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ルルレモン2度目の製品リコールと業績
カナダ発ヨガ・ウェアのルルレモンがまた製品リコールを発表した。今度はジャケットのフードに取り付けられたコードが伸縮するため、場合によっては取り付けられた留め具が顔を直撃する、というものだ。今回はアメリカ国内で13万3000着、カナダで18万5000着、計31万8000着が対象という。2008年1月から2014年12月まで販売されていたそうだ。

前回のリコールは、2013年3月、定番のルオン・ヨガパンツで、下着が透けて見えるのが問題だった。この結果、6,700万ドルの売上損失を招き、製品事業部トップだけでなく、スターバックスから鳴り物入りでスカウトしたCEO、クリスティン・デイ氏の退陣で幕を引いた。

今月頭に発表された同社の2015年度第1四半期の業績は売上高前年同期比10.1%増、ボトムラインの当期利益も前年同期比約3倍と回復傾向で、投資家をホッとさせたばかりだ。
しかし、下図をご欄いただけば一目瞭然のように、過去5年間の業績は、売上自体は当然伸びているものの、売上成長率は低下し、各利益率が減少している。アニュアルレポートによると、2014年度の既存比は▲3%、ドル高による為替差損を除いても▲1%とのこと。原因は購入率の低下と平均購入金額の低下と明記されている。

粗利益率の低下はやはり前述のヨガパンツの影響で、リコールのコストだけでなく、その後の製品改善コストも利益率を押し下げた。

営業利益は為替差損の影響もあったが、前年度からの増加分の半分は人件費の増加だ。現在アメリカでは景気回復を背景に時給上昇基調となっており、今年春にウォルマートが重い腰を上げたが、大手チェーンでは物販、サービス業ともに時給を上げている。ルルレモンのように専門知識が必要な専門店ではその影響が特に大きい、ということだろう。最後の当期利益は、営業コスト増加が主な理由となっている。

なお、気になる部分として、売上内訳に関する部分(下図)で、カナダとアメリカの直営店売上シェアが若干下がり、海外店舗の売上シェアが上がっている。海外店舗はコストが高いのでこれも営業利益を圧迫したとある。またオンライン売上シェアも本来ならもう少し成長が見られるべき領域だ。

さて、もっと気になることがある。現在ルルレモンは世界10カ国に263店舗を展開。カナダ52店舗、アメリカ181店舗、その他30店舗だ。冒頭のリコール対象ジャケット数だが、アメリカでの対象数は全体の42%、残りはカナダ。しかし店舗数でいくとアメリカには全店の68.8%が存在する。リコール対象数は実際の販売数だけでなく在庫数が入っているはずだが、それにしても単純に考えて、「あれ、ジャケットはアメリカではあまり売れていないのかな?」ということになる。カナダの方が寒いから?まさか。多くのヨガ人は屋内で活動するはずだから関係ない。

個人的にはルルレモンは最初のリコール以降、デザインがあまりパッとしないように見える。と言うより、競合他社にスタイリッシュなデザインが増えたのだ。私が通うヨガスタジオでは今でもルルはよく見かけるが、着用率は減っている。少なくとも私のヨガインストラクターはもう着ていない。また、例えばサイクリングとヨガを楽しむような人は必ずしもヨガウェアから入らず、もっと一般的なパフォーマンスウェアを着、同じアスレチックウェアでその日をこなしてしまう。昨日の私の隣のヨガの生徒さんは上から下までアンダーアーマーだった。

報道ではナイキもアンダーアーマーもルルレモンも同じように業績は悪くないように聞こえる。しかし、ルルはアメリカの小売業界の厳しさ、あるいはアメリカ消費者の情け容赦なさ、をかみ締めているように見える。


 2015/06/30 22:37  この記事のURL  / 

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プロフィール

平山幸江(ひらやま・さちえ)

アメリカ小売業コンサルタント

1993年よりニューヨークを拠点に活動。Jクルー・ジャパン(伊藤忠プロミネントUSA)、フェリシモ・ニューヨーク、イオンUSA調査ディレクターを経て2010年に独立。

アメリカ市場でのファッション、小売事業展開の実務経験に基づいた市場調査分析、戦略企画が専門。「販売革新」「ファッション販売」他執筆。米国小売最新情報に関する講演。慶応大学及びファッション工科大学卒業。


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