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第2四半期決算に見るアパレルの苦難
アメリカの主要なモール系アパレル・ブランドが全般的に苦戦している。

アメリカは今年前半は寒波の影響、及び経済統計上は回復が認められるものの、未だに足元がはっきりしない実消費動向の影響で、アメリカ・アパレル業界の2014年度は前年度より低い水準で動いている。しかし気候が回復した第2四半期では、衣料品もぐんと業績を伸ばすのではないかと期待されていた。ところが、結果は厳しいものだった。しかし、苦戦の理由は天候だけではないようだ。

【ギャップ】
実は、総国民服ギャップは他社に比べると良い結果を出した。国内では商品改善の影響や、成長市場のアクティブウェア「アスレティカ」効果もありそこそこだったが、海外事業に助けられた。また、同社はアメリカ国内ではオムニチャネル戦略に本腰を入れ、顧客がモバイル、オンライン、店舗のどこでも簡単・便利に買い物できる環境整備ができている。この甲斐あって、店舗とオンラインストアの両方から効率的に売り上げを稼ぐことができた。

【アバクロンビー&フィッチ】
既存比は▲7%と相変わらず業績は悪い。店舗が▲11%、Eコマースを含むダイレクトが11%なので少々救われたが、店舗は相当苦しい状況だ。特に気になるのは、頼みの綱だった海外店舗の既存比が▲16%と大きく落ち込んでいる点だ。CEOのコメントでは、「第2四半期の業績は予想を下回ったが、商品を改善し、ロゴで売るデザインを減らし、ファッション要素を高めているから今後は改善のはず。」と弁明している。店舗やディストリビューション関連費用を約10%、人件費を6%削減した結果、当期利益は改善した。

【アメリカン・イーグル】
客数が減ったため、セールの増加に伴い粗利益率が前年同期33.8%から33.4%へと低下。ただし同社CEOの見解では「今が底底辺で、今後は改善が見られる」とのこと。

【エアロポスタル】
既存比▲13%と業績は益々厳しい。CEOコメントによると、「粗利益率を確保し、営業経費もコントロールしたので、今後は良いはず。今の苦しい時期にエアロポスタルで仕事をできることを感謝している」と延べ、忍耐強く業績改革に取り組まなければならない様子をにじませた。

【アーバン・アウトフィッターズ】
同社の業績も過去に比べると今ひとつだ。特に中核のアーバン・アウトフィッターズ・ブランドは既存比▲10.0%。むしろ年齢が高いアンソロポロジーの既存比6%、年齢層が広くよりコンテンポラリーなフリー・ピープル同21%の方が元気が良い。

【ゲス】
ゲスも業績は悪かった。マルチアーノCEOは、「スタイリングは顧客の期待に沿っていなかった」と認め、「以前我々がフォーカスしていたものに戻り、クラブ・ドレスを復活させ、ドレスのアソートメント・バランスを改善したい。今回導入したハイ・ウェストも展開デザイン数が多すぎ、やり過ぎだった。トップスも他に方法があったはずだ。」と商品については、かなり細かく反省点を述べた。2016年度末までに50店舗を閉鎖し、2-3年間に北米店舗の50%を改装する計画だ。

【アン・テイラー】
数年前からデザインの若返りを行い、一度は業績が回復した同社だが、また元気が無くなっている。

この、第2四半期という一瞬の動きではあるが、アパレル専業チェーンの元気の無さには1つ共通点がある。「商品改善」「在庫調整」「経費削減」―このようなオールド・スクールのやり方だけでは、もはや時代は乗り切れない、ということだ。むしろギャップのように、顧客の利便性向上の視点から事業モデルの改革に取り組み、顧客サービスの向上によって業績改善、という部分に学びがあるようだ。
 2014/08/29 12:21  この記事のURL  / 

短期間で収益化したネット企業、Zulilyとは
ZulilyはGilt Groupeと同様、フラッシュ・セール系のオンライン・リテーラーだ。ベビー、トドラー及びその母親を対象としたアパレル、玩具、アクセサリーを販売する。会員になり、メールアドレスを登録すると、毎日日替わりでセール情報が送られてくる。Disney、Little Meのような子供服マス・ブランドから、デザイナー・ブランドまで「高品質で素敵なものなら何でも」取り扱う。

2010年に創業し、初年度売上が既に1,800万ドル、2013年11月にナスダック上場を果たし、2013年12月期の売上高は6億9,571万ドルだ。しかも、急成長はするもののなかなか収益化できないドット・コム系にしては珍しく、3年間の赤字後、直近では1,291万ドルの当期利益を上げている。

アメリカのフラッシュ・セール系で先駆者かつ大手はGilt Groupeだ。既に日本にも進出している。2007年創業の同社は、会員制ラグジュアリー・ブランドのフラッシュ・セールで成長し、アメリカの2012年度年商は5億5,000万ドルとされている。現在は物販だけでなく、Gilt City(地元のエンターテイメントやレストラン)、Gilt Travel(旅行)でのディール(お買い得)も提供している。今年中に株式上場を予定しているが、まだ、その後のニュースは聞かない。

フラッシュ・セール市場は、本格化してまだ5,6年なのに既に混み合い、負け組がフラッシュ・セールの事業モデルを離れようとしている。例えばモダン・デザインの商品を販売するFab.comは昨年フラッシュ・セールを止め、通常のオンライン・ショッピングのように顧客が買い物できるプラットフォームに変更。コスト削減のために解雇を実施した。同じくスタイリッシュなデザイン商品を日替わりセールで販売するRue La Laも解雇とスケールダウンを行っている。何が問題かと言うと、「日替わりセール」は確かに楽しいが、価格の安さのみに絞ると、結局はアマゾンで同じブランドを同じような価格で買えてしまうのだ。その上、無料配送や返品条件等の利便性ではアマゾンに太刀打ちできない。

それではなぜZulilyは成長しているのか。1つには、セレブの間で子どもを持つことがある種のファッションとなり、彼女達がZulilyのようなサイトで楽しく買い物をしていること、2番目に、世界中の母親共通の「わが子には他の子が着ていないようなものを着せたい・持たせたい」という欲求に応えた品揃えや、サイトのヴィジュアルの美しさ、そして何よりも、子育て中の母親の心理をズバリついたことだ。「こんなに一生懸命子育てしているんだから、せめて自分へのご褒美に何か欲しい」という欲求を満たすような、リラックスしながらも素敵なママを演出するファッションやアクセサリーを販売し、子育て中のお母さんの精神的な潤いニーズにワンストップで対応している。

フラッシュ・セールを超えた独自の価値を作り出したところで、Zulilyはアマゾンの追撃の手を潜り抜けているようだ。

 2014/08/25 10:16  この記事のURL  / 

第2四半期決算に見る百貨店の現状
大手リテーラーの第2四半期決算報告の時期だ。今年のアメリカのファッション業界は、長くて厳しい冬に苦労した。第1四半期は各社ボロボロだったため、上半期を決める第2四半期が注目されていた。

ファッションにあまり関係のないウォルマートだが、アメリカの消費を映し出す鏡である。その決算報告書からは、「失業率は下がり、アメリカの景気は次第によくなってきているものの、その影響で低所得者救済措置が次々停止される等、全般的に消費者の財布の紐は硬くなっている」ということがわかる。

既存比を見ると、コールズ以外はまあまあ健闘した。しかしボトムラインは下方修正が目立つ。個別に見てみよう。

【メーシーズ】 「ワン・デイ・セール」やメーシーズカード会員への休むことのないプロモーションでブランド品を販売する同社にとって、消費環境は追い風だ。加えて、全米メーシーズ810店以上、ブルーミングデールズ40店という巨大ネットワークでオムニチャネル戦略の効果がじわじわ上がりつつある。現在「オンラインで購入し、店舗でピックアップ」システムを全米で展開開始し、テリー・ルンドグレンCEOは「我々はオムニチャネル戦略で競争相手に差をつけるぞ!」と鼻息があらい。しかし規模が大きい分経費や投資額は重く、収益面では下半期は下方修正している。

【ノードストローム】 定価販売の百貨店部門自体は業績が良くないが、アウトレット業態の「ノードストローム・ラック」が既存比4%、前年比14%と売上伸長に貢献している。化粧品、メンズ衣料品、アクセサリーが売上をリードしたそうだ。他社が、メーシーズを含め下半期に向かって収益予測を下方修正しているにも関わらず、一人、余裕で上方修正をしている。

【JCペニー】 本ブログで以前ご紹介したとおり、2012年度に既存比▲25.2%、43億ドルもの売上を失った同社は、ようやく「復活」してきたようだ。前年の数字が悪かったので、既存比6%は他社と比較できないが、ここに辿り着くまで2年以上かかっている。一株利益も56セントの損失だが、アナリスト予測より損失額が低かったため、皆一安心。今からようやく、他社に何周も遅れてオムニチャネル戦略や海外戦略に着手できるか。

【ターゲット】 同社は必ずしも百貨店と比較はできないが、衣料品や化粧品部門の売上貢献が大きい。昨年ホリディ商戦中に襲った個人情報流出の影響で、その後売上不振に陥ったが、この第2四半期で来店客数の改善が少しずつ見えているようだ。また、Eコマースの売上が30%伸長し、既存比0%にこぎつけた。

【コールズ】 ちょっと前までは業績が良かったはずなのに、ここのところ苦戦している。他社に比べて遅れているEコマースに問題がありそうだ。既に昨年のホリディ商戦で、他社がEC売上を伸ばしている最中に、売上伸び率が過去の半分の15%に下がっていた。同社はEコマースの改装を既に計画している。

次週はアパレルの決算をご報告したい。

 2014/08/23 05:42  この記事のURL  / 

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プロフィール

平山幸江(ひらやま・さちえ)

アメリカ小売業コンサルタント

1993年よりニューヨークを拠点に活動。Jクルー・ジャパン(伊藤忠プロミネントUSA)、フェリシモ・ニューヨーク、イオンUSA調査ディレクターを経て2010年に独立。

アメリカ市場でのファッション、小売事業展開の実務経験に基づいた市場調査分析、戦略企画が専門。「販売革新」「ファッション販売」他執筆。米国小売最新情報に関する講演。慶応大学及びファッション工科大学卒業。


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