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なぜ殺すのか?



日曜日の鳥追い作業終了。
金曜日の午後にチェックしたときには無かったはずの、
大きな穴が開いていて、近くに糸が一本落ちていた。

鳥が糸を引っ張ってしまったのか、謎・・・・。

この白いネットの畑は、
私が働いているワイナリーが新たに今年管理することになった場所。
(うちのワイナリーは全て黒いネット)
そしてここは鳥や兎がとっても多い、いわばバード・パラダイスのような所。

去年までは、
ネットに入った鳥をなにもわざわざ殺さなくても外に逃がせばいいだけじゃん、と鳥獣愛護精神たっぷりだった私。
何も知らずに思い込みで発言することの好例だ。

今年の私は、
なぜ鳥を殺さなければならないのか、
なぜ生きてネットから出してはならないのか深〜く理解した。

この新たに管理が始まった畑では、
毎朝3人のスタッフが鳥チェックをしている。
この畑は急勾配で、かつ一つのネットがかなり大きい。
私がふだん働いている畑は柱4列で1ネットがほとんどだけれど、
ここは、柱6〜8列で1ネットと倍の大きさ。
そうなると、ネットの中を飛び回る鳥を人間だけで全滅させるのは不可能。
なので、ネットの片側を開けて鳥をネットの外に逃がす方法を取るしかない。

私が働いているほうの畑には、
ヴィンヤード犬もいるし、うちのヒメもいるので、
ネットの中の鳥はほとんど殺して外に出さない。

このネットの中で殺しているか、逃がしているかが、
大きな大きな差を生むことが私にはやっと理解できた。

新しく管理し始めた畑のほうは、
ネットを張って1ヶ月以上経つのに、
毎回どのネットにも大量の鳥が入っている。
キジのような大型の鳥が3羽も侵入していたりする。

つまり、
鳥を殺さずに逃がしているだけの畑は、
逆にどんどん鳥が増えていっているということだ。

生きてネットから出された鳥は、
何度でも同じネットに戻ってくる。
入り口を熟知している彼らはそこから何度でも侵入を繰り返す。
しかも今度は沢山の友達を引き連れてやってくるのだ。
穴という穴を塞いでも、ネットと地面の隙間から這って入ってくる。

この鳥たちの驚異的な能力は、
私に感嘆と共に軽い怒りを感じさせた。
ネットがかぶっていないブドウの木に一粒も実が残らないのを目の当たりにしているので、ネットをかけたからには中の鳥をどうにかしないといけない。

事実1:逃がした鳥が倍々の数になって戻ってきてブドウの実を食べてしまう
事実2:私の給料を生み出しているのはこのブドウたち

この事実にどう対処するか?
長年の経験から「鳥を殺す」という手段を先人ちは取ったのだ。

自分の主義主張と関係なく、
それが現実問題に向き合い対処するということなのだ。

もしもそこに異論があるならば、
ワイナリーで働くのを辞めて、ワインも飲まなければいい。
どうしてもワインを飲みたくて、でも鳥を殺すことにも反対ならば、
鳥を1羽も殺さずにワイン作りをしているワイナリーを探せばいい。

森林伐採反対とか、動物実験反対とか、動物愛護とか、
さまざまな意見がこの世にあるけれど、
思いもよらないところで、自分の生活がその犠牲の上にあることを知った。

だからといって、
世の全ての経済活動の下にある犠牲に目を潰れ、意見を言うなということではない。

ただ、もしも何か自分のイデオロギーを他人に主張するのであれば、
自分が普段なにげなく食べているモノ、飲んでいるモノ、使っているモノが生産される過程に、いかなる犠牲や破壊があるのか、よく知ったうえですべきでは?と思う。

今の私に出来ることは、
とにかく鳥がネットの中に入らないように工夫して犠牲を最小限にすること。
それだけだ。

新しく管理し始めたほうの畑は、
ヒメによる鳥の殲滅と穴を徹底的に縫うという作業を3週間繰り返し、
ついに、この週末はネットの中の鳥が激減した。

ブドウはどんどん甘くなっていく。
収穫が終わるまでは、この作業をひたすら繰り返してブドウを守る。

守りきって糖度が最高に高まったブドウで最高のワインを作るのだ。



 2017/03/12 07:37  この記事のURL  /   / トラックバック(0)


うちの新入りたち



うちのヒヨコたちはとっても大きくなりました。

右の2羽がうちの黒ちゃんが卵から孵したアラウカナ。
左の2羽(烏骨鶏(英名:Silky)とアラウカナ)が去年の12月にやってきたヒナたち。うちで生まれた2羽がオスだった場合の保険に購入した女の子たち。

全員似たような月齢なのでいつも4羽でつるんでいる。
4羽は大人達のいる母屋から離れた別宅で数ヶ月過ごしていたのだけれど、
ポイント・オブ・レイと言って、
初産卵の日が近づいていたので3週間ほど前に、大人達がいる母屋に移した。

その1週間後に事件は起きた。

烏骨鶏のシルキーちゃん(白い子)が、
大人の黒ちゃんに気に入られなかったらしく、
集中的につつかれイジメに遭ってしまった。



頭や頬から血を流しうずくまっているシルキーちゃんを発見。
右目が開けられないし、ひどく打たれたボクサーみたいで、
軽い脳しんとうを起こしているのか意識がもうろうとしていた。
すぐにシルキーちゃんを回収し、
スポイトにて水やりと給餌をし体を温めた。
母屋の中にしきりを作り黒ちゃんたちから見えない場所に隔離した。
シルキーちゃんは約3日間1歩も動かず安静にしていた。
その間仕事を休んで1日3回水やりと給餌をし回復を待った。



歩き回るようになったシルキーちゃんがまたイジメに遭わないように、
大人たちを別宅に移した。それが2週間前。

黒ちゃんとゴルゴルちゃんには申し訳無いけれど、
ヤング・ガール達が母屋に慣れてテリトリー意識を持つことができるまで、別宅で暮らして頂こうと思っている。

シルキーちゃんはすっかり元気になり今では以前のように走り回っている。

ところで、
うちで生まれた性別不明の2羽だけれど、
最近、2羽とも女の子なのでは?と思い始めている。
だとしたら極めてラッキーだ。
卵は全部で6個あったけれど、孵化したのは2羽だけ。
確率的には半分なわけだから、
2羽とも女の子なのは本当にラッキーだと思う
 2017/03/09 15:24  この記事のURL  /   / トラックバック(0)


殺生に慣れてしまうということ



自然の成り行きか、
3回目以降の鳥追いからヒメは鳥を完全に噛み殺すようになった。
ハエや蝉が動かなくなるまで遊ぶのと同じように、
鳥が完全に動かなくなるまで口から離さなくなった。

面倒くさい、という感覚が犬にあるかどうか分からないけれど、
中途半端に口から離すとまた鳥が逃げ出し、
再び追いかけなければならないのと、
他にも鳥が沢山いる場合、一度仕留めた獲物にいつまでも時間をかけていられないので、瞬時に完全に噛み殺してくれるとこちらとしてもありがたいと思うようになった。

ヴィンヤードの外では鳥をこよなく愛する私が、
ひとたびブドウのネットの中に入ると、
ブドウを食い荒らす鳥に「ちっっ」と思うようになってしまった。
ネット内の鳥を完全駆除することに心なしか喜びも感じる。
動物愛護の精神はほぼ起動しなくなった。

これでニュージーランドに来て大きく変わってしまったことがまた増えた。

自分の主義主張と現状が合わなくなり、
環境に合わせて自分自身を変えていくことを順応性と呼ぶのだろうか。

ここで働いていると、
さまざまな主義主張(だいたいがリベラル)を持った人々に会うが、
イデオロギー(思想)で語るのと、
現実問題を受け入れて対応していくのには大きな差がある。

ネットの外に出れば鳥への愛情は溢れ出すが、
ネットの中は別だ。
ネットは人間が引いた境界線。いわば結界だ。
そこに入って作物を食い荒らすものは敵。
敵は即殲滅しなければこちらの被害が広がる。
なんだかそういうモードが自然に起動しているようなのだ。

もちろん鳥に罪はない。
だから鳥がネットに入らないように常に穴を探し縫って塞いでいる。
それでもどこからか入ってくるのだ。

トランプ大統領がメキシコとの国境に壁を作るがごとく、
われわれは鳥に入ってきてほしくないからネットを張る。

より実りの多い場所に集まるのは人も鳥も同じ。
けれどその場所をシェア出来ない場合もある。
どちらも生きる糧を求め争っているのだ。

な〜んてことを考え、いろいろと複雑に感じながら朝の鳥追い業を行っている。
ヒメにはどれもこれも興味と遊びに過ぎない。



お仕事の後は同じくらい遊んであげなければならない
犬も人間も遊びが大切なのだ。
そして犬は人間と走り回るのが一番幸せみたいだ。
お仕事で走り回るのと違って顔が笑っている。




自然と動物からいろいろなことを教わる毎日なのだ。

 2017/03/07 09:11  この記事のURL  /   / トラックバック(0)


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プロフィール
芹澤 絵美(せりざわ えみ)
スタイリスト。静岡県生まれ。文化服装学院流通専門課程卒業。サンプロデュース入社。2000年に独立。東京コレクションをはじめ、様々なショーを手がける。その後、雑誌・広告等、撮影方面にも幅を広げている。
現在はニュージランドで暮らし、スタイリストは休業中。

芹澤 絵美  プロフィール
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