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2014年度末に清算されるブランドの話
多くのファッション企業は1月末に年度末を迎える。聞きたくない話ではあるが、以下のブランドがこの1ヶ月の間に閉鎖を発表している。(もちろんこれが全てではない)

*C Wonder
トーリー・バーチの元ご主人が2011年に立ち上げた、トーリー・バーチのノックオフ、廉価版とも言えるブランド。1年前までは全米に300店舗は展開できるのではと期待されていたにも関わらず、今月、全32店舗の閉鎖を発表した。1月22日に会社更生を申請し、205万ドルでの売却をオファーしている。一方店舗は1月一杯75%オフを展開し、1月店舗は閉鎖に入っている。
トーリー氏は失敗の原因を、「あまりにも性急に店舗展開をしたこと」としている。元妻のトーリーも「(いきなり出店するのでなく)オンラインから始めればよかったのに」とコメントしている。

*Kate Spade: Saturday, Jack Spade
ケート・スペードが2013年にスタートした廉価版サタデーおよびケート・スペードと同じ価格帯のメンズ版ジャック・スペードを1月末に閉鎖を発表した。サタデー・ブランドは、ケート・スペードのファンが買うには品質が低過ぎ、ケート・スペードに憧れる層にアピールするためには、彼女達に向けたマーケティング戦略(特に広告)が必要であったにも関わらず、それをできなかったことが敗因とのこと。
ケート・スペードは現在年商11億ドル。主力のケート・スペード・ブランドに経営資産を集中し、中国やヨーロッパでの事業拡大を計画しており、近い将来40億ドルを目指している。そのためには、生産性の低いサブブランドを切り捨てる必要があったとのことだ。

*dELiA
1993年創業のティーンズ・ブランド、デリアが12月に会社更生を申請した。一時期は年商2億5,800万ドル、115店舗を展開し、低価格でかわいい商品が魅力だったが、その後H&MやForever 21などファストファッションとの競争に敗れた。

*Jones New York
一時期はキャリア・ファッションの主流だったジョーンズ・ニューヨークもカナダを含む127 店舗の閉鎖を数日前に発表。同ブランドはメーシーズのミッシー売場の中核ブランドの1つでもあったが卸売事業からも撤退する。なお、そのメーシーズもリストラを始めており、14店舗の閉鎖を1月初旬に発表している。

前2者はブランドとしてはまだフレッシュで生き残る道がありそうなものだが、店舗事業からは全面撤退だ。これらは何を意味しているだろうか。単純に、店の数が多過ぎるのだと私は考える。人々がどんどんオンライン、携帯で買い物をし、ショッピングモールから離れつつある中、例え魅力のあるブランドでも、ましてやそうでないブランドがチェーンストアのみに頼っていては生きていけない時代に突入している。
アメリカ小売業界では、厳しい2015年のスタートである。

(写真)閉店セール中のCワンダーのタイム・ワーナー店。1月31日時点で既に店舗は閉鎖されている。
 2015/01/31 23:52  この記事のURL  / 

オムニチャネル時代のマーチャンダイザーの仕事
全米小売業大会の年次総会の一コマに新たなマーチャンダイジング・チームの役割に関するセッションがあった。スピーカーは、LVMH北米担当者、ノードストローム・ラック、HSN(ホーム・ショッピングネットワーク)の人事担当者という華やかな顔ぶれである。

3社が共通して述べていたのは、「マーチャンダイザーにはテクノロジーの資質が不可欠」ということだ。今月初旬にメーシーズ百貨店は、店舗とオンライン事業部の商品部、マーケティング部門の統合を発表した。と言うことは、商品部もオンライン事業の特性をよく知っていないと商品計画を組み立てられない、ということだ。

一方で、LVMHは、「最近のマーチャンダイザーは足で稼いでいない。世界の動向を肌身で知ることが重要」とも述べていた。さて、御社のマーチャンダイザーはどの位、肌身で地元を感じる旅をしているだろうか?

ノードストローム・ラックは「仕事の幅は広くなっている。責任範囲も広がる一方」と述べていた。つまり、個人の能力を超えて、組織がサポートをする必要が増えているということでもある。ただ部下の数を増やすのでなく、上記のようにテクノロジー、デジタルマーケティング、グローバルソーシングに対応できる人材をマーチャンダイザーの周囲に配置する必要がある。

今後のマーチャンダイザーに必須の資質とは?の問いに、3社とも「テクノロジー」と答えていた。次に必要なのは「国際感覚」とのこと。ファッションビジネスでも小売業でも、根幹は商品だ。自社のお客様にとって最高の商品を揃えるにはこの2つが不可欠というメッセージである。
 2015/01/28 12:11  この記事のURL  / 

スカイモール倒産とJCペニーのカタログ復活
今朝、アメリカの有力な機内ショッピング・カタログ「スカイモール」社のチャプター11(倒産)が報道された。スカイモールは米系フライトに乗ったことのある方ならご存知のように、おもしろいアイディア商品(同社の言葉によると「プラネット上で最もクールな商品」)のカタログだ。1989年に創業し、退屈なフライトの時間つぶしというニッチ市場をニッチ商品で成長した。しかし、昨年4月27日にロサンジェルス・タイムズは同社のビジネスモデルと業績悪化について分析し、「このままではモンゴメリー・ワードやシアーズ・カタログと同じ憂き目に」と警告していた。

同社は年間6億5,000万人の客席に設置されていた(注1)。 2013年度年商3,370万ドル、ただし、第3四半期の段階で320万ドルの赤字を出していた。2014年度9月末の9ヶ月間では1,580万ドルに急落。その原因は、スマートフォンとタブレットの急増とされている。これにより、スカイモールを見る人が激減したことが売上減につながった。
(注1)ザ・アトランティック紙推定、2013年

スカイモールは「なるほど」と思わせるアイディア商品にあふれていて、見ていておもしろいショッピング・カタログだった。うっかり本や雑誌を忘れた時には、確かに都合の良い時間潰しになった。しかし、2013年に機内で電子機器の使用ルールが軽減され、時間潰しのために同誌を手に取る人が減ったのだろう。しかし、ロサンジェルス・タイムズは前述の記事で興味深い報告をしている。

スカイモールに「お昼寝専用目覚まし時計」を卸していたベンダーは、スカイモールに掲載してもらっていたお蔭で、スカイモール誌上での売上の80倍相当を自社ウェブサイトで販売したとのこと。つまり、スカイモールは買われなくなっただけで、決して誰も読まなくなっていたわけではなかったのだ。

さて、カタログ販売と言えば19日、JCペニーが5年前に廃止したカタログ事業の再開を発表した。理由は、同社のカタログ顧客の多くは結果的にオンラインで買い物をしていても、カタログを楽しみ、じっくり選んだ後にオンラインで購入していたためだ。当初の予測と異なり、同社がカタログを廃止したと同時に、カタログ顧客の一部がオンラインで購入しなくなってしまったのだ。また、もともとのカタログ顧客は店頭でも平均購入額が高かったそうだ。

オムニチャネルの掛け声の中で、カタログ・チャネルが語られることはほとんどない。しかし実際には、LLビーンでも、Jクルーでも、ウィリアムズ・ソノマでもカタログは継続している。そのオペレーションはオンライン・ショッピングに統合されてはいくし、発行部数も少なくはなるかもしれない。しかし、カタログならではの世界観、1枚ずつページをめくる時間そのものは、店舗ともオンラインとも異なる経験だ。

話をスカイモールに戻し、一日が終ろうとする中、ウォールストリートジャーナル紙では、スカイモールのニュースは一番人気となっている。周囲のアメリカ人の間でも「無くなって欲しくない。再生しないのかしら」という声が聞かれる。この素晴らしいコンテンツを、旧来型のカタログ・ビジネスではなく、新たなプラットフォームに置き換えることができたら、とてもおもしろいに違いない。

(写真)スカイモールの表紙

 2015/01/24 09:16  この記事のURL  / 

全米小売業協会の2015年次総会のポイント
今年こそはブログを月初から定期的に書こうというニューイヤーズ・レゾリューション(新年の抱負)は瞬く間に崩れた。しかし今朝のニュースで「多くのアメリカ人の新年の抱負であるジム通いは、1月第1、第2週ピークに3週目から参加者減少」とのこと。今から書き始めようとする自分がちょっと偉いような錯覚に陥っている。

さてアメリカの小売業界では、毎年1月第2週に開催されるNRF年次総会は大きなイベントの1つだ。海外も含めて今年は3万人が参加した第104回大会は、「ビッグ・ピクチャー(大局)」がタイトルだった。が、オムニチャネルという明確なテーマが打ち出されていた昨年、一昨年より全体テーマがはっきりしていなかったため、参加前は期待できないように感じていた。しかし、終ってみるとなるほど、と思うことがいくつかあり、3日半通った甲斐はあったようだ。
以下は筆者が総会から学んだポイントだ。

*オムニチャネルはもはや当たり前: 早期にオムニチャネル化に着手した大手チェーンでは売上成長に結果を出し始めている

*店舗資産の新たな位置づけ: 初日の基調講演のタイトル「Brick Is The New Black(店舗は新たな収益源)」の通り、アマゾン等のオンライン専業への対抗手段として、店舗チェーンを新たな経営資源として活用することを提言

*モバイルの重要性: @いつでも・どこでもショッピングに対応できるデバイスである、A店舗とオンラインをつなぐことができる(店内でオンラインにアクセスできる)、B個人情報だけでなく、どこにいたか、誰とつながっているか、等の多層的な情報が集約されている。従ってオムニチャネル化の中心的なプラットフォームとして威力を発揮しつつある

*ミレニアル世代への注目: 1980年代初頭から2000年頃に生まれた世代。全米小売業協会が重視する点は、「ミレニアル世代は店舗やモールに行きたがらない」「ミレニアル世代は販売員と話すより、オンラインで検索する方が好き」。従って、店舗事業では、彼らを呼び寄せるための新しい店舗空間、フォーマットが必要となる

*リテールの新フォーマット:全世界の様々な新フォーマットが数本のセッションで紹介されたが、共通するのは「デジタル化」と「ストーリー・テリング(物語性)」。デジタル・リテーリングと言えば、ちょっと前まではいわゆるオンラインのことだったが、今後は店舗もデジタル化=ハイテク装備で双方向、になるので、言葉使いに要注意だ

こうして見ると、確かに一言でタイトルを作るのは難しいそうだ。しかしそれぞれのサブテーマは、今からの小売業経営に明確な道筋を照らし出していると感じた。

(写真上)曲がり角のデニム業界代表、リーバイ&ストラウス社社長ジェームズ・カーリー氏
(写真下)今話題の配車サービス、ウーバー社サービス開発部門のヘッド、ジェイソン・ドゥルージ氏

 2015/01/21 05:18  この記事のURL  / 

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プロフィール

平山幸江(ひらやま・さちえ)

アメリカ小売業コンサルタント

1993年よりニューヨークを拠点に活動。Jクルー・ジャパン(伊藤忠プロミネントUSA)、フェリシモ・ニューヨーク、イオンUSA調査ディレクターを経て2010年に独立。

アメリカ市場でのファッション、小売事業展開の実務経験に基づいた市場調査分析、戦略企画が専門。「販売革新」「ファッション販売」他執筆。米国小売最新情報に関する講演。慶応大学及びファッション工科大学卒業。


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