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オンデマンド配送に飛びつくブランドたち
アマゾンの影響で、顧客に数時間以内に商品を配送するオンデマンドサービスが、アメリカの小売業界では広がり始めている。日本では宅配便ネットワークが整備されているため、低料金で迅速に荷物を受け取るのは当たり前のことだが、アメリカではアマゾンが無料2日配送を普及させるまでは、配送に5-7日かかるのが常識だった。

これに対抗するために、百貨店や専門店チェーンが目をつけたのがオンデマンド・デリバリーサービス企業だ。2014年に先鞭をつけたのはデリヴ社と提携したウィリアムズ・ソノマだ。デリヴはその後メーシーズ、ブルーミングデールズ等にもサービス提携している。今年になってウーバがこの領域に参入し商品配送サービス「ウーバ・ラッシュ」を開始。現在ではコール・ハーン、レベッカ・ミンコフ、ノードストローム、レント・ザ・ランウェイ等が提携し、店内で購入した商品を数時間で配送している。送料は10ドル程度で、現在ニューヨーク、シカゴ、サンフランシスコでサービス提供している。

過日開業したローワーマンハッタン、ウェストフィールドモールにオープンしたコール・ハーン旗艦店。同店プレスリリースでもウーバとの提携はセールストークの1つとなっており、ウーバ・ラッシュだけでなく、コールハーン社ウェブサイトの店舗情報ページ上で簡単にウーバを呼べるとも宣伝した。なるほどと思い、試してみることにした。まず同社サイト上のウーバ・ボタンだが、謳い文句とは裏腹に同社のサイト、アプリ、どこを見ても見つからない。グーグル検索まで使ってようやく見つけるまで15分はかかった。例えボタンの場所がわかっても同サイト内で2回クリックが必要。これでは、アプリを開けば数秒で車を探せるウーバのアプリを使った方がずっと早い。しかもご丁寧に「電車ご利用の場合」「ウーバご利用の場合」が並べてあり、電車だと2ドル75セント、26分で来店できるのに、ウーバだと20−35ドルかかって31分で到着するそうだ。

ウーバ・ラッシュ・サービスはどうか?しかしよく考えたら、たかだか靴だ。オンライン購入ならともかく、何も10ドル払って即日配送してもらわなくても自分で持って帰れる。重くて大きい鍋釜を扱うウィリアムズ・ソノマなら店舗からの配送サービスはぜひお願いしたいし、それが即日で届けば10ドル払ってもいい、という気分になる。そんなことを考えると、オムニチャネル戦略の一貫としてアマゾンに対抗して配送サービスをアップグレードするのはいいが、本当に顧客にとって便利で使いやすいものでなければ、オンデマンドと提携という耳障りの良い分、後で顧客をがっかりさせるのではないかと感じる。

(写真)ウーバ社
 2016/08/31 05:55  この記事のURL  / 

改めて見るオフプライス業態の底力
倒産、店舗撤退、既存比割れ―停滞感があふれるアパレル業界だが、オフプライス業態は力強く成長している。ムーディ―ズ・インベスターサービスの報告書によると、オフプライスのアパレル市場占有率は2015年8.8%から2018年10%に拡大が見込まれていて、成長率は6-8%だ。

改めてアメリカの主要オフプライスチェーン、TJマックス、ロス・ストアーズ、バーリントン・ストアーズの業績推移を見てみた(下記図表)。確かに売上前年比も既存比も伸びており、2015年度の粗利益率も28%前後、ギャップ(36.2%)、メーシーズ(39.1%)、ノードストローム(35.0%)と比較しても遜色ない。と言うか、オフプライスチェーンは百貨店・専門店チェーンの過剰在庫も仕入れて売っている訳だから、立派な数字ではないか。

リーマンショック後の不況で、アメリカの消費者、特に若い層はアパレルを買わなくなってしまい、買う時にはH&Mのようなファストファッションかオフプライス、そしてアマゾン、と言われている。それがこの数字に裏付けられているかのようだ。

昨日ご紹介したローワーマンハッタンに開業したウェストフィールドモールの近隣にサックスのオフプライス業態、サックスオフフィフスが開業する予定だ。まもなくウェストフィールドモールの西隣のブルックフィールドプレース内にサックスフィフスアベニューがアンカーとしてオープンする。既に地元では支持の高いリージョナルオフプライスチェーンのセンチュリー21が東側に城を構えているので、オフフィフスは南側を陣取る形で新たなローワーマンハッタン商業地区をはさむような形になる。

以前はオフプライスと言えば、都心から離れた場所で定価店舗をお邪魔しないのがお約束だったが、マンハッタンの最新商業地区のど真ん中に店舗を構えるような時代になった、という点からもオフプライスの力量が伺える。

(図表)筆者がアニュアルレポートから作成

 2016/08/29 08:57  この記事のURL  / 

グーグル検索に見るファッショントレンド
キーワード検索からファッショントレンドを分析するグーグルからの最新レポートが報告された。2014年5月と2016年5月の比較から、大幅に増加しているキーワードを分析することで、実際に消費者が探しているスタイルを見極めることができる。(調査対象:アメリカ合衆国、英国)

【ミリタリーシック】
ボマージャケット、リップトジーンズ、バイカ―ジーンズ
◆ボマージャケットの関連キーワード
(柄)刺繍、花柄、カモフラージュ、パッチ、ローズ、プリント
(素材)レザー、サテン、シルク、キルト、スェード、デニム、ナイロン、毛皮、スパンコール、ベルベット

【フリースピリット】
オフショルダー(トップ、ドレス)、ボホドレス(ボヘミアンシック)、キモノドレス
◆オフショルダーの関連キーワード
(柄)花柄、ストライプ、刺繍、ペイズリー
(素材)レース、デニム、シャンブレー、スパンコール、綿、シフォン、クロシェ編み、ベルベット、サテン

【レディ・トゥ・ゴー(1アイテムでアウトフィットが決まる)】
ロンパー、ジャンプスーツ、2ピースドレス、プレイスーツ
◆ロンパーの関連キーワード
(柄)花柄、タイダイ、ストライプ、プリント、ポルカドット、ペイズリー、刺繍、ヒョウ柄、装飾された
(素材)レース、デニム、スパンコール、クロシェ、シャンブレー、シルク、綿、ベルベット、ジャージー、ニット

メガトレンドとしては「大人と子供が同じスタイル」「男性が女性的、女性が男性的なファッション」が年々顕著になっているそうだ。

(写真、出所)think with Google Fashion Trends 2016, fashiontrendsreport@google.com


 2016/08/27 22:58  この記事のURL  / 

ワールドトレードセンター地区に開業したウェストフィールドモール
8月16日に開業したウェストフィールドモールをレポートする人は皆、この言葉を思い浮かべることだろう。あれから15年。まもなく9.11がやってくる。

被災後数年たっても、多くのニューヨーカーは家族や知人が犠牲になった場所にショッピングモールを作ることに批判的だった。2001年のあの日、私もワートレ(在ニューヨーク日本人の間の省略語)の下を地下鉄でくぐってブルックリンの取引先と会う予定だった。事件が起きて、頭が空白なまま取引先に電話すると、ブルックリン側ワートレの対岸のスタジオにいた彼女は「人がビルから大勢落ちているの。今日のミーティングは延期しましょう」と泣きながら答えた。結局その後彼女は精神的ショックとテロ後の不景気の影響で長い間仕事ができなくなり、ミーティングは自然消滅した。

とは言え、いつまでもローワーマンハッタンがガランとしたままではテロに屈したことになる。既に同地区西側にブルックフィールドSCが2015年から開業していたが、ウェストフィールドモールの方が規模も大きく、またその開業に合わせてニュージャージー州とマンハッタンをつなぐ通勤路線パストレインの駅が新装オープン、ニューヨークの地下鉄13路線とパストレインがモールで結ばれ、毎日30万人の通勤人口がこのモールを通過するため、ウェストフィールドの開業こそがワートレ地区の再出発、というコンセンサスがあった。

ウェストフィールド社はこの場所の特別な意味をよく理解し、ただ買い物する空間ではなく、自然に人が過去や未来に想いをはせたくなるような巨大なオキュラスをショッピングモールにかぶせた。米紙では「スターウォーズの宇宙船のような」と書いてあったが、私はナウシカのオームを連想した(ちょっと角が長いが)。開業1週間後の日曜日だったが、国内外からの観光客、地元市民で大賑わいだった。ただし買い物というより見学、自撮り目的が多かった。オキュラスの巨大空間を見渡しながら「すごいね〜」と言った後しばし沈黙している人を多くみかけた。

商業ゾーンはオキュラス内3層で、主なテナントはアップルストア、ボーズ(オーディオ)、ヒューゴボス、H&M及びコス、&アザーストーリーズ、ケイトスペード、ジョンヴァルヴァトス、ラコステ、バナナリパブリック、アンダーアーマー、コールハーン、ヴィンスカミュ―ト、セフォラ、キールズ、マック等。グッチやフェラガモのような欧系ラグジュアリーブランドはハイエンドモールを謳うブルックフィールドプレースに入店し、ウェストフィールドはブリッジから下の価格帯だ。

ブルックフィールドプレースは開業後1年以上たつが、まだアンカーのサックスフィフスアベニューが開店していないこともあり、今一つインパクトに欠けている。物販部門はラグジュアリー過ぎて、いくらトライベッカ等高所得者居住地区を商圏に持つとは言え、地元客が頻繁に買い物できる店が少ないという声もある。ウェストフィールドはこれに対して、一日2万人近くの来店客を持つ人気のイタリアンフード店イータリーやショッピングモールに出店を加速している高級キャンディストア、シュガーフィナ、地元ニューヨーカーに人気のレディMやアーヴィングコーヒー、日本からは源吉兆庵など誰もが興味を持ちそうな食の物販も充実させており、地元客の定着も期待できる。

ただし視察時、まだ約100店舗のテナントのうち6割強しか開業していなかったこともあり、観光として様子を見に来た人であふれており、ショッピングバッグを持っている客は人出の多さに比べて少なかった。

テナントが出揃い、ホリディシーズンに入れば、集客力を背景に本領を発揮してくるだろう。来月にはブルックフィールドプレースのアンカー、サックスフィフスアベニューも開業予定なので、これで両モールがフル稼働し、本格的に新生ワールドトレードセンター地区がスタートする。月日がたてば、ここも日常的な風景になるだろうが、それでも、しばし沈黙し、オキュラスの天井のガラス越しにかつてビルが2本あった空を見上げたくなるような雰囲気は消えないで欲しいと思う。

(写真)ウェストフィールドモールより筆者撮影


 2016/08/27 22:42  この記事のURL  / 

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プロフィール

平山幸江(ひらやま・さちえ)

アメリカ小売業コンサルタント

1993年よりニューヨークを拠点に活動。Jクルー・ジャパン(伊藤忠プロミネントUSA)、フェリシモ・ニューヨーク、イオンUSA調査ディレクターを経て2010年に独立。

アメリカ市場でのファッション、小売事業展開の実務経験に基づいた市場調査分析、戦略企画が専門。「販売革新」「ファッション販売」他執筆。米国小売最新情報に関する講演。慶応大学及びファッション工科大学卒業。


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