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全店まるごとヘルシー&ウェルネス・ライフスタイル・ストア化で成長を探るコールズ百貨店
アメリカではヨガやスポーツに励み、ナチュラル食料品店で安全な食品を買い、健康なライフスタイルを実施するのは、トレンドではなく、生活スタイルとして定着したと言う。確かに回りを見ても、朝は生野菜やフルーツのスムージーと植物繊維とミネラルたっぷりのグラノーラ、ブレザーにヨガパンツで仕事に行き、ランチタイムに野菜とチキンのスープを飲んだ後、ジムで汗を流す。夕方またジムに寄り、ジム友達と軽くビールを飲むがつまみはケール(野菜)のチップス、寝る前にはハーブティーと快眠用のアプリをつけながら就寝、というような健康オタクは結構いる。

ここのところ、再三書いたようにアメリカ・アパレル業界に閉塞感がある中で、唯一の明るいスポットがアクティブウェア市場だ。大手調査機関NPDグループによると、推定2,063億ドルのアパレル市場の16%、337億ドルがアクティブウェアで、その伸び率は7%、アパレル全体1%の中では伸長率は高い。

そんな中、中価格帯の庶民的百貨店コールズが、「メイク・ユア・ムーヴ」マーケティングキャンペーンを1月下旬に開始した。店内のアクティヴウェアだけでなく、スニーカー、ワークアウト関連アクセサリー、ジュースブレンダーからアウトドア用品まで、健康的なライフスタイルに関連する商品すべてについて、売り場で共通のサインを立て、オンライン上には「メイク・ユア・ムーヴ」ページを設けて販売している。

今回のキャンペーンの目玉は4月末にヨガ市場のリーダーの1社、ガイアム社との提携で、ヨガウェアのエクスクルーシヴ商品を販売開始したことだ。他に、高級スパ・ブランド、ブリスのライフスタイル・コレクション導入、アウトドア・リクリエーション部門の拡大を行った。

コールズ百貨店は日本で言えばイオンやイトーヨーカドーの食品抜き版だ。スポーツウェアについてはすでにナイキや、アディダス、フィラ等大手ブランドの販売額が大きく、キッチン家電やヘルス用品も幅広く展開しており、言わば「既に揃っている商品群をヘルス&ウェルネスの視点から編集し直し、ガイアムという象徴的スター・ブランドを入れてみた」のが今回のキャンペーンだ。

今回のキャンペーン開始によって、同社は現在20億ドルのヘルス&ウェルネス関連販売額を3年間で30億ドルに成長させる計画だ。手持ちのネタの再編集で本当に売上が伸びれば、確かに非常に効率的な戦略だ。なお、今年の1月-3月四半期の既存比は1.4%伸長、前年同期▲3.4%から改善し、当期利益も200万ドル伸長している。このトレンドをヘルス&ウェルネス効果で継続して欲しいものだ。

(写真&データ出所)コールズ社




 2015/05/31 13:57  この記事のURL  / 

起死回生した小売業者たち
景気の悪い話が続いてしまったが、一方で業績回復を果たした企業もある。

◆ベスト・バイ
いきなり家電の話で恐縮だが、アメリカの小売業界では誰もが引き合いに出す話なのでしばしおつきあいを。家電業界は、アマゾンの低価格・スピーディな無料配送サービスのおかげで近年大手チェーンストアは廃業に追い込まれた。サーキット・シティはいまや伝説の名で、ラジオシャックは現在チャプター11だ。

ベスト・バイも業績はがた落ちで社員の士気も下がり買い物が苦痛な店ともいわれていたが、2012年にホスピタリティ業界からCEOを迎え、不採算店舗を整理するだけでなく、「販売員による専門度の高いサービス」、「価格マッチング」、「店舗でのピックアップ」を切り口に業績回復を果たした。特に、オンラインと店舗のヴィジュアルを重視し、すっきりとしたデザインのスクリーンや店内デザインに変更。また、サムソンやマイクロソフト・ウィンドウズのインショップを導入することでメリハリのある店舗として、アマゾンができない「実際にモノを見て触ることの楽しさ」を提供した点は、店舗事業の原点への回帰と言える。

◆JCペニー
2011年に鳴り物入りでCEOに迎え入れた元アップル店舗事業の幹部のとんちんかんなディレクションにより、クーポンや40%オフで日常生活品を買う店から、クーポンとバーゲン完全撤廃のトレンディでチープシックなインショップ集合体に変えてしまった結果、既存比が▲25.1%も下がってしまったJCペニー。結局、2013年に前のCEOウルマン氏が戻ってきて、昔通りにクーポンとバーゲンの店に戻し、2年かかってやっと業績が回復した。

昔通りと言っても、決して古いものに戻った訳ではない。元アップル幹部の号令で多くの店舗がインショップに向けて店舗改装を行ったため、結果的にリフレッシュした店内、広くて歩くやすくなった通路などは残り、ここに「以前よりちょっと陳列をきれいに」したり、「以前よりちょっと価格などの表示を見やすく」したり、「以前よりちょっと販売員がぶっきらぼうでなくなったり」と言う少しずつの改革を行った結果でもある。元アップル幹部は最後たたき出された形だったが、「以前よりちょっと」の多くは彼の大変革の落とし子だ。反面教師という意味で彼の役割は大きかったと思う。まもなく救済に戻ってきたウルマン氏は2回目の引退に入るので、次のCEOが「現状復帰」以上の業績伸長を果たせるのか、見ものだ。

◆ターゲット
ターゲットは2013年クリスマス商戦時にクレジットカード・顧客データ流出事件にあい、当然のように業績が下がった。これの回復策として決め手になったのが、ジェイソン・ウーや直近ではリリー・ピューリッツアー等「デザイナー・コラボレーション」プロジェクトだった。次回はジュエリー・デザイナーのエディ・ボルゴだそうだ。

このコラボはデザイナー商品をターゲット価格で買えるだけでなく、「期間限定商品」という点が魅力だ。リリーPの時にはオンラインがクラッシュするほどの人気で、ミッソーニの時も即日完売でクレームが出たほどだ。自分が着用しなくても「限定品」ということでeベイ等で再販するとプレミアムがつくのも魅力とのこと。顧客の間で「今度は私が好きなあのデザイナーにして!」というソーシャルメディア上の会話も、企業にとっては価値のあるフィードバックだ。

◆アメリカン・イーグル
本ブログでアメカジ3兄弟と呼んでいた次男坊、アメリカン・イーグルが業績という数字上復活した。さすが次男坊はたくましい。店頭を見ていても確実に言えることは、同社は「品揃えを絞り込むという犠牲をおかしてでも、セール乱打から足を洗い、コア顧客の目を覚まさせた」という点だろう。品揃えの幅を狭めるのは勇気の要ることだ。ちょっとのさじ加減で「つまらなくなった」と思われてしまう。しかしアメカジのようにクラシックなカテゴリのファッションなら、1球1球のクオリティをあげることで頑張れる、と踏んだのではないだろうか。

長男のアバクロは昨年秋にロゴを廃止と宣言し、最近ではセクシー路線も中止したばかりだが、今週「ロゴをちょっぴり戻す」とまた路線修正を行った。アメリカン・イーグルは客足が減っても、利益が改善するまで自社ブランドのフィット感やディテールのクオリティ、テーストを信じて2年間じっと我慢した。

ちなみに三男坊のエアロポスタル4日前の四半期業績発表で、既存比▲11%。前年同期の▲13%よりはましなものの、予測を下回り、投資家系のオンライン・ジャーナルには「終焉の始まりか?」という見出しまでついている。もしこれが実現してしまったら、価格帯の少し上のイーグルにはディフュージョンラインで市場シェアを取るという選択肢も出てくる。もちろん、それまでにコアブランドが本格的に強くなっていればの話だが。

(図表出所)各社決算報告書より

 2015/05/31 01:11  この記事のURL  / 

マイケル・コース既存比初のマイナス
昨日Jクルーをくさしたばかりなので、別に用意してあったネタをと思ったが、あまりに美しい既存比減のチャートを見てしまい、つい書くことにした。

例によって、コーチやJクルー同様、「アフォーダブル・ラグジュアリー(手が届く贅沢品)」路線の足場が崩れている話である。とうとう、マイケル・コースも第1四半期アメリカ国内既存比が▲6.7 %だそうだ。(全社では▲5.8%) 2011年上場以来初めてのマイナスで、主な要因は、ドル高により観光客の売上減、主力の1つ、時計の売上が不振だったことだ。販促を減らしたのに営業利益は前年度より▲3.1%下がり、当期利益予測もアナリスト予測を大きく下回る予測に下方修正し、当然ながら27日の発表前は60ドル前後だった株価も現在45ドル台に落ちている。

しかし、よくよく考えなくても、1ブランドが年商317億ドル(3兆9,300億円)も売っているという事実だけで、既にアキマヘン!と言える。しかも年商の半分は卸売。ということは、値引きやアウトレット行き等々、卸した先でどんな扱いを受けているかわかったものではない。

ジョン・アイドルCEOは「ラグジュアリーブランドのように、一部の人しか買えないのではなく、より多くの顧客が商品を手に入れられるようにするのは、わが社の使命の1つ」とコメントしている。しかし、コースのバッグや衣料品はH&Mやユニクロのように誰もが買える値段ではない。貧富の差が激しいアメリカ、ニューヨークやロサンジェルスのような人口密集する世界規模の大都市では税金や生活費が高く、CもMKも決して「手が届く」お気楽な価格ではない。

それ以前に、これだけモノがあふれていて、生活はスマホを中心に回っていて、必要なものは取りあえずオンラインをチェックする人々がキーワード検索で「アフォーダブル・ラグジュアリー」などと入力するだろうか?また、彼らの「手が届く贅沢消費」予算分配の中に、値段ばかり中途半端に高くて誰もが持っているブランドがトッププライオリティとなるだろうか?(バーゲンになれば衝動買いは誘えるだろうが)

アメリカではヨガウェアやアスレチックウェア市場が成長しているが、それはファッションだけでなく、ライフスタイルに直結しているからだ。美しいボディラインを獲得したい人、老化を遅らせたい人、ジムで素敵な女性に出会いたい人、とにかく健康になりたい人。そういう人々は高くてもウェアやスニーカーに投資する。そう言えば、昨年Jクルーはヨガウェアへの参入をきっぱり否定した。「専門家にお任せするべき」が理由だったが、ではアフォーダブル・ラグジュアリーの専門領域とは何なのだろうか?

(図表)マイケル・コース社の四半期毎の既存比(全社)推移をウォールストリートジャーナルが作表したものを拝借した。Source: Wall Street Journal, May 27, 2015

 2015/05/29 06:12  この記事のURL  / 

Jクルー大ファンたちがWSJ紙でブランドにご意見
昨日のウォールストリートジャーナル紙上でJクルーがフィーチャーされた。タイトルは「Jクルー様、私たち、どうなっちゃったの?あんなに特別の仲だったのに」。

熱烈なファンをもつJクルーの昨今のマーチャンダイジングのミスを、顧客の声として指摘する内容だ。Jクルーと言えば、もともとはクラシックなブレザーやコットンパンツ、ポロシャツやカットソーをプレッピーなスタイル、カラー展開で人気だった。2003年にギャップ・ブランドのトップだったミッキー・ドレクスラー氏がCEOに就任してからは、ブランドのアップデートが行われ、「アフォーダブル・ラグジュアリー」のちょっと下を狙って、クラシックだがラグジュアリー・ファッションの香りがする商品に変わっていった。現在でも、ヤング・プロフェッショナルから60代まで、幅広い顧客層に支持されている。オバマ大統領夫人も就任当時は頻繁にJクルーを着て公式行事に参加していた。

さて、昨年同社の業績は不振で、今年3月のコンファランス時にドレクスラー氏は「昨年はひどい(lousy)一年だった」と述べたほど。特にレディスが問題で、しかし春から商品を刷新し、もう少しクラシックなスタイルと、Jクルーらしいカラーパレットに戻る、と「改善」を宣言し、当ブログでも紹介した。

ところが昨日のWSJでは、多くの顧客が、Jクルーが高いばかりで着たくても着られないブランドになってしまったと嘆いている。WSJオンライン版ではさらに、記事内容に同感する「長年のJクルーの大ファン」のコメントが次々寄せられている。以下が不満の内容だ。(そしてカッコ内が筆者のコメント)

*生地や縫製がお粗末になった。数回洗っただけで穴が開いたり、ボタンが取れたりするようになった。(筆者のTシャツも、必ず脇の下の縫い目から穴が開く)

*同じサイズでもデザインによって大き過ぎたり、小さ過ぎたり統一性がない。また、同社は最近サイズ000を香港およびオンラインに導入し、他ブランドではサイズ10(日本のサイズ13)がJクルーではミディアムとなっている。(典型的な「実寸よりサイズを小さく表示すればお客が喜ぶ」方式?)

*数年前まではどのデザインも素敵で、私のワードローブは全部Jクルーだったのに、この数年はお店に行っても実際に着られるものがない。どのスタイルもスキニー過ぎるか、ダボダボか。(スキニー過ぎるというコメントはここかしこに登場している)

*CEOはメンズ部門は好調と言っていたが、どのスーツも細身過ぎる。(お腹周りに自身の無い人には無理)

*靴やハンドバックはクオリティに対して値段が高過ぎる。(確かに179ドルも出せば、アウトレットストアやフラッシュセールでいくらでもデザイナーバッグを買うことができる。)

*全般的に値段が高過ぎる。これなら、ニーマン・マーカスやノードストロームに行った方がいい。(反論無し)

*着られないような色が多すぎるゴールド、オリーブ、ポピー、蛍光色!?手持ちの服に合わない。(そこがおもしろい、という反論もあった)

*昔に比べて、腕丈が妙に長かったり、ズロっとした服が多くなった。職場に着ていけない。(今の若い層のトレンドに媚を売っているのか?しかしJクルーの顧客はどんなに若くても大学生なので、いかがなものか?)

*Jクルーはアバクロより大人っぽくて、バナナ・リパブリックより洗練されていたのに。(立ち位置が不透明になったということか)

こうして読み返してみると、Jクルーに限らず、今不調なブランドすべてに共通する問題のようだ。確かにファッションは変化しなければ飽きられてしまうが、ファンは案外と「昔のあなたのままでいて欲しかった」のかもしれない。

(写真)批判の対象の1つ、スキニーでないと着られないジャンプスーツは早速25%オフになっている
 2015/05/28 08:07  この記事のURL  / 

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プロフィール

平山幸江(ひらやま・さちえ)

アメリカ小売業コンサルタント

1993年よりニューヨークを拠点に活動。Jクルー・ジャパン(伊藤忠プロミネントUSA)、フェリシモ・ニューヨーク、イオンUSA調査ディレクターを経て2010年に独立。

アメリカ市場でのファッション、小売事業展開の実務経験に基づいた市場調査分析、戦略企画が専門。「販売革新」「ファッション販売」他執筆。米国小売最新情報に関する講演。慶応大学及びファッション工科大学卒業。


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