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アメリカン・カジュアルの近況(1) アバクロ
いつぞや、アメリカン・カジュアル御三家(アバクロ、アメリカン・イーグル、エアロポスタル)の苦戦について書いた。その後、相変わらず業績は悪く、特にニュースも聞かなかったが、26日、アバクロの本社所在地の地元新聞、ザ・コロンバス・ディスパッチ紙が「アバクロンビー&フィッチは服から組織まで全てをデザインし直す」との見出しで詳細な記事を掲載した。

まず、ピーク時のアバクロの世界観を作り上げ、卓越したリーダーではあるが一方で、従業員雇用や昇格の際に白人男性を優先し人種差別、性差別で訴えられたり、太った女性に対する差別的なコメントをする等批判の多いCEO、マイク・ジェフリーズ氏の指揮範囲の一部を削った。そして取締役会の委員長に企業外役員を任命し、新たに4人=全員女性の取締役会メンバーを登用した。これにより取締役会の女性比率は30%となり、全米平均の2倍となった。

商品及び店舗デザインの改革については、全社員が協力して徹底的にアバクロ・ブランド及びホリスター・ブランドが顧客の要求に対してどうあるべきかを討論した。その結果、アバクロ・ブランドは過去より若干年齢の高い層、21歳以上をターゲットとし、「簡単に着こなせるオール・アメリカン・スタイル」を目指す。ホリスターは、以前はアバクロの普及版だったが、今後は16歳(高校生)をターゲットに「南カリフォルニアのファンタジー」にインスパイアされたファッションを提供する。 (アバクロ社マーケティング・ディレクター、クレイグ・ブロマーズ氏発言)

また、よりトレンドを重視し、生産・流通リードタイムを短縮する。ただし、ファスト・ファッションを目指す訳ではない。スピード感を持ちながらもより深さを重視する。トレンドの源泉については世界中のティーンズが着ているものの調査だけでなく、人気のブロガーの情報も重視している。(コンセプト・デザインVP、メレディス・ラジネス氏発言)

最も大きな目に見える変化は8月に発表されあtロゴの消去だが、正確に言えば胸や背中に大きくロゴを見せるのを止め、サイドに小さく入れるに留める。現在の若い世代は、上から下まで同じブランドで統一せず、トレンドにあわせながら編集して自分のスタイルを作るため、これに合わせた商品提供を行う。

これらの改革をウォールストリートは歓迎しているようだが、果たして顧客の受けはいかに?実際の店頭やオンラインに並ぶ商品を見ると、確かにロゴは消えた。が、消えてみると、他のブランドとどこが違うのか、今一つよくわからない。何より、セール、クーポン、マークダウンが目に付く。今年のアメリカのホリディ商戦は景気回復と言われながらも、小売業界の間では厳しい予測が出ており、各社は価格競争を強いられる覚悟である。なので当然の流れではあるが、ロゴは無くなるわ、セールが増えるわ、で、どこに新たな価値が生まれたのか益々見えなくなってしまう。ウェブサイトも、昔はもっとクールな感じだった。が、今はトップページから値引き感があふれ出ている。

そもそも同社の顧客シェアのうち、海外観光客も見逃せない。5番街の旗艦店の前には、昔ほどではないにせよ未だに長い列が出来、入店制限をしている。彼らはむしろロゴが目当てなはずだ。このホリディ商戦で、アバクロ建て直し策の成果はどう出るだろうか。

しかしアバクロの悩みは同社だけのものではない。意外とアメカジ三兄弟のうち最も価格帯の低いエアロが大苦戦している。次回は弟分たち、アメリカン・イーグル、エアロポスタルの近況をみたい。

(写真1)アバクロンビー&フィッチ社ウェブサイトのトップページ。祝祭日でもないのに、店舗・オンラインで25%オフ、期間限定でアウターウェア100ドルオフ及び全ジーンズ39ドルセールを行っている。
(写真2)ロゴの消えたTシャツ


 2014/10/31 22:47  この記事のURL  / 

子どもをターゲットとした5ドルショップ「ファイブ・ビロウ」
「ファイブ・ビロウ」は、5歳から19歳をターゲットとした、子どものための5ドルショップだ。「スタイル」(ファッション雑貨)、「ルーム」(生活雑貨)、「スポーツ」、「テック」(スマートフォンやビデオゲーム等のアクセサリー)、「クラフト」、「パーティ」、「キャンディ」(菓子類)、「ナウ」(ハロウィーンやクリスマス等の季節商品)のカテゴリーで、子ども達がお小遣いで買える5ドル以下の商品を販売するチェーンストアで、店舗面積は平均7500スクエアフィート。2000年創業で2002年に一号店オープン。2012年4月にナスダックに上場した。2014年2月現在、北東部、中西部、南部に304店舗を展開する。

ファイブ・ビロウ社は、アメリカのトレンドとは逆に店舗事業のみでオンライン販売を行っていない。子どもをターゲットにしているため、クレジットカード他のオンライン決済が難しいためだろう。2013年度に60店舗、2014年度は62店舗出店予定で、クレディスイス銀行他のアナリストの試算では向こう20年間に2000店も可能、といわれている。

その急成長ぶりにもかかわらず、今まであまり表舞台に出てこなかったが、今月になって急に報道が増えた。その理由は売上既存比の低下だ。既存比に一喜一憂するアメリカの金融業界では、株価が高すぎるのではないか、とか、2000店体制への成長戦略を疑う声が高まっており、その結果報道が増えた形だ。図表でも2013年度既存比は4%で、直近の第2四半期では3.4%に下がっている。

ファイブ社の成長を支えてきたのは、子ども達がわくわくする品揃え、安い価格、積極的な出店戦略だ。出店については、既存の大手チェーンが不採算店舗の削減傾向にある中、ショッピングモール側としはありがたい存在だろう。一方で、今後の成長性に陰を落とす要因があるとすれば、1にも2にも、マーチャンダイジングにわくわく感・魅力が無くなること(商品は生活不必要品で構成されているので、エモーションの高揚のみが頼りだ)。また、入店しているショッピングモールそのものの動員力の低下も不安材料だ。アメリカでは16歳から自動車運転免許証を取得できるとは言え、多くの場合は親と一緒に車でショッピングモールに行くので、親のモールへの来店回数が減れば、自動的にファイブ社の来店客数は減る。全米で益々オムニチャネル化が進んでいる現在、有店舗のみのビジネスモデルには成長の限界がありそうだ。

とは言え、2000店は無理そうでも、まだしばらくは成長しそうな業態だ。昔の駄菓子屋さんがiフォン・カバーやキャラクター柄ネール(つけ爪)等も販売し、全てが5ドル以下となれば、確かにそそられる。しかし、親がダラーショップ(1ドル)で買い物する間、子どもは5倍の予算でショッピングとは、アメリカもなかなか子どもには甘い。

www.fivebelow.com



 2014/10/26 02:06  この記事のURL  / 

ヨガパンツ vsデニム(2)Jクルーとルルレモン
アメリカではヨガパンツが普段着として拡がっているお話の続き。(1は6月14日をご参照ください。)

2日前、Jクルーのミッキー・ドレクスラーCEOがブルームバーグTVのインタビューで「アンダー・アーマーやルルレモンのような本格的なアスレチック・ウェアに取り組もうと研究したが、やるのをやめた」と発言。これが結構話題になっている。

NPDグループの市場調査によると、過去1年間のアパレル販売額伸び率が1%に対し、アクティブウェアは7%伸長している。(注:2013年7月から2014年6月) ギャップ、アーバン・アウトフィッターズ等、カジュアル系ブランドでは、これに対応してヨガ・ウェアやトレーニング・ウェアのコレクションを拡大。全米最大手百貨店メーシーズでもアクティブウェアの売場を拡大している。

この成長市場に参入しない、と敢えて公言する理由は「その専門性を持っていないから。自分達の得意な分野でクリエイティビティを発揮したいから。」とのこと。確かに急成長を続けていたルルレモンも、昨年度から売上伸長に急ブレーキがかかっている。その原因の1つは、素材の問題で「下着が透けて見えるヨガパンツ」だ。途中でリコールしたものの、大きく報道されたため、一時期はジムで「あなたのヨガパンツ、大丈夫?」がジョークとなった。しかしより大きな問題は、前述のように競争が激しくなり、価格が高い同社製品に客離れが起こっていることだ。直近、2014年度第2四半期の決算報告書では、同社直営店の既存比は▲5.0%となっており、「客数の低下が原因」と明記されている。

とは言え、Jクルーに具体的な秘策があるのだろうか?今年5月に話題となった低価格の新コンセプト「マーカンタイル」の可能性については、その後音沙汰が無い。2014年第2四半期では増収減益となり、増加した経費削減のため不採算店舗の撤退の可能性も公表している。デニムはJクルーにとっても重要なアイテム。同社オンラインでは、「議論の余地なく選ぶべき5アイテム」の2番目に「ビートアップ・ジーンズ」を紹介している。その価格135ドル。1点1点「手で破壊」しているため、同じ商品はないそうだ。やはりクリエイティビティに期待をかけて高付加価値・高価格商品で攻める(守る)のだろうか?

(写真:www.jcrew.comよりBroken-in Boyfriend Jean in Harbor Wash。)

 2014/10/23 02:41  この記事のURL  / 

ギャップとJCペニー、CEO交代の明暗
ギャップとJCペニー。どちらも手ごろではあるがディスカウンターほど安くもなく、ファストファッションほどファッショントレンドと遊ぶ訳でもなく、難しいポジションにある業態だ。

売上高が2004年度ピーク時から2009年度▲12.7%も落ちたギャップ社。その業績を回復させたグレン・マーフィー氏が、今月8日、自身の引退とアート・ペック氏の新CEO就任を発表した。

続く13日、JCペニー暫定CEO、マイロン・ウルマン氏が、2度目の引退と新CEOマーヴィン・エリソン氏の就任を発表した。ウルマン氏は2011年にアップル社から鳴り物入りで引き抜いたロン・ジョンソン氏にCEOの座を譲って引退したが、ジョンソン氏が手ごろな価格で買えるブランド・インショップ構想を掲げ、バーゲン、クーポンを廃止等勇み足の大改革の結果、売上高が2011年度173億ドルから翌年130億ドルへと▲25%も落ちて辞任、ウルマン氏は急遽出戻り、以前のJCペニーが得意なバーゲンやクーポンを復活させて何とか売上激減に歯止めをかけたのである。

ギャップ後任のペック氏はハーヴァード・ビジネススクール卒業後、ボストン・コンサルティング・グループを経て2005年にギャップに入社。成長・革新・デジタル部門のリーダーとしてオンライン・ヨガウェア販売のアスリータを買収し、オンライン+全米約70店チェーンに成長させたほか、2012年には高級婦人服専門店チェーン、インターミックス社を買収、手詰まりになっていたギャップ社の事業ポートフォリオに新たな成長の株を移植した。

一方JCペニー後任のエリソン氏は2002年にホーム・デポ社に入社し、US店舗事業、ロジスティクス等、主にチェーンオペレーション部門でのリーダーシップを取ってきたベテラン・エグゼクティブだ。

小売業界、小売アナリストたちは、概ねギャップの後任に期待を持っているようだ。会社が業績回復に必要な不採算店舗撤退を行っている中で新規事業を開発し、収益貢献させてきた実績が評価されているからだ。一方、JCペニーの後任への反応は冷ややかだ。共通して指摘されるのは、ディスカウンターと高級百貨店や専門店の狭間に入る中価格帯の百貨店経営が行き詰っている中で、最も必要とされる微妙なさじ加減のマーチャンダイジングの経験がまったく無い点だ。エリソン氏自身もWWD紙のインタビューでこの点は認めており、「しかし、私は一消費者としてJCペニーの(失敗した)改革をつぶさに見てきた」点を強調した。

実はギャップのマーフィー氏が引退を表明した際、彼がJCペニーのCEOに着任するのではないか、という憶測が流れた。翌週のJCペニー新CEOニュースにがっかり風が吹いてしまったのは、それも一因しているかもしれない。そもそも、JCペニーはまだ改革の途中であり、出血がやっと止まってホッとしている状態(注:既存比売上の改善)なので、ウルマン氏はまだまだ腕をふるう余地があるはずだ。それなのに応急処置が済んだら急いで再引退してしまうとは。また、JCペニーと言えば数少ない、まだ生き残っているアメリカの小売業老舗の一社だ。このCEO職にチャレンジしたい同業者がいなかった結果、ホーム・インプルーヴメントのオペレーション部門から人選せざるを得なかったとも憶測するのも少々悲しい。これほどに、中価格帯の総合小売チェーンというフォーマットが難しい状況に立たされていることをひしひしと感じる。とは言え、生き残りを迫られた時こそ勝機、がアメリカン・スピリッツだ。ぜひともエリソン氏には、JCペニー顧客の視点から、次世代の新ビジネス・モデルを築いて欲しいものだ。

 2014/10/21 12:08  この記事のURL  / 

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プロフィール

平山幸江(ひらやま・さちえ)

アメリカ小売業コンサルタント

1993年よりニューヨークを拠点に活動。Jクルー・ジャパン(伊藤忠プロミネントUSA)、フェリシモ・ニューヨーク、イオンUSA調査ディレクターを経て2010年に独立。

アメリカ市場でのファッション、小売事業展開の実務経験に基づいた市場調査分析、戦略企画が専門。「販売革新」「ファッション販売」他執筆。米国小売最新情報に関する講演。慶応大学及びファッション工科大学卒業。


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