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「コマンダンテ」



この連休は、かねてから決めていたとおり、
映画三昧で過ごしました。

その中で、映画というよりはドキュメンタリーである、
「コマンダンテ」を取り上げたいと思います。

キューバの指導者フィデル・カストロを題材とした作品。

チェ・ゲバラという人を通じてキューバという国に興味を持ちました。

社会主義に関しては、私にはいろいろと思うこともあり、
このブログでそれを書くのは難しいですが、
批判を恐れずに荒く書けば、マルクスの「資本論」に端を発するマルクス・レーニン主義には私自身は正直懐疑的になっていました。

というよりも、もしかして「資本論」そのものに対してよりも、
それについてお酒かなんか飲みながらそれを論じる人々に懐疑的なのかもしれない。

どちらか上手く説明できないけれど、
それは根本的に、「生きる」ことへの人間が持つ執着心を忘れて論じているように思われ、故に理論が破綻しているように思えたからです。
そしてかつあれは食べることに苦労していない者の発想である、とも感じるようになっていました。
かくいう私も真の苦労を知らずに好き勝手に書いている1人ではあります。

例えばアフリカの食うや食わずの人々には通用しない理論であり、
最低限の生活、雨をしのぐ屋根があり、その日食べていけるわずかなパンを1つでも持ち得る人々より上の生活をする人々だけに浸透しうる、高度な思想だと思いました。
つまり教育と労働が前提になければ、持ち得ない思想だと感じたのです。

1つのパンを前に、
それをめぐる餓死寸前の人々には「平等」や「愛」などは存在しないのでは?
それこそが、「生き残る」という本能を備えた人間の性だと思い、
その欲望を抑えなければ成立しないのが、社会主義や共産主義だと思ったのです。
その欲望が度を超せば、他人よりも少しでも良い生活をしたいという欲求となり、
資本主義を生みます。
この欲求は簡単に生まれ、「生き残る」という根源に直結しているので、
思想ではなかなか抑えがたいのではないか、と私は思いました。
だからこそ、社会主義国家はことごとく崩壊していくのだとさえ感じました。

でも、少なからずマルクス・レーニン主義には理想郷があり、
「プロレタリア独裁」という考えに心を揺さぶられた革命家も沢山いたからこそ、
各国で運動が起きたのだと思う。

そして、ただ思想家や世間の人々が言ったことに賛同するのではなく、
自分自身が何をすべきかを分かっている、
それがチェ・ゲバラその人である、と
三好徹著「チェ・ゲバラ伝」を読んだ時に、思いました。
彼は、キューバを共産主義だとは思っていない、と言い残していました。

今回観た「コマンダンテ」は、
チェ・ゲバラではなく、もちろん司令官であるフィデル・カストロと、
オリヴァー・ストーン監督との30時間に及んだインタビューのまとめである。

彼の言葉は、映像はもちろん書物でも読んだことが無い私だったので、
とても興味を持ちました。
でもどこかでチェ・ゲバラと闘った同志なので、
アメリカがいうただの独裁者ではないことは感じていました。

ストーン監督の質問に答えていく司令官の言葉は、
ほぼ私の予想通りで、彼が目指しているのは、
使い古された社会主義ではなく、新しい世界秩序なのだと確認出来ました。

彼自身は、
「私の考えは、誰かからの借り物ではない」と明言している。

国全体にその思想を浸透させていくのは本当に大変だと思う。
それには、司令官1人の人生に与えられた時間はあまりに短い。

平等や同志という名の監視国家ではなく、
まだどの経済大国も実践していない、
今後の地球の未来に合った考えを実践出来る国、
過去に発表されたどの思想にもはめ込まれない新しい考え、
それを模索しているように感じました。

この映画を観る前に、
マイケル・ムーア監督作「sicko」と、
wowowのオリジナル番組「クエスト探求者達」を観ました。

「sicko」はアメリカの医療保険の実情を描いた作品で、
5千万人の医療保険に加入出来ない国民と、
2億5千万人の、保険加入者でありながら治療の前に保険請求を却下されている国民の実情が悲惨に描かれています。
高額の医療費のために、切断された数本の指のうち接合手術を受ける指を、
どれか一本だけ選択しなければならない人や、
保険が適用されないと知られた時点で、
強制退院させられ、路上に捨てられていく人々。
これがアメリカ?!と感じずにはいられない内容。

そしてそれとは正反対に、医療費を気にせずに全国民が安心して治療を受けられる「国民皆保険」を実施している、カナダ、イギリス、フランス、キューバへの取材も入っているのです。

アメリカの領土内で唯一医療費が無料の場所、
それはグアンタナモ基地内にある、国際的テロリストを収容する刑務所。
それへのマイケル・ムーア的風刺として、
保険制度により治療出来ないで困っている人々を船に乗せ、
グアンタナモ沿岸まで行き、
「テロリストと同じ診察と治療をアメリカ国民にもしてください!」と叫ぶ。
もちろん無視され、あげく警告を受けます。

そして、マイケル・ムーア達はそのままキューバへと行き、
キューバで、無料でありながら十分な治療を全員が受けるという顛末でした。

キューバでは、学費と医療費が無料です。
国が大変な危機を迎えている時にこそ、
こういう制度を作ろうという考えが生まれるのは素晴らしいことだと思う。
イギリスに「国民皆保険」が発足されたのも、
第2次世界大戦直後の国が一番貧しいとき。

「コマンダンテ」を観ていて、司令官が言った言葉で私にとって印象的だったのは、
「名声や人気などは重要ではない」という言葉。

この言葉は、直前に観た番組「クエスト探求者達」でも出てきて、
印象に残っている。
日本人にして門外不出のベネチアン・グラスの技術を継承した、
アーティスト土田康彦氏が、
かつて働いていた伝説のレストランHARRY'S BARでの修行から学んだこと。
それはとてもシンプルなことで、
人生のうちで何が大切で何が大切でないか。
人々が大切だと思っていることは実はそれほど大切ではないということ。
そのうちの1つが「地位や名声」は取るに足らないことだ、という事。

「だまって、ただ自分がやるべきことをやる」それが出来るのが真の男だ。

2つのトランクを持って、店の裏口に立っている土田氏を見たときに、
「この男は自分が何をすべきかを体の芯で分かっている」
とHARRY'S BARのオーナーは感じたのだそう。
そして彼を雇うのを決めた。

「コマンダンテ」の長いインタビューを観ていると、
司令官も当然のことながら、
名声や地位を得るために、発言したり行動したりしているのではなく、
「自分自身が何をすべきか」ということに突き動かされているというのを感じた。
それが英雄だから、という邪道な考えももちろんないだろう。
もしかしたら、「他人が自分をどう見ているかなど気にしたことがない」という、そんな彼の姿が人々に彼を独裁的に見せているのかもしれない。

ムーアの作品も、ストーンの本作も、「メディア」という枠の中なので、
もちろんすべてを鵜呑みには出来ない部分があることは分かっている。

「革命家」というものにいだくヒロイックな幻想を払拭させようとする、
ストーン監督の鋭い質問も多々あった。
それに答えるフィデル・カストロの姿は1人の人間らしく主観が少し挟まれていた。

鵜呑みには出来ない。

でも、人を動かす力の源がなんであるかは伝わった。
それは人々が指導者に求めていることであり、
実際にその芯をその人物の中に認めた時に、人はついていくのだと思う。


映画の最後に、ベンジャミン・フランクリンの言葉が引用された。
「一時の安全のために自由を放棄する者は、そのどちらも得ることが出来ない」

革命の基本かもしれない。

「人生とは思想と価値観を学ぶこと」と司令官は言っていたが、
それには少し賛同する。
自分自身の価値観を時間を無駄にせず獲得していくこと。


はぁー長くなってしまった

私的に思うこと。
女の私からすれば、エルネスト・ゲバラもフィデル・カストロも、
まったくもって家庭的ではないけれど、
指導者とはそんなものかも。
これも価値観の1つ。

以前、ブログにも書いたけれど、キューバの有機農法に興味があるし、
オバマ政権のうちに一度はキューバに行ってみたいな〜


「コマンダンテ」
原題「COMANDANTE」
2003年アメリカ・スペイン
オリヴァー・ストーン監督作品





*下記アドレスにて
オリンパスのデジタルカメラ「μ1050SW」の取材記事掲載中。
http://www.veritacafe.com/item/081029/vol01.html
 2008/11/24 10:40  この記事のURL  /   / トラックバック(0)


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プロフィール
芹澤 絵美(せりざわ えみ)
スタイリスト。静岡県生まれ。文化服装学院流通専門課程卒業。サンプロデュース入社。2000年に独立。東京コレクションをはじめ、様々なショーを手がける。その後、雑誌・広告等、撮影方面にも幅を広げている。
現在はニュージランドで暮らし、スタイリストは休業中。

芹澤 絵美  プロフィール
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