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オンラインからフィジカル(実店舗)へ
数日前のチェーンストアエイジ紙(オンライン)は表題の店舗のリストを紹介しながら、逆方向の動きが加速していることを改めて認識させてくれた。

一般的にオンラインリテーラーは投資が少なく、参入しやすいから、といわれてきたが、過去5年、経済危機後に開業し、瞬く間に成長したオンライン専業リテーラーは、@MBAなどの高度な専門知識を持った若い起業家が綿密なリサーチの下、ユニークかつ説得力のあるコンセプトの業態を開発、Aこの企画書とプレゼンで投資家を捜し当て、投資をさせる能力に長けている、という共通点があり、お金が無いからオンラインで始めるのではなく、「投資家と共にコンセプトが本当に将来性があるか試すために」オンラインからスタートしている。

日本では起業家であろうとサラリーマンであろうと「たたき上げた」に価値がおかれてきたが、アメリカのこういう起業家たちは自分をたたかせるのでなく、事業計画をたたかせるのである。このため、まさに「失敗は成功のもと」、失敗経験は逆に歓迎される。(もっとも、2度目の失敗はご法度だが)

オンラインからフィジカルの企業リストを見ながら、新しいのは業態コンセプトだけでなく、仕事の仕方、事業の起し方も新しいのだと感じる。では、渡米の際にはぜひ足を運んでみてください。

 2015/09/29 03:35  この記事のURL  / 

メーシーズの新ティーンエイジャー・フォーマット「ワン・ビロウ(One Below)」
今月半ば、「セラー」としてアメリカ百貨店史に1ページを加えたメーシーズ本店地下は「ワン・ビロウ」に変身した。ミレニアル(millennials)と呼ばれる13歳から22歳*のティーンエイジャー+大学生の女子をターゲットにした新売場で、衣料品、アクセサリー、化粧品、そしてサムソン・ストアによる家電を販売している。

衣料品でフィーチャーされているのはAmerican Rag, Material Girl, ROXY, XOXO、そしてPBのMyStyleLab。売場の一角にはパーティ用のスパンコールやクリスタルがどっさりついたドレス売場「ホーム・カミング(Home Coming)」があり、子供のころからパ−ティが多いアメリカならではのニーズも押さえる。

化粧品はMAC, Benefit, Cliniqueをフィーチャーし、流行のブロー・バー(髪の毛をスタイリングするだけのサロン)もある。

サムソン・ストアではfit bitフィットネス・トラッカー等のウェアラブル電子機器や3Dプリント・サービスによるジュエリーやiフォンケース制作等、最先端のサービスもある。

また、若い人たちのライフスタイルに寄り添うために、広々とした待合スペースには電源つき無料wifiを用意し、大きな唇のオブジェを背景にした自撮りコーナーもある。

バッグなどのアクセサリー売場の商品は、中2階のバッグ売場でも販売しているブランド(カルヴァン・クライン、ル・スポート・サック等)とここだけのブランド(ヴィラ・ブラッドリー等)があるが、前者は中2階より安く異なるスタイルに絞っている。

日本同様、アメリカでもティーンエイジャーや若い層が百貨店で買い物をしなくなって久しい。若い層はファッションはH&Mなどのファストファッションで済まし、音楽やスマートフォン等電子ガジェット、グルメ等に消費を傾けている。現在メーシーズやJCペニー等の中価格帯の百貨店は、ラグジュアリー百貨店のように年齢の高い高額所得者を取り込むこともできず、ドル高もあって海外観光客の客足も減り、改めて国内需要の次の世代にターゲットを向けているが、移り気で情報感度の高いミレニアルを取り込むことは至難の業。アパレル専門店ですら苦労していることは、アバクロやエアロポスタルの例でご存知のとおり。

と言う訳でメーシーズ本店大改装プロジェクトの終盤が、地下53,000スクエアフィートのミレニアル世代売場となった。オープン時には大きな話題を呼んだセラーズが8階ダイニング&キッチン売場に吸収されてしまったことも時代の反映なのだろう。中途半端なエブリディ食器やキッチン用品は専門店やオンラインリテーラーにはかなわない。

このワン・ビロウは、パイロット業態として成否を見ながら、今後その部分部分を全米店舗に移植していく予定だ。ニューヨーク訪問の際にはぜひご覧いただきたい。

筆者の感想は、まだ何とも言えない、だ。オープンして日が浅いこともあり、外からミレニアルがわさわさ押しかけてくる様子はまだ見られない。あまり広告もしていないようだ。若い層ならSNSでの口コミ効果を待つ、ということか。視察時は平日5時過ぎだったためか、いつものように職場帰りのおばさんたちが娘用だか、自分用だかで手に取っている姿、そして広々とした待合コーナーでスマホをチャージしながらメールを確認する若者たちを見た。今日は日曜日なので、今からまた出かけてみよう。








 2015/09/28 01:54  この記事のURL  / 

一人勝ちのサーファーブランド、ビラボング
先日はクィックシルバー倒産のニュースだったが、サーファーブランド全般、もっと言えばティーンエイジャー・ブランド全体が不振の中、3年に渡る経営再建の末、2011年以来始めて第2四半期でようやく収益化を果たした企業がある。サーファー用衣料品、器具、アクセサリーを販売するビラボングだ。

同社は1973年にオーストラリアで創業、積極的な海外進出、企業買収で成長し、2008年にはニューヨーク、タイムズスクエアにも進出。しかし急激な拡大戦略の一方でグローバルビジネスとしてのインフラ整備の遅れ、経済危機などにより、2012年2月には経営が傾き、抜本的な経営改革の必要に迫られた。

2013年7月に発表された再建計画は、一言で言えばIT投資により世界3地区が独立して経営されていたものを全社一元化して経営効率を上げたことだ。これはERP(エンタープライズ・リソース・プランニング)導入からよりパーソナライズされ、精度が高いEメールキャンペーンまで「全社レベルで効率を求める」ことを追求した。

半年後の12月には7つの戦略が発表され、「より少なく・より大きく・より良く」をモットーにオムニチャネル戦略強化を打ち出した。傘下に治めたブランドをリストラしてビラボング・ブランドに集中し、顧客への直販を主軸としてEコマースを刷新し、新たなオムニチャネル・プラットフォームへの転換を表明した。このため卸売チャネルは重点戦略からはずされた。

さらにCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)にも投資。この段階でiパッド・ミニを用いて、店内でレジ待ちの顧客にモバイルで購入ができるような環境も整えていった。

例えば、ウェブサイトをクィックシルバーと比較して見よう。ビラボングのサイトはショッピングだけではなく、ブログ、イベント情報、ソーシャルメディア等立体的に幅広く顧客と双方向コミュニケーションができるが、あくまでもオンライン・ショップとの立ち位置、シンプルなナビゲーションでわかりやすい。買い物ページでは過去に見た商品やそれに近い商品の推奨等、アメリカ大手チェーンのサイトやオンライン専業のサイトの基本的な設計に従っているので、買い物しやすい。一方、クィックシルバーのサイトは非常にかっこいいが、サーフィング情報やビデオ、ソーシャルメディア等が表に出すぎて、肝心の商品がぱっと目に入らない。

店舗側もしかりで、クィックシルバーの閉店セール対象となっていない旗艦店とビラボング店の比較でも、ビラボングでは商品展開数が絞り込まれているが、クィックシルバーは総花的だ。「品揃えの絞込み」は、同様に最近業績が好転したアメリカン・イーグルでも見られ、絞り込むことで、よりデザインや素材に集中し、顧客側からも選びやすくなっている。

ところでビラボングの再建を2013年からリードしたのは、同社の大株主、オークツリー・キャピタル社だった。同社は今回クィックシルバーの再建計画をリードすることになっており、両社の合併も噂されている。

(写真左)ビラボングのウェブサイト。携帯電話で見る場合でもイメージ発信のトップの部分は小さく、新着商品が大きく表示されている。
(写真右)クィックシルバーのウェブサイト。同じく携帯で見ると、イメージ発信の導入は美しいが、商品を見るまでにもう1クリックしないといけない。

 2015/09/25 21:47  この記事のURL  / 

クィックシルバー倒産、パシフィックサンウェア上場廃止の危機、次はどうなる?
今月9日、サーファー・ブランドの老舗、クィックシルバーがチャプター11を申請した。同社は長らく売上不振で、2013年以降スノーボード部門他の売却などリストラを継続してきたが、結局売上が好転しなかった。

同日、パシフィック・サンウェアがナスダックから上場廃止の警告を受けたことを開示した。株価が1ドルを下回ったからだ。同社は来年2月29日までに株価を回復させないと上場廃止となる。同社は8 期連続で赤字、過去20期のうち19期は赤字だった。しかも同じ報告書によると、CFO(最高財務責任者)が退任したとのこと。こちらも崖っぷちだ。

しかし、ティーンズ・ブランド危機のリストはまだ続く。ズーミーズも減収減益が続いており、既存比は第2四半期▲4.5%、第3四半期見込み▲7-9%で、株価は30%以上下落した。サーファー・ブランド、ホリスターを持つアバクロも第2四半期は既存比▲4%、当期利益も80万ドルの赤字(前年同期は1,290万ドルの黒字)で、過去のトレンドから見ると既存比マイナスの数字は小さくなっているが、比較対象の前年が悪かったのだから多少の改善は出血が収まりつつある、に過ぎない。

このカテゴリーの地すべりはもう何年も続いている。共通の原因と言われているは、
*今のティーンエイジャーの心をつかんでいない=「クールではない」
そもそも、クィックシルバー倒産ニュースでショックを受けたのは、40代、50代の元サーファーとのこと。アメリカの若いティーンエイジャーにとっては、モールに行けばどこにでもある、そこらのブランドとなってしまったことが大きな敗因のようだ。

*サーフィンは時代遅れ
今のティーンエイジャーには、一世代前のサーフィンへの憧れは無い。人気があるのはアイスホッケー、ラクロス、フェンシング、ゴルフ、ヨガなど。また全般的にティーンエイジャーがスポーツをしなくなったという統計もあり、運動評議会(SFIA/Physical Activity Council)が13−17歳を対象に行った「1年間に運動をしなかった」調査では、2007年の17%から2012年19%に増加しており、その傾向は今も続いているとのこと。

*ファッションよりスマートフォン、音楽、グルメフード
日本と同様、説明も不要だろう。

*オーバーストア
ティーンエイジャーのみならず、経営危機のブランドは全て「店舗が多過ぎる」。ある店舗数を過ぎたところから、「誰もが着ている」ためと突然地割れを起こすのだろう。

*オンライン・ビジネスに弱い
逆の言い方をすると、店舗過多になる前に店舗数を制限し、オンラインビジネスにスィッチしているブランドは、足元を固めている。なぜかというと、ティーンエイジャーそして大人もが携帯と共に毎日の多くの時間を過ごしているからだ。彼らが携帯を見ている時間とモールに行く時間の長さは到底比較にならない。今回崖っぷちに立たされているブランドはどこも、情報提供としてのウェブサイトとしてはよくできていたかもしれないが、それ以上ではなかった部分でティーンエイジャーの生活に入り込めなかったのだろう。

しかし、サーファー・ブランドのビラボングのように、起死回生を果たしたティーンエイジャーブランドもある。それについては次回触れたい。

(写真)クィックシルバータイムズスクエア店。閉店セールで全品20−40%オフとなっている。この「閉店セール」のポスターはチャプター11の象徴のような赤に黄色の品のないもので、これを見ると胸が締め付けられるものだ。


 2015/09/22 05:29  この記事のURL  / 

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プロフィール

平山幸江(ひらやま・さちえ)

アメリカ小売業コンサルタント

1993年よりニューヨークを拠点に活動。Jクルー・ジャパン(伊藤忠プロミネントUSA)、フェリシモ・ニューヨーク、イオンUSA調査ディレクターを経て2010年に独立。

アメリカ市場でのファッション、小売事業展開の実務経験に基づいた市場調査分析、戦略企画が専門。「販売革新」「ファッション販売」他執筆。米国小売最新情報に関する講演。慶応大学及びファッション工科大学卒業。


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