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「年をとるって素敵なことじゃない!」 月日の流れ方がどんどん早くなり、ああ、また1歳年を取る…とおびえる私をこう諭すのは、パリに住むK子さん。 化学者として大手化粧品メーカーに勤めるご主人の転勤のため、東京に2、3年暮らしていたが、昨年夏、バカンス中のヨーロッパで具合が悪くなって、大腸癌が見つかり、東京に帰って来られなくなった。それ以来、抗がん剤を打ちながら、パリ郊外で療養生活を続けている。 そんなK子さんが、里帰りを兼ねて、ご主人と久々に日本にやってきた。 短い東京滞在の間、ホテルの近くの居酒屋に、かつて夫妻の家に集まっていた友人たちが集まり、前と同じようにワイワイがやがや。昨夜は楽しいひとときを過ごした。 彼女はお料理上手、もてなし上手の、まさにホームパーティの達人。神楽坂の家には何度となく遊びに行った。「気心の知れた友人たちとゆっくり会話を楽しむのがパーティ」という通り、彼女の心遣いは実に自然で、ゲストたちはいつもリラックスして心から楽しんだ。 そこで彼女の音大時代の同級生、ドイツ留学時代の友人、子供たちの通うリセ(フランス人対象の小学校・中学校)の父母たち(ほとんど日仏カップル)と、多くの友人と知り合った。 彼女の病気を私が最初に知ったのも、「ホームパーティ」がきっかけ。ある雑誌にホームパーティを気軽に開こうというテーマで原稿を書こうとしていたとき、これはK子さんに取材しない手はないと電話したものの、なぜか全然連絡がつかないというのが発端だった。 彼女の病気が判明してからというもの、彼女の家で親しくなっていた友人同士が連絡をとりあい、新しい情報に一喜一憂してきたのだ。 幸いなことに、私はこれまで大病をしたことがないし、家族や友人など周りにも癌を患った人が誰もいなかったから、突然療養生活を余儀なくされてしまった人に何をしてあげたらいいのか、どう接していいのか、全然わからなかった。 家で着る部屋着とかパジャマとか、彼女が読みたいという本を送る位しか、考えつかない。抗がん剤の副作用で髪の毛が抜けてしまった時は、パリ在住の友人の帽子デザイナーに、夏用の涼しい帽子を子供たちとおそろいで作ってもらった。 今回の東京滞在中は、私が信奉する植物療法士のセラピーを薦めたりしている。 でも、そういうこと以上に、今は一緒にいる時間を思いっきり楽しみたい、自分は何もできないけれど彼女を遠くから見ていたいと思っている。 K子さんはもともとフルーティスト。音楽を勉強していたドイツで、フランス人のご主人と出会って結婚。新婚時代は神戸で震災に遭遇している。そういう強運の持ち主だから、今回の病気もどうにか切り抜けられると私は信じている。 私が最初にK子さんに会ったのはパリ。病気になってからも、仕事でパリに行くたびに、K子さんに会いに行っている。 体調はどんな感じかなと、いつもおそるおそる会いに行くのだが、聡明で明るい彼女といる時間はいつも理屈抜きに楽しくて、アッという間に時間が過ぎてしまう。お見舞いに行ったはずの私の方が、励まされて帰ってくるのだ。 明日はもう東京を離れる前日。彼女の大好きなフランス料理レストランで、一緒に昼食をとる約束をしている。 ![]() K子さんが東京の家を引き払うときに、私が受け継いだ観葉植物の鉢。1年経って2倍の大きさに育った。 |




