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「レイチェルの結婚」


ひさびさの映画のブログアップ。
いろいろ感動的な映画を見てきて、
何回かブログに上げようかなぁと思ったけれど至らなかった。

今回アップする映画は「レイチェルの結婚」

監督は「羊たちの沈黙」のジョナサン・デミ。
私は学生時代「羊たちの沈黙」には大いに影響を受けた。
FBIとかプロファイルとかを題材にした作品の走りだと思う。

そして、そのジョナサン・デミが監督しただけのことはあり、
問題のある妹が姉の結婚式に出席するというだけの話に、
冒頭から感情直結で大きく揺さぶられた。

まず、主役のキムを、アン・ハサウェイが演じているのだけれど、
初めて彼女の演技が素晴らしいと思った。
「プラダを着た悪魔」なんかよりずっと似合っている。
彼女からこの演技を引き出した監督はほんとにすごいと思う。

とにかく、彼女が登場した最初から、
胸の奥がザワザワとすぐにし始めた。
情緒不安定な者が放つ不穏な空気。
イライラ、ピリピリが、大げさな演技をしなくても、
軽い笑顔一つからもビシビシと伝わってくる。

言ってしまえば、
私からするとキムはほんとにただの面倒くさい人間の一人。
自分中心で、自分の抱えている問題が世界の中心、
誰も彼もが自分を愛してくれないとわめく。
姉レイチェルのお祝いの席なのに自分がつらい状況にあることしか話さない。

薬物依存症でティーンの頃から補導と施設の入退院を繰り返し、
17歳の時に一番下の弟を連れてドライブに行き、
事故を起こし弟を死なせている。
そんなキムを両親は出来る限り愛したけれど、
振り回され、離婚し、それぞれ再婚している。
姉は両親に一番愛してもらいたいときに、
両親は妹にかかりっきりでいつも寂しい思いをしていた。
だから、心のどこかで事故で一緒に死んでしまえば良かったのに、
と思ってしまったこともあった。
それでも、すべてを抑えてみなキムを家族として受け入れる。
信頼と愛情があるからだ。
さらに言えば、キムだって本当は分かっている、
と思いたいからだ。
愛情の発露が美しいものだけではない、複雑なものである側面を描いている。

が、そういう腫れ物に触れる扱いにまた耐えきれないキム。
彼女の言動はみんなの思いやりと裏腹で、
それが余計に事態をややこしくする。
このあたりも面倒くさい。

観賞途中で、弱く甘えの多いキムに、
ほんとうにイライラさせられた。
別に猟奇的な演出でもなんでもないし、
極めて普通の人々の日常なのに、
ここまで感情に訴えかけてくるのはジョナサン・デミならでは、だと思った。

思うに、この効果のポイントは2つ。
まずは、結婚式直前であること。
新婦である姉には誰もが気を遣わせまいとするし、
MOH(メイド・オブ・オナー)なんかは特にそこに一番気を遣う。
ドタバタしていてただでさえピリピリする。

そして、
撮影自体も、音楽の同時録音、という手法を監督が取っていたこと。
この2点の相乗効果が大きい。

新郎が音楽関係という設定で、
友人たちが式やパーティの音楽を担当しているので、
始終音楽がかかっている。
それが同時録音なのだから、現場の雰囲気も通常の撮影とは違う。
台詞も役者本人が聞き取りづらく苛立つという状況を作り出していた。

現に主役のアン・ハサウェイは、この同時録音に特に苛立っていて、
それがアドリブの「音楽を消して!!」という台詞につながった。
これはその場面にピタリとあった精神状態だったと思う。

この手の脚本は多数ある。
問題のある人間を支える周囲の人間、みたいな。

けれど、善意だけじゃない本音、みたいなのがあるのが人間だ。
そこのところをきっちり描いているのが素晴らしい。
そこはみんな大人になって隠すところだからだ。
だから観ているほうにも苛立ちを与える。

この映画を観て最後に学ぶことは、
「ありがとう」と「ごめんなさい」は、
素直に言えるようにしておこう、ということだ。
そして、必要なときには「愛している」という思いを伝えること。

家族でも言葉に出さないと伝わりきらないことはあるのだ。
この映画では伝えられないまま生きていく人間が主役だ。
もしくは、伝わったか伝わっていないのか判断が出来ない人間。

そんなことで不安定になるなら、
小さな事から感謝と謝罪の気持ちを口に出すようにしたほうがいい。
簡単なことだし、それが素直に生きることだと思う。

もう一つ、この映画の素晴らしいところは、
結婚式のスタイルひとつとっても国や宗教や人種を超えていること。
これは「バベル」のような言語を変える、というスタイルを取らなくても可能だ。
あらゆる人間が出演していて、
この中に必ず、「この人が一番自分に近いと思う」という人物がいると思う。
ちなみに私は姉のレイチェルだ


「レイチェルの結婚」
2008年アメリカ
113分
監督:ジョンサン・デミ
出演:アン・ハサウェイ、ローズマリー・デウィット、ビル・アーウィン
 2010/06/29 12:15  この記事のURL  /   / トラックバック(0)


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プロフィール
芹澤 絵美(せりざわ えみ)
スタイリスト。静岡県生まれ。文化服装学院流通専門課程卒業。サンプロデュース入社。2000年に独立。東京コレクションをはじめ、様々なショーを手がける。その後、雑誌・広告等、撮影方面にも幅を広げている。
現在はニュージランドで暮らし、スタイリストは休業中。

芹澤 絵美  プロフィール
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