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映画音楽を聴きながらデッキを塗る


デッキのオイルステイン塗りとは、単純作業である。
ひたすら同じ動作を繰り返し、オイルを乾いた木に塗り込めていく。
視界は、板の表面だけでなく、目には見えない板の内部だったり、
目地と目地の隙間へと、どんどんとミニマルになっていく。

そして、板の間に住む小さな生き物とのコミュニケーションでもある。
人間の私にもキツイ オイルステインの匂いは、
小さな生き物にとっては逃げ出すほど強烈なものだろう。
とつぜん飛び出してくる、クモやガーデンコックローチなどに、
いちいち悲鳴をあげながらも、その生き物のディティールの違いなどに目を向けてしまう私は、怯えているのか興味があるのかもはや自分でも不明である。

明らかなことはただひとつ。
なにがどうだろうとオイルステインを塗る手は止まらない。
この単純な動作にはやがて哲学が生まれる。
作法のようなものが生まれるのだ。
板に対して、道具に対して、自然に対して。

この作業の間、私が聞いていた音楽は映画のサウンドトラック。
このサウンドトラックというものの力は不思議で、
デッキ塗りという作業ごと、私をそれぞれの映画世界に連れ去るのだ。

例えば、叙情的な映画の曲ならば、
誰の目にもとまらずただひたすら孤独に地面と向き合う人。
環境音楽ならば、厳しい大自然の中、周囲の木々と対話しながらコツコツと自然との境界線を創っていく人。
「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」なんかは、
森に住む魔女にとりつかれ、何百年もただひたすらデッキを塗り続ける生きた死人の気分。
フランシス・レイの「男と女」なんかは、
愛する人が去ったあと、彼との思い出を塗り替えていくヒロイン。
「ミッション・インポッシブル」は、
デッキ塗りの作業人に扮して、誰かをスパイしている、なんていう具合。

もうそれは多種多様なワンダーランドに運んでくれる。
このトリップ具合はひじょうにデッキ塗りを楽しいものにしてくれた。

そして各映画の登場人物になって作業はどんどん進み、
思っていたよりも早く仕上がった我が家のデッキ。

素人塗りながら美しい〜、とまぁ満足である。
フェンスのほうはまだ2度塗りが残っているので、
また映画音楽でトリップしたいと思う。

 2014/05/20 04:07  この記事のURL  /   / トラックバック(0)


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プロフィール
芹澤 絵美(せりざわ えみ)
スタイリスト。静岡県生まれ。文化服装学院流通専門課程卒業。サンプロデュース入社。2000年に独立。東京コレクションをはじめ、様々なショーを手がける。その後、雑誌・広告等、撮影方面にも幅を広げている。
現在はニュージランドで暮らし、スタイリストは休業中。

芹澤 絵美  プロフィール
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