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声の力、ことばの力
昨日一昨日と、とてもありがたく面白い巡り合わせがあり、一昨日は声明の会、昨日は長唄の会に伺ってきました。

一昨日伺ったのは、国際文化会館での 聲明―声の知恵:「声明の会・千年の聲」による二箇法要 です。
大震災で被災された方へのレクイエムとして行なわれました。

以前、声明の会・千年の聲による「阿吽の音」の公演に関して記事を書きました。↓
阿吽の音。
阿吽の音。2

このときに演奏された楽曲は現代に生きる作曲家さんによるものでしたが、今回の会では古典の作品が演奏されました。
二箇法要とは、唄(ばい)と散華(さんげ)という二曲を取り入れて行う法要のやり方です。真言宗の正式な法要としてはもっとも一般的なものだそうです。


演奏の前に日本語と英語で、中国からの仏教の伝来、声明の伝来とその発展、声明の楽譜「博士」について、などの説明がありました。とてもわかりやすく勉強になりました。

声明が日本でうたわれた記録でいちばん古いのは、あの、奈良の東大寺の大仏の開眼供養会(752年)のときのだそうです。それ以来、声明は宗派ごとに色々に発展しましたが、明治時代のの廃仏毀釈(はいぶつきしゃく:仏教の教えを捨てるという政策)により仏教は大打撃を受け、声明も衰退してしまったようです。

ペリーが来航し鎖国が解かれ、江戸幕府が崩壊したあと、日本は欧米に負けない国をつくるために、一生懸命欧米の真似をしてきました。欧米に対するコンプレックス、それは今でも私たちの生活や文化に影響を与えている気がしています。でも、日本の伝統音楽を聴いていると、そんなコンプレックスを持つ必要なんて全然なかったのにって思う。日本人がもともと持つ身体能力や感覚は、欧米の論理的思考と同じくらいすごいはずです。


今回の公演では、いろいろな曲調を聴くことができ、とても面白かったです。狭い音程を細かく行き来するところ、旋律の受け渡しが繰り返されるところ、少し懐かしさのある、まるで歌謡のような旋律のところなどがありました。旋律の受け渡しをするときの、綱渡りをするような緊張感がとても良かったです。



今回も散華で散らばった蓮の形の色紙をいただいてきました。
というか、聴きにいらしていた方が持っているのを、いいなあ、と思って見ていたらくださった。嬉しい





前回いただいたのと一緒に、手帳にはさんでお守りにしています。


『声の知恵』というタイトルの意味をこんなときだからこそ、強く感じます。言霊(ことだま)という言葉がありますが、言葉はとても大切なもので、いろんな背景があり力があり、いろんな現象をともないます。言葉が発せられるとそこに事が起こる。日本人は言葉やうたにたくさんの祈りをこめて受け継いできた。その祈りの力を持つ言葉が被災地にも届くといいなと思いました。


昨日は前進座に行ってきました。
観てきたのは、長唄の三味線方である杵屋佐之忠さんの師籍60年記念演奏会です。
おはなしを交えての歌舞伎音楽。とても和やかで楽しい時間でした。



歌舞伎といえば永谷園です。
この幕の色合い、あのお茶漬けのパッケージのデザインのもとになりました。定式幕(じょうしきまく)と言います。




昨日は特に、黒御簾音楽の紹介がとても面白かったです。
黒御簾とは歌舞伎や文楽のDJブースみたいなもので、演技のタイミングに合わせて色々な効果音やBGMを演奏するところです。
昨日は鳴り物(打楽器)を中心に、水、雨、風の音などをどう表すかの様々な例を聴くことができました。様々な自然の音を象徴的に表現する黒御簾音楽。昔から日本では自然と音の関係がとても密接だったのだと思います。同時に自然と人間の関係性もきっと大事にされていたはず。

そして最後の「勧進帳」。とても気合いの入った公演でした。
私は削ぎ落とされた表現が好きなので、どちらかというと、色んな要素を寄せ集めた歌舞伎よりはお能の方が好きなのです。でも歌舞伎もやっぱり面白い。
勧進帳、純粋にとっても楽しく、ひきこまれました。

勧進帳は明らかに能の影響が見られる作品です。始まり方など、まさに能楽で、地謡がうたいだすかと思いました。そのあとも、頻繁に能の音楽が挟み込まれていました。
帰って調べてみたら、能の"安宅"という作品と関連性があることがわかりました。

それから、歌舞伎ならではの、観客から発せられる合いの手がやはりすごく良かったです。声も間もたまりません。今後、これが減っていくと思うとすごく危機を感じます。聴衆を育てていかないといけないと思います。現代音楽もそうですが、どの分野でもそういう問題があるのですね。


というわけで、日本のことば、うた、おと、そしてそれらに込められた祈りを改めて感じた二日間でした。
 2011/03/27 20:46  この記事のURL  /  コメント(2)

Profile
桑原ゆう (くわばら・ゆう)
桑原ゆう, Yu Kuwabara

作曲家。1984年12月7日生まれ。
2007年東京藝術大学音楽学部作曲科卒業、2009年同大学大学院音楽研究科(修士課程)修了。在学中より国内外の音楽祭、セミナー等に参加し作品発表を始め、Akademie Schloss Solitude (ドイツ)、武生国際音楽祭、impuls (オーストリア)、ミラノ国際博覧会、ロワイヨモン作曲講習会 “Voix nouvelles” (フランス)、ルツェルン音楽祭 (スイス)などで作品が取り上げられている。第74、75、78回日本音楽コンクール作曲部門入選。一部の作品は Edition Wunn (ドイツ)より出版されている。2009年度トーキョーワンダーサイト国内クリエーター制作交流プログラムに選抜され、トーキョーワンダーサイト青山クリエーター・イン・レジデンスに滞在して活動。
近年は声明や民俗芸能等の取材を重ね、それらを扱う作品を精力的に発表、また、同世代の演奏家と立ち上げた「淡座」で古今亭志ん輔氏との公演を重ねるなど、日本の音と言葉を源流から探り、文化の古今と東西をつなぐことを主なテーマに創作を展開している。他、NHKラジオドラマ、ファッションブランドのランウェイショーなどの音楽を作曲し、様々な分野と交流して創作活動を行う。池田雅延、茂木健一郎の両氏による、小林秀雄を学ぶ『池田塾』1期生。

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随筆「音楽の起りと歌の起り」
小林秀雄に学ぶ塾 同人誌「好・信・楽」創刊号 (2017年6月号) 掲載

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<今後の作品発表予定>
2017.07.07-16, Bobbio (Piacenza), Italy
Divertimento Ensemble International Workshop for Young Composers V edizione

2017.07.15 (Sat) 21:00-22:30, Auditorium Santa Chiara, Bobbio (Piacenza), Italy
十の聲 (2017) 世界初演
I concerti dell’International Workshop for Young Composers
Divertimento Ensemble, Sandro Gorli (cond)
詳細はこちら

2017.07.24 (月) 19:30開演 @六本木クラップス (東京都港区六本木3-16-33 青葉六本木ビルB1)
Bill Evans《Waltz for Debby》/ Jimi Hendrix《Purple Haze》(2017) 委嘱編曲・世界初演
音和座
演奏 / 邦楽ゾリスデン [吉澤延隆 (箏)、福田智久山 (尺八)、本條秀慈郎 (三味線)、前川智世 (箏)]

2017.08.12-28, Luzern, Switzerland
LUCERNE FESTIVAL ACADEMY Composer Seminar

2017.08.19 (土) 19:00開演 @東京アートミュージアム (調布市仙川町1-25-1)
二つの聲 (2017) 委嘱新作・世界初演
うつろひの花 / ソプラノトランペットと笙のバージョンによる (2014)
東野珠実・曽我部清典デュオ「真夏の夜の星筐」
演奏 / 東野珠実 (笙)、曽我部清典 (トランペット、ゼフュロス)
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2017.07.26 (Sat) 15:00-16:30, KKL Luzern, Lucerne Hall, Luzern, Switzerland
影も溜らず (2017) 世界初演
Identities 5 | Ensemble of Lucerne Festival Alumni
Lucerne Festival Academy Composer Seminar Performance
Ensemble of LUCERNE FESTIVAL ALUMNI, Yutaka Shimoda (solo vn), Johanna Malangre (cond)
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2017.08.30 (Wed) 21:00-, RADIO SRF 2 Kultur NEUE MUSIK IM KONZERT
《影も溜らず》ラジオ放送
Werkschau des《Composer Seminar》
詳細はこちら

2017.09.16 (土) 17:00開演 @市田邸 (東京都台東区上野桜木1-6-2)
セレナード (2017) 世界初演
かたち、あや、あるいはすがた (2017)
Rush《ホケトゥス風ライムライト》(2016) 編曲
作曲者不詳《おいらが、小っちゃな餓鬼の頃》(2017) 編曲
〜新秋の市田邸で、『“げん”結び―音楽と文学―』を愉しむ!〜「十二夜、あるいは、タイムトラベル!?」
演奏 / 柴田友樹 (朗読)、市川泰明 (テノール)、佐藤翔 (チェロ)
主催 / NPO法人たいとう歴史都市研究会
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2017.09.25 (月) 18:00-19:00, NHK-FM横浜放送局
NHKFM横浜放送局「横浜サウンド☆クルーズ」出演
バックステージツアー〜音楽堂・県民ホール〜
FM横浜81.9MHz、小田原83.5MHz
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2017.09.39 (土) 14:30開演 @公演通りクラシックス (東京都渋谷区宇田川町19-5 東京山手教会B1F)
George Gershwin《I Got Rhythm》(2017) 委嘱編曲・世界初演
眞美子とゆかいな仲間達 vol.3『Trioでおくる 紺碧のとき』
演奏 / 寺井真美子 (ピアノ)、佐藤翔 (チェロ)、齋藤綾乃 (打楽器)
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2017.11.02 (Sat) 19:30-21:00, French Parlor, Founders Hall, USD: University of San Diego, U.S.
Mystische Miniature (2017) 委嘱新作・世界初演
New Musical Geographies II
Christopher Adler (khaen)
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2017.11.04 (土) 15:00開演、14:30よりプレトーク @神奈川県立音楽堂 (神奈川県横浜市西区紅葉ヶ丘9-2)
月の光言 (2017) 委嘱新作・世界初演
神奈川県立音楽堂・伝統音楽シリーズ 聲明「月の光言(こうごん)」
出演 / 声明の会・千年の聲 (迦陵頻伽聲明研究会と七聲会による)
構成・演出 / 田村博巳
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2017.11.05 (日) 15:00開演 @ノワ・アコルデ音楽アートサロン (大阪府豊中市服部本町2-5-24)
三つの聲 (2016) 関西初演
ルツェルン音楽祭アカデミーメンバーの演奏で聴く 〜スウェーデンと日本の未来のクラシック音楽〜
演奏 / レン・アンサンブル | Paula Hedvall (ヴァイオリン)、桑原香矢 (ヴィオラ)、大西泰徳 (チェロ)
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2017.11.18 (土) 13:30開演 @東京国立博物館内応挙館 (東京都台東区上野公園13-9)
もみぢつゝ (2017) 委嘱新作・世界初演
音和座「もみじして」
演奏 / 宮田まゆみ (笙)、本條秀慈郎 (三味線)
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2017.11.18 (土) 15:00開演 @京都市立芸術大学 大学会館ホール (京都市西京区大枝沓掛町13-6)
三つの聲 (2016)
パウラ・ヘドヴァル 北欧の作曲家とヴァイオリン現代奏法レクチャー&コンサート
演奏 / レン・アンサンブル | Paula Hedvall (ヴァイオリン)、桑原香矢 (ヴィオラ)、西村まなみ (チェロ)
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2017.12.22 (金) 19:00開演 @新宿FACE (東京都新宿区歌舞伎町1-20-1 ヒューマックスパビリオン新宿歌舞伎町7F)
Moon Spell (2017) 委嘱新作・世界初演
アンサンブル室町 in 歌舞伎町!ー祝10周年ー
演奏 / アンサンブル室町
詳細はこちら



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