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H&Mのアンド・アザー・ストーリーズが5番街にオープン
&Other Stories(以下ストーリーズ)と呼ばれる同コンセプト店舗2号店が5番街と42丁目の角に昨日オープンした。昨年10月にオープンした1号店はソーホーにあり、「幸せな気分」がテーマだが、2号店は向かいにあるブライアント・パークと観光名所でもあるニューヨーク市立図書館本館に敬意を表して「緑、リサイクル、読書」がテーマだ。

ストーリーズは2年半前に開発された業態で、現在世界中に25店舗ある。来年はローワーマンハッタン、ワシントンDCにも出店の予定だ。H&Mがファッションのトレンドを世界中にいち早く廉価で提供した結果、多くの「使い捨て」を生み出してしまった。大量販売の限界も見え始めている。そこで、よりローカライズ(地域特有)されたコンセプトや品揃えのストーリーズが登場した。なお、同様にCOS(コス※)という新業態も現在出店拡大中だが、こちらはH&Mより大人の世代をターゲットにし、価格帯も上でシックなスタイルが中心、現在全世界で133店舗展開している。このコスに比べて、ストーリーズは20代の若い世代向け、価格はH&Mより高く、コートが275ドルから325ドル、ドレスが100ドルから325ドル、バッグが100ドル以上300ドル前後だ。
※5番街42丁目の角はもともとH&Mだったが、数ブロック北に旗艦店開業伴い、この角地を2分し、角の公園側をストーリーズ、残りの面積をコスとしてオープンした。

5番街店はソーホー店の約3倍、9,700スクエアフィートあり2階建てだ。 店内に入って際立って目に入るのは、
*ファッションショーのバックステージのような衣料品陳列:ハンガーにコーディネートできる上下をかけ、その上にコーディネートした時の写真を添付
*緑のテーマということでショーウィンドーから店内中観葉植物だらけ:サトシ・カワモトによるインストレーション(落ち着いた気分になる)
*デザインの割には安い
*簡単にできるリサイクルを促進、「着古した服を店舗に持ち込めば10%オフ」
*靴売り場、下着売り場は独立した内装
*何よりも、「言われなければH&Mとはわからない」ムード

本業態はCEO自ら数年をかけて研究し尽くしたといわれている。1号店のソーホーは必ずしも評判が良かったわけではなく、ニューヨークタイムズ紙は「意図はわかるが、ここで幸せな気分で買い物をできるとは思えない」ということで試しに購入した商品の1つは返品予定とコメントしている(2014 年11月18日)。しかし今回は五番街の南端角地、東に向かえば郊外高級住宅地からの通勤客が利用するグランドセントラル駅、西に向かえばタイムズスクエア。地元民と世界からの観光客の両方が集まる角地で、いかに健闘するか楽しみだ。ちなみに、ここから2ブロック南下したところにまもなくMUJIのマンハッタン5号店がオープンする。

 2015/10/31 23:14  この記事のURL  / 

強い女性が盛り上げるアメリカのハロウィーン
全米小売業協会の調べではハロウィーン市場は昨年で74億ドル。ハロウィーン関連商品購入者の1人当り平均単価は78ドルだ。近年急激に成長し、一説ではクリスマスに次いで大きなホリディ市場とのこと。

サーチ・エンジンのビング社は直近のハロウィーン・ショッピングについておもしろいデータを公開した。1つはコスチュームのキーワード検索。何とトップ10位のうち4ワードがバットマンに登場するキャラクター。11位がジョーカーなのでこれを含めるとバットマン・チームの圧勝だ。しかも、9位のバットマン以外は全部悪役だ。「ハーレイ・クィン」(1位)、「ポイズン・アイビー」(4位)、「キャット・ウーマン」(10位)など女性のセクシー系悪役が目立つ。また善悪に関わらず強い女性が人気で、「ワンダーウーマン」(3位)、「眠れる美女に登場する悪女」(5位)。

一方男性系は「デッドプール」(8位)、「バットマン」(9位)のみ。子供向けも、「ミニヨン」(2位)、「スターウォーズ」(6位)、「ディズニーのミニーちゃん」(7位)が登場するが、11位以下も上位は大人向けのコスチューム検索が優勢だ。

一般名詞での検索結果を見るとトップの「ハロウィーン・コスチューム」に続いて「女性向けハロウィーン・コスチューム」が2位。「セクシーな女性用コスチューム」も上位でいずれも「子供向け」「赤ちゃん向け」を抜いている。

このように、強くてセクシーな女性コスチュームが人気なようだ。子供と一緒にお母さんが着用するのか、ボーイフレンドとのデートの一環なのかは不明だが、かつてミッシーといわれたファッションが苦戦し、一方アクティブウェアが職場でも着られるようになって大伸長している今のアメリカのファッション・マインドを映し出しているようでもある。

(写真)
「ハーレイ・クィン」「ワンダー・ウーマン」Art by Alex Ross, Wikipedia.org
「ポイズン・アイビー」Art by Brian Bolland, Promotional art for Batman: Gotham Knights #15, Wikipedia.org

 2015/10/31 00:00  この記事のURL  / 

トーリー・バーチはアメリカのシャネル?
ウィメンズ・ウエア・デイリー紙が例年開催するCEOサミットの記事の中で、トーリー・バーチと共同CEOのロジャー・ファラ氏の対談に目が留まった。ファラ氏はラルフ・ローレン社の副社長まで上り詰め、いったんは引退したが、昨年トーリーが口説き落として現職についた業界の重鎮の一人だ。

トーリーのデザインは「プレッピー・ボホ(ボヘミアンの略)」と呼ばれ、気楽に着られ応用が利くスタイルだ。彼女を有名にしたのは頭文字のTをモチーフにしたロゴのメダリオン。日本でもこれがついたバレエ・フラッツ(靴)やバッグを持っている人は多いだろう。確かに彼女のデザインには独自な世界があるが、ブランドの急成長を下支えしたのは、彼女自身のライフスタイルやパーソナリティ、投資家の父と女優の母は結婚前にはそれぞれグレース・ケリーやスティヴ・マックィーンとデートしていた等の話題性に基づくマーケティングの力も大きかったようだ。

2度目の結婚相手で投資家だったクリストファー・バーチから200万ドル(2億円)を提供してもらい2004年にブランドを立ち上げ、翌2005年にはTV界に多大な影響力を持つオプラ・ウィンフリーがブランドを賞賛したことで人気急上昇。2006年に同社の急成長の原動力となったロゴ付きリーヴァ・フラッツを発売し、2008年には25万足を販売、2013年には500万足以上販売したという。現在推定年商は10億ドル、企業市場価額は35億ドルといわれており、全米に49店舗、海外24店舗、百貨店や専門店1,000箇所以上に卸売販売を行っている。

さて、ファラ氏は対談の中で「トーリーはアメリカのシャネルになれる」と語った。その根拠は魅力的な商品だけでなく、美貌も含めて人をひきつけるパーソナリティ、ファッション業界やセレブリティとの広範囲なネットワーク、その結果、業界からの受賞、TV出演、新商品デビュー・キャンペーンへの協力確保などあらゆる段階で「バズ・メイキング=評判を盛り立てる支援」を勝ち取るパワー、そして、へこたれずに働き続けるエネルギー、のようだ。

トーリー・ブランドは、アメリカ市場ではあまりにもロゴが普及してしまったので、ある日急落下もあり得るのではという懸念の声もある。ブリッジの価格帯だけに、商品の品質もお世辞にも最高級とは言えない。靴やバッグ、サングラスなどアクセサリーは好調のようだが、衣料品はどうだろうか。今年夏には「トーリー・スポーツ」というアクティヴウェア市場にも参入したが、
特に市場で人気という話は聞かない。

トーリー自身も急成長の10年間に続く「次の10年が大切」と語っていたが、確かにこれからが正念場のようだ。しかしブリッジという難しいカテゴリーの中でどう駒を動かしていくのか、興味深いファッション・ブランドだ。

(写真)トーリー・バーチ・スポーツのマンハッタンにあるポップアップストア。来年にはマンハッタンに直営1号店を出店する計画だ。(出所:トーリー・バーチ社)
 2015/10/30 22:54  この記事のURL  / 

オフプライス業態、再度ブームに
昨年、メーシーズがオフプライス業態への参入を発表して以来、アメリカの百貨店業界ではオフプライス業態が再度注目されている。メーシーズの「バックステージ」は現在ニューヨーク、ニュージャージ地区に6店舗営業しており、今後全国規模での出店に備えている。

同社傘下にあるブルーミングデールズも今年春にオフプライスへの参入を発表し、1号店はマンハッタンのアッパーウェストサイド。B社によると11月感謝祭前に開業の予定が、工事の遅れにより12月になるそうだが年内の開業を目指しているとのこと。

そして昨日、ロード&テイラーが「ファインド@ロード&テイラー」の名称で来年オフプライス業態を展開すると発表した。

百貨店のオフプライス業態と言えば、ニーマン・マーカスの「ラストコール」、サックス・フィフス・アベニューの「オフ・フィフス」、ノードストロームの「ノードストローム・ラック」が先発組で、もともとの百貨店店舗数を上回る程の店舗展開をしている。オフプライス業界全体を見渡すと、リーダーのTJマックス社(年商4兆円以上)が全米および世界7カ国で7業態、計3,461店舗網を敷いている。

後発組にとって幸いなことに、オフプライス市場では市場競争の結果、脱落組が出てきている。全米でも高所得者の人口密度の高いニューヨーク、ニュージャージー地区では、2012年、2013年にリージョナル・チェーン大手だったダフィーズ(倒産当時19店舗)、ローマンズ(ピーク時には100店舗)が相次いで倒産した。両社共に大手との競争で魅力あるブランドの獲得が難しくなったことが原因だ。その跡地が後発組にとっては絶好の出店用地となり、スピーディな出店、過去の顧客の獲得が可能だ。

百貨店系オフプライスはいずれも3万スクエアフィート前後、大雑把にオリジナルの百貨店の3から5分の1のサイズだ。価格ポジショニングは、ロード&テイラーもメーシーズも「TJマックス(低価格)とノードストローム・ラックの中間」というあたりを狙う。前者がブランドTシャツ10ドル台に対して後者が30-40ドル台、その中間というあたりか。

下図のように、もともとは高級百貨店が在庫処分チャネルとして早くからオフプライス業態を開発・拡大してきたが、メーシーズやロード&テイラーのような中価格帯百貨店は後手に回っていた。もともとデザイナー・ブランドをより手の届く価格で販売してきた百貨店にとってオフプライスをいかに舵とりするのか、興味深い。

この点でロード&テイラーのオフプライス業態には1つ見所がある。同社の系列会社、サックス・フィフス・アベニューはすでに89店舗オフ・フィフスを営業しているが、「このマーチャンダイジングチームがファインド@L&Tのマーチャンダイジングも行う」というものだ。ウィメンズ・ウエア・デイリーの取材によると「これによって経費効率よく経営できる」とのことだが、価格帯の違う2つの業態を管理することでマーチャンダイジング面でも攻めのシナジー効果が出るのではないだろうか。
 2015/10/29 07:10  この記事のURL  / 

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プロフィール

平山幸江(ひらやま・さちえ)

アメリカ小売業コンサルタント

1993年よりニューヨークを拠点に活動。Jクルー・ジャパン(伊藤忠プロミネントUSA)、フェリシモ・ニューヨーク、イオンUSA調査ディレクターを経て2010年に独立。

アメリカ市場でのファッション、小売事業展開の実務経験に基づいた市場調査分析、戦略企画が専門。「販売革新」「ファッション販売」他執筆。米国小売最新情報に関する講演。慶応大学及びファッション工科大学卒業。


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