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綱渡り、その神聖な芸術
メゾンエルメスのル・ステュディオで『マン・オン・ワイヤー』という映画を観てきた。
1970年代、今は無きニューヨークの世界貿易センター、その二つのビルの間を綱渡りしたフィリップ・プティというフランス男のドキュメンタリー(2008年イギリス映画)だ。

これはまさしく芸術だと思った。
綿密な計画・調査と準備。「理由」などなく、彼の行動に協力を惜しまない友人たち。
極限状況の中で、神が降りてくる瞬間というものは本当にあるものなのだ。
綱渡りする彼の姿は、神聖であり、また星の王子様のように純粋でもあり、思わず涙が流れた。

アメリカ映画的なハッピーエンドのかけらもここにはない。
彼がその後どのような人生を送ったのか、家族はいるのか、何で生計を立ててきたのか、そういう現実的なことは一切触れていない。
現在、60歳にもなろうかと思われる彼は、若い時の悪ガキの面影はそのままで、最後にたぶんこういうようなことを言った。

「エッジを歩いていないと、生きている気がしない」
次元は違いすぎるが、同じく「綱渡り」の日々を送る身に、ずしんと堪えた。

www.espace-sarou.co.jp/manonwire
今、ネットで調べていたら、今年のアカデミー賞ドキュメンタリー賞を受賞したことが判明!
 2009/02/28 22:53  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)

セミナー講師の仕事
2月も終わりだというのに、外は霙が降っている。
今年の冬は「暖冬」だったらしいが、ちっとも暖かく感じなかったのは私だけだろうか。
確かに雪景色のまったくなかった東京の冬は珍しいかもしれない。

今週は、毎年恒例となっているセミナー講師の仕事で関西へ行っていた。
考えてみると、ものを書くという仕事の傍ら、人々の前で話すという仕事も、30歳でフリーランスになってからずっとやってきた。ファッションの中でも、ある特化した分野を軸に長年取材活動をしているために、企業やイベント、専門学校、時にはテレビからも声をかけていただいてきた。
「もう慣れているから緊張するなんてことはないでしょ」とよく言われるが、そんなことはない。20年以上やっていても、慣れるということはまったくない。
壇上でえらそうに講師をしていると、時々間違って「先生」と言われたりするが、こういう呼ばれ方が心地よいと思ったことは一度もない。
どちらかというと1対1で向き合って、人に話を聞くという立場の方が好きなのだ。

ことに人々を楽しませるようなエンタテイナーの素質は、私には皆無である。
人前で話をするのはもともと苦手な方だったから、学校時代の同級生は今の私を知ったら驚くであろう。
でも一番大切なのは、話術ではなく、「伝えるべきもの」を持っているということであると私は思っている。
それは書くことも同じ。技術というのは、継続してさえいれば、少しずつ身につくもので、肝心なのは、そこに人々が共感する何かがあるかどうかなのである。
いくらうまい文章でも、話が上手でも、「魂」が込められていなければ、それは虚しい。

私のセミナーは「トレンド」というタイトルがついている場合が多いが(実は「トレンド」という言葉は大嫌い。他にいい表現がないものか…)、単なる表層的な商品トレンドではなく、私はその背景にあるもの、それを生み出しているもの、今の時代がどういうものなのかを伝えたい。そのためのキーとなるのは、「人」なのである。
いろいろな国の人とコミュニケーションを図りながら、ファッションに限らず広い視点から世の中を見て、その奥にあるものを探ることが欠かせない。
つまりは私の主観を軸とするもの。私のものの見方に興味のない人にとっては、何の価値も持たないだろう(我ながらえらそうだなぁ)。

今週あったセミナーももう6年続けているが、おかげさまで盛況のうちに終わった(2日合計して500人以上が定着)。
「・・さんのセミナーは分かりやすい」(「分かりやすい」ことこそ、私のポリシー! うまい文章を書きたいとは思わない)
「ああ、そういうことだったのかと、いろいろなことが整理できた」
そういうリアクションをいただくと、そこに至るまでの苦労もふっとび、またこれからもがんばって取材を続けていこうかと思えるのである。

外は、霙から雪に変わってきた。

 2009/02/27 10:58  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)

“クールな東京”集結
昨夕、「新宿マルイワン」(オープン前夜の内覧会)に行ってきた。
伊勢丹のはす向かいで、これまでさまざまに変身を繰り返してきた同館。今回のテーマは、“クールな東京を発信する個性派ファッション館”。つまり「クール・ジャパン」を集積させたというわけだ。

1階の正面では、やっぱり、キティちゃんがお出迎え。

エスカレーターで一気に最上階までのぼると、8階はコアなゴシックの世界。このマーケットって、時代に関係なく根強い。
音楽とファッションをミックスさせている。
7階は一変して、フリルいっぱいピンクのロリータの世界。日本独特のコスプレも、今やグローバルに。

ファッションの「深さ」を表現したという5階で気になったのは、大阪を拠点とする「アリスアウアア」。店作りがおもしろい。マニアックな服が並んでいるが、私でも着たい!と思わせるものもある。

お隣にある知り合いの「エクサントリーク」でご挨拶。

個人的に一番好きだったのは、4階。
ブライス人形に手作り雑貨を組み合わせた「レレ ジェニームーン」。

着物のセレクトショップともいえる「豆千代モダン」。

レトロな雰囲気のかんざし専門店「かんざし屋 wargo」(1階のシルバーアクセサリー「かすう工房」の別業態)。
 2009/02/20 10:39  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)

寒風の中、「ルームス」へ
ファッション業界は厳しい。
それは合同展「ルームス」にもよくあらわれている。
それでもこの苦境の中、なかなかがんばっていると思う。




うれしかったこと。発見(?)したこと。

・以前、プレス関係者は、手取り足取りのマンツーマン接待(?)を受け、少なからず息苦しかったが、今回は最初から最後まで放っておいてくれて、自由に見ることができた。

・クロークはスーツケースのような大きな荷物しか預からないというのが建前だったようだが、腰が悪くて思い荷物を持って回れないと懇願したら、「では、今回は特別に」と融通を利かせてくれた(こういうのって意外に珍しい)。

・ルームス初回からの常連ブランド、「イーエム」のディスプレイ。
本物の氷の中にジュエリーが!

・本物だなと思うブランドに会えた。
イギリスから初出展の「oyuna」(オユナ)。モンゴルのカシミヤを使ったショールやクッションやラウンジウエアがすばらしい。
こういうのに限って、写真を撮ることを忘れてしまう。カタログで紹介を。
ショールで4〜5万円。日本のお金持ちもこういうのを使わなきゃ。


www.oyuna.com




 2009/02/18 18:43  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)

「婚活」ならぬ「職活」
本日、某「結婚相談所」のドアを叩いた。
入会のためではない。
「結婚カウンセラー募集」のアルバイトに、応募しにいったのだ。

このご時勢、ただでさえ薄給のライターの仕事は、輪をかけて厳しいものがある。
もともとカウンセラーには興味があった私。インタビュアーとカウンセラーには少なからぬ仕事の共通点を感じていたのだ。
昨今の「婚活」ブームにあいまって、ここには需要があるに違いないとひらめいたのだった。
通常、50代のアルバイト・パートともなると、介護、掃除、レジ打ち以外の仕事はほとんどないが、これは歳相応の経験が活かせる数少ない分野ではないかとも思った。

ところが、面接で決定的なネックを指摘された。
「一度も結婚したことのない人には勤まらない仕事」だと、その会社の女社長に言われたのだ。
子供を産んだ経験のいない人に子供は預けないし、あなたがエベレストの山に登るとすると、登頂経験のある人にアドバイスをもらうでしょ、というわけだ。
後者はそうだが、前者は違う。プロフェッショナルとはそんなものじゃない。
同級生に幼稚園の先生をしている人が2人いるが、2人とも自分の子供はいない(1人はしかも独身)。
そういう経験至上主義の発想に、私はどうも違和感をおぼえるのだ。

反論したってしかたないし、確かにそうかもしれないと思った。
少なくとも私には、会員さんたちに対して結婚の素晴らしさは伝えられない。それ以上に、ブランド志向でプライドばかり高い高学歴の女たち、やっぱり年下のかわいい女性を好むという弁護士・医者たちを、どう導けばいいのか。
所詮、価値観が違うのである。
不況だから、先が見えない時代だから、「結婚」に回帰しているのは分かる。
私が恐怖に感じるのは、最近、この国が、価値観の多様化どころか、ますます画一的になっていることだ。
事実婚とか養子といった選択が、異端視されない時代はくるのだろうか。

その社長の話はそれなりにおもしろかったが、あまり長居すると、入会の勧誘になりそうな勢いになってきた。
いや、「だから独身女はだめなのよね」とも言われかねない。
「あなたのような理知的な方に働いていただきたい気持ちはあるんですけどねぇ〜」
女社長の精一杯のお世辞を聞きながら、その砂糖菓子のような部屋を後にしたのであった。
私に今、必要なのは「婚活」ならぬ「職活」である。

 2009/02/17 22:40  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)

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