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「シルク」




「海の上のピアニスト」を著した、アレッサンドロ・バリッコのベストセラー小説を、フランソワ・ジラールが忠実に映画化した「シルク」

ジラール監督は、日本のディズニー・シーにも上陸した「シルク・ド・ソレイユ」の演出家である。音楽は坂本龍一氏。


こんな情報無しに本作を見始めました。

絹商人エルヴェの語りで物語は展開していく。
エルヴェはエレーヌを愛し妻とするが、
結婚してすぐに、健康で良質な蚕を求めて日本へと行ってしまう。
当時の日本は外国との貿易が公ではなかった時代。
危険を覚悟でエルヴェはシベリア大陸を横断し日本へと辿り着く。

外国から見た日本が再現される。

そして、役所広司演じる、ハラ・ジュウベエの妻にエルヴェは心を奪われる。

最初仕事のためであった日本への旅が、
3度目は彼女に会いたいが為に自ら日本へと赴くことになる。
しかし、日本は混乱の時期に突入しており、
エルヴェはハラの妻に会うことが叶わなかった。

フランスでただ彼の帰りを待つエレーヌ。
2人の間に子供は授からず、
夫を待つ彼女の日々は、ただただ過ぎ去っていくだけだった。

3度目の訪日から帰った夫エルヴェは全てを消耗しきっていた。
長すぎた旅で蚕も全て死んでいた。

ここから静かに夫婦の再生が始まる。
エレーヌの希望だった、ユリの庭園造りにエルヴェは着手する。

やがて日本語で書かれた長い手紙がくる。
そこには離ればなれではあるが、確かに2人の愛は遂げられたという、
熱い想いが綴られていた。

数年間の日々が過ぎ、妻のエレーヌが亡くなり、
残されたエルヴェは、ある真実に気が付く。
そこには、エレーヌの秘められた愛があった。


映画は、最初から最後まで一定の静かなリズムが保たれている。
それは、フランスでは美しい花々、日本では静かに降る雪、
出演者達のセリフの調子など、隅々まで計算されている。

私が後から感嘆したのは、
中谷美紀演じるマダム・ブランシェが、
日本語の恋文をエルヴェに英訳して読み上げてあげるシーン。

ここが物語の最も大切な部分であるから、
中谷美紀の英語による演技力いかんで作品の完成度が左右される。

彼女の恋文を読み上げる声の調子がとても穏やかで、
私はそのときある人物の姿がふとよぎった。
それは、エルヴェの妻であるエレーヌだ。
エレーヌが言葉を放つ時の空気感を、手紙を読むマダム・ブランシェはまとっていた。

そのとき、手紙はハラの妻から送られてきたものであると、
エルヴェは思っているのだから、
最初はハラの妻の姿を思い浮かべながら聞いていた。

が、ラスト、その手紙に隠された真実を知ったときに、
中谷美紀の演技力の高さに感嘆した。
手紙をを読み上げている時にエレーヌの姿がよぎったのも、それもそのはず。

ここで一気に、作品全体への切なさがこみ上げ、
ジーンとした余韻を残した。

日記を読むように淡々と綴られていく作品のなかで、
もう一つ感じたことがあった。

3度目の訪日でエルヴェをハラ達がいるところに案内した少年に、
エルヴェが望遠鏡をあげるシーン。
いわゆる舶来物で、少年にとってはこの上ない宝物になったはずだ。

現代では、外国製品が何でも手に入る日本であるから、
この手の贈り物の価値観が薄れているような気がする。

外国の方に日本らしい一品を何か差し上げたいと思うときが多々ある。
前述のような理由で、そんな品を探すことをどこかで諦めていた。

でも、このシーンを見ていて、職人の想いと贈りての想いが詰まった品であれば、今でも十分に人の心に響く贈り物が出来る気がする、とふと思った。

私も今度パリに行くときには、
日本の心が詰まった品をきちんと探して、
お土産に持っていこう、と。


見終わってみれば、心にすーっと染みいる素敵な作品だった。

日本の女性のイメージである控えめなところを、
キーラ・ナイトレイ演じるエレーヌに全てもっていかれました



「シルク」
原題「SILK」
2007年・日本、カナダ、イタリア
110分
フランソワ・ジラール監督作
マイケル・ピット、キーラ・ナイトレイ、役所宏司、中谷美紀、芦名星 出演
 2008/12/29 10:45  この記事のURL  /   / トラックバック(0)


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プロフィール
芹澤 絵美(せりざわ えみ)
スタイリスト。静岡県生まれ。文化服装学院流通専門課程卒業。サンプロデュース入社。2000年に独立。東京コレクションをはじめ、様々なショーを手がける。その後、雑誌・広告等、撮影方面にも幅を広げている。
現在はニュージランドで暮らし、スタイリストは休業中。

芹澤 絵美  プロフィール
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