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こんな仕事がしたい
私はHNK・ETV特集のファンだ。映像と文字の違いこそあれ、ドキュメンタリー番組はノンフィクション文学にも近いものがあって、その番組作りの裏側に思いをはせてしまう。昨夜放映された「アンジェイ・ワイダ 祖国ポーランドを取り続けた男」には、深く感銘を受けた。
番組の主人公にも、番組の制作者にも敬意を表したい。

最近、アカデミー外国映画賞をとった最新作『カティン』。アンジェイ・ワイダという監督の、その生い立ちから、この映画を生みだす経緯がたっぷりと描かれていた。
内容はもちろんのこと、この監督の人間としての魅力(容姿も含めて)にも引き込まれるものがあった。いい仕事をする人はかっこいい。

『灰とダイヤモンド』『地下水道』という題名とともに、アンジェイ・ワイダは何か気になる存在だったが、実は一度もその映画を観たことがない。
ポーランドと聞いて思い出すのは、かつて英語学校で一緒だった大学院生がポーランドを専門にしていて、何年か住んでいたという話を聞いたことぐらい。連帯のワレサ議長のことなど、何度もニュースなどで見聞きしていたはずだが、この国についての知識はほとんどなかった。

作品ごとの、政府の検閲との駆け引きは、まさにドラマのようだった。
アンジェイ・ワイダ監督は真っ向からぶつかったり、闘ったりするのではなく、好機を待つ。聴衆の良心を信じ、違う表現で、聴衆に訴える。「これで充分に理解してくれる」と。限られた条件内でいかに伝えるかを考え、しかも自分の信念は少しも変えないところがすごかった。
時間が経てば、状況は少しずつ変化するものだ。あせってはいけない。要はそのタイミングをいかにつかむか、そのためにはいつでも発表できるように準備しておかなければならない。
長年封印されていた事件も、いつかは明るみに出来るときが来る。
そうして、監督のライフワークの集大成のように、最後の作品として、自分の父親が虐殺された「カティン」事件を題材に、自分の母親を主人公にして映画を作ったのだった。

長い時間をかけて、自分の命をかけて、伝えていかなければならないものは、私にとって何だろう。
 2008/06/16 12:05  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)

東大でバーチャル体験
昨日、「バーチャルリアリティ」「テレイグジスタンス」の研究で知られる東大のT教授のところへ、チームで取材に伺った。本郷にある東京大学の構内に入るのは、これで二度目。雨上がりのしっとりした空気の中で、美しいキャンパスが映える。
東大、しかも工学部とは、自分にとって一番遠い存在。こういう仕事がなければ、一生、縁がないところである。

実際に研究室でいくつかの装置を体験させていただいてからお話を伺ったので、まったく理系オンチの私も、実感としてすんなり入っていくことができた。
まず、「バーチャル」という言葉自体が、一般に日本で言われている「仮想」とは程遠く、「ほとんどリアル(実際とは違うが、本質的にはリアルに近い)」という意味。日本人がこの言葉を誤解しているように、ヨーロッパ人は「ロボット」に対する嫌悪感があるらしい。

こういう研究が現実社会の中でどういうふうに利用されていくのか。
よく言われるのは遠隔医療や介護の面だが、インターネットやテレビ電話の進化版にもなって、行きたいところ、会いたい人のところに飛んでいける。
ファッションビジネスと関連するところでは、カスタムメイドなど一人ひとりに合った対応が得意らしく、また自分がそこに行かなくても海外でショッピングすることもできる。
実際にそこにいるのとはやっぱり違うじゃないか、とは言うなかれ。そこにいたって、心そこにあらずということも多々ある。
また、この技術を使えば、無駄な資源やエネルギーをかけずに、効率よく、物を生産することも出来るのだという。

宇宙開発技術のおかげで、天気予報やカーナビといった便利な情報を享受しているように、バーチャルリアリティにまつわる各種の技術も、近い将来、いつの間にか私たちの生活になくてはならないものになっていくのだろう。
それにしても、実業の世界とはまったく別のところで、純粋に学問を行う人たちの姿に触れると、ある種の感動を覚える。

 2008/06/06 21:24  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)

消費過剰な自分を反省
昨夜、東京12チャンネルでおもしろい番組をやっていた。
「久米宏経済スペシャル“新ニッポン人現る”」
久々に久米宏が登場するのに加え、テーマに引かれた。「消費をしなくなった若者(20代)」というのは、最近、取材先でも方々で話題になるからだ。
さすが、経済やマーケティングに強いテレビ局、切り口が違う。

まず、分かりやすい例としてあげられていたのが、今の20代は車に興味がないということ。
なあんだ、それなら私も同じ。車に魅力を感じたことがないし、運転免許さえ持ってない。
ここまでは良かったが、次々に出てくる事例に、世代の特徴が浮かび上がってきた。
お酒を飲まない。
海外旅行に行かない。
お金を使わない(例外として出ていたのが、「東京ガールズコレクション」に熱狂する女の子たち)。
ものすごい資産を持っている個人トレーダーが、東京が見渡せる4億円のマンション(殺風景なインテリア)に住みながら、食事は立ち食いうどんやカップ麺で済ませている姿は象徴的だった。
いったい何が楽しくて生きているの? 

しかし、今の若者は自己投資をしない、生活を楽しむということをしない、とは言い切れないことが、番組の最後で明らかにされてくる。
身の丈の生活の中でそれなりに楽しんでいるし、社会貢献の意識は強いのだという。
幼い時のバブル崩壊や就職氷河期の記憶から、とにかく不安感が強く、貯蓄に励んでいるというのだ。貯蓄の目的を聞かれて「老後のため」と応える20代の彼らに、老後間近でも貯蓄のない自分は、ただただ唖然。
「楽観的」というと聞こえはいいが、「自己投資」「お金は天下の回り物」という言い訳で、あまり先のことは考えずに、お金はあるだけ使ってきた。というより、無くても使っている。
そういう自分の生活を変えなければいけない時期に来ている(もう遅いか)ことを、まさに子供の世代から教えられた。そういう番組であった。
 2008/06/02 11:35  この記事のURL  /  コメント(2)  / トラックバック(0)

和洋融合の魅力
連休最終日、きれいに晴れ渡った。
ゆったりした時間の流れの中で、思い立って美術展や個展のはしご。
最後は、東京都庭園美術館でやっている「世界に誇る和製テーブルウエア・オールドノリタケと懐かしの洋食器」へ。

「オールドノリタケ」という呼び方をするようになったのは、90年代以降。バブル期のお宝ブームで、輸出用に作られていたノリタケの古い時代のものが注目され、コレクターが増えてからのことのようだ。
今回はノリタケ(日本陶器)だけではなく、香蘭社をはじめ、明治から昭和初期までの各地の主要な洋食器メーカーのものが一緒に出展されていた。
高級磁器として名高い大倉陶器のものも数点。白にエンジの縁取りを施したデザインは、色彩豊かなコレクションの中ではシンプルでありながら、その絶妙な配色やフォルムが美しく、印象に残った。

当初は、欧米の下請け的な役割を果たしていたのだろう。
だが、単に西洋の物まねでなく、日本古来の伝統や技術、感性もそこに盛り込みながら、後世に価値あるものとして受け継がれていく様子は、テキスタイルデザインにも共通するものがある。
特に大正時代から昭和初期にかけての、アール・デコ調のモダンな色柄などは、同時代の着物の柄とも酷似している。
昔から「和洋折衷」(和洋融合)というか、異文化がミックスしたものに惹かれる私は、国や時代をはるかに超えた品々を見ると、本当に豊かな気持ちになれる。
正統派の豪華な花柄や風景画よりも、幾何学柄や更紗模様、ちょっとアラブ風の金使いが、個人的には好み。

テーブルウエアもファッションも、その時代性やライフスタイルをあらわすという意味では、大きな違いはない。
ファッションビジネス関係者にもぜひお勧めです。6月15日まで。

 2008/05/06 20:40  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)

『おひとりさまの老後』
基本的にベストセラー本は買わない主義だが、この本は切実感(?)があって、ついに買って読んだ。
上野千鶴子の『おひとりさまの老後』(法研)。
本の帯には、「結婚していようがいまいが、だれでも最後はひとり」とある。

日本におけるジェンダーのパイオニアとして知られる著者。近年は高齢者の介護問題にかかわっていたのだ。
実は、10年以上も前に取材させていただいた(多忙のため会うことはできず、電話取材に終わったが)こともあって、ちょっと気になっていたのだ。
ちなみに、この方と私は親戚ではない。

相変わらず、歯切れのよい上野千鶴子節。著者の見聞きした具体例がいろいろ盛り込まれていて、おもしろかった。少なくとも、読み終わった後に、暗い不安な気持ちにはならない。

一番心に残ったのは、「ひとは生きてきたように死ぬ」ということ。つまり、その人がどのように死ぬのかは、どのように生きたかということと同義語であるということだ。
「介護される側の心得10カ条」は、そのまま「生き方の知恵10カ条」に当てはまる。

ハナコ世代のマーケッターたちが名づけた「おひとりさま」という言い方は、どうも好きにはなれないが、ともかく、人は誰でも「ひとりが基本」という考え方には大賛成。
この間、沢木耕太郎も新聞で「ソロで生きる」というようなことを語っていた。
「おひとりさま」といっても、レストランや旅行に独りで行くことを指しているのではありませんよ、念のため。
本質的にインディペンデントでなくては、周りの人との良い人間関係、友人たちとのネットワークもつくることができない。


 2008/04/20 15:28  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)

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