« 前へ | Main | 次へ »
ホリディ商戦は予想に反してアパレルがリードか
マスターカード社の速報マスターカード・アドバイザーズ・スペンディング・パルス報告によると、11月27日感謝祭から12月24日クリスマスイヴまでのアメリカ小売販売額は5.5%伸長し、婦人アパレル、ジュエリー、カジュアル・ダイニング商品がリード。本来家電がリードするとの予測を覆した。全米小売業協会も11月12月の小売販売額は4.1%と、2011年以来の大幅な伸びを予測している。
(注:近年伸長しているクリスマス後から新年までの「ポスト・ホリディ・ウィーク」は含まれていない)

家電が予想に反して売り上げが伸び悩んだのは、PCを始め大幅なディスカウントが原因と分析されている。一方、アパレルが伸びたのもセールを背景に、トレンドラインやアスレチックウェアが牽引したためとのこと。アバクロ、エアロポスタル、ギャップはブラックフライデーやホリデー商戦中に「40%オフ」セールを何度も展開していたが、これが功を奏したようだ。

つまり、どちらも値引きで勝負した訳だが、同じメーカーの製品を販売する家電は価格競争にはまりやすい。また、人気商品の破格値提供でロスリーダーに頼る傾向にある。昔はこれで来店客動員ができていたかもしれないが、オンラインやモバイルで簡単に価格比較できる今の時代には、ピンポイントで商品を買い、ロスリーダーばかり売れてしまう。特にオンライン販売ではそれが顕著だ。

モール系大手アパレルチェーンの多くが40%オフという共通ラインを引いたことは興味深い。全商品でなくても、定価商品のほぼ全部が一律40%オフとなると、消費者にとってはわかりやすいし、十分魅力的だ。そのブランドに興味があれば、ふらりと立ち寄りたくなるし、オンライン・セールの案内であれば、ついクリックしてしまう。リテーラーにとっては、まだ利益が出る範囲である。わざわざロスリーダー作りのために在庫を抱える必要がなく、手持ち在庫を削減できる。しかしこれができるのも、SPAによる独自のブランド力があってこそ。そうでなければ40%の暗黙の了解を横並びでキープするのは難しいだろう。

ところで、アバクロ、エアロポスタル、ギャップ、加えてアメリカン・アパレルとくれば「CEO交替」だ。スキャンダルで叩き出された人、業績不振で退陣を余技なくされた人、一通りやることをやって引き際を決めた人。いずれにせよ、明日から始まる来年には、アメリカのアパレル・ビジネスにも変化が期待できそうだ。
では、約10ヶ月間、読んでいただいた方には、大変にありがとうございました。よき新年をお迎えください。

おまけのトリヴィア: 2014年ホリディ期間中にアマゾン顧客が購入した靴(パンプス)を全部縦に積み重ねると、エンパイアステートビルの52倍の高さとなる

 2014/12/31 07:35  この記事のURL  / 

アップル・ペイ(モバイル決済)と小売業
10月20日にアップル社がモバイル決済システム、アップル・ペイをスタートした。iフォン6(それ以前のiフォンではデバイスをつける)にアプリを入れるだけで簡単に利用できる。クレジットカード番号を入力するだけで、すぐに使用できる状態になる(注1)。 モバイル決済では先を行くグーグル・ウォレットのようにわざわざ別のアカウントを作成したり、ペイパルのように予めお金を入れておく、という手間も不要だ。支払い時には、アップル・ペイ加盟店のデバイス上に携帯をかざすだけで決済される。非常に簡単だ。
(注1)地方銀行や小売店発行のカード、法人カードには追加の手続きが必要

アップル・ペイは、iフォン上での指紋認証および個人情報や取引情報を記録しない、という点でセキュリティを確保している。もしiフォンが盗難にあっても、指紋認証をクリアしない限りアップル・ペイを使えないし、情報がiフォンに記録されていない、という点ではクレジットカードを持ち歩くより安全、ということになる。

19日発表されたITGインベストメントリサーチの報告によると、ブラックフライデーやサイバーマンデーを含む11月度デジタル決済取引数量において、グーグル・ウォレットが4%、アップル・ペイが1%を占めた。グーグルが2011年9月からサービスを開始していることを考えると、アップル・ペイの浸透の速さは明らかだ。現在加盟しているのは、ウォルグリーン(ドラッグストアチェーン)、メーシーズ、ブルーミングデールズ、ナイキ、ペトコ(ペット)、ステープルズ、ホールフーヅマーケット、ファーストフードのマクドナルド、サブウェイ、ガソリンスタンドのシェヴロンだが、今後加盟店が広がれば勢いも増すことだろう。またクリスマスシーズンにiフォン6の販売台数も大幅に伸びている(注2)。年明けからは、アップル・ペイ利用者が急増する可能性もある。
(注2)KGIアナリスト予測によると、第4四半期中のiフォン販売台数は750万台、そのうち60%がiフォン

さて、消費者にとって簡単で安全なアップル・ペイがグーグル・ウォレットやペイパルをしのぎ、モバイル決済をリードしそうな気配だが、これはリテーラーにとっては何を意味するだろう。加盟店になれば、文字通り財布の紐が軽くなり、売り上げ促進の一助となるかもしれない。ただし、現段階ではアップル・ペイは加盟店のクーポンやロイヤリティ・プログラムと統合されていないので、この分野のシステム開発が必要だ。

ただし、小売店にとってのベスト・ソリューションを作るにはいくつか壁がありそうだ。例えばクーポンやカード会員への追加割引を激しく展開するメーシーズはモバイル決済は行っていないが、「マイ・ウォレット」という、クーポンやプロモーションを携帯上に持ち歩くことができ、カード支払いもできるサービスを提供している。現在は、携帯上のメーシーズのマイ・ウォレットからクーポンをレジで見せ、手作業で値引きしてもらった後にクレジットカード決済だが、アップル・ペイで支払うとクーポンは使えても、カード会員のみ対象の追加割引は適用されないし、もちろんメーシーズ側に取引記録が残らない。

小売業者にとって、クレジットカードとアップル・ペイの大きな違いは、前者が個人情報、取引情報を蓄積できるのに対して、後者は記録しないことだ。消費者にとってはクレジットカードより便利で安心なようでも、小売業者にとっては顧客情報は将来の売り上げ構築のために欠かせない経営資産だ。ここのブリッジを、誰がどうかけるのか?今回加盟していないウォルマートやCVS、そして最近、モバイル決済のスクエア社との提携を解消し、独自にモバイル・システム開発を宣言したスターバックスあたりから、何かソリューションが出てくるのだろうか。


 2014/12/30 02:26  この記事のURL  / 

ユニクロUSAとフォエバー21
今年のホリディ商戦を追いかけている間、何度となくユニクロ(USA)の名前を聞いた。
ユニクロは今年3月北米出店戦略を明らかにし、2014年中に全米20店舗、2020年までに200店舗体制を目標とすることを公表した。3月時点ではマンハッタン3店舗、ニューヨーク・メトロポリス地域のショッピング・センターに3店舗、サンフランシスコに旗艦店1店舗だったが、その後ボストン、フィラデルフィア、ロサンジェルス、南カリフォルニア地区に進出、現在39 店舗体制となっている。同社は中西部進出や小型フォーマットも検討中と言う。数年以内に北米事業の黒字化も予定している。

ユニクロの名は今やアメリカの小売ニュースで「H&M、ザラ、フォーエバー21」と並んでコメントに使われるようになった。マンハッタンでは5番街やソーホーを押さえているお蔭でショッピングバッグを見かける頻度が非常に高まったし、4月に5番街旗艦店にスターバックスが入店した際には、「新フォーマット」として注目された。(筆者から見ると、メーシーズにスターバックスが入店しているのと何も変わりはないと思うのだが)

ユニクロが主として低価格という点でファストファッションと同列に並ぶ一方で、旬のファッショントレンドを追いかけるH&Mやフォエバー21に対し、ユニクロはテクノロジー(ヒートテック等)とベーシックなデザインのブランドであり、いわゆるファストファッションとは内容が違うと認識されている。品質についても、1741万人のユニークビジターを持つオンラインコミュニティreddit.comの「H&Mとユニクロの品質とフィットを比べる」ページでは、「低価格の割りには良い」と評価が主流を占める。アメリカ市場において、ユニクロは200店舗構想が現実的と感じられる足場を固めている。

先月19日、競合の1社であるフォエバー21の経営に陰がさしているとウォールストリートジャーナルが報道した。同社は非上場のため数値を発表しないが、「近い筋の話」によると、NYタイムズスクエアを始め、全米のあちこちに出店した大型店舗の売上効率が低く、経営を圧迫している、という内容だ。売場を埋めるためにメンズ、靴、下着、プラスサイズ等のカテゴリーを拡充しているが、大型店の売場内には商品の重複が目立つとコメントされている。

同社は年商450億ドル、前年比15%増、全世界に653店舗以上*を展開し、来年150店舗を追加出店するという。ウォールストリートジャーナルの記事の書き出しは「フォエバー21は(成長戦略を)大きく考え過ぎ」だ。穿った見方ではあるが、万が一同社が立ちいかなくなったり店舗数削減となれば、そのパイの大きな一切れをユニクロが口にすることができるかも?そう言えば、昨年1月にユニクロUSAのCEOに着任したラリー・メイヤー氏は、フォエバー21で11年間韓国系アメリカ人の創業者に仕えた人物だ。クリスマスを祝いながら、彼はどんな新年の抱負を用意しているのだろう。
*フォーブスによると年商385億ドル、店舗数480店以上

 2014/12/26 04:09  この記事のURL  / 

ホリディ・ギフトでも人気のアスレジャー・ウェア
今日はクリスマス商戦最後の日曜日。昨日は「スーパーサタデー」とも呼ばれる最後の土曜日で、私もマンハッタンの商店街を練り歩いた。今年のホリディ商戦は景気回復が報道されながらも、消費者が賢くなり過ぎてなかなか買い物をしてくれない。オンライン売上は好調だが、店舗売上がどこも厳しい。確かに年々、五番街でショッピングバッグを持って歩く人の数が減っている。そんな訳で、立ち寄った取引先の店舗では思わず販売応援をしてしまった。

ところで、今年の人気のギフトは何だろう。相変わらずアグ(UGG)のブーツ等も売れているが、市場のトレンド数字を見ると、アスレチックウェアと靴が好調なようだ。11月30日締めナイキの第2四半期業績は、売上高が15%上昇し、予測を上回った。特に靴は競争の激しい北米市場で19億ドル、18%増を記録した。同様にアンダー・アーマーの直近四半期は29.7%増、ヨガウェアのルルレモンは10.4%上昇している。なお、下記の表からわかるように、アンダーアーマーはリーボック(グローバル売上)を追い越し、ルルレモンもこれに迫っている。

前々からご報告のとおり、ヨガウェアやコンプレッションウェアが、ジーンズやカジュアルウェアから市場シェアを奪いつつある。実際にスポーツに着るだけではなく、タウンウェアとして、場合によっては仕事場にも着ていく人が増えているからだ。この市場はathleisure=アスリート+レジャー、と呼ばれている。

アスレジャーの人気が高くなっているのは、もちろん「着心地がラクなのに、適宜身体を締めてくれて、それなりにボディラインがきれいに見える」という点だが、12月17日のハフィントン・ポスト紙では、それ以外に「昔と違ってがりがりにやせているより、健康でフィットした体型がの方が多くの人から美しいと認識されるようになり、健康的なライフスタイルが重要になってきているから」とも説明している。確かに2000年代に入って、環境問題への意識が全世界レベルで高まったり、食の安全、オーガニック・ライフ等々、健康への関心は高まる一方だ。体型の美意識もルネッサンスということか。

「かといって、多くの人は怠け者である」と同紙は指摘する。なので、アスレチックウェアを日常着に加えることで、気分はフィットネス!というのが、アスレジャー市場が成長する要因の1つだ、との分析だ。

ファッション=エモーションだ。ちょっと前までは、ガールフレンドや妻にヴィクトリアズ・シークレットの下着やセクシーなネグリジェをプレゼントしていた男性たちが、今年はルルレモンの新着スタイル、同社定番品よりプリント柄やちょっとセクシーなデザインのヨガウェアを贈る、という構図は容易に想像できる。

ただ、ヴィクトリアズ・シークレットでは、クリスマス後の返品・交換が多いことでも有名だ。男性が選ぶ下着が必ずしも女性が着たいものではないからだ。クリスマス商戦後の大量返品はリテーラーの敵。選ぶ際には、相手の好みをよく研究して買い、せっかく成長しつつあるアスレジャー市場に水をささないで欲しい、と願うのはリテールおたくオバサンの余計なお節介である。


(写真)www.lululemon.comより
 2014/12/22 23:07  この記事のURL  / 

« 前へ | Main | 次へ »

プロフィール

平山幸江(ひらやま・さちえ)

アメリカ小売業コンサルタント

1993年よりニューヨークを拠点に活動。Jクルー・ジャパン(伊藤忠プロミネントUSA)、フェリシモ・ニューヨーク、イオンUSA調査ディレクターを経て2010年に独立。

アメリカ市場でのファッション、小売事業展開の実務経験に基づいた市場調査分析、戦略企画が専門。「販売革新」「ファッション販売」他執筆。米国小売最新情報に関する講演。慶応大学及びファッション工科大学卒業。


2014年12月
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31
最新記事
月別アーカイブ
カテゴリアーカイブ