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グーグルの広告収入拡大策とリテーラー
グーグルが、グーグル・プレイでアプリを販売しているアプリ開発者に広告スペースを試験的に販売することになった。グーグル・プレイは、アップル社のアプリ・ストアのグーグル版だ。グーグル社の携帯電話オペレーティングシステム、アンドロイドに搭載されるアプリ、ゲーム、映画等100万点以上を販売している。

グーグル社は検索に関わる広告を収入の柱としていたが、今までグーグル・プレイでは広告スペースを提供せず、同社が独自に選んだアプリやストーリーを携帯画面にフィーチャーしてきた。今回は試験ということで限られたユーザーを対象とするそうだ。ちなみにアップル社もアプリ・ストアでの広告は行っていない。

検索の王者グーグルがなぜアプリ広告に進出する背景には、検索広告収入の頭打ちがある。一方、アプリ販売は順調に伸びている。アメリカの消費者がモバイル・ショッピングにシフトする中、モバイル・ショッピングでは検索より、既にダウンロードしてあるブランドやリテーラーのショッピング・アプリから直接購入する傾向にある。

2014年8月のヤフーの調査によると、アンドロイド・ユーザーは平均95のアプリをダウンロードしているとのこと。これは若い層のゲーム・アプリ数が影響していると推測される。より信頼性のあるニールセンのデータ(2013年度末の調査)では、アンドロイドもしくはiフォン・ユーザーの平均ダウンロード数が26.8とある。私自身はいつの間にか69持っている。もっとも頻繁に見るのは20程度だろうか。しかし、プッシュ通知でおもしろそうな情報が流れてくると、そのアプリは開いてみたくなる。ショッピング・アプリは見るだけのものが多いが、セフォラやメーシーズは来店時にセールやクーポンがどうなっているかを移動中に確認する。

そんな訳で、モバイル・ショッピングはどんどん買い物行動時間に食い込んでいる。モバイル周りを固めないと、リテーラーは生き残っていけないかもしれない。

(写真)価格比較で人気が高いレッドレーザー

 2015/02/27 00:55  この記事のURL  / 

アメリカのアパレル・チェーンは氷河期に?
昨年10月、JクルーのカリスマCEO、ミッキー・ドレクスラーが「アパレル・ビジネスは厳しい時代にある。店舗の数も多過ぎる」と発言して以来、ショッピング・モール系のアパレル専門店チェーンには「やっぱり駄目か」の空気が漂っている。先週、アン・テイラーが同じオバサン・ブランドのチコスや複数の投資グループに対して売却の交渉に入っていることが報道された。アン・テイラーはタルボット同様、20世紀後半には現在引退中のベビーブーマー世代のご用達ブランドとして好調だったが、その後、景気後退やブーマーの加齢で、両ブランドが得意としたキャリア・ウェアや清楚な服は着られなくなり、過去10年苦戦している。

タルボットは2010年に親会社イオンの手を離れ投資グループに買収されたが、アン・テイラーはケイ・クリルCEOがくじけずにブランドの若返りを図ったり、アン・テイラー・ブランドより若い層向けで価格も安いロフトに力を入れたり、業績回復に執念を燃やしていた。しかし、さすがに燃え尽きたのだろうか。しかし売却の交渉をしながらも、ルー&グレイという、コンテンポラリーなカジュアルウェアのコレクションを立ち上げ、2015年度中に10店舗出店するとのこと。ブランドのDNAを信じ、企業の価値を最後まで高めようという姿勢は立派なものである。もっとも裏読みをするなら、企業の体力があるうちに高く売却し、名女性CEOとしてのレジェンドを獲得しよう、ということかもしれない。(図表をご参照いただきたい)

いずれにせよ、ファストファッションとデザイナー・ブランドの間で、かつでブリッジとかモデレートとか呼ばれた中間層のアパレル企業は苦難の時代だ。働く女性の数が多いアメリカでも、職場でのドレスコード(服装規定)がゆるくなりつつあるので、昔ながらの上下そろいのスーツなどは金融など一部の業界以外では着られなくなった。IT、マーケティング業界などではデザイナー・ブランドや、むしろスポーツウェアだ。

苦戦のもう1つの要因は、オンラインショッピングの拡大で、デザイナー・ブランドが格安に入手できる環境が広がっていることだろう。最初は経済危機後に一斉を風靡した、ギルトを始めとするフラッシュセールだったのが、ノードストロームやニーマンマーカス等高級百貨店がこぞってアウトレットストアの出店を加速しており、ここでもブランド品が安く買える。現在では加えてルイ・ヴィトンやシャネル等の超高級ブランドの中古品市場が急成長しており、リアル・リアルを始め、オンラインを舞台に様々なリテーラーが登場している。

JクルーCEOの発言はごもっともではあるが、世の中には「デザイナー・ブランドを着るほどファッションに興味はないし、ファストファッションはいかにも安物だし、適当な価格でそれなりに見えればいい」という人も多いはず。デザイナー・ブランドもよいがフラッシュセールやアウトレットではサイズ切れや、すぐ買わないと売れきれるのがうっとおしい。中間層ブランドの存在意義をどのブランドがいち早く再発見するのだろうか?もっとも、「店舗数が多過ぎる」そうなので、今ある店舗を整理しながらの出直しだ。やはり厳しいには違いない。

(注)図表1のJクルーの2011年度既存比は非上場化により公開されていないため、図表中では0と表示されている。
 2015/02/26 22:57  この記事のURL  / 

4,000店舗網が市場を独占できない時
今月4日、オフィス用品業界で全米トップのステープルズと2位のオフィス・デポの統合が発表された。これにより、一挙に年商350億ドル、約4,000店舗の企業が誕生する。両社は18年前にも統合を試みたが、当時FTC(連邦取引委員会)が市場独占を理由に阻止した。今回は「市場環境が変わり、2社の統合が市場独占とはならない」として許可された。

確かにオフィス用品の世界でも、低価格を武器とするアマゾンやウォルマート、ターゲットが強敵だ。ステープルズもオフィス・デポも業績は不調で、下の図表のように売上高は下がり利益も出ていない。既存比は前社は2007年度から、後者は2006年度からマイナスが続いている。オフィス・デポは業界第3位のオフィス・マックスを2013年11月買収したが、それでも生き残りが難しくステープルズへの身売りを決めた。いくら図体が大きくても弱者同士の統合とあらば、店舗清算、人件費削減など、まずは体勢立て直しの手が次々と打たれることだろう。FTCは企業と言うより、業界の生き残りに手を差し伸べたようだ。

今回のFTCの判断で、2007年のホールフーヅマーケット(当時年商69億ドル、276店舗)による業界第2位のワイルド・オーツ(同12億ドル、110店舗)買収を思い出した。両社が統合を発表して4ヵ月後、FTCは「プレミアム・ナチュラルフード市場独占、これによる価格高騰を招く可能性あり」として買収に異議を申し立て、FTCと両社は2年にわたって法廷で争う結果となった。結局、ホールフーヅが13店舗撤退(不採算店と言われている)、19件のリースと資産売却、ワイルド・オーツ商標売却を受け入れることで終止符が打たれた。この時の買収は、一般のスーパーマーケット、トレーダージョーズ、そしてウォルマートやターゲット等がオーガニック食品市場に次々と参入したことに脅威を感じたホールフーヅが、ワイルド・オーツを買収することによって他社からの買収を防御することが主な目的だった。成長のための先制攻撃にFTCが立ちはだかったが、その後の結果を見ると、ホールフーヅは業界リーダーの地位を守りつつ、業績も好調だ。

2つの買収とFTCの対応を並べてみると、「市場競争」の意味が変化していることがわかる。まだ店舗事業に依存度の高いスーパーマーケット・チェーンでは、店舗数増加が市場競争上有利に働くだろう。しかしオムニチャネル化が拡がっている物販の世界では、FTCの今回の判断のように、必ずしも店舗数=競争力とはならない。

ステープルズのオンライン事業は全米オンライン販売市場でアマゾン、アップルに続き第3位、全社売上シェア48%の規模にある。買収発表前の昨年12月、同社はアマゾン対策と目される「ステープルズ・エクスチェンジ」と呼ばれるマーケットプレースを開業、参加商店がステープルズ.comの顧客に直接商品を発送する。統合後は、両社の店舗網を活用しながらオンライン事業を拡大するオムニチャネル戦略が加速されそうだ。

 2015/02/22 08:42  この記事のURL  / 

専門店に救いを求める百貨店たち
2月3日、メーシーズ百貨店が高級化粧品チェーン、ブルーマーキュリー(bluemercury)の買収を発表した。同社にとってメイ百貨店買収以来10年ぶりの買収だ。
そして4日には、Jクルーのレディスカジュアル・ブランド、メイドウェルがノードストローム百貨店のインショップおよびオンラインでの展開を発表した。

ブルーマーキュリーは高度なスキンケア科学に基づいたブランドやプロ・ユースのメーキャップ・ブランドの品揃えとエステティシャンによるハイランクなサービスが売りだ。顧客の平均年齢は44歳で、全米でメジャーなビューティ専門店チェーン、セフォラよりアップスケールなポジショニングにある。買収後も基本的にはブルーマーキュリーは路面店展開を継続し、現在の60店舗体制から1016年度には100店舗にまで拡大すると噂されている(メーシーズ側の公式発表ではない)。

今回の買収によって、メーシーズおよび子会社のブルーミングデールズは@自社の化粧品売場が取りこぼしている市場にアクセスし、ビューティ部門を補完、Aブルーマーキュリー限定ブランドの一部をメーシーズで展開することでビューティ売場強化、が期待されている。逆にブルーマーキュリー側は、メーシーズのロイヤリティプログラムやオムニチャネルのインフラやプログラムの中に統合されることを大きなメリットとしており、買収後もCEOを継続する創業者のべック夫妻は「宝の山に紛れ込んだ子どものように喜んでいる」とコメントしている。

さて、Jクルーだが、メイドウェルは2007年にスタートしたレディスのみのブランドで、デニムを中心にシャツ、カジュアルドレス、レザーブーツのブランドだ。現在85店舗およびオンラインストアを展開している。今回の提携により、3月2日からノードストロームのオンラインに、6日から店舗(15店)に立ち上がる。ノードストロームは2012年にイギリスのトップショップと同様の提携を行っており、今回も似たような設定になるだろう。専門店ブランドと提携することで、ノードストロームは@百貨店離れが起きているティーンエイジャーや20-30才代を取り込むことが期待でき、Aトレンディでヒップなイメージを移植することができる。Jクルー側は現在中核となるレディス事業が不調であるため、その売上補完ができる。

メーシーズもノードストロームもアメリカの百貨店の中では業績は順調で、オムニチャネル戦略も着々と進めており、安泰であるかのように見えていたが、実は肝心の品揃え、ブランド揃えには常に苦労していることが改めて伺える。

(写真)ブルーマーキュリー(同社提供)、メイドウェル(2014年 Tim Harris from Business First)

 2015/02/17 06:20  この記事のURL  / 

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プロフィール

平山幸江(ひらやま・さちえ)

アメリカ小売業コンサルタント

1993年よりニューヨークを拠点に活動。Jクルー・ジャパン(伊藤忠プロミネントUSA)、フェリシモ・ニューヨーク、イオンUSA調査ディレクターを経て2010年に独立。

アメリカ市場でのファッション、小売事業展開の実務経験に基づいた市場調査分析、戦略企画が専門。「販売革新」「ファッション販売」他執筆。米国小売最新情報に関する講演。慶応大学及びファッション工科大学卒業。


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