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ペイパルがeベイから独立
本日、eベイは2015年度下半期に、ペイパルをスピンオフし、上場することを発表した。ペイパルは現在同社売上高の41%を占めている。

ペイパルはちょうどドット・コム・バブルがはじけた2000年に現在の事業形態をスタートさせた。もともとは1998年末に4人の20代前半のコンピュータ専門家および起業家が立ち上げたオンライン決済サービスである。アメリカがバブル崩壊やセプテンバー11テロ事件で混乱する中、その将来性を見抜いたeベイに2002年買収され、9.11 後初めて上場したドット・コム企業だ。

その後、詐欺防止サービスを提供するフロード・サイエンス社、クレジットカード無しでオンライン決済可能なビル・ミー・レイターを買収し、eベイのみならず他のインターネット・リテーラー、実店舗の決済サービス分野や海外に進出し、2013年度の売上高66億ドル、直近の第2四半期では全社売上の45%を占めている。

今後、ペイパルが独立することにより、eベイ傘下ではできなかったアマゾンやアリババのような海外大手インターネット・リテーラーとの取引が可能となる。

モバイル決済サービスのスクエアやグーグル・ウォレットが広く普及するアメリカでは、決済手段自体の利便性、安全性、付加価値(ポイント制やリテーラー独自のプロモーション等)が、リテーラーの差別化戦略の1つともなっている。eベイから独立することで、その巨大な資金力を背景に、新たな展開が期待される。
 2014/09/30 22:46  この記事のURL  / 

ブランド・ビジネスとIPO
ファッション業界での成功とは、かつてはパリ・コレ等の世界の表舞台でコレクションのショーを行ったり、数多くブティックを出店することだった。現在では、IPO(新規株式公開)を行い、これを成功させることのようにも見える。アメリカのブランド・ビジネスの成功法について一考したい。

◆マイケル・コース
近年マイケル・コースの株価は、2012年11月のIPO以来3倍に成長した。売上高ではラルフ・ローレンの半分だが、市場価額ではラルフ・ローレンを抜いた(注1)マイケル・コースは、着々とその帝国を固めつつある。海外出張の多い方なら、アメリカに限らず、アジア、ヨーロッパ各地に店舗がどんどん出店していることを実感されているだろう。
コースの成功は、コース氏自身の魅力的なパーソナリティと、ハイエンドな香りを持ちながらも一般市場受けするデザイン、そして倒産寸前だった会社を33億ドル企業に成長させた影の立役者たちの存在が大きいといわれている。コース氏の支援者であるローレンス・ストロール氏とシラス・チョウ氏は1990年代のトミー・ヒルフィガーの成功に重要な役割を果たし、コースに対しても企業成長戦略の道筋を描き続けている。コース社CEOのジョン・アイドル氏は、ラルフ・ローレン、ダナ・キャランで経営の腕を磨いた人物だ。
(注1)2014年9月27日現在、ラルフ・ローレン社145.7億ドル、マイケル・コース社146.1億ドル

◆マーク・ジェイコブズ
マーク・ジェイコブズは、マイケル・コースに続くブランドの一番手と目されている。ジェイコブズは昨年10月、16年間クリエイティヴ・ディレクターを務めたルイ・ヴィトンを離れ、自社の経営に集中することとなった。同ブランドの株式の多くは今でもラグジュアリーの帝王、ベルナルド・アルノー氏とその家族が保有しており、離職にあたって、アルノーは「3年以内にマーク・ジェイコブズ・ブランドをIPOさせる」、とコメントしている。
ジェイコブズは世界的に知られたコレクション・ライン、パーソナリティ、セカンド・ライン及びライセンス・ビジネスを展開しており、売上高は10億ドル(注2)に近づいている。アルノー氏の強力なバックアップもあり、成功の足場が固まりつつある。
(注2 )2013年10月、アルノー氏のコメント

◆トーリー・バーチ
今月24日、トーリー・バーチは、前ラルフ・ローレン社ヴァイス・チェアマンだったロジャー・ファラ氏を共同CEOに任命した。2004年にブランドを立ち上げ、Tの字を組み合わせたロゴ、独特のプリント、着やすいスタイリングながらプレッピーな雰囲気のある 同ブランドは、当初共同経営者であった夫、クリストファー・バーチ氏の経営面・資金調達面での力添えもあり、短期間に成長した。現在年商10億ドル(約1,000万円)に近づいていると推定されている。今回の動きも、近い将来のIPOへの布石だろうとの憶測が拡がっているが、バーチ氏、ファラ氏は共に否定している。ファラ氏はWWDのインタビューに「ラルフ・ローレンは30年間プライベート・カンパニーだった。プライベートでないとブランドのDNAは守れず、成長しない」と答えている。

ファッション・ビジネスを成功させるためには、コレクションの魅力だけでなく、その象徴となるデザイナー自身の魅力、業界での経験の深い人材がいる経営チーム、資金調達力が必要だ。ソーシャル・メディアの普及でファッション・ショーのあり方が変容し、オンライン・ショッピングとモバイルの普及でリテール=店舗の構造が変化しつつある現在のアメリカでは、ファラ氏のDNA論はあるものの、変化のための投資に向けて、IPOを目指す流れは続くのではないだろうか。

(参考資料)
The Hunt for Next Michael Kors Continues, Evan Clark, WWD, 9/26/2014
Roger Farah Joins Tory Burch as Co-CEO, Lisa lockwood, WWD, 9/25/2014
Marc Jacobs Leave Louis Vuitton, Suzy Menkes and Eric Wilson, The New York Times, 10/2/2013 他


 2014/09/28 21:26  この記事のURL  / 

ジューシー・クチュールその後
6月27日既報のジューシー・クチュール大改革劇の続き話を。

◆7月:原点に戻る新広告キャンペーン
JCは、現在世界58カ国で販売されている「ジューシー・クチュール・ブラック・ラベル」の今秋の広告キャンペーンについて発表。「リターン・トゥ・ハリウッド」のテーマでモデルのマーサ・ハントを起用し、モーターサイクルジャケット、豹柄プリントのスキニージーンズ、タイト・スカート、レース・ドレス、メタリックなアクセサリーをフィーチャーする。W、エル、ハーパーズ・バザール等有力紙に掲載し、北米のみならずアジア、ヨーロッパ、中東、アフリカ、ラテン・アメリカと世界中でキャンペーンを展開する。

◆8月:アウトソースによるオムニチャネル化
JCの親会社、オーセンティック・ブランド・グループは、JCのEコマースをワンストップ・インターネット社に委託すると発表。ワンストップ社は、ベッセマー・ベンチャー・パートナーズと、リー&ファンの北米子会社ファン・キャピタルUSAが投資するインターネット・プラットフォームおよび各種ソリューションを提供する会社で、顧客獲得のためのマーケティングから写真撮影、バックエンドの顧客サービス、フルフィルメントを広範囲に「ワンストップで」行う。他にはJブランド、セヴン・フォー・オール・マンカインド、ラグ&ボーン等をクライアントに持つ。
ワンストップ社はオムニチャネル戦略にも関与し、いずれEコマースのオーダーが店舗から出荷されたり、店舗でピックアップや返品できるよう計画中だ。

◆9月:ライセンス契約による百貨店卸
中価格帯の百貨店チェーン、コールズは9月より、ライセンス契約でジューシー・クチュールの低価格帯商品の販売を開始した。ミッシー、7歳から16歳ガールズ、ジュエリー、アクセサリー、時計、靴、ベッドリネンおよび香水部門で展開している。小売価格はベッドリネン、時計、アクセサリーが400ドル以下、その他は100ドル以下だ。

そしてこの間にアジア、ヨーロッパの拡大戦略を進め、靴のステーヴ・マデンとのライセンス契約(発売は来春)、今後は向こう5年間で127の新コンセプトの直営店出店を行う。投資会社が親会社ならではのスピード感と時代に沿った経営革新計画だ。しかし、ついこの間まで5番街に立派な直営店や高級百貨店にインショップを持っていたブランドの急変に、顧客はついていけるのだろうか?しかも、かたや「ブラック・ラベル」のようなエッジィなアプローチと、一方でコールズのようなお手ごろ価格百貨店でのエクスクルーシヴな展開。その後に登場する直営店とはいかなるものだろうか?現時点ではとてもちぐはぐな戦略のようにも見える。しかし何か大きな意図があるのだろうか?

(写真)ジューシークチュール「ブラック・ラベル」キャンペーン

 2014/09/26 09:15  この記事のURL  / 

米系百貨店ヨーロピアン戦争にニーマン・マーカスが先手?
9月15日、高級百貨店ニーマン・マーカスがドイツ、ミュンヘンをベースとするMytheresa.com(マイテレサ.com)の買収を発表した。マイテレサ社は年商1億3,000万ドル、ヨーロッパ120カ国以上に出荷し、Eコマース売上の3分の2はドイツ国内以外と言う。もともとはミュンヘンに開いた高級ブティック「マイテレサ」の拡販のために2006年に開始したEコマースだが、現在はEコマース売上が主力になっている。

同社が扱うブランドは、バランシアガ、イヴ・サンローレン、ヴァレンチノ等ヨーロッパのトップ・デザイナー170以上にのぼる。

ニーマン・マーカスは、バーグドルフ・グッドマン同様、独立事業部門として運営し、マイテレサ・チームはミュンヘンを拠点に経営を続ける。NM社は今回の買収でヨーロッパ市場とデザイナー・ブランドに大きな足がかりを得た。NMGインターナショナルを設立し、今後も海外投資を続けると予測されている。

アメリカの高級百貨店は現在、ヨーロッパに目が向いている。サックス・フィフス・アベニューは前ハロッズのチーフ・マーチャントだった同社プレジデント、マリゲイ・マッケイ氏が「現在ヨーロッパの若手デザイナー導入の準備中」と公表しているし、ブルーミングデールズの新CEO、トニー・スプリング氏も「新鋭ヨーロピアン・デザイナー」について何度も言及している。

しかし、同2社に先んじて、NMは一気にヨーロッパ市場に乗り込む形でヨーロピアン・デザイナーを押えた。現在のマイテレサのブランド揃えは、若手より大御所が中心だが、もしマイテレサ・チームが親会社ニーマンの指示で現地で若手開拓を行い、それをEコマースで販売したら、アメリカのマーチャンダイザーが何度も大西洋を渡り、言語の壁と時差ぼけを克服しながら開拓するより、事が早そうだ。Eコマースに強いニーマンの米国内フルフィルメントセンターを使ってアメリカ顧客に早く・安く出荷する、という手もあるかもしれない。

オムニチャネル化が進むアメリカだが、もはや買収相手がブランドや店舗チェーンではなくEコマース、という点にも先見性を感じる。

(写真)www.mytheresa.com

 2014/09/23 23:48  この記事のURL  / 

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プロフィール

平山幸江(ひらやま・さちえ)

アメリカ小売業コンサルタント

1993年よりニューヨークを拠点に活動。Jクルー・ジャパン(伊藤忠プロミネントUSA)、フェリシモ・ニューヨーク、イオンUSA調査ディレクターを経て2010年に独立。

アメリカ市場でのファッション、小売事業展開の実務経験に基づいた市場調査分析、戦略企画が専門。「販売革新」「ファッション販売」他執筆。米国小売最新情報に関する講演。慶応大学及びファッション工科大学卒業。


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