デサント「水沢ダウン」――直営店で世界観を発信する
 デサント「水沢ダウン」のブランド戦略は、次の段階に入っています。これは派生アイテムの「オルテライン」にも共通しますが、直営店展開です。昨年から新業態の「デサント ブラン」を開発し、東京や大阪、福岡など主要都市への直営店展開を本格的にスタートしました。

 東京・代官山を皮切りに、福岡、大阪と「デサント ブラン」の出店を進めています。代官山と福岡は路面店、大阪は昨年11月に開業した「EXPOCITY」内にショップインショップ形態で出店しています。これからも適した物件があれば、出店を続ける方針です。

 Eコマースがアパレル市場にも浸透し、リアル店舗のあり方が見直されつつある昨今ですが、実店舗がしっかりしていないとブランド観もなかなか伝わりません。機能性や物性を重視するスポーツブランドではなおさらです。今ではすっかりファッションブランドとして認知・定着した「モンクレール」も、最初はアウトドアのダウンジャケットとして認識されていました。機能性に優れているかどうかは別として、ブランド戦略により、高級ブランドとして認知されるようになったのです。

 その点では、「水沢ダウン」はルーツのスポーツウエアという軸足は外していません。最大の訴求ポイントはデザインではなく機能性です。ただし、デザイン性にもかなりこだわっています。

 長らく国内スポーツメーカーは、“卸”(代理店)を活用した流通形態を採ってきました。現在も、競技系の商材では同じ流れが続いています。しかしファッション要素を伴う製品はこうした従来の販路経由ではなかなか目的の顧客や小売店に行き渡りません。セレクトショップなどファッション系小売店へ卸す方法のほかには、既存の小売店とも競合しない直営店展開が適しています。すべてがSPA(製造小売り)化しているとも言えるでしょう。

 アピールする媒体も選んでいます。従来のスポーツ系媒体だけではなく、ファッション系の媒体――雑誌などにも広告を出しました。この辺りは外資系スポーツブランドも同様の手法を採っているように感じます。現に在京ファッション系メディアに登場するスポーツ系ブランドは、ナイキやアディダスなど外資系が圧倒的に多いからです。これはどこのPR会社を使うかにもよるのでしょうが、見せ方・見え方を変える有効な方法の1つでしょう。

 ちなみに先日公表された“国内”の「デサント」ブランドの2015年秋冬シーズンの業績は、暖冬だったにも関わらず、前年対比2ケタ増でした。「水沢ダウン」の効果が表れているのかどうかは分かりませんが、興味深い推移です。

 これから、どういう成長曲線を描いていくのでしょう、興味が尽きません。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 2016/02/26 08:52  この記事のURL  /  コメント(0)



デサント「水沢ダウン」――生産量調整で、ブランド価値を維持
 スポーツウエアの範疇を超えて、ファッションアイテムとしても認知されるようになってきた「水沢ダウン」。今では「水沢ダウン」から派生したグローバルモデル「オルテライン」も広くファンに認知されるようになっています。東京・原宿の直営店でも、外国人観光客からの引き合いが多く、着実にその知名度は高まっています。元々、欧米市場では、スキーウエアとして「デサント」ブランドが知られていたため、受け入れられやすい素地もありました。

 「水沢ダウン」には、ファッションとして「デサント」ブランドの新しい側面を発信する狙いがあったことは前回のブログで触れました。またその方法の1つとして、販路を絞り込むことをご紹介しました。営業面では、こうした製品の見え方、エンドユーザーとのタッチポイントの選別が重要になってきますが、企画面でも押さえておくべき点がありました。生産量です。

 アパレルビジネスに関わっておられる読者諸氏はよくご存知でしょうが、製品の生産量と価格は常に連動しています。「デサント」ブランドでも1万円を切る価格の製品もたくさんありますし、「水沢ダウン」のようにたいへん高価な製品も存在します。しかし相対的に「水沢ダウン」の生産量の方が少ないことは容易に想像がつきますし、現にその通りです。

 高品質で高感度なブランド観を維持するためには、生産量の調整が重要であることは当然で、まして国内の自社工場製なので、フル稼働しても生産量は限られています。しかしここが肝心で、過剰な生産量にならないことが「水沢ダウン」のブランド価値を維持している面もあるのです。政策的に大量生産しないわけです。

 デサントが「水沢ダウン」に期待していることは売上規模の拡大ではなく、「デサント」ブランドの価値向上なのです。ブランドイメージを構築する、と言ってもいいでしょう。こうして作り上げたイメージを、ボリュームのスポーツウエアに反映させることが最大の狙いです。

 昨今は、スポーツとライフスタイルの融合を図る“アスレジャー”という言葉が注目されています。米国のナイキなど外資系ブランドで取り上げられている言葉ですが、これは“アスレチック”(競技)と“レジャー”(余暇)をくっつけた造語です。ちなみにこの言葉は1970年後半に、デサントで発信されていたそうです。

 こうしたトレンドも追い風になり、「水沢ダウン」の注目度が高まっているわけですが、さらにブランド価値向上のために、デサントは次の一手を打ち始めています。それが昨年から本格化してきた直営店戦略です。

 …長くなりましたので、続きは次回に致しましょう。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 2016/02/25 12:07  この記事のURL  /  コメント(0)



デサント「水沢ダウン」――ブームの裏側
 ファッションシーンにおいて、スポーツメーカーのデサントが販売するダウンジャケット「水沢ダウン」が注目を集めているようです。自社ブランドの「デサント」で展開する「水沢ダウン」は、岩手の自社工場・水沢工場で生産されている純国産のウエアで、国内外のセレクトショップなどにおいて、ファッションアイテムの1つとして定位置を占めるようになりました。

 スキーウエアで培った同社の技術を詰め込んだ象徴的な商材で、その値段は5万円以上、中には10万円を超えるモデルもあります。通常のスポーツ系ダウンジャケットであれば、間違いなく5万円未満に抑えるところですが、「水沢ダウン」ではあえて高額に設定しています。

 2008年シーズンのデサント展示会取材で初めて「水沢ダウン」を見た時のことは鮮明に覚えています。「デサント」ブランドのブースに飾られていたダウンジャケットは表地が純白、裏地がすべて黒のツートーンカラーでした。表地には透湿・防水機能を持った東レの「ダーミザックス」を使い、熱圧着による無縫製の処理が個性的なデザインになっていました。水沢工場で作った純国産をアピールしていました。

 価格は確か6万8000円くらいだったと記憶しています。「スポーツ店に置いて、こんな高い値段で売れるのか?」と疑問に感じたことを思い出します。しかし後で触れますが、これが「水沢ダウン」の戦略だったのです。…それにしても「水沢ダウン」は、取材をしていて「欲しい!」と思った数少ないダウンジャケットの1つでした。衝動買いした初代「水沢ダウン」は現在も冬には欠かせない一着になっています。

 この「水沢ダウン」を仕掛けたのは、同社の専務、田中嘉一氏です。長らく「デサント」ブランドを担当してきた同氏は、グローバル規模で自社ブランドである「デサント」の価値を向上できないか思案していました。取締役に就任される前からたびたびインタビューしてきましたが、よく「モンクレール」などのブランド名が氏の口から発せられることがありました。かなり前から、「デサント」ブランドをファッションとして発信していこうと意識していたわけです。

 その1つが販路、売り先の絞り込みです。前述したように、一般のスポーツ店では価格が合わないため、競合しないファッション系の小売店へアプローチしました。またファッションブランドとして発信するにはそれ相応の値段設定も必要でした(というよりも原価がかなり高いので、そうしないと利益が取れないという面も大きかったのですが…)。こうした取り組みを始めたのが2008年、今から8年も前のことでした。そうです、昨今の「水沢ダウン」ブームは、一朝一夕で作られたものではないのです。この点は特に強調しておきたいところです。

 …長くなりましたので、続きは次回に致しましょう。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 2016/02/22 09:47  この記事のURL  /  コメント(0)



食品スーパーの閉店余波がスポーツ量販店にも?
 先日、イトーヨーカ堂と、東海を中心に展開するユニーが傘下の店舗をまとめて閉店する方針が報道された。イトーヨーカ堂は約20%に当たる40店程度、ユニーは最大で約50店を閉店するという。個人的には、前から出店過剰だと思っていたので、このニュースを知った時は全く驚かなかった。というよりも、来るべきものがついに来たという感想だった。イオンもほかの地方量販店でも、こうした出来事が起こる可能性は高いと感じている。

 私が取材して回っているスポーツ業界でも、過剰供給という状況は食品スーパー市場と同じだ。最低でも500坪、大きいものは1000坪規模の大型店舗を継続して出店し続けている。大手小売店はアルペン、ゼビオ、メガスポーツ(イオングループ。屋号は「スポーツオーソリティ」)、ヒマラヤの4企業が主要と考えていいだろう。スポーツシューズに限定すれば、エービーシー・マートも加わる(最近はスポーツウエアも扱いだした)。恒常的に出店を続け、同時に不採算店舗はスクラップしているが、トータルでは店舗数が増加し続けている。

 当然、店舗が増えると自動的に売り場も増える。したがって、よりたくさんの商品が必要になるので、スポーツ各社に対する発注量も増えることになる。しかしメーカーも在庫リスクを抱えてまで供給量を増やすとは考えにくいし、現に商品投入量は絞り気味である。他方、メーカー品とは別に小売店は自社ブランド、いわゆるプライベートブランドを増やしているので、その商材でも売り場を埋めることになる。

 供給過剰の中では、顧客の獲り合い=値引き合戦に拍車が掛かることになる。いわゆるデフレーションである。それでも、新規出店を続けているうちは前年比がプラスになる傾向が多いため、既存店の売り上げが多少下がっても、何とかカバーできているケースをよく見かける。しかし急速な円安が進んだこともあり、売上原価が短期間に増え、小売店各社の利益を圧迫するようになってきた。売り上げは増えているが、利益面で伸び悩んでいる傾向が強くなってきた。

 現在、スポーツ小売店は利益を確保しにくい環境下に置かれている。数年来、値引き合戦は店頭に加え、インターネットのECサイトにも及ぶようになったし、人集めのための過剰なセールも依然としてなくなっていない。ここ1−2年、よく耳にするようになった傾向が、売れ筋ブランドに集約して、品揃えの無駄を削っていくという施策だ。多様性を考慮し、4番手、5番手のブランドも並べていたが、消化率や効率を考えて、上位3位までのブランドに集約するというやり方である。

 効率化、利益追求を考えれば正しい措置だと思うが、同業他社の品揃えも同じように売れ筋ブランドへ偏っていくと当然、同質化が起こってくる。昨今、指摘されているアパレル市場と同じ現象である。そうすると割を食うのはエンドユーザーと納入メーカーで、売上規模の小さいブランドは店頭に並ばない事態に陥る。小売店もスポーツメーカーも、資金力=体力のあるところが有利になっているようだ。

 食品系量販店のように、すぐに店舗スクラップにつながることはないと思うが、このまま供給過剰が続けば、どうなるかは分からない。地方の有力スポーツ専門店が経営不振に陥り、大手傘下に組み込まれるという事態は続いているので、しばらくは4強の勢力図争いが続くのかもしれない。
 2015/09/24 13:29  この記事のURL  /  コメント(0)



過剰供給が正常な購買を阻害しているのでは?
 最近、とある有名なアウトドア専門店へ取材に伺った時の事。スポーツに限らず、一般アパレル市場にも通じる話だと思ったので、書いてみる。曰く、そのお店はインバウンド需要も取り込んでいて、売り上げは順調だというが、国内の消費者の防衛意識はまだまだ高いというのである。来年に予定されている消費税率のアップがその遠因らしい。

 概して売上原価が上がっている昨今、上代価格を上げた企業も少なくない。短期間に上代を上げた店舗は苦戦しているケースが多い。このアウトドア専門店は自社品比率が高く、粗利を確保しやすいため、上代が上がっても他店との優位性は崩れない。上代の面から見れば、特に心配はなさそうだ。

 もう1つ、懸念材料として挙げられたことは供給過剰だ。これは前出のアウトドア専門店に限らず、ゴルフ専門店でもカジュアル系SPA店舗でもよく耳にする話である。いわゆる市場在庫が過剰気味の状態なのだが、こうなると値引き合戦に拍車が掛かり、体力のある小売店が有利になってくる。しかしスポーツ市場では、大手小売店も消耗戦であまり儲かっていないという話をよく聞く。一体、何のために商売しているのか、過ぎた価格競争は自分の首を絞めることになるのだが、その傾向が特に最近、堅調になっていると、小売りの現場を歩いていて強く感じる。

 最近、インタビューした某スポーツメーカーの社長も、「市場在庫が多過ぎる」と嘆いておられた。デフレから脱却しつつあるというニュースも散見されるが、小売りの現場ではまだまだ、供給が需要を上回るデフレの傾向が依然として色濃い。

 ただし、私がお会いして聞いた範囲では、低価格志向は根強いものがあるが、消費そのものは回復していると見る小売店は多い。しかし供給過剰のため、顕著な需要の増加が見えにくくなっているようだ。人為的なデフレのようにも見えるが、物が多くて、売価が上がらないという傾向は確かである。

 企業活動を否定する気はさらさらないが、適正な商品量で適正な利益を確保していくことがステークホルダーにもプラスになるのではないかと素朴に思うのである。実際、前述の供給過多を懸念しておられた社長も自社の棚卸資産(=在庫)の適正化を重視しておられたし、そのような方針を掲げるメーカーが増えていると感じる。

 最近、店頭取材でよく聞くコメントに、「商品の売れ行きは決して悪くはないが、良いとも言えない」というものがある。需要はあるが、供給が過剰だという市況を言い表している内容ではないかと、感じている。
 2015/08/28 15:13  この記事のURL  /  コメント(0)


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プロフィール
樋口 尚平(ひぐち しょうへい)
ファッション系業界紙記者として12年間、スポーツ、メンズ、関西の流通現場(特に百貨店、ショッピングセンター)を取材。ある事象について、時系列的に分析・説明することを得意とする。独立し、フリーライターおよびファッションコーディネーターに。
座右の銘は「三方良し」

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