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ブラックフライデー(中間)報告
木曜日の夕方から始まったブラックフライデーが「一応」終った。「一応」というのは、ブラックフライデー商戦が一日のイベントでなく、プレ・ブラックフライデー+サイバーマンデー(今年は12月1日)までの約1週間へと延長傾向にあるからだ。しかし、金曜日はまだお祭りとして重要な日ではある。

今年は一言で言えば「昨年より良い出だし」だ。勝ち組はターゲット、メーシーズ、ターゲット、専門店ではエクスプレス、エアロポスタル、アメリカン・イーグル、スターバックス、H&M、ヴィクトリアズ・シークレット、セフォラ、チャンプス、ディックス・スポーティング・グッズ、ゲームストップ等が混雑度が高かった。

商品カテゴリーでは、圧倒的に家電がリードを取った。TVからタブレット、エスプレッソマシーンまで幅広く売れたようだ。他には、アクセサリー、ジュエリー、香水、子供服、スポーツウェア&用品。アパレルは全般的に苦戦したようで、プロモーション率が高かった。筆者の視察でも、モール系のアパレル専門店はギャップを筆頭に、がさっと全品30%−50%オフを展開している(ブラックフライデーの日だけでなく明日日曜日までの企業も多い)。

しかし昔と違ってセール開始時の行列の長さだけでは商戦結果は測れない。大手チェーンはオムニチャネル戦略強化でオンラインでも同様のセールを提供しているため、両方の売上合算値が本当の実績だ。ターゲット.comでは、今年度の累積売上がセール開始後11月27日午後9時点で昨年一年間の売上を超えたと言う。返品率の高いオンライン販売額の速報には各社は慎重なので、ブラックフライデーの実の販売額は次の業績発表まではわからない。

NYタイムズ、ウィメンズ・ウェア・デイリー、ブルームバーグTV等々、大手メディアは、ブラックフライデー中に各所で起こった「白人警察官による18歳の黒人青年射殺への抗議活動」についても大きく報道した。セントルイスのギャラリア・モールでは200人以上のデモ参加者が押しかけ、一時モール・テナントがシャッターを下して営業中断を強いられた。同様にシカゴ、シアトル、ニューヨークでもブラックフライデー最中にデモが行われ、大手リテーラーや商店街をねり歩いた。彼らのメッセージは「手を挙げろ、銃を降ろせ!」と同時に「手を挙げろ、買い物をやめろ!」であった。未だに黒人の人権が無視されている時に呑気に買い物などするな、ということだろう。

もう1つ報道されたデモ活動は、今や恒例行事ともなっているウォルマートの時給賃上げデモだ。労働組合が組織的に行っており、実際にウォルマートの従業員がどの程度デモに参加しているかは定かではないと言う。ウォルマート広報部は「デモ参加者の多くは、労働組合から経費等を支給された組合員であって、当社130万人の従業員の代表者ではない」とコメントしている。

これらは、ブラックフライデーという商業イベントがそれを越えて、社会的な一日となっていることの証だろう。

さて、ブラックフライデーには控えめなリテーラーもある。ティファニー(ブランド・ステータスを守るため)、業績好調なアウトレットチェーン、TJマックス(エブリディ・ロープライス戦略を守るため)、アップル(もちろんアップルだから)の静かな営業についてもメディアに取り上げ、改めて「小売業者たるもの、どこで利益を取るべきか」を考えさせられる。

(写真)筆者撮影。ブラックフライデー当日午後、夕方に向けて客足の増えるメーシーズ本店。ラッシュアワーの新宿駅並の混雑だ。もう1枚は、タイムズスクエアを練り歩く黒人青年射殺への抗議デモ。彼らはこの後、メーシーズ本店に向かったそうだ。


 2014/11/30 03:05  この記事のURL  / 

マンデーから始まったブラックフライデー
今日は感謝祭。アメリカ人にとっては日本の正月にも匹敵する、家族が集まりターキーディナーを囲む日だ。そしてブラックフライデーの始まりの日でもある。

もともとブラックフライデーは感謝祭の翌日、ホリディ商戦の開始日を意味していた。ブラックフライデーという言葉が公に使われたのは1960年代、当時の小売業者が既に実施していた感謝祭翌日のセールの人ごみの対応にあたっていたフィラデルフィアの警察が使い始めたのが初めとのこと。ちなみにメーシーズの感謝祭パレードは1924年だ。(ちょうど今そのパレードが無事終ったところだ。)

このブラックフライデーは、どんどん早期化している。数年前から始まった「感謝祭の木曜日の夜から営業」は、アメリカの労働組合の反対にも関わらず拡がる一方だ。今年はトイザらスは夕方5時から営業開始する。金曜日よりお買い得を放出するらしいので、子どものいる家ではターキーディナーどころではない。ウォルマート、ターゲット等ビッグボックス系は横並びで本日夜からブラックフライデー・セールを開始する。アパレルチェーンではギャップが木曜日夕方4時から営業、オンラインでは既に全商品50%オフが始まっている。(BLKFRIDAYというクーポンコードを入力すれば明日金曜日終了まで50%オフ)

業界では既に今週月曜日から「お買い得」が始まっている。昨年に続いて今年も感謝祭が月末ぎりぎりなので、ブラックフライデーとクリスマスまでの営業日数が短いためだ。ShopRunner.comという急成長中の2日後無料配送の会員制オンライン・リテーラーの調べでは、57%の人が感謝祭前にホリディショッピングの大部分を終えているとのこと。一方で、「クリスマスが近づけばもっとお買い得が出る」という期待感からブラックフライデーで慌てない人々も増え、全体としてはセール期間がどんどん延長されている。

サイバーマンデーも同様だ。オフィスに行かないとハイスピードのPCへのアクセスが無かった頃と異なり、今は誰もが携帯やタブレットで買い物する時代、月曜日まで待たずにどんどん買い物する。アメリカ小売業界には既に、ブラックフライデーとサイバーマンデーの実績だけではホリディ商戦予測はできない、という声もある。

セールの拡大は消費者にとってはありがたいことだが、リテーラーにとっては利益率へのプレッシャー拡大以外の何ものでもない。と言って、今更セールはやめられない。昨日のエコノミスト紙では「イギリスにもブラックフライデー上陸」とのタイトルで、ウォルマートの子会社アズダやアマゾンのお蔭で感謝祭の無いイギリスにもビッグセールを実施するリテーラーが増えたことを、少々迷惑そうに報道している。ブラックが「黒字化」から「闇」へと定義変更とならなければよいのだが。
(写真:AP, USA Today)

 2014/11/28 02:08  この記事のURL  / 

不調なアーバンアウトフィッターズ
先週発表されたアーバンアウトフィッターズ社の第3四半期業績は、既存比▲1%、当期利益前年同期比が▲32.9%と不調に終った。同社の不調の原因は、全社売上の40.9%を占める、アーバンアウトフィッターズ・ブランド(以下アーバン)だ。図表にあるように、昨年度は前年比▲6.0%、今年度9ヶ月累積も▲2.5%だ。アーバンの不調を、2桁成長を続けるフリーピープルと、経済危機後の売上げ不振をようやくのり越えたアンソロポロジーが支えている形だ。

CEOのリチャード・へイン氏は「アーバンが無ければ、当社の業績はパワフルだったのに」と残念がりながら、「モールへの来店客数が減っており、むしろオンライン部門の方が好調だった」と述べた。そして「インストア・ピックアップ、同日配送、モバイル対応等のサービス構築が店舗革新のチャンスとなるだろう」と、オムニチャネル戦略化を示唆した。

もっともインストア・ピックアップについては、実は昨年9月にホリー・デヴァイン氏(エグゼクティヴ・ディレクター、プランニング)がeマーケター誌上で2014年中に実現したいと述べている。それがどうして実現していないのか不明だが、アーバンアウトフィッターズのブランドはどれも定番品というものが無く、常にフレッシュで多様な商品が次々入れ替わるのが魅力なので、在庫管理上の課題か、それとも他の事情でそこまで手が回らなかったのか?

CEOは第三四半期発表後、ウィメンズ・ウェア・デイリー紙のインタビューで、アーバン・ブランドの店舗デザインと商品アソートメントについて、突っ込んだコメントをしている。「店舗デザイン・チームの仕事ぶりは良くなかった。ストア・デザイン自体も、店舗のタイプ別に違うアソートメントを作ることにも成功していない」と述べ、その結果「多くの店舗で不必要なほど展開商品点数が多くなり、細切れな印象を与え、ショッピングが難しくなり、魅力的でなくなった」としている。

同紙の分析では、アンソロポロジーは生活雑貨部門を縮小したりアソートメントを整理している一方で、アーバン・ブランドは生活雑貨、ギフト、アパレル、靴のカテゴリーの商品展開数を増やしており、顧客を混乱させている。へインCEOは、アーバンの店舗レイアウトとアソートメントを現在修正中と述べた。

同社のダイレクト(オンライン)部門の売上は好調とのこと。もともと、ティーンズがコア・ターゲットのアーバン・ブランドはソーシャル・マーケティングや売場でのモバイルPOSには早くから取り組んできた。しかしマーチャンダイジングで足元が緩んでは、オムニチャネル戦略の次のステップにも進めないのかもしれない。既に始まっている今年のホリディ商戦での闘いぶりに期待しよう。

 2014/11/25 05:14  この記事のURL  / 

成長を続けるラグジュアリー・ブランドの中古品市場
ルイ・ヴィトンやグッチ等、超高級ブランドの中古品販売市場が急成長している。フォレスター・リサーチ社の調査では、衣料品、バッグ、アクセサリー、ホーム・ファニシングを含むラグジュアリー市場のうち、既に10%は中古品市場で再販されており、そのうち1%がオンラインでの再販だそうだ。

なぜ急上昇しているかというと、@経済危機後、金融業界や大手企業の大量解雇の時期に、バブル時代に購入した高級ブランドの衣類やバッグ等を現金に換える人が増えたこと、A景気が改善した後も「最新のファッションを楽しんだ後は換金する」というラグジュアリーファッションの新しい楽しみ方が定着したこと、B原価や輸送コストの上昇を背景にラグジュアリーブランドが小売価格を上げているため、中古市場で買う人が増えているためだ。

アメリカのラグジュアリー・ブランド中古品の再販委託オンラインリテーラー、The RealRealは2011年に開業し、現在年商1億ドルを突破したという。会員数240万人。一日当たり平均5万点が同社オンライン上にリストされているという。同社はブランドの正統性を判別する鑑定士を抱えており、彼らが再販価格を決定する。開業以来500ブランド、50万点を販売した。販売者は、同サイト上での販売金額合計$7,499までは販売価格の60%、$7,500を越えると70%を受け取る仕組みだ。街角にある委託販売ショップ(一般に50%)に比べて、断然に率が良い。

中古品販売市場は、used、pre-wornという言葉を避けるためにセカンダリー・マーケットとも呼ばれている。最近では、購入前からセカンダリー・マーケットに出すことを前提にしたラグジュアリー・ショッピングも増えていると言う。言わば投資だ。その間にちょっと使わせてもらって楽しむのが配当か。今年7月フォーチュン誌では、投資価値のあるブランド、そうでないブランドを紹介した(下の図表を参照)。長期にわたって最も投資価値が高いのはやはり、シャネル、クリスチャン・ルプタン、エルメスだそうだ。

セカンダリー・マーケットではプレミアムがつくケースもある。例えばヴァニティ・フェア誌の特派員、エミー・フィネ・コリンズ女史は1年ほど使ったシャネルのバッグをRealRealで購入価格より週百ドル高い$1,000で売却した。ヴィンテージモノであればどんどん値は上がる。

セカンダリー・マーケットでの販売価格は、そのブランドの評判もあるが、より重要な要素は入手可能性とセールの頻度と言う。すなわち、ラグジュアリー・ブランドと認識されていても、アウトレットを持っていたり、しょっちゅうセールやプロモーションをやっているブランドは、セカンダリー・マーケットでも高くは売れない。シャネルやエルメスはセールを行わず、店舗数も限られているため、下表のように安定的に高値で再販できるわけだ。

やがて、セカンダリー・マーケットで投資価値の無いブランドは、ファースト・マーケットでも敬遠される時が来るかもしれない。
 2014/11/21 03:33  この記事のURL  / 

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プロフィール

平山幸江(ひらやま・さちえ)

アメリカ小売業コンサルタント

1993年よりニューヨークを拠点に活動。Jクルー・ジャパン(伊藤忠プロミネントUSA)、フェリシモ・ニューヨーク、イオンUSA調査ディレクターを経て2010年に独立。

アメリカ市場でのファッション、小売事業展開の実務経験に基づいた市場調査分析、戦略企画が専門。「販売革新」「ファッション販売」他執筆。米国小売最新情報に関する講演。慶応大学及びファッション工科大学卒業。


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