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ジューシー・クチュール全店撤退の真意
ジューシー・クチュールと言えば、ライムストーンがちりばめられたベロアのジャージで、2000年代前半には多くのセレブが愛用したブランドだ。6月20日にジューシー・クチュールの親会社、Authentic Brands Groupは6月一杯で全米のJC全店を閉鎖すると発表した。同社のウェブサイトによると、北米には100店舗以上が営業していた。旗艦店だったマンハッタン5番街店も既にクローズしている。

これについて、多くのメディアが、あたかもJCが終焉したかのような報道をした。ニューヨーク・マガジンでは、「安らかに眠りたまえ、ジューシー・トラックスーツよ。2000年代の誇るべきユニフォームよ」とタイトルをつけ、ブランドの歴史を細かく紹介した。

これに対して、WWD(ウィメンズ・ウェアー・デイリー)紙は24日、「ジューシー・クチュールが2015年北米に出店」というタイトルで、より詳細な戦略の全容を紹介した。柱は、ニューヨーク、ロサンジェルス、バンクーバーのような主要都市に絞り、新しいロケーションで新コンセプトの店舗を出店する、というものだ。新JCストアは、百貨店のようにカテゴリー別にフロアをレイアウトする。

なお、現在約200ある海外店舗は継続して営業し、向こう5年間でインショップも含めて127店舗を新規開業する計画だ。また、女児とベビーをターゲットにした店舗(路面店)を海外に出店することも視野に入れている。

従って100店舗以上の突然の閉店はブランド再生をかけた荒業、ということになる。実際、JCの業績は落ちており、ブランドとしての方向性を見失っていた。また、「リラックスしたファッション」へのニーズは継続しているものの、ヨガパンツやアクティブスポーツウェアの台頭で、光物つきのベロアは選手後退となってしまった。

それにしても、いったい、どんな商品で何店舗出店するのだろうか?不動産のメドはついているのか?そもそも100店舗もの撤退によるリースや人の問題はどうするのだろう?同じブランド名でゼロからのやり直し、というのは思い切りのよいアメリカのリテールでも初めての試みではないだろうか?しかもパイロット店無く、いきなり本番なのだろうか?続きが楽しみである。

(写真は「故」マンハッタン旗艦店)

 2014/06/27 06:10  この記事のURL  / 

コーチ vs マイケル・コース
バッグ及び衣料品・アクセサリー製造販売、コーチ社が一昨日、北米事業建て直し戦略を発表した。同社は海外市場では業績を伸ばしているが、アメリカ本国での業績は苦戦が続いていた。

北米のフルプライス・ストアを2015年度上半期までに70店舗閉鎖。ストア・コンセプトを現在の「アフォーダブル・ラグジュアリー(手ごろな贅沢)」から、よりファッション志向に変更。ロゴを中心としたデザインから脱却し、レザー製品を拡大。この新コンセプトは今年11月に登場の予定。最初12都市で展開の後、2015年度下半期中に他の市場に拡大する。

アウトレットストアも2店舗閉鎖し、代わりにメンズ・レディス両方を販売するフォーマット10店舗を追加。さらに13のメンズ・ストアをレディス・ストアに組み入れる。アウトレット・ストアではプロモーション戦略を変更し、販売価格を上げる。

ただし、これらの改革(コーチ社によると「進化」)のコストとして、2015年度の年商はlow-double-digit(20−30%か?)、既存比はhigh-teens(17−19%?)下がるとの予測を発表した。アメリカのアナリストたちは「改革は歓迎するが、ブランドを建て直すには時間がかかるだろう」と慎重な見方をしている。

アメリカ市場での苦戦の理由には、@アウトレットでの販売を拡げ過ぎて顧客にディスカウントを期待させる結果、定価販売が伸び悩んだ、A同価格帯で好調なマイケル・コースにシェアを奪われている、等が挙げられている。

コーチはもともとニューヨークが誇るレザーバッグ専門店だった。1985年にサラ・リー・コーポレーションに買収されて以来、拡大戦略を続け、デザインも変わっていったが、未だにオリジナルのシンプルでシック、独特の差触り心地のレザー・バッグに愛着を持つ人は結構多い。筆者は昔、コーチの工場を見学したことがあるが、手作業のような生産工程を経て作られたバッグは、大切に長く使いたいと思わせるものだった。Eベイでは今でもその時代のデザインの商品が頻繁に販売されている。

コーチ社の「進化」が、どんな素敵な商品を送り込んでくるのだろうか。楽しみである。

 2014/06/22 03:12  この記事のURL  / 

ヨガパンツ vsデニム(1)
デニムがヨガパンツにシェアを奪われつつある。リーバイスCEOチップ・バーグ氏、ギャップCEOグレン・マーフィー氏は共に業績発表の場でこれを認める内容のコメントをしている。

ヨガパンツは2005年頃からアメリカ市場に普及し始めた。最初はヨガ・ブームと共に拡がっていったが、途中から、その機能性や、何よりも履き心地の良さ、そしてルルレモンを先頭に、各メーカーがスタイリッシュなヨガパンツを開発した結果、日常的に履かれるようになり、ライフスタイル・ウェアとなった。

ギャップCEOは、今後の成長戦略の1つとしてヨガパンツを含むアクティブウェア事業の強化を掲げている。具体的には、同社が2008年に買収したアクティブウェア・ブランド、Athleta(アスリータ)を今年中に100店舗新規出店する予定だ。アスリータは2011年に1号店がオープン、2013年末には65店舗が営業している。

アメリカでは国による全国民をカバーする健康保険制度が無いため、個人が負担する医療費は極めて高い。一般的な私的健康保険の毎月の支払い額は家族保険の場合、およそ300ドルから1,000ドルはかかる。これが払えないため、保険に入っていない人の数も多い。なので、ヨガ、ジョギング等、比較的安価に行える健康管理は必須とも言える。

これに加えて、もっと現実的な理由もある。デニムは少しでも太ると履けなくなる。しかしヨガパンツは、文字通り太っ腹に余分な脂肪を受け止め、その上、余分な曲線をそれなりに美しく締め上げてくれる。何より、履いていてラクだ。我が家同様、狭いニューヨークのアパートに住む友人達の話によると、ヨガパンツはジーパンほどかさばらないので収納スペースを節約する効果もあると言う。

過去13年のリーバイスとギャップの業績を眺めてみよう。事業内容の差を無視しても一言言えるのは、リーバイスは全くフラットだ。インフレ率を考えると、時の流れに身を委ねていれば、実質的に徐々に売上は下がる一方だ。

方やギャップには上下があり、経営者はそれなりに頑張っている感がある。そしてギャップはもう6年も前にアクティヴウェア市場に参入している。さてヨガパンツ vs デニム、続きは後日に。

 2014/06/14 23:09  この記事のURL  / 

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プロフィール

平山幸江(ひらやま・さちえ)

アメリカ小売業コンサルタント

1993年よりニューヨークを拠点に活動。Jクルー・ジャパン(伊藤忠プロミネントUSA)、フェリシモ・ニューヨーク、イオンUSA調査ディレクターを経て2010年に独立。

アメリカ市場でのファッション、小売事業展開の実務経験に基づいた市場調査分析、戦略企画が専門。「販売革新」「ファッション販売」他執筆。米国小売最新情報に関する講演。慶応大学及びファッション工科大学卒業。


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