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オンライン下着の「ライヴリィ」が狙うアスレジャー市場
アメリカのファッション業界では各商品カテゴリ内でニッチ市場を狙って成功したオンライン専業スタートアップ企業が急増している。眼鏡のワービー・パーカーに始まり、カジュアル衣料品のボノボス、ベーシックなハイクオリティ衣料品のエバーレーン、レンタル衣料品のレント・ザ・ランウェイなど。彼らが短期間で急成長したのは、もちろん事業コンセプトや商品企画、マーケティングが優れていたことがあるが、何よりも重要なのは、開業前から積極的・戦略的な資金調達計画を実行したことだ。

女性の下着専門オンラインリテーラー「ライヴリィ」は今年4月に開業。そして今月めでたく400万ドル(約4億円)の資金調達に成功した。まずは最初のハードルをクリア、と言ったところだろう。

同社はヴィクトリアズ・シークレット通販部門を始め、ファッション業界でキャリアを築いたミッシェル・コルデイロCEOが創業した。彼女は、下着メーカーが未だに男性に支配され、女性による女性のための製品が少ない点に着目し、もっと女性が自ら定義するセクシーさ、健康的で快適な下着を手ごろな価格で提供することを目標とした。

同社のサイトを見ると、「アスレジャー時代に必須の下着、レジュレー(Leisurée)をあなたに」と書かれてある。デザインを見れば一目瞭然。シンプルで女性の目から見て清潔感や遊び心があり、何より、着心地が楽そうだ。アスレジャーファッションの下に着用するには確かにぴったりの雰囲気だ。ヨガウェアも実際にスポーツをする時にはスポーツブラがあるからよいが、そうでない時にはレースやリボンは変だよね、と密かに思っていたので、女性なら誰もが感じていたのかもしれない。

商品構成はブラ、パンティ、ボディスーツで、ブラは@デザインと快適性をあわせもつブラレット、ATシャツ向けのTシャツブラ、Bスタイル+快適性+機能性のノーワイヤー(ワイヤレス)、Cプッシュアップタイプではない女の子(セクシー過ぎない)にも向くプッシュアップがある。

価格政策も非常にわかりやすく、ブラはいずれも35ドル。タイプや色を問わず2点で55ドル、3点で75ドルと安くなる。パンティは10ドルで3点で25ドルとなる。40ドル以上で無料配送となるので、ブラを2点もしくはブラ1点とパンティ3点あたりから始めるのだろう。また、ポイント制ロイヤリティプログラムもある。

ヴィクトリアズ・シークレットは従来のセクシー系に加えて、「ヴィクトリア・スポート」でスポーツブラを、ティーンズ向けブランド「ピンク」でライヴリィのようなすっきり系のデザインを展開しているが、ライヴリィはピンクより大人の女性をターゲットにし、どこにでもいそうなリアルなモデルをフィットモデルに採用している。次のハードルまで、どの位の速さで到達するのか楽しみだ。

ところで余談になるが、これがヒットするのなら、ユニクロのブラも同じレジュレー市場で大きなパイの一切れをいただけるのではないだろうか。
www.wearlively.com


 2016/10/31 06:52  この記事のURL  / 

アスレジャーの拡大:ついにレギンスがジーンズを超える
今月12日に発表されたオンライン調査会社、スライスインテリジェンス社が行ったジーンズとレギンスのオンライン販売動向調査によると、とうとうオンライン販売点数でレギンスがジーンズを抜いたそうだ。下のグラフ1は同社が2014年1月1日から2年半の間に340,620件のオンライン購入を調べた結果だ。グラフによると直近の9月ではレギンスの販売点数シェアは約54%に対し、ジーンズは50%。グラフを見れば一目瞭然に入れ替わりの様子が見て取れる。

ちなみに販売額で言うとまだジーンズの方が上回っているが、ジーンズの平均購入額が62ドルなのに対して、レギンスは約半分だからだ。しかし、販売額でも売上シェアをひっくり返す日はそう遠くもないだろう。単価が安いのでまとめ買いする比率も高いだろうし、レギンスはジーンズ以上にフィット感や丸見えになる体形がいかに美しく見えるかが重要なので、気に入ったブランドなら色違いで数本買うという状況が見える。また、筆者の経験では、履き古すことで別の価値が生まれるジーンズと異なり、レギンスは消耗品だ。

さて、同調査でもう1つ面白いのが、各アイテムをどこで購入しているかを示すグラフ2だ。ジーンズはノードストローム、オールドネイビー、アマゾンがトップ。レギンスではアマゾン、ノードストローム、ヴィクトリアズ・シークレットだ。さすがオムニチャネルの優等生、ノードストロームが強い。が、ファッションに力を入れているアマゾンがしっかり結果を出している点もすごい。レギンスでアマゾンが1位なのは、@単価が安いのでアマゾン向き、Aアスレジャーファッションを好むライフスタイルの人がアマゾンでのショッピング好きかもしれない、という推測ができる。確かにフィットネスやヨガを熱心にするライフスタイルだと自然とショッピングモール等で買い物をする時間は短くならざるを得ないかもしれない。

私がさらに注目したのは、ジーンズ購入において、エクスプレスやリーヴァイスのような定番的なジーンズ購入先ブランドを抜いてノードストローム社のフラッシュセールサイト、オートルックが3.1%のシェアを獲得していることだ。プレミアムジーンズを安く購入するサイト、ということだろう。取りこぼしなくじわじわと顧客を獲得しているノードストローム社のオムニチャネル戦略の強さを改めて感じる。

オムニチャネル戦略という視点からは、コールズ百貨店、ギャップ、アメリカン・イーグルあたりが確かに生活実感としても納得する結果だ。実はメーシーズは一般で報道されているほどオムニチャネル戦略に長けている感じがしていない。幾重にも重なる複雑なセール、ごちゃごちゃとしたサイトのページ。同社のフェイスブックページを見ると、しょっちゅうオンライン顧客から「箱がつぶれて中身が汚れて届いた」とか苦情がタイムラインに書き込まれていて、フェイスブック担当者が謝っているのが丸見えだ。メーシーズのオンライン売上高は順調に伸びているので、恐らく靴やカバンのようなオンラインで売りやすい商品で稼いでいるのだろうが、こういう衣料品の定番アイテムで足元の弱さが見えるようにも思える。

(出所)スライス・インテリッジェンス 2016年調査
グラフ1:2014年1月1日から2016年9月30日まで340,620件のオーダーからの結果


グラフ2:2016年10月1日から2016年9月30日まで236,059件のオーダーからの結果
 2016/10/30 06:49  この記事のURL  / 

アディダス vs アンダーアーマー
アンダーアーマーの第3四半期業績が発表された。第2四半期時点で2年間守った2位の座をアディダス奪い返された。まだアディダスの業績が発表されていないが、成長率が落ちているのが気になる。

アディダスは全社売上規模の割にはアメリカ市場が弱く、同社がヨーロッパやアジアに目が向いている間に、新興勢力のアンダーアーマーが売上規模を拡大し、市場シェアを拡大してきた。しかし2014年6月に北米事業部トップに任命されたマーク・キング氏は、北米市場特性によりフォーカスした戦略を採用。スポーツ選手だけでなく、ミュージシャンのカニエ・ウェスト、音楽プロデューサーのファレル・ウィリアムスとコラボ・スニーカーを販売し、アメリカ人の好みのド派手で話題性のある商品開発を行う一方で、クラシックなルックのスタン・スミスのバリエーションを増やしたり、NMDモデルを8月に3回、9月に6回アップデートする等、商品鮮度を向上した。一方でモデルごとの在庫量を減らすことで限定性を高め、定価販売を増やしたことが成功の理由と報道されている。

おもしろいのは、中古市場でもアディダスが力を発揮していることだ。10月27日付のHighsnobiety.comによると、アディダスの頻繁なデザインアップデートと小在庫政策の影響で中古市場に出回る数量も減っており、プレミアム価格がどんどん上昇しているという。StockX社の調べでは同社の今年第3四半期中の売上で、「最も高い価格で販売された10点の靴」ランキングを見ると、トップ10にアディダス社から7点ランク入りし、平均で希望小売販売価格の280%で販売されたそうだが、ナイキ社からはエアジョーダンIVオブシディアンしかランク入りせず、価格は小売価格の39%だったという。

アンダーアーマーだが、規模が大きくなったことで自然と厳しい価格競争にもさらされ、また最近、最高商品責任者(CMO)と最高デジタル責任者(CDO)が同社を去る等経営の曲がり角に来ている。今回の業績を見て、ジェフリーズ社やコーウェン社の証券アナリストたちはアンダーアーマーは今後売上減少のリスクにさらされている、と懸念を示している。一方で、同社は直営のオンラインストア販売に力を入れており、卸売販売構成比の高い上位2社とは異なる、チェーンストアに頼らないチャネル戦略で力を見せていくかもしれない。

さて、1位のナイキと2位のアディダスの間には5倍もの売上高の差が存在する。NPD社アナリストのマット・パウェル氏によると、ナイキは6−8月の3か月間に、1秒間に25足販売ししたそうだ。当期利益もアディダスの2倍。アディダス社のキング氏は順位逆転に関する取材に対して「今は順位は問題ではない」とコメントしている。

(出所)図表:各社業績報告書より、グラフ:highsnobiety.com, StockXより

 2016/10/29 07:12  この記事のURL  / 

注目のオンライン下着ブランド、ミーアンディーズ(MeUndies)
2011年に創業したオンライン下着(パンツ)販売のミーアンディーズ。とにかく履き心地が良い下着が欲しい、という目的のために開業したオンラインストアがセレブの間でも評判になり、アメリカのファッション・小売業界で注目され始めている。

同ブランドは@快適な下着(パンツ)、A生産過程や販売方法がトランスペアレント(よくわかる)り、ダイレクトに消費者に商品を届ける、Bショッピングの中でももっとつまらない買い物である下着購入を、わくわく楽しくする、ことを目的にジョナサン・ショクリアンが立ち上げた。同社は素材にこだわり、ブナ材を原料とした「マイクロモダル」(登録商標)を使用している。この糸加工からこだわり、生産プロセスも環境に配慮し、身体にも良い方法を採用している。
開業以来300万点以上の下着を販売、そのうち3分の1は過去1年間の販売実績だ。今年1,040万ドルの投資を受け、現在従業員60人、今年度中に黒字転換化を目指し、来年度は400-500万点の下着を販売する計画だ。

商品は単品販売(1点14-16ドル)、まとめ買い(10個入り120-160ドル、1年分365個入り4,000ドル)、もしくは定期購読(毎月14ドルで1点ずつ自動的に送られてくる)の3つの購入方法があり、現在定期購読者数は5万人だが、2017年度中に100万人を目指している。

同社の成功の秘訣は、冒頭の通り「極めてソフトで履き心地のよい、環境にも身体にも良い商品」であることは間違いないが、それ以上に大きな要因はマーケティングだ。特にスナップチャット上での写真キャンペーンが顧客拡大に効果を上げている。スナップチャットは、アメリカでは若い層を中心に急成長しているソーシャルメディアで、フラッシュニュースのように友人の掲載写真が次々と送られてくる。フェイスブックと違って受け取る側のページ上では24時間しか写真を保存しないので、送る側も受け取る側も気楽にどんどん見られるのが特長だ。

同社の製品ラインアップは、ベーシックな色のものと限定販売のプリント柄のものとに分かれるが、後者の商品をスナップチャット上に週に3回ほど、ストーリー性のある写真にして流している。例えば最近発売したラウンジウェア(パジャマのパンツ)を履いた男性が、急いで横断歩道を渡っている姿など、少しユーモアのあるストーリーの中で商品を紹介し、最後にそのエピソードで使用した商品専用のサイトアドレスを出す。見た人の多くはそれをスクリーンショットで保存するそうだ。過去最も成功したのはタイダイ柄のパンツを紹介した時で、そのクリック率は16%、スナップチャット平均の5倍以上だったと言う。マーケティングランド.comの今年3月取材時点では、スナップチャットから同社サイトにリンクして購入した率は10-12%という。

また本当の口コミにも強いブランドで、若い人々のパーティなどで「俺、これ派」みたいな会話でズボンをおろして同社ブランドだと一目でわかるパープルカラーのゴムバンド部分を見せると、同じブランドを履いている人が皆同様にズボンを下げて見せる、その風景がパーティ会場にいる全員に受ける、という、もはやオバサンにはついていけない世界があるのだそうだ(注1)。もちろん、過去のブランド戦略同様、セレブからも愛用されている。

同社は購入方法の1つとして定期購読を採用していることからも業界では注目されている。最近、オンライン定期購読モデルが危ぶまれる例が出てきた(注2)ので、このモデルが本当に成功するのだろうか、ということだが、同社CEOは「我々は定期購読モデルだけではない点が強みだと思う。」という発言をしている。

ずば抜けた商品の機能性、顧客を創出するソーシャルメディア。アパレル業界が停滞する中でも、次のブランドは生まれてくる。

(注1)ミーアンディーズ社マーケティング部トップのダン・キング氏の発言による。筆者が実際に現場を目撃した訳ではないので、真偽のほどはさだかではない。
(注2)化粧品サンプル定期購読モデルで一躍有名になったバーチボックス社では、昨年共同経営者の一人が辞任し、今年1月にレイオフや事業計画の見直しがあった。現在経営テコ入れ中だが、倒産等の噂は出ていない。

(写真)スナップチャット上で公開されたタイダイ下着への購入リンク

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 2016/10/09 09:00  この記事のURL  / 

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プロフィール

平山幸江(ひらやま・さちえ)

アメリカ小売業コンサルタント

1993年よりニューヨークを拠点に活動。Jクルー・ジャパン(伊藤忠プロミネントUSA)、フェリシモ・ニューヨーク、イオンUSA調査ディレクターを経て2010年に独立。

アメリカ市場でのファッション、小売事業展開の実務経験に基づいた市場調査分析、戦略企画が専門。「販売革新」「ファッション販売」他執筆。米国小売最新情報に関する講演。慶応大学及びファッション工科大学卒業。


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