« 前へ | Main | 次へ »
高収益を果たしたアマゾンとファッションビジネス
一昨日アマゾンの第一四半期業績発表があり、売上高は291億ドル、前年同期比28%増、そして何よりも当期利益5億1,300万ドルと過去最高の純利益を達成した。アマゾンは1997年上場以来、稼いだお金は全て投資に注ぎ込む(利益は残らない)ことで知られている。

この好成績の要因は、物販に比べて高い収益率を持つAWS(クラウドベースのウェブサービス事業)の伸長、プライム会員数の伸長とこれによる第3者販売(出品サービス)事業拡大だ。AWSの全社売上高構成比は10%に過ぎないが、営業利益の大半を生み出しているとのこと。とは言え、アメリカの大手小売業者が皆売上不振に苦しんでいる中、売上の90%を占める物販も成長しているのだから立派だ。

この物販の成長戦略の1つはアマゾンファッションだ。アマゾンは2002年にアパレル製品販売を開始。価格競争に陥りやすい書籍や家電に比べて利益率が高いため、ベゾスCEOはファッション事業には力を入れ続けてきた。2006年Shopbop.com(デザイナーアパレルとアクセサリーのオンラインストア)の買収、2009年ザッポス(靴のオンラインストア)買収、2011年MyHabit.com(オンラインフラッシュセール)*買収の一方で、ギャップ、ヴォーグ誌、バーニーズ等からヘッドハントも行っている。従来のアパレル、アクセサリー等というカテゴリーだけでなく「アマゾンファッション」というページを立ち上げ、ファッショナブルなページ作りを行う一方、ファッションのアマゾンというイメージを構築するためにニューヨークタイムズスクエアにビルボード広告を出したり、ニューヨークファッションウィークのスポンサーになったりしている。

しかしアマゾンがファッションで成功する訳がない、という批判は常につきまとってきた。ファッションは@エモーションが重要なので、いくらプライム会員でも家電やトイレットペーパーを購入するサイトで下着や靴下のような消耗品以外の衣料品、特にラグジュアリー系デザイナーブランド商品を買うはずがない、Aフィットや触った感じが重要なのでオンラインは不利、というのが主たる理由だ。
(注:Aについてはアマゾンの無料2日配送や簡単な返品制度のお蔭で、むしろ自宅で試着を促す結果となっている)

供給サイドを見ると、ラグジュアリー系ブランドの多くは価格訴求で市場を独占してきたアマゾンへの警戒心が高く、アマゾンへの卸売のみならず第3者販売にも目を光らせている。一方でマイケル・コースやヴィンス・カム―ト、BCBGマックスアズリア等はアマゾンでの販売には好意的で「百貨店より取引条件が良いし、システムが明解」と取引に前向きだ。

アマゾン自身もこうしたファッションビジネス特有の市場開拓の難しさをよく理解しており、前述のように業界プロを登用し、2月にはプライベートブランドを投入、デザイナーブランドについては価格競争をしない等、あの手この手のテストマーケティングを行っている。

コーウェン&カンパニー社の試算では、2017年のアパレル及びアクセサリー販売額はアマゾン278億ドル、メーシーズ247億ドル、ウォルマート213億ドル、TJマックス(アウトレット)210億ドル。アマゾンが全米最大の販売者となる。既に来年の話ではないか。

*MyHabit.comからは4月25日に撤退し、同サイトは5月一杯でクローズする。が、フラッシュセール全般の不振については次回のブログにてご紹介したい。
 2016/04/30 22:20  この記事のURL  / 

ブルックリン、インダストリーシティに集まるファッション業界
ニューヨーク市ブルックリン区に人気が出てきていることはご存知な方も多いだろう。ダンボに始まり、ウィリアムズバーグ、プロスペクトパークはおしゃれなブティックや高級レストランが並び、今やマンハッタンより不動産価格が高いとも言われている。

歴史的にブルックリンは、マンハッタンに近いイーストリバー沿い、大西洋沿いに港町が開け、海運の要所だった。その中の1つ、サンセットパーク地区にあるインダストリーシティが今注目されている。19世紀末から20世紀初頭にアーヴィング・ブッシュによって建設されたブッシュターミナルがインダストリーシティの前身だ。同ターミナルは船で運ばれてきた物資を仕分し、全米都市に鉄道運送する拠点だった。2つの世界大戦中政府に戦地への物資輸送拠点として召し上げられたこともあったが、一時期は2万5000人以上が働く全米最大の産業パークとして栄えた。その後1960年代には国内輸送はトラック便が優勢となり、地域は廃れていったが、1980年代からアーティストやギャラリーが移り住むようになり、1996年には中〜高所得者を顧客とするコストコが同地に出店。その後地区再開発が進んだ。

2014年にはマンハッタン、チェルシー地区の元ナビスコ工場をグルメフードのメッカに変え、さらに近隣地区をハイテクと新たなライフスタイルの町へと開発を進めるジェームズタウン社がインダストリーシティ121,400平方メートルに1億ドルの投資を行った。この物件に一昨日ギャップが10年契約を結び、デザインスタジオを開設する。

同ビルには既にウィリアムズソノマ社のコンテンポラリー家具チェーン、ウェストエルムや、ラグ&ボーン、マリア・ミルズ(水着)、ボール&バック(メンズのアウトドアウェア)、3Dプリンター、ボットメーカー社等が入居している。近隣ビルではアマゾンがニューヨーク地区の配送拠点として昨年11月にディストリビューションセンター用地としてリース契約を結んでいる。

ブルックリンにはこのように新たな産業センターとしての顔もある。マンハッタンという世界の一大経済拠点を川越しに見ながら、同業異業の企業と人が同じビル空間で働く、というのは、何か創造力が高揚しそうな気がする。そしてそこに素早く拠点を置く、ギャップ、ウィリアムズソノマ、コストコ、アマゾン。サンフランシスコ、シアトル西海岸勢はやはり常に先を見ているということか?

(写真上)2014年1月17日ニューヨークタイムズより、Victor J. Blue氏撮影
(写真下)Industry Cityウェブサイトのリースページより現在のイメージ写真


 2016/04/30 06:56  この記事のURL  / 

閉店が拡大する米国百貨店
前回に続いて、今度は百貨店の閉店の話だ。今週月曜日にフォーチュン誌による「アメリカの百貨店は今後数百店舗を閉店しなければならないかもしれない」という見出しの記事を掲載したことが、目新しいニュースではないものの話題になった。「ああ、やっぱり」という反応をする人が大勢いたからだろう。

今年は1月にメーシーズが40店舗閉店(プラス人員削減)が話題となったが、既に競合他社は2014年から閉店トレンドにあった。アップルの元幹部をCEOに登用して大失敗したJCペニーは2014年33店、2015年40店閉鎖し、今年は少なくとも7店舗の閉店が決まっている。一体いつから業績が悪化したか思い出せないくらいのシアーズはシアーズ店舗は2011年868店だったのが、2016年708店に、Kマート店舗は同じく1,309店から950店に減り、今年上半期中にさらに50店舗閉店すると言う。かつては百貨店業界の優等生だったコールズも、今年18店閉店の予定だ。

こうして見ると気が付くように、閉店ラッシュは明らかに中〜低価格帯の百貨店業態、いわゆる日本のGMS的な百貨店だ。共通の理由は@ショッピングモールへの来店客数が減ったこと、A専門店にパイを奪われていること、そしてBアマゾンの影響とのことだ。アマゾンの影響というのは、少々腑に落ちない点もあるかもしれないが、アマゾンはこの数年来ファッションに力を入れていること、衣料品の中でもアクティブスポーツウェア、靴やハンドバッグ等アクセサリーはオンラインで購入する人が多いことが影響しているのではないか。

もっとも、アメリカの小売業界では閉店=悪、この世の終わり、ではなく、むしろ企業の収益改善に向けた前向きな戦略とみられる傾向がある。例えばコールズは代わりに小型店、アウトレット「Off-Aisle By Kohl’s」を増やし、同社の米国エクスクルーシヴブランド、フィラの路面店を10-15店出店を予定している。シアーズも地道に不動産業に力を入れ、不採算店舗の跡地活用による収益確保に力を入れている。

ただ、今現在をしのいだとしても、5年後、10年後に企業がどうなっているのか。量販系の百貨店業態は無くなるのか。オムニチャネル戦略にすら行きつけないのだろうか。まだ先が見えない状況ではある。

 2016/04/29 07:15  この記事のURL  / 

倒産ラッシュの米国スポーツ専門店
チャプター11申請したシティスポーツ(昨年10月)、スポーツオーソリティ(今年3月)に続き、今月6日、EMS(イースタンマウンテンスポーツ)他144のスポーツ専門店を経営するヴェスティスリテールグループが倒産準備に入っていると報道された。

かつては全米最大、現在でも450店舗のスポーツ専門店チェーンだったスポーツオーソリティは現時点で140店舗を閉店する予定だ。ヴェスティスは傘下ブランドのうちスポート・シャレ47店舗及びそのオンライン事業、EMS8店舗、ボブズ1店舗を閉店する。

スニーカーやアスレジャーウェアがこれだけ人気なのに、なぜスポーツ専門店が次々倒産するのか?

以下のグラフをみていただきたい。データは2014年だが傾向は見える。第一の原因として、非スポーツ用品専門店にシェアを奪われていることが大きい。ウォルマート、ターゲット等ディスカウンター、グラフには載っていないがアマゾンも大きいに違いない。よほど専門的な用具ならともかく、一般的なスポーツ器具・衣料品ならワンストップでこれらのチャネルで購入する方が圧倒的に便利だ。

次に、専門店間の競合だ。21日のCBSニュースでは「負け組はプライベートエクィティによる非上場企業」との指摘があった。投資会社はどんどん先行投資を行う結果、激しい市場競争の中で売上が予定通り伸びないと一挙に赤字に転落する。スポーツオーソリティは少なくとも4億6300万ドル、ヴェスティスは2億4600万ドルの負債を抱えているとのこと。

一方、業界アナリストによると、業界最大手のディックス・スポーティング・グッズは上場企業、モデルズ・スポーティング・グッズは家族経営だ。アカデミースポーツ&アウトドアはプライベートエクィティが保有しているが投資会社と経営陣の関係が強いと言われている。その他グラフに登場するバスプロ、REI等は、日本人でも店舗の特徴がぱっと思い浮かべられるほど独自性のあるマーチャンダイジングとサービスを誇っている。

ナイキ、ルルレモン等はアスレジャーで成長していることは皆さんもご存知の通り。このカテゴリーは、もはやスポーツ用品専門店のカテゴリーから切り離して分析した方が良いくらいに独自の市場を作っている。

専門店業態の強みは専門性。市場の大きなトレンドだけで戦略を練っても、購入意思決定の瞬間に消費者の心を掴めないのではないか。今求められている専門性とは何か。ここを見極めないとウォルマートやアマゾンには勝てないという構図が改めて実感できる。

(グラフ出所)www.statista.com, sporting goods retailers in the us by revenue, 2014
単位:10億ドル

 2016/04/24 02:15  この記事のURL  / 

« 前へ | Main | 次へ »

プロフィール

平山幸江(ひらやま・さちえ)

アメリカ小売業コンサルタント

1993年よりニューヨークを拠点に活動。Jクルー・ジャパン(伊藤忠プロミネントUSA)、フェリシモ・ニューヨーク、イオンUSA調査ディレクターを経て2010年に独立。

アメリカ市場でのファッション、小売事業展開の実務経験に基づいた市場調査分析、戦略企画が専門。「販売革新」「ファッション販売」他執筆。米国小売最新情報に関する講演。慶応大学及びファッション工科大学卒業。


2016年04月
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
最新記事
月別アーカイブ
カテゴリアーカイブ