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クラウドソーシング型オンラインストアMintedの出店
オンラインリテーラーが店舗を持つ動きは顕著になってきている。日本でも有名なメガネ販売の Warby Parker、ファッションジュエリーのBauble Bar、化粧品サンプル購読のBirchboxなどは、ニューヨークを訪れる業界人は必ず店舗視察されるようだ。直近で注目されているのはサンフランシスコに出店したMinted。高級ステーショナリーだが、オンラインではできない、楽しい店舗経験を提供している。

Mintedは2007年、幼少期に中近東とアフリカ5か国で過ごした経験があるマリアム・ナフィシーが創業した。販売しているのはオリジナルデザインのカード、包装紙、その他文房具や生活雑貨系ギフトアイテム、結婚式や出産祝いのカスタムメードのカード類だが、その特長は「クラウドソーシングしたオリジナル・デザインの商品販売」だ。毎月公募するデザインチャレンジに世界中の独立系デザイナーがオンラインで応募。同社ウェブサイト上の投票によってデザインが決定する。過去累計で4万人以上の独立デザイナーが同社にデザインを応募、全米48州、世界43か国のデザイナー作品が商品化されており、150万ドルのデザイン料が支払われたそうだ。

最初のデザイン公募は2008年4月、66件の応募があった。その後アメリカ全体が不景気だったにも関わらず事業は順調に成長し、2012年には黒字化、2013年には最初の投資を受け、2014年にはLinkedIn社より「最も働きたいスタートアップ企業10社」に選ばれ、2013年にはFast Company誌の「最もクリエイティブなビジネスを行う人々25人」の1人に選ばれた。デザイナーの多くは幼い子供を持つ母親だったり、才能を開花させるチャンスの少ない海外のアーティストであるため、彼らを支援したいという共感が、同社のオンラインコミュニティの成功の原動力となっている。

23日にオープンした店舗Minted Localは10月16日まで期間限定のポップアップストアだ。ここでは以下のようなサービスで、同社の魅力を高めている。
*ワークショップ
*予約制でスタイリストによる壁をどのような絵や写真、フレームで飾ればよいかのコンサルテーション
*デザイナーと共にホリディギフトカードやウェディングカードの準備サービス(大型のデジタルスクリーンを使用してカスタムメード)
*子供たちとのクラフトアート制作サービス

店内には昔ながらの手動プレス式印刷機が設置されており、オープニングイベント時には専門家がカードを手で印刷して参加者に配ったそうだ。

オンラインストアからの出店組は、出店に手慣れたチェーンストア組以上にクリエイティブな発想で店舗を作ろうとしている。コンセプト倒れ・収益度外視で終わっているケースもあるが、やはり見るべきだろう。
http://www.minted.com/julep/2016/05/23/minted-local-san-francisco-retail-store/

店舗所在地
222 Grant Avenue
San Francisco, CA 94108
(写真)Minted社


 2016/05/31 01:45  この記事のURL  / 

ギャップがアマゾンでも販売?!
今月19日に発表されたギャップ社の第1四半期決算内容は競合他社同様不振で、全社既存比は▲5%。様々な業績改善策の1つとして、日本ではオールドネイビー全53店舗撤退する。アメリカ本国ではオールドネイビーに加えてバナナリパブリックの店舗削減も検討する。ブルームバーグの報道によると、アート・ペックCEOは株主総会で、今後の経営立て直しについて「新たな販売チャネルの1つとして、アマゾンでの販売も考慮する」と述べた。

アマゾンは皆さんご承知の通り、業種を超えてチェーンストア勢の大敵だ。今月発表された電化製品専門誌TWICEマガジンの調査によると家電市場では昨年上位3位だったアマゾンは、今年ウォルマートを抜かして2位に躍り出た。1位はベストバイだが同社の売上高309億ドル、成長率3.8%に対してアマゾンは231億ドル、28.1%。仮にベストバイが毎年3%、アマゾンが20%成長する場合、2年後の2018年にはベストバイを抜いて1位になる計算だ。

アパレル市場でも状況は同じだ。モーガンスタンリー社のレポートによるとアマゾンはやはり現在ウォルマートに次いで第2位。2020年までには1位になると予測されている。

「敵を知り、己を知る」という戦略かもしれないが、ペックCEOの発言について、アメリカでは懸念の声があがっている。フォレスター・リサーチ社のアナリスト、マルプル氏は「馬鹿げた選択だ。ウォルマート、ターゲット、コストコで売る方がまだまし」とコメント。その理由として、ギャップの営業データがたやすくアマゾンの手中に入り、彼らはそれを分析して自分たちのアパレル販売戦略に活用できるから、としている。

他にも専門家による懸念の声は大きい。もっともペックCEOは可能性の1つとして検討すると述べているに過ぎない。が、ギャップ社が相当シリアスにアマゾンの脅威を感じている、ということだろう。一方で、ギャップ・ブランドはオールドネイビーほど業績は悪くはない(既存比▲3%)し、アスレジャーのアスリータは伸長、といった好材料もある。

ファッションの世界は家電とは異なり、顧客の反応やトレンドにフォーカスして行けば短期間に業績改善も可能だ。そしてギャップには、アマゾンにないファッションビジネスのノウハウと経験がある(はずだ)。長いものには巻かれろ的に販売力のあるアマゾンで売るより、店舗を含めた自社のチャネルを洗練していく方が結局は効果が出るのではないだろうか。

(写真)メモリアルディ休暇中の店内。海開きもあり、夏が始まり、皆で屋外でバーベキューを食べる週末なので、他社の店舗はセールにも関わらずあまり店内が混んでいなかったが、視察したメーシーズ本店はす向かいの店舗ではレジに10人程度の行列ができていた。(筆者撮影)


 2016/05/30 06:28  この記事のURL  / 

メルトダウンするティーンズファッション
毎回、消えゆく・沈みゆくを書くのもどうかと思うが、今時代の変化期なのでここをしっかり見る必要があると思う。(下の図表をご参照ください)

筆者がウォッチしていたアメカジ御三家のエアロポスタルがとうとうチャプター11申請した。正直なところ、リーマンショック後、一番先にヘッドラインを飾るのはアバクロかとも思ったが、エアロは低価格をさらに激しくマークダウンし、マージンが薄いのがアダとなった。アメリカンイーグルは2年前から「えっ、これしかないの?」と思わせるほどマーチャンダイジングを徹底的に見直し、販促も引き締め、現在は業界でもトップクラスに業績を回復させているし、アバクロも創業者をセクシー路線と共に追い出し昨年度から徐々に業績を回復している。
(筆者注:掲載直後にアバクロの第1四半期決算報告があり、全社売上高▲3%、既存比▲4%に転落した。原因は海外観光客の減少だ。)

しかし、ティーンズファッション全体は非常に厳しい局面にある。ミレニアル世代(18歳以上20代半ば)がモノを買わなくなったこと、ショッピングモールに行かなくなったこと、が原因だ。もちろん彼らも裸でいる訳ではないから、アメリカの業界人が信じるところによると、H&M、ザラ、フォーエバー21などのファストファッションが衣料品調達しているそうだ。

5月8日のシカゴトリビューン紙の取材によると、今のティーンエイジャーたちはロゴが嫌いという。理由は「人と同じものを着ているのがバレバレで恥ずかしい」から。筆者の子供もニューヨークの高校に通っているが、確かに学校でロゴを着ている生徒を見かけない。(むしろその親が未だにアバクロのTシャツを着ていたりする。)

投資バンクのパイパージェフリー社の調べによると、ティーンエイジャーが好きなブランドは以下のとおり。

*ナイキ、アメリカン・イーグル、フォーエバー21、ラルフ・ローレン、ホリスター、パシフィック・サンウェア、アーバン・アウトフィッターズ、ヴィクトリアズ・シークレット、H&M、アディダス
*ただし、親の世帯所得別にみると、年収53,000ドル以下の世帯では、エアロポスタルがトップ10に入っていた。やはり安さが魅力だったようだ。

現在業績が手堅いティーンエイジャーファッションは、スマートフォンとオンライン世界に生きる顧客のために、各社はオンラインビジネス、モバイルアプリ開発、ソーシャルメディアに力を入れている。彼らはやがて消費をリードしていく存在だ。大人ブランドたちも、このカテゴリーの動向からは目が離せない。
 2016/05/26 23:37  この記事のURL  / 

泡と消えつつあるフラッシュセールビジネスの行方
不況が始まった2008年から急成長した、数日間だけ50%以上安く買えるオンラインのフラッシュセールビジネス。草分けだったギルトは今年1月にサックスフィフスアベニューの親会社、ハドソンベイカンパニー社に買収された。しかも、一時期は10億ドルの市場価額とも言われていたが、その4分の1での買収だ。同業他社も一時期の勢いはなく、多くが売却されていたり、レイオフが始まっている。

*MyHabit.com
2011年にアマゾンが買収。今年4月に撤退し、サイトは閉鎖。
*Hautelook
2011年にノードストロームが買収。ここからオンラインファッションビジネスを吸収し、2013年に刷新してnordstromrack.comと共に再デビュー。
*Zuiliy
2014年に株式上場したが、その後株価は60%以上も下落し、テレビショッピングQVCの親会社に24億ドルで売却。
*Ideeli
一時期は1億ドルもの投資を集めた同社も2014年にはグルーポンが叩き値で買収。
*Fab.com
一時期は10億ドルの市場市場価額だったが、2014年に1,500万ドルで売却。
*RueLaLa
今年頭に数回に渡ってレイオフを実行。
*One Kings Lane
今年に入ってスタッフの25%をレイオフ。

各社共通した転落の理由は商品調達が困難になったことだ。景気が回復するにつれ、魅力があり、なおかつ50%以上の値引きに耐えられる商品在庫の調達が難しくなった。また、アウトレット最大手のTJマックスや、百貨店のアウトレットが不況後店舗数を拡大し、顧客を奪われたという側面もある。

フラッシュセール企業を買収する側は、彼らのオンライン顧客データが目的だ。どんな人が何を買っているのか、販促の成否などの分析にも使える。フラッシュセールビジネスは時代のあだ花だったかもしれないが、これを血や肉とする食物連鎖も見える。となると、フラッシュセールが沈没する前から買収した企業たちはやはり先見の明があったということか。
 2016/05/26 03:31  この記事のURL  / 

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プロフィール

平山幸江(ひらやま・さちえ)

アメリカ小売業コンサルタント

1993年よりニューヨークを拠点に活動。Jクルー・ジャパン(伊藤忠プロミネントUSA)、フェリシモ・ニューヨーク、イオンUSA調査ディレクターを経て2010年に独立。

アメリカ市場でのファッション、小売事業展開の実務経験に基づいた市場調査分析、戦略企画が専門。「販売革新」「ファッション販売」他執筆。米国小売最新情報に関する講演。慶応大学及びファッション工科大学卒業。


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