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コーチの原点帰り、その後
コーチの第3四半期業績報告が昨日報道された。同社は昨年6月に紹介したように、ロゴに頼った「手ごろなラグジュアリー」路線を捨て、レザーバッグ・メーカーとしての原点に立ち戻り、昨年秋から高品質・高デザインにガラリと変えて、全米の店舗の改装にも順次着手している。短期的な利益を捨て、中長期視点でブランドを再生させようという気概がどんな結果になっているのか、注目の業績発表だった。

3月28日までの3ヶ月の売上高は9億2,930万ドル、前年同期比▲15.5%だ。北米では売上高は4億9,300万ドル、前年同期比▲24%、既存比▲23%と落ち込みが激しい。百貨店インショップの売上は前年同期比▲30%で、国内事業の全てについて、オンラインでのクリアランスセールや店舗でのバーゲンの削減が影響したと言う。

海外事業は4億2,800万ドル、前年同期より▲3%下がったが、ドル高の影響を除くと10%、既存比8%伸長した。なお、日本の売上は為替の影響を除いても▲11%下がった。(もっとも、前年は4月1日の増税前の駆け込み需要があったので、この数字は差し引いて見ることができる)。海外部門ではアジアは全般的に伸びがゆるやかで、ヨーロッパの方が元気が良かったようだ。

なお、コーチは、今年1月にハイエンドの靴ブランド、スチュアート・ワイツマンを買収しており、コーチ自身の靴ビジネス(2億ドル)およびワイツマンからのライセンス売上(3億ドル)を足すと、靴業界のスター、アグ(Ugg)に次ぐ規模とのこと。「高品質・高デザイン」路線は多方面から着々と進んでいるようだ。

さて、コーチの大変身はうまくいっているのか、いないのか。売上減は一時的なものなのだろうか。コーチを長く知る者としてはぜひ改革を成功させて欲しいが、下図を見ると、まだトンネルの先の光は見えていないようだ。コーチの競合として比較されるマイケル・コースの直近の数字を見ると、昨年12月27日までの第3四半期の売上は29.9%増加。海外事業の為替差損分を調整すると32.6%の伸びとのこと。北米事業は23.1%の伸びだ。マイケル・コースは衣料品の売上シェアが大きいので単純にコーチと比較できない部分もあるだろうが、恐らくコーチはまだ試行錯誤が必要なようだ。

今コーチの店頭には、高品質化でお約束した通り、レザーバッグが並び、テキスタイルにロゴを織り込んだバッグは姿を消している。しかし、夏が来るし、トレンドだから仕方ないのかもしれないが、ネオンカラーやカラフルなバンダナ・プリントが目につく。一方、マイケル・コースでは、バッグの華やかなカラーはあくまで挿し色であって、服を着た時にシックに見えるニュートラルカラーが多い。両者の違いは、店頭に陳列した時のインパクトもさながら、顧客のリアルな生活シーンを受け止める力ではないか、と感じた。

(図表)コーチ社公表数値よりRich Duprey氏作表(Source: Coach Inc. Graph created by Mr. Rich duprey)
(写真)コーチおよびマイケル・コース店舗





 2015/04/30 11:07  この記事のURL  / 

グーグル検索から読むファッショントレンド
グーグルは、60億以上の検索データを基に、年に2回ファッショントレンド・レポートを発行する計画だ。その内容をニューヨーク・タイムズ紙が報道した。同社は「継続的なトレンド」と「シーズナブルなトレンド」を分けている。以下は2015年春のトレンドについて、NYタイムズおよびグーグル・レポートから紹介したい。

◆チュールレースのスカート
2014年1月から今年1月にかけて35%も人気上昇。西海岸から発生して全米に広がった(下図表参照)。さまざまな色が人気だがもっともポピュラーなのは黒と白だ。また、スカートを買うだけではなく自分で作ることにも興味があり、YouTubeには2万本以上の「チュール・スカートの作り方」ビデオが掲載されているという。

◆ジョガー・パンツ
男性、女性、子供、そして幼児用まで広く検索されている。こちらは東海岸から広がっていった。検索時には「ジョガー・パンツ、ブランド名」のようにブランドを特定して検索されることが多く、既に市場に浸透していることがわかる。また、変わったジョガー・パンツを探す人も多く、そのトップは何と「絵文字ジョガー・パンツ」だそうだ。

◆スキニー・ジーンズ
逆にスキニー・ジーンズは検索が減っている。地勢図で見ると、東・西両海岸沿いから減っていき、南部海岸沿いでも減ったが、アメリカの中央部(南北ダコタ、ネブラスカ、カンサス、オクラハマ州)がつい最近までまだスキニー・ジーンズを検索していたようだ。

私は仕事柄、グーグル検索には非常にお世話になっている。そう言えば、仕事上の理由でチュール・スカートは今月何度か検索した。他人のデータを見るのはおもしろいが、こうして検索する自分もデータの一部と化している。あるキーワードを30億回以上検索すれば、トレンドを作ることもできるかもしれない!?

(写真)グーグル検索によるチュールレースのスカート(NYタイムズ紙調べ)
(地図)グーグル検索データより、毎月のチュールレースのスカートが検索された件数(グーグル社調べ)


 2015/04/29 03:45  この記事のURL  / 

アマゾン「プライムナウ」は安くて早かった
私はマンハッタンに住んでいる。アマゾン「プライムナウ」が既に導入されているエリアだ。仕事柄もっと早く試したかったが、ようやくその時が来た。トイレットペーパーとベーパータオルが同時に切れたのだ。

私は今までアメリカではごくごく普通のスコットのトイレットペーパー(大抵重いので6個入り)とバウンティのペーパータオル(これまたかさばるので大抵3個か多くて6個入り)を、わざわざ徒歩5分以内にあるファーマシーに買いに行っていた。原稿書きの間の気分転換にはなるが、両手が塞がるのでこれだけのために往復と買い物時間20分程度を費やさなければならない。それでも計画的家事が苦手なので、大抵最後の1枚になるまで事態を放置し、至急買出しに行かなければならない。正確に言えば、着替えたりちょっと化粧もするので30分はかかってしまう。前もって在庫を積んでおけばよいものを、何と生産性の低い時間を過ごしていたことか。

今朝キッチンでもトイレでも在庫切れを確認して、プライムナウを試すことにした。プライムナウはアマゾンが試験的に展開している「1時間以内のデリバリ」だ。昨年12月にニューヨークで開始し、既にアトランタ、マイアミ、バルチモア、ダラスで展開している。スタート当初は非常に限られた商品しか販売していなかったが、随分品揃えが増えている。しかし、1時間以内に入手できるとして、案外高くはないのだろうか?

そこで、下の図表のように私が買う可能性の手段を比較検討した。プライムナウは1時間以内だと8ドル近く送料がかかるが1時間以上なら無料なので、迷わず3時間以内の配送枠を指定して購入。待ち時間の間に、他の選択肢として@ご近所のファーマシー、Aアマゾンの子会社Soap.com、Bウォルマートの最寄店舗およびCオンラインを検証してみた。
詳細は図表をご覧いただきたいが、いくつか発見があった。

@今までのファーマシーはよく考えたらレジ待ち等買い物に時間がかかるし、配達人にチップを渡してもアマゾンの方が安い。なお、7ドル99セント出して1時間以内を選ぶと本当に1時間以内で飛んで(急いで)来ると言う。
A「2日以内に重くてかさばる日用品が届いて便利」が謳い文句のSoap.comは、過去に何度も利用していたが、販促対象のブランドを選んで沢山買わないと案外高いことが改めてわかった。
Bウォルマートのオンラインは一見安そうだが、よく見るとペーパータオルは6個入り(アマゾンは8個)だし、送料無料には50ドル以上買わないといけない。いずれにせよ4, 5日も待つのは家事能力が低く、気の短い私には向かない。
Cウォルマート店舗に頻繁に行く人にはこの選択もよさそうだが、トイレットペーパーが急に必要となると一般的には郊外であっても自宅の近くにあるはずのファーマシーの方がやはり先に頭に浮かびそうだ。

アマゾン以外全てに共通するのは無料送料のミニマムが高いことだ。最近ターゲットは無料送料ミニマムを50ドルから25ドルに引き下げたが、消費者側から見たら妥当な判断だ。

私は携帯電話から数分かけてオーダーし、結局2時間40分で品物を受け取った。途中、配達人に連絡を直接取り、彼がどこら辺にいるかを知ることもできた(プライムナウの基本機能)。アマゾンはやはり便利だ。もっとも23日に発表された同社第1四半期の業績は売上は予想を超えて伸長したが、当期利益はまたもや▲5,700万ドルの赤字。前年同期は5億1,700万ドルの黒字だったのに。「企業成長のために投資を続け、利益を出さない」を20年以上守り続けるベゾスCEOのド根性をかみしめながら、トイレットペーパーを補給した。

 2015/04/28 06:20  この記事のURL  / 

WWDが新聞紙版を廃刊
105年の歴史を持つウィメンズ・ウェア・デイリー紙が24日を持って新聞紙版を廃止し、デジタル版にフォーカスすると発表した。同紙は先月、新聞紙版の発行回数を減らす、と報道していたが、全面的に紙をやめることにした。

同紙に限らず、アメリカの大手メディアは日刊紙のデジタル化に力(投資)を入れている。例えば、紙媒体として全米2位のニューヨークタイムズ紙は発行数138万部(2014年9月)だが、91万人のデジタル購読者を有しており、同紙の購読者の3分の2がデジタル版を読んでいることになる。紙媒体の購読数は当然ながら減少しているそうだ。

確かにちょっと前まではマンハッタンのガーメント地区に出勤する人々の大半はWWDを手にしていたが、今は皆スマートフォンのアプリかオフィスのPCで読んでいる。デジタル版はコンテンツを簡単に保存、転送でき、読む時にも文字を拡大できるし(中高年のマネジメント層には必須!)、一番重要なのは、見出しを簡単に一覧できることだ。

話が飛ぶが、ファッション工科大学で12月から4月25日まで「Faking It」という、デザイナーブランドのコピーについての歴史的な考察の展示会が開催された。1900年代初頭からコピーは存在していたそうで、しかしながら時代時代にコピーの価値・社会的インパクトは異なっており、おもしろい内容だった。現在はコピーは犯罪扱いだが、昔は大手百貨店がきちんとデザイナーの承認を得てコピーした商品を販売し、それが恐らく顧客にとってほとんど唯一の商品を手に入れる方法だったのだろう。

展示会の考察の1つが「現代はデザイナーの作品が誰でも簡単にダウンロードでき、詳細にコピーできる時代」ということだ。クリエイティビティ、オリジナリティを保つことはほとんど不可能な時代でもある。WWDでもコレクションの写真は同紙の購読者であればどんどんダウンロードできるので、これを元に何でもできる。

話を元に戻して、WWDの決断により、アメリカのファッション業界ではスマホやPCで新聞を読む習慣の無い人たちは突然情報砂漠に放り出されてしまった。それはそれで羨ましい気もするが。
(写真:上から1910年7月13日創刊2号、1917年10月13日ポワレ特集、1924年11月6日イラストの下の見出し「モーニングドレスは壁面装飾ドレーパリーとしても役に立つ」が興味をそそる、写真は全てWWD2015年4月24日号「デジタル版」より)


 2015/04/27 02:04  この記事のURL  / 

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プロフィール

平山幸江(ひらやま・さちえ)

アメリカ小売業コンサルタント

1993年よりニューヨークを拠点に活動。Jクルー・ジャパン(伊藤忠プロミネントUSA)、フェリシモ・ニューヨーク、イオンUSA調査ディレクターを経て2010年に独立。

アメリカ市場でのファッション、小売事業展開の実務経験に基づいた市場調査分析、戦略企画が専門。「販売革新」「ファッション販売」他執筆。米国小売最新情報に関する講演。慶応大学及びファッション工科大学卒業。


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