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1+1=3の相乗効果?大都市圏に急増する百貨店系オフプライス
先月ご紹介した「オフプライス業態再度ブーム」のアップデートなニュースが今月も続いた。20日、ブルーミングデールズの「ザ・アウトレット・ストア」がマンハッタン内アッパーウェストサイドにオープンした。25,000スクエアフィート、同社初めての地下1階、地上2階の3層のオフプライス業態は、59丁目本店の商圏内であるため、地元では共食いやブランドイメージ低下などへのうわさもあったが、実際には、規模も小さく、人気のあるマス・ブランドに絞られているのでうまく棲み分けをしていきそうな雰囲気だ。(店舗の詳細は後述)

この1週間前に、サックス・フィフス・アベニューがアッパーイーストサイド、ブルーミングデールズからわずか徒歩5分以内の場所に同社オフプライス業態、オフ5thの出店を発表した。規模は47,333スクエアフィート、倒産したオフプライス・チェーン、ダフィーズの跡地だ。ロックフェラーセンター前のサックス本店からも徒歩15分程度の場所だ。

来年はワールドトレードセンター地区でサックスフィフスアベニューのマンハッタン2号店とオフ5thがオープンする。そして2018年にはニーマン・マーカスとノードストロームがマンハッタン初進出。ノードストロームは既にユニオンスクエア地区にノードストローム・ラックを営業している。

すなわち、過去は距離を置いていたはずの百貨店系オフプライス業態が、堂々、本家本元の百貨店業態と並ぶようになるのだ。サックスでは既にサンフランシスコやロサンジェルスでも百貨店に近いダウンタウンにオフ5thを出店している。同社親会社ハドソン・ベイのジェラルド・ストーチCEOはWWDの11月14日インタビューで「百貨店本体とオフプライスが並ぶことは1+1=3の効果がある」と説明している。品揃えは狭いが価格が安いオフプライスを持つことで、百貨店では購入しにくい10代から20代のヤング層を取り込むことができ、グループとして新たな顧客開発のプラットフォームとなる、ということだそうだ。

しかしそのためには、共食いを避けるため、百貨店はよりラグジュアリーでエクスクルーシヴな存在に、オフプライスはコンテンポラリー(若い感覚)で今すぐ買いたいものが低価格で買えるようにしなければならない。

さて、ブルーミングデールズのアウトレットに話を戻そう。プレス・プレビュー時には既にソフトオープニングとして宣伝なしに営業を開始していた。狭い店内が混み合いすぎないように入店制限をしていたが、地元顧客が20人前後列を作っていた。広報担当者の説明によると以下の点で過去のアウトレット・ストアには無い試みがなされている。
*コンクリート打ちっぱなしの簡素な店内デザインだが、ニューヨークのタクシーのイエローと黒を店舗デザイン上のカラーに使用。他にニューヨークらしい標識などもアクセントに使用。
*集中レジカウンター以外にモバイル決済システムを導入し、店内の各フロアに5機、専用レシートプリンターを設置。
*什器から品揃えまで「コンテンポラリー」なストーリー展開。
*百貨店内レストラン「40キャロット」で大人気のフローズンヨーグルトバーを設置。これは他のアウトレットにも増設中。
*2Fへの踊り場には香水売り場を導入

商品はデザイナー商品60−70%、百貨店クリアランス在庫20%、アウトレット向けPB10 ―20%で構成されており、通常は定価の50−75%引きだ。マイケル・コース、カルヴァン・クライン、ラルフ・ローレン、ヒューゴ・ボス、トーリー・バーチ、ジョン・ヴァルヴァトス、トゥルーリリージョン、コンバース等がオープン時の品揃えだ。

筆者の感想としては狭い上に3層なので、買い物しづらい、というのが正直なところだ。もっとも、同店は大人気のスーパーマーケット、トレーダージョーズとフェアウェイにそれぞれ数分の距離なので、食品買出しのついでに立ち寄るには便利だ。しかし、徒歩10分以内にオフプライス大型店舗センチュリー21があるので、こことの勝負がどう出るか。ブルーミングデールズ広報担当者への質問に対して、「センチュリー21とは品揃えが異なる。弊社はコンテンポラリーに絞り、ストーリーある編集をしているから競合しない」とのこと。いずれにせよ、オフ5thが開店すれば、本レポートのテーマである「百貨店とオフプライスの相乗効果」の流れを占うおもしろい事例を見ることができるだろう。

(写真)店舗ファサード/1Fメインレジ/2Fへの階段。ブルーミーらしいサイン/2Fレディス売場/地下1Fメンズ売場/2F 40キャロット

 2015/11/30 22:27  この記事のURL  / 

ブラックフライデー速報(2)やはり強いアマゾン
インターネット・リテーラー社が今年伸長したブラックフライデーのオンライン動向について興味深い速報を発表しているので、そこから要点をまとめてご紹介したい。

昨日もご紹介した感謝祭とブラックフライデー2日間のオンライン売上のアップデート情報。アドビ・デジタル・インデックス推計値(注1)によると両日48時間で44億7,000万ドル、前年比18%で、米商務省の予測数値15%を上回る結果だったようだが、中でもアマゾンの売上が目覚しかったようだ。

通販企業、シルバー・スター・ブランド社(注2)によると、同社のオンラインストアの前年比は、感謝祭当日で18−42%アップ、ブラックフライデーで12 –30 %アップだった。感謝祭の方が伸び率が高いのは、もともとブラックフライデーの方が市場規模が大きいからだ。

しかしながら、アマゾン・マーケットプレース上のストア売上(ブラックフライデー)は前年比86%だったとのこと。トラフィックの動きを分析すると、消費者はアマゾンを商品検索のスタート地点としているようだ。
アマゾンはまだアメリカでの詳細数値を発表していないが、今年、アメリカ流ブラックフライデーが本格化したと話題になっている英国では、アマゾンのブラックフライデー売上は740 万ドル、前年比34.5%伸長そのことだ。

チャネル・アドバイザー・コープ(注3)の調べでは、ブラックフライデーのオンライン売上成長率は平均で20.3%。チャネル別では、アマゾン20.8%、グーグル・ショッピング40.3%、eベイ1.5%とのことだ。Eベイの数値が低いのは、マーケティングキャンペーンを宝飾品やコレクターアイテムに絞ったことが原因で、この時期、TVやおもちゃの安売りを期待している消費者のニーズに対応できなかったのが敗因のようだ。

もう1つ注目すべきは「Eメールキャンペーンの復活」だろう。マーケティング企業カストラ社(注4)によると、ウェブサイト訪問を動員したトップはEメールだったと言う(図表参照)。Eメールはパーソナル化が進んでおり、ダイレクトに消費者にアプローチできる点でソーシャルメディアを押さえた形だ。

確かに、一時期に比べてフェイスブック等ソーシャルメディア・マーケティングに関するニュースが減った。改めて主要各社のフェイスブック・ページを見ても、あまりぱっとしないし、毎日アップデートしていない企業すらある。アマゾンに至っては、顧客のクレーム対応ページと化しており、それはそれで小売業研究者としては興味深いが、マーケティングツールとしては機能していない様子だ。

明日はサイバーマンデー。すでに今日からオンライン・ストアの次の戦いが始まっている。

(注1)アドビ・デジタル・インデックス推計値:オンラインストア4,500サイト・1億8,000万のサイトヴィジットを調査
(注2)シルバー・スター・ブランド社:1934年創業の通販会社。現在7ブランド、全米1億2,000万人にリーチし、インターネット売上201位。
(注3)チャネル・アドバイザー・コープ:全米有数のeコマース・ソリューション企業によるデータ。
(注4)カストラ社:200以上のオンライン・リテーラーの決済データより。
 2015/11/30 03:11  この記事のURL  / 

ブラックフライデー速報
今年のブラックフライデーの速報が出た。タイトルはどの新聞でも「買い物客は店舗からインターネットへ」だ。インベストメントバンク、ジェフリーズの調査(注1)では、オンライン購入予定者:店舗購入予定者の比率は、2014年19%:35%から2015年36 %:18%、オンラインと店舗が入れ替わったような数値だ。

オンラインストア4,500サイト・1億8,000万のサイトヴィジットを調査するアドビの調査(注2)でも、感謝祭当日のオンライン推定売上高は17億3,000万ドル、前年比22%伸長し、トラフィックの60%がモバイルだったという。ブラックフライデーのオンライン推定売上高は26億ドル、前年比14%の予測だ。

様々な報道から読み取る今年の特徴は、
1)上記のように店舗からオンラインへのトレンドは明らか
2)一部の店舗は木曜日夕方からオープンし、それなりに盛り上がった(メーシーズ、JCペニー)が、全般的にはブラックフライデー早朝のドアバスター(長い行列を作り、店内になだれ込む)は減り、客足が分散した形
3)逆にオンラインストアのクラッシュやスローダウン(サイトへのヴィジター数が多過ぎることによるキャパオーバー)が発生=オンラインへのトラフィックが増えている証拠
4)ただし、オンラインでもアマゾンや大手チェーンがブラックフライデーセールを1週間前倒しで開始した影響で、サイバーマンデーも成長の勢いが衰え、全般的に分散型となる予想
つまりは、今までのようにピンポイントのホリディセールではなく、11月半ばから12月24日までの長いマラソンのような商戦に変わった、ということだ。

なお、売上を牽引する商品はアパレルやアクセサリーからサムソン4K TV、ソニー・プレイステーション4、iパッドエア2等のエレクトロニクス製品、音楽やバケーション等に移っている。ファッション業界がブラックフライデーをリードできないのは、must have(絶対に手に入れたい)商品の不在、と言われているが、その点、エレクトロニクスや音楽・ビデオの世界では、人々の歳時記にあわせた製品開発・マーケティング努力がなされている。ファッション業界ももう少し非ファッション業界に学んでもよいのではないだろうか?

一方で、メーシーズではマイケル・コースのハンドバッグ、PBのチャータークラブのカシミアセーターが、ノードストロームでは$39.99カシミアセーターがベストセラーだったそうだ。わくわくするようなmust haveが無いならば、ド定番で勝負、という正攻法も効き目がある、ということか。

(注1)ウォールストリートジャーナル紙
(注2)ニューヨークタイムズ紙

百貨店のブラックフライデーのオンラインストア(出所:メーシーズ、ニーマンマーカス、ノードストローム、ブルーミングデールズ)
 2015/11/29 00:54  この記事のURL  / 

感謝祭、そしてホリディ商戦2015開始
いよいよホリディ商戦がスタートする。今ニューヨークは感謝祭の午後3時。数年前ならメーシーズのパレードを見て、家族や友人と七面鳥ディナー。そして深夜まで飲んだりしゃべりまくって、翌朝ブラックフライデー未明に大手小売店の大セールに行く、のがパターンだった。しかし昨年から顕著にパターンが変わっている。

2012年からメーシーズやウォルマート等大手チェーンストアが感謝祭当日の夜から開店するようになった。感謝祭はアメリカ人にとっては祖先の開拓者の努力に感謝する、お正月のような一日なので議論を呼んだが、これが小売業の新たなルールとなった。
昨年はアマゾンがブラックフライデー・セールを1週間早め、サイバーマンデーも1週間伸ばした結果、感謝祭を中心に2週間の大セールとなった。

今年2015年は、感謝祭にオープン組とクローズ組に分かれている。コストコ、ホームデポ、ノードストローム、ニーマン・マーカス、ティファニー等は感謝祭は休業だ。大手アウトドア、REIにいたっては感謝祭だけでなくブラックフライデーも休業するという。その理由は「感謝祭というアメリカの伝統行事を商業主義に利用することに異議を唱え、顧客には家族の時間を大切にしてほしい」からだ。

しかし、その他のクローズ組の本音は@感謝祭当日に営業しても、休日手当てを含む経費負担が重い一方でマージンはほとんど取れず儲からない、Aオンラインは24時間営業しているので、そちらでカバーできる、だ。

一方オープン組は「ブラックフライデーの大バーゲンのために列を作って待つのも家族の恒例の娯楽の1つ。これをやめる訳にはいかない」という判断で、メーシーズ、ウォルマートは本日感謝祭の午後6時開店、JCペニーにいたっては午後3時、まだ七面鳥ディナーを食べる前の時間から営業開始する。ギャップのオールドネイビーは午後5時に開店し明日ブラックフライデー終了まで全店50%オフだ。

全米小売業協会によると、今年のホリディ商戦は3.7%成長との予測、過去10年間の平均2.5%より高いが、昨年実績4.1%より低い予測だ。景気回復やガソリン価格の低下など追い風要因がある一方で、人々が衣料品やアクセサリーよりエレクトロニクス製品、あるいは自宅改装や自動車買い替え、旅行、といったライフスタイルを豊かにするような大型消費に目が向いているため、百貨店など衣料品への依存の高い業態は苦戦するという予測もあり、事実百貨店最大手メーシーズは直近の第3四半期に既存比マイナス3.6%、通年一株利益予測を当初より50−60セント下方修正している。

また世界情勢も今年のホリディ商戦に影を落とすのではと懸念されている。米ドル高の継続、ロシア、ブラジル等新興国での政治情勢の影響で百貨店等で高額な買い物をする海外観光客数が減少していること、パリのテロの影響でニューヨーク等テロのターゲットになりやすい都市への買い物客が減るのでは、という懸念もある。

また、今朝のニュースでは年々ギフトカード(商品券)が増えていることにふれ、アンカーは「モノがあふれているのに、モノをもらっても無駄」とコメントしていた。そう言えば、私も子供の学校の父兄会に行くとしばしば「あなた、日本人?やっぱり断捨離してるの?」などとたずねられる。近藤麻理恵の「人生がときめく片付けの魔法」は英訳され、私の周囲でも相当数のアメリカ人が読んでいるが、これがアメリカでもブームになると小売業者としては少々やっかいそうだ。

いずれにせよ、来週明けには商戦速報が出て、小売業者は最終レースに臨む。12月31日にシャンパンで1年の締めくくりするのを楽しみに。

(写真)見物の子供たちをターゲットにした、ショッピングカートを利用したカートショップ。案の定、パレードより人気があったりする。ハロウィーン同様、この国では子供以上に大人がこのパレードを楽しみにしており、少しでもよい景色を得るために抱き合いながら直径20センチのポールの上に器用なカップル。自撮りも含めてなんと20分以上この体勢で写真を撮りまくっていた。

 2015/11/27 05:30  この記事のURL  / 

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プロフィール

平山幸江(ひらやま・さちえ)

アメリカ小売業コンサルタント

1993年よりニューヨークを拠点に活動。Jクルー・ジャパン(伊藤忠プロミネントUSA)、フェリシモ・ニューヨーク、イオンUSA調査ディレクターを経て2010年に独立。

アメリカ市場でのファッション、小売事業展開の実務経験に基づいた市場調査分析、戦略企画が専門。「販売革新」「ファッション販売」他執筆。米国小売最新情報に関する講演。慶応大学及びファッション工科大学卒業。


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