日がかりの長い法要でしたが、本堂で実際に涅槃図を前にしての法要の現場にいられたことは、声明の理解へと直接つながり、とても貴重な経験となりました。身体でわかるというのでしょうか、録音や本だけでは理解しづらいことが、実際の法要で博士(声明の楽譜)を見ながら聴いていると自然と“わかる”ものです。

以前に声明の記事を書いたとき(こちら)に、日本の古典の言葉は母音が中心となっていると書きましたが、声明を聴いていると、言葉の音が様々な節の中でひきのばされ、子音がなくなって母音だけになり、言葉の意味がなくなって「音の形」だけが残る、というプロセスを体感することができてとても面白いです。

母音と子音の関係性は日本語を理解するうえでとても重要なことのように感じています。外国語が入ってきて子音の種類が増え、普段使う言葉も子音が多くを占めているので、私たちは日本語ならではの母音を発音するのが下手になっているような気がします。先日声明のお稽古も見学させて頂いたのですが、母音を出すときに歯をふるわせないように、と先生が何度もおっしゃっていました。母音はのどの奥の方で鳴らすのだそうです。能の謡を勉強したときに、謡は自分の身体のなかで響かせてうたうものだ、と教わりましたが、同じようなことかもしれません。合唱の指導ではよく、頭のてっぺんから声を出すようになどと言われますが、それはエネルギーを外へ出すことを肯定的とする西洋的なやり方であって、私たち日本人の本来の発声は、内へ内へと響かせるものなのかもしれません。


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 2012/04/08 22:29  この記事のURL  /  コメント(0)

第2回池田塾会合
先月も「山の上の家」で池田塾の会合がありました。池田塾についてはこちらをご参照ください。

今回は、今年1年のテキストである『美を求める心』の読み込みとともに、小林秀雄先生が『美を求める心』を具体的に実現するために、どういう行動をされていたかということが話題の中心になりました。

前半は特に、桜をめぐってのお話でした。小林先生は、日本人が桜の見頃を知らなくなったことを、とても憂いていらっしゃったそうです。桜の見頃は七部咲きなのだそう。これは、民俗的なヒヤリングによる結果だそうです。桜の見頃は満開だと思われがちですが、すでに満開になっているときには力の低下した花も混じっています。七部咲きのときが、全体に見て桜の花にいちばんエネルギーがあるときだということです。桜は一生懸命に花を咲かせる努力をしているのだから、それを見させてもらうこちらはその努力に敬意をはらい、いちばん状態の良いときに花見をするのが桜への優しい心配り、桜との正しい付き合い方、だと小林先生はおっしゃっていたそうです。また、桜=ソメイヨシノになってしまっていることもとても悲しんでいらっしゃったそう。ソメイヨシノを、したたかで派手で、時期的にもまるでパフォーマンスのように花を咲かせる下品な花、だとおっしゃっていたそうです。ですから小林先生は毎年、本当に美しい桜の中の桜から今年はこの一本を見に行くと決め、お正月からたびたび現地に問い合わせ、七部咲きの日を狙って見にいかれたそうです。見頃の桜を見ずに桜を見たとは言えない、と。これは桜に関わらず、すべてのものに当てはまると思います。音楽も絵も舞台もすべてそう、私も作曲をするときにはその音楽の鳴る空間も想定して書いていますので、やはりその場で聴いて体験して欲しいと思います。

後半はいよいよ、『美を求める心』の本文に入りました。『美を求める心』、これは小林秀雄先生が小学生や中学生に向けて書いた文章だそうですが、簡潔な文章の中にとても深い思想があります。
「極端に言えば、絵や音楽を、解るとか解らないとかいうのが、もう間違っているのです。絵は、眼で見て楽しむものだ。音楽は耳で聴いて感動するものだ。頭で解るとか解らないとかいうべき筋のものではありますまい。先ず、何を措いても、見ることです。聴くことです。...」
小林先生の文章はいつもいつも、私が創作の日々で考えていることを代弁してくださいます。『美を求める心』は本当にたくさんの方に読んで頂きたい文章です。これがわかるようになるにはどういう勉強をすればいいかと聞く前に、とにかく現物にあたれ、と小林先生はおっしゃっています。これは、江戸時代の学者伊藤仁斎が『学問には学んで知る生き方と、想って得る生き方がある。どちらも大切だが、想って得る方が、より大切である。』と言っていたことにもよります。伊藤仁斎にしても本居宣長にしても、想って得るというところから始めました。「考える」、「わかる」ということをいまの日本人は頭でのみ考える傾向にありますが、「考える」は「おもう」や「疑う」と同意語だと仁斎や荻生徂徠は言っています。この「考える」こと「わかる」こととは何か、という問いは、私たちがいま真剣に考えなければならないことだと思います。



この桜は、山の上の家にある普賢象(ふげんぞう)という桜です。普賢象は普賢菩薩の乗っていたと言われる象のことで,葉化した雌しべがこの象の鼻に似ていることからつけられた名前だそうです。小林先生はこの普賢象をとても大切にされていたそうです。

今月も池田塾の会合がありますが、私は自身の新作の初演があり、残念ですが伺えません。普賢象は4月下旬に花を咲かせるそうで、その開花を見られないのもとても残念です。


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 2012/04/05 14:32  この記事のURL  /  コメント(0)

Profile
桑原ゆう (くわばら・ゆう)
桑原ゆう, Yu Kuwabara

作曲家。1984年12月7日生まれ。
2007年東京藝術大学音楽学部作曲科卒業、2009年同大学大学院音楽研究科(修士課程)修了。在学中より国内外の音楽祭、セミナー等に参加し作品発表を始め、Akademie Schloss Solitude (ドイツ)、武生国際音楽祭、impuls (オーストリア)、ミラノ国際博覧会、ロワイヨモン作曲講習会 “Voix nouvelles” (フランス)、ルツェルン音楽祭 (スイス)などで作品が取り上げられている。第74、75、78回日本音楽コンクール作曲部門入選。一部の作品は Edition Wunn (ドイツ)より出版されている。2009年度トーキョーワンダーサイト国内クリエーター制作交流プログラムに選抜され、トーキョーワンダーサイト青山クリエーター・イン・レジデンスに滞在して活動。
近年は声明や民俗芸能等の取材を重ね、それらを扱う作品を精力的に発表、また、同世代の演奏家と立ち上げた「淡座」で古今亭志ん輔氏との公演を重ねるなど、日本の音と言葉を源流から探り、文化の古今と東西をつなぐことを主なテーマに創作を展開している。他、NHKラジオドラマ、ファッションブランドのランウェイショーなどの音楽を作曲し、様々な分野と交流して創作活動を行う。池田雅延、茂木健一郎の両氏による、小林秀雄を学ぶ『池田塾』1期生。

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随筆「音楽の起りと歌の起り」
小林秀雄に学ぶ塾 同人誌「好・信・楽」創刊号 (2017年6月号) 掲載

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<今後の作品発表予定>
2017.07.07-16, Bobbio (Piacenza), Italy
Divertimento Ensemble International Workshop for Young Composers V edizione

2017.07.15 (Sat) 21:00-22:30, Auditorium Santa Chiara, Bobbio (Piacenza), Italy
十の聲 (2017) 世界初演
I concerti dell’International Workshop for Young Composers
Divertimento Ensemble, Sandro Gorli (cond)
詳細はこちら

2017.07.24 (月) 19:30開演 @六本木クラップス (東京都港区六本木3-16-33 青葉六本木ビルB1)
Bill Evans《Waltz for Debby》/ Jimi Hendrix《Purple Haze》(2017) 委嘱編曲・世界初演
音和座
演奏 / 邦楽ゾリスデン [吉澤延隆 (箏)、福田智久山 (尺八)、本條秀慈郎 (三味線)、前川智世 (箏)]

2017.08.12-28, Luzern, Switzerland
LUCERNE FESTIVAL ACADEMY Composer Seminar

2017.08.19 (土) 19:00開演 @東京アートミュージアム (調布市仙川町1-25-1)
二つの聲 (2017) 委嘱新作・世界初演
うつろひの花 / ソプラノトランペットと笙のバージョンによる (2014)
東野珠実・曽我部清典デュオ「真夏の夜の星筐」
演奏 / 東野珠実 (笙)、曽我部清典 (トランペット、ゼフュロス)
詳細はこちら

2017.07.26 (Sat) 15:00-16:30, KKL Luzern, Lucerne Hall, Luzern, Switzerland
影も溜らず (2017) 世界初演
Identities 5 | Ensemble of Lucerne Festival Alumni
Lucerne Festival Academy Composer Seminar Performance
Ensemble of LUCERNE FESTIVAL ALUMNI, Yutaka Shimoda (solo vn), Johanna Malangre (cond)
詳細はこちら

2017.08.30 (Wed) 21:00-, RADIO SRF 2 Kultur NEUE MUSIK IM KONZERT
《影も溜らず》ラジオ放送
Werkschau des《Composer Seminar》
詳細はこちら

2017.09.16 (土) 17:00開演 @市田邸 (東京都台東区上野桜木1-6-2)
セレナード (2017) 世界初演
かたち、あや、あるいはすがた (2017)
Rush《ホケトゥス風ライムライト》(2016) 編曲
作曲者不詳《おいらが、小っちゃな餓鬼の頃》(2017) 編曲
〜新秋の市田邸で、『“げん”結び―音楽と文学―』を愉しむ!〜「十二夜、あるいは、タイムトラベル!?」
演奏 / 柴田友樹 (朗読)、市川泰明 (テノール)、佐藤翔 (チェロ)
主催 / NPO法人たいとう歴史都市研究会
詳細はこちら

2017.09.25 (月) 18:00-19:00, NHK-FM横浜放送局
NHKFM横浜放送局「横浜サウンド☆クルーズ」出演
バックステージツアー〜音楽堂・県民ホール〜
FM横浜81.9MHz、小田原83.5MHz
詳細はこちら

2017.09.39 (土) 14:30開演 @公演通りクラシックス (東京都渋谷区宇田川町19-5 東京山手教会B1F)
George Gershwin《I Got Rhythm》(2017) 委嘱編曲・世界初演
眞美子とゆかいな仲間達 vol.3『Trioでおくる 紺碧のとき』
演奏 / 寺井真美子 (ピアノ)、佐藤翔 (チェロ)、齋藤綾乃 (打楽器)
詳細はこちら

2017.11.02 (Sat) 19:30-21:00, French Parlor, Founders Hall, USD: University of San Diego, U.S.
Mystische Miniature (2017) 委嘱新作・世界初演
New Musical Geographies II
Christopher Adler (khaen)
詳細はこちら

2017.11.04 (土) 15:00開演、14:30よりプレトーク @神奈川県立音楽堂 (神奈川県横浜市西区紅葉ヶ丘9-2)
月の光言 (2017) 委嘱新作・世界初演
神奈川県立音楽堂・伝統音楽シリーズ 聲明「月の光言(こうごん)」
出演 / 声明の会・千年の聲 (迦陵頻伽聲明研究会と七聲会による)
構成・演出 / 田村博巳
詳細はこちら

2017.11.05 (日) 15:00開演 @ノワ・アコルデ音楽アートサロン (大阪府豊中市服部本町2-5-24)
三つの聲 (2016) 関西初演
ルツェルン音楽祭アカデミーメンバーの演奏で聴く 〜スウェーデンと日本の未来のクラシック音楽〜
演奏 / レン・アンサンブル | Paula Hedvall (ヴァイオリン)、桑原香矢 (ヴィオラ)、大西泰徳 (チェロ)
詳細はこちら

2017.11.18 (土) 13:30開演 @東京国立博物館内応挙館 (東京都台東区上野公園13-9)
もみぢつゝ (2017) 委嘱新作・世界初演
音和座「もみじして」
演奏 / 宮田まゆみ (笙)、本條秀慈郎 (三味線)
詳細はこちら

2017.11.18 (土) 15:00開演 @京都市立芸術大学 大学会館ホール (京都市西京区大枝沓掛町13-6)
三つの聲 (2016)
パウラ・ヘドヴァル 北欧の作曲家とヴァイオリン現代奏法レクチャー&コンサート
演奏 / レン・アンサンブル | Paula Hedvall (ヴァイオリン)、桑原香矢 (ヴィオラ)、西村まなみ (チェロ)
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2017.12.22 (金) 19:00開演 @新宿FACE (東京都新宿区歌舞伎町1-20-1 ヒューマックスパビリオン新宿歌舞伎町7F)
Moon Spell (2017) 委嘱新作・世界初演
アンサンブル室町 in 歌舞伎町!ー祝10周年ー
演奏 / アンサンブル室町
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