« 前へ | Main | 次へ »
ロード&テイラーのファストファッション戦略
ロード&テイラーは昨年、エクセルブランズ社(Xcel Brands Inc.)と提携し、アイザック・ミズラヒを含む複数のエクスクルーシブブランド開発を発表、9月のニューヨークファッションウィーク中に販売開始した。

エクセルブランズ社はブランド管理およびメディア企業で、製品のデザイン、生産、ライセンス事業からマーケティングまで行う。現在の年商は約28億円で既にナスダックに上場している。2011年ロバートW.ローレン氏が立ち上げ、IMNYC Isaac Mizrahi(アイザック・ミズラヒ), Judith Ripka(ジュディス・リプカ), H Halston(Hハルストン), Highline Collective(ハイライン・コレクティブ), C. Wonder(Cワンダー)ブランドを所有。 同社はショッピング、エンターテインメント、ソーシャルを一体化したビジネスモデルの構築を目標とし、オムニチャネル戦略に力を置く。しかし今回注目されるのは、アパレル製造とサプライチェーンマネジメントも同社が管理する点で、ザラの親会社インディテックスに学んだ製造・ロジスティクスの徹底した短期化を実現する。

29日のウォールストリートジャーナル紙によると、今回立ち上げたブランドの1つ、IMNYC Isaac Mizrahiのオフショルダーのブラウスが欠品となった際、6週間で補充したとのこと。過去には9か月かかっていたそうだ(筆者注:恐らく正式立ち上げ前、夏のテストマーケティング時の実例である)。エクセル社はインディテックスの元社員を複数迎い入れ、デザイン開発段階から百貨店バイヤーと週2回会議をするだけでなく、製造工場のテクニカルデザイナーをエクセル社本社に常勤させてコレクションを短期間で最終決定する。さらにリードタイムを短縮するため製造後は工場から直接各店舗に出荷する。唯一インディテックスと異なるのは、インディテックスが自営工場であるのに対し、エクセル社はアジアの提携工場から買い付けている。

ロード&テイラーはバーゲンハンターのおばさん御用達の百貨店だったが、現在若返りの一貫でミレニアル世代と呼ばれるティーンエイジャーから大学を卒業したばかりの若い世代に照準をあて、ソーシャルメディアマーケティングにも力を入れている。昨年3月には商品単価が100ドル未満のトレンディなブランドを集めた編集型売場「デザインラボ」を立ち上げ、同じペイズリー柄のドレスを50人のブロガーに自分なりのコーディネーションで着用してもらうインスタグラム・キャンペーンで大きな反響を得た。ただしこの販促はブロガーに謝礼を払っていたことが公表されていなかったため、後日連邦公正取引委員会の追求を受けたが、それほどインパクトがあったということだろう。

ロード&テイラーのマーチャンダイジングは確かに以前に比べて改善されている。過去は雑然とブランドが並んでバーゲン会場エブリディ、という感じだったが、現在はコンテンポラリー売場を始め、各売場内に意図をもってブランドが編集されている。また、エスカレーター回り、売場メイン通路のマネキンでのヴィジュアルプレゼンテーションを戦略的に活用しており、9月末時点ではIn Real Life(実際の生活)というテーマで、トレンドを押さえながらも現実感あふれるコーディネーションを見せている。

わかりやすい売場作り、独自の編集型売場導入、そして市場で知名度のあるブランドとのコラボによるファストファッション・モデルの導入。加えてソーシャルメディア他のマーケティングも強化し、目に見えた成果が出るのかどうか、ホリディ商戦後の結果を注目したい。

(写真)ロード&テイラーNY五番街本店、筆者撮影







 2016/09/30 21:36  この記事のURL  / 

風前の灯エアロポスタルに救いの手
今年5月にアメカジ御三家のエアロポスタルがチャプター11となった。結局現在までのところ買い手がつかず、600店舗以上が清算の危機に瀕している。ところが、先週アメリカショッピングモール事業会社大手のサイモン・プロパティ・グループとジェネラル・グロース・プロパティーズが意外な手を打った。両社がエアロポスタル買収コンソーシアムに参加したのだ。つまり、家主がテナントの倒産に際し、救済策として事業を買収するということである。

従来アメリカのショッピングモール事業会社がこのようにテナントに救いの手を差し伸べることはなかった。以前は、次のテナントを探せばよいだけだった。しかしオンラインリテ―リングが拡大し、ショッピングモールへの来街客数が減る中、倒産セールとか空き店舗とかは益々SCの魅力を損なうので絶対に避けたい。と言うことで、今回の、自らの枠を超えた決断となったようだ。

過去にテナントが倒産した時に手を差し伸べたSCはあった。ヴォルネイド・リアリティ・トラスト社がブルーミングデールズ本店となりにも店舗があったディスカウンター百貨店アレキサンダースを買収したのがその例だ。しかしその後、百貨店は解体され、不動産投資信託に切り替えられた。つまり、その小売業者の不動産価値を有効活用するのが目的だった。今回はブランド自身の救済である。もし成功すれば、不動産屋が自ら小売業者として自社物件のバリューをあげる活動をすることになる。

小売の世界は、この記事を読んでくださっている皆さんがご存知のようにmessy (どろどろ)で、detailed(細かい)商売だ。その上、アマゾンや他のオンラインリテーラーがショッピングモールからどんどん客を奪っているという難しい時代だ。どうやってエアロポスタルを再生させるつもりだろう。しかし、小売業者でないからこその発想が生まれてくるのかもしれない。今後の行方が楽しみである。

(写真)Ely Portillo氏撮影
 2016/09/28 08:55  この記事のURL  / 

新事業モデルSEE-NOW BUY-NOW、第2ラウンドの検証
昨年からニューヨークファッションウィークで始まった、今発表した半年後の新作コレクションを今すぐ販売するSEE-NOW BUY-NOWトレンドは今月開催されたファッションウィークでも拡大した。L2インクの調べによると、今回NYFWに参加したブランドの21%が「今すぐ販売」を行ったとのこと。先駆者のレベッカ・ミンコフを始め、トム・フォード、バーバリー、トミー・ヒルフィガー、ラルフ・ローレン等のデザイナーや、バナナリパブリック、トップショップ、クラブモナコ等のショッピングモール系ブランドも「今すぐ」ゲームに参入した。

9月21日のfashionista.comでは、その後の成否の様子を独自に調査し、報告している。

【成功組】
トミー・ヒルフィガー:
サウスストリートシーポートで行われたカーニバル的なイベント会場で、たった今発表された商品をイベント会場内のポップアップストアで販売。商品はほとんど100ドル以下。翌日は既に完売となっていたとのこと。同ブランドはNYFW参加デザイナーの中でもっともデジタルエンゲージメントが大きく、ショー当日は前日より347%上がって411,000のエンゲージメント数に到達。昨年のショー当日から36%伸びたそうだ。

レベッカ・ミンコフ:
今回で「今すぐ」2回目のミンコフはソーホー店の外でショーを行い、即売を開始。前回はその月の売上高は2倍になったそうだ。

【残念組】
トム・フォード:
スパンコール、ファー、エキゾチックなレザーを使用したコレクションはフォーシーズンホテルのプライベートディナーの場で発表された。その後、マジソン街の店舗とNet-a-Porterで即売となったが、同サイトのスタッフが店舗を確認に行ったが、$6,450のスカート、$200のTシャツ等が売れている気配はなかったとのこと。

ラルフ・ローレン:
同社は初めての即売参加だが、アメリカンウェストのテーマの今すぐコレクションはコレクションの内容そのものが売りにくいものだったとのことで、店舗で人が群がるようなことはなかったそうだ。

このレポートを読むと、「今見たものを今すぐ買いたい」という購買意欲をかき立てるには、諸々の条件が必要なようだ。

*ショーでは半年後に発売するコレクションを発表するが、今すぐ即売対象商品は、着られる季節性の低い商品を意図的に開発・販売

*限定販売商品

*皆が欲しがるだけでなく、買える価格帯

*イベントで高揚感を煽ったり、ソーシャルメディアを活用して口コミ効果を高める仕掛け

なお、ファッションに力を入れ、来月からファッションウィーク東京のスポンサーでもあるアマゾンは、化粧品メイベリンがレベッカ・ミンコフと提携し、ミンコフのモデルに使用した2色の口紅を期間限定で販売した。今回売れ切れると、次回手に入るのは正式な発売日である来年の春とのことだ。

(写真)上:アマゾン社ウェブサイトより、下:レベッカ・ミンコフ提供(2016年春夏コレクションより)




 2016/09/28 04:33  この記事のURL  / 

メーシーズがビューティオンデマンドと提携
メーシーズがヘア&メークアップのオンデマンドサービス、beGlammedと提携した。beGlammedはロサンゼルス、ニューヨーク、サンフランシスコ、マイアミ、シカゴ、ダラス、アトランタ、ボストン等、全米22都市に1200人のスタイリストのネットワークを有しており、モバイルアプリで予約、自宅でヘアスタイリングやメークアップを行う。サービス料金は25ドルから185ドル程度だ。

提携により、メーシーズのウェブサイト上からもこのサービスにアクセスすることができる。またメーシーズ店内サインやソーシャルメディア上で訴求していく。

まだ2014年に起業したばかりのbeGlammedが800店近いチェーンストアおよび顧客を持つメーシーズと提携するメリットは容易に理解できるが、メーシーズにとってのメリットは何か?
メーシーズに限らず、アメリカでも百貨店はサイフの紐が固くなった消費者、衣料品にあまり興味の無い若年層(こちらではミレニアル世代)、ファストファッションの普及と飽和市場、という理由で主力の衣料品売上で苦戦している。これを補うために各社それぞれ工夫をしているが、メーシーズは化粧品売場の拡充という選択肢を選んだ。ニューヨークの旗艦店では売場を拡大しただけでなく、LEDパネルをふんだんに使い、イベントや新商品をドラマチックにヴィジュアルコミュニケーションしている。また昨年3月には約210億円を投資して60店舗を展開する高級化粧品チェーン、ブルーマーキュリーを買収。現在同ブランド店はメーシーズ4店舗でインショップ展開しているが、今年度中に18店舗追加の予定だ。

物販面の強化がブルーマーキュリー買収とすると、beGlammedとの提携により、百貨店を超えたサービスの提供が可能となる。現在百貨店のみならず、アメリカ小売業界全般でオンデマンドサービスとの提携が盛んになっており、小売業者は自社ではできないサービスを顧客に提供しようと試みている。

さて、消費者の立場から見てみよう。来店頻度は減ったがたまたまメーシーズに買い物に行ったら、beGlammedのサービスを知った。興味を持ち、早速試してみるかもしれない。しかし、beGlammedのサービスを気に入ったからと言って、必ずしもメーシーズで前より頻繁に化粧品を買うだろうか?もちろんメーシーズはbeGlammed客に割引やギフトなどで販促をかけるだろう。だが、メーシーズが提供している化粧品ブランドのほとんどは他社でも買えるものだ。よほどの動機づけがないと、beGlammedのサービスに満足して終わってしまうような気がする。

一方、ブルーマーキュリーならブランド揃えだけでなく、専門店としての接客や情報提供力があるので、ブルーマーキュリー側が主体的に編集した化粧品群をbeGlammedで使ってもらう、などの発展も可能だ。もしかしたら、せっかく買収した、顔の見える顧客データを持つブルーマーキュリーとオンデマンドを絡めた方がより戦略性の高い事業提携だったかもしれない。ところでブルーマーキュリーが買収後1年以上たつのに、メーシーズ内の店舗展開数が少ないのが気になる。それとも何か、まだ発表しない秘策があるのか?昨年の買収も含めて今回のビューティ部門拡充第二段、その後のストーリー展開が楽しみだ。

(写真)メーシーズ社ウェブサイトより




 2016/09/26 05:56  この記事のURL  / 

« 前へ | Main | 次へ »

プロフィール

平山幸江(ひらやま・さちえ)

アメリカ小売業コンサルタント

1993年よりニューヨークを拠点に活動。Jクルー・ジャパン(伊藤忠プロミネントUSA)、フェリシモ・ニューヨーク、イオンUSA調査ディレクターを経て2010年に独立。

アメリカ市場でのファッション、小売事業展開の実務経験に基づいた市場調査分析、戦略企画が専門。「販売革新」「ファッション販売」他執筆。米国小売最新情報に関する講演。慶応大学及びファッション工科大学卒業。


2016年09月
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30
最新記事
月別アーカイブ
カテゴリアーカイブ