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メーシーズに売却のうわさ・2日目
昨日のメーシーズ売却の噂に関するニューヨークポスト紙の報道を受けて、今朝ウォールストリートジャーナルが「ハドソンベイがメーシーズに打診している」ことを報道。一気にメジャーな媒体が本ニュースに注目し報道し始めた。

メーシーズはご存知の通り、この1年間に100店以上の閉鎖・1万人以上の解雇というリストラに着手しており、売上低下に歯止めがかからない中、メイ百貨店買収時から13年間君臨したランドグレンCEOの引退を目前に経営側と株主の間で将来についての意見が分かれている。

しかしハドソンベイとて決して楽な経営ではない。同社はアメリカ市場ではサックスフィフスアベニューとロード&テイラーを運営しているが、消費者のインターネット購入の拡大に伴い、来店客数の低下・販促の増加に悩まされている。

株価を見ると、メーシーズは2015年7月ピーク時の72ドル31セントから今回の報道直前には29ドル11セントにまで下がっていたが、ハドソンベイもピークの28ドル67セントから9ドル50セントにまで落ちていた。(両社とも報道の後、今朝午前11時30分現在で、それぞれ33ドル22セント、10ドル42セントに回復している。)ウォールストリートジャーナルの試算によるとハドソンベイの市場価額は18億ドル、メーシーズは98億ドル。もし買収が成立すればハドソンベイは市場価額110億ドル以上の企業となる。

今朝のNBC局ブレーキングニュースでは「今回の報道には、アメリカ小売業界のオーバーストア現象という厳しい環境が反映されている」として、今回のニュースの行方に注目すると同時に、トランプ新政権下で約束されている税制改革が実施されたら小売業界も一息つけるのか、はてまた多くの企業が抱える負債への控除枠が小さくなり、経営は悪化するのか、などの疑問を提示した。

と言う訳で、昨日の「うわさ」は「事実」であったらしい。CEOが交代するメーシーズは将来のサバイバルに向けて、現在取り組んでいるリストラ以上の何かしらの手を打たなければならない状況に面しているようだ。しかし、小売業界を変えている大きな潮流はオンライン化なのだから、百貨店チェーン同士の買収合併=明るい将来だろうか?もっとも、ハドソンベイがメーシーズが投資してきたオンラインビジネスとオムニチャネルプラットフォームの方に目を向けているのなら、別な話ではある。

(写真)昨年9月にオープンしたワールドトレードセンター地区にあるサックスフィフスアベニュー、ブルックフィールド店の化粧品売り場。ブランドを自在に試しやすい新フォーマットの売場だ。
 2017/02/04 01:29  この記事のURL  / 

メーシーズに売却のうわさ
NYポストのすっぱ抜き記事なのであてにはならない部分があるが、まもなく引退するランドグレンCEOが最近、好意的企業買収のオファーに対して扉を開き始めている、という噂が今朝報道された。これでメーシーズの株価はNY株式市場取引開始前に5%上昇し、テレビのNBC局や地元ニューヨーク1局が朝のニュースに取り上げた。

数年前から、ランドグレン氏は34丁目本店を含む同社の不動産売却を要求するアクティビスト株主ジェフリー・スミス氏(スターボード・バリュー社)と対立関係にある。スターボードの試算によると同社全体の不動産価値は210億ドル、これに対してメーシーズ全社の市場価額は90億ドルしかない。メーシーズの業績不振により株価も猊下している中、投資家たちから不動産売却のプレッシャーがかかるのも自然ななりゆきではある。ちなみにメーシーズ880店舗のうち約半分が自社物件だ。

昨年メーシーズはフォーコーナーズ・プロパティ・トラスト社という不動産投資会社のCEOウィリアム・レネハン氏を役員に迎え入れ、また年末にはブルックフィールド・アセット・マネジメント社を雇い、不採算店舗50店舗売却交渉を行った。

しかしランドグレン氏は引退にあたり、彼自身のレガシーおよびメーシーズのレガシーを守るため、「(スターボード社に資産をばら売りされるより)むしろメーシーズ百貨店として他社に売却した方がよい」というコメントをした、という彼に近い筋からの情報が今回の報道につながった。

なお、ここから先は益々根拠はないが、ニューヨークポスト紙は売却先はハドソン・ベイではないかとのことで同社に確認を取ったがノーコメントとのこと。金融系メディア、ザ・ストリート社は、経営内容が良いオフプライス百貨店チェーン、ロスストアであればメーシーズ社が拡大したがっているアウトレット事業を即座に拡大できるとして独自の分析を報道している。

ランドグレン氏は引退後も役員会委員長として残るため、いきなり不動産の大放出や企業売却話が現実になるとは考えにくいが、このようなうわさが出るということは、それらの選択肢も経営側が検討している、ということだろう。

私個人の思いとしてはメーシーズにはもちろん生き残って欲しい。ただ、全米800店舗もメーシーズになる必要はなかった。例えば1852年創業のシカゴの貴婦人、マーシャル・フィールズは2006年メーシーズ買収後地元から大きな反対運動があったにも関わらず、無理やりメーシーズに名前を変えさせられた歴史がある。その後反対住民は毎年メーシーズの年次株主総会に出席し、ボイコットや反対を表明し続けた。10年たった現在でも反対運動の拠点のウェブサイトには「シカゴ人の79%はフィールズのファンだ」というデータと共にデモ運動の写真が掲載されている。

直近ではメーシーズに買収されたポートランドの名店マイヤー&フランクが今年閉店の憂き目にあっている。

百貨店は長い歴史を持つ業態で、それぞれの出身の土地の文化も反映している。それを十把ひとからげにメーシーズにしてしまった段階で、間違っていたのではないかと思う。ランドグレン氏の引退も、彼のリーダーシップの限界が見えているための計らいだったかもしれない。次のガネットCEOには、ぜひメーシーズを本当の意味で再生させてもらいたいものだ。

(写真)筆者がメーシーズ本店店内にて展示物を撮影。1938年のメーシーズ感謝祭パレードのバルーン
 2017/02/03 01:45  この記事のURL  / 

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プロフィール

平山幸江(ひらやま・さちえ)

アメリカ小売業コンサルタント

1993年よりニューヨークを拠点に活動。Jクルー・ジャパン(伊藤忠プロミネントUSA)、フェリシモ・ニューヨーク、イオンUSA調査ディレクターを経て2010年に独立。

アメリカ市場でのファッション、小売事業展開の実務経験に基づいた市場調査分析、戦略企画が専門。「販売革新」「ファッション販売」他執筆。米国小売最新情報に関する講演。慶応大学及びファッション工科大学卒業。


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