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アメリカン・ラグジュアリー・ブランドと中国市場
ニーマン・マーカス百貨店は、今朝アジアのフラッシュセール専門Eコマース、グラマー・セールス・ホールディングス社(GSH)への投資引き下げを発表した。GSHは、約1年間ニーマンの中国Eコマース・ビジネスのパートナーだった。ニーマンはEコマースは継続するものの、在庫を中国に置かず、GSHアメリカ法人に出荷し、彼らが中国顧客へのフルフィルメントを行う。つまり、ニーマンは中国市場でのEコマースを継続するが、ビジネス・モデルを変更し、直接投資してマーケティングからフルフィルメントまで統括する方法から、商品供給は行うがそれ以外は現地企業に任せる方法に変えた訳だ。

ニーマンは過去1年間、中国人消費者をひきつけるために上海でファッションショーを行ったり、ウェブサイト上でラグジュアリーブランドのバックステージでのエピソードのビデオを公開する等のマーケティング努力を尽くした。しかし、短期間での現地化は難しいとの判断を得たのだろう。

アメリカの他のラグジュラリー・ブランドも中国市場を狙って次々アプローチをかけているが、なかなか難しい状況のようだ。

ラルフ・ローレンは2012年春には中国国内に15店舗を出店し、向こう3年間で60店舗に増やす計画だったが、その後模造品問題、現地パートナーに経営を任せた店舗でターゲットと価格帯の異なるパープル・ラベル、ブラック・ラベル、ブルー・ラベルを一緒に販売することにより顧客を混乱させてしまった、等の問題により、いったんこれらの店舗をフェードアウトして直営化など、戦略転換を余儀なくされている。

一方、コーチ、マイケル・コース等よりお手ごろ価格のブランドは、中国で勢いを伸ばしている。

2012年12月に発表されたマッキンゼー社の中国ラグジュアリー消費者に関するレポート(注1)によると、グローバル・ラグジュアリー市場における中国市場シェアは1995年1%だったのが、2012年には27%にまで成長、2015年には3分の1を占めると予測されている。日本同様、ベビーブーマーの高齢化で国内消費構造が変わりつつあるアメリカでは、あらゆるリテーラーやファッションブランドが海外市場進出を目指している。中でも成長株の中国には様々なトライがされているが、なかなか中国は遠い異国の地であるようだ。

(注1)出所:McKinsey Consumer & Shopper Insights, Luxury Without Borders:
China’s New Class of Shoppers Take on the World, Dec 2012より)

 2014/04/30 22:22  この記事のURL  / 

マンハッタンに新たなラグジュアリー・ショッピングの波
フリーダム・タワーが年内開業を目指して内装工事を急ぐローワー・マンハッタン。足元の商業ゾーンもブランド獲得競争が熱気を帯びている。

同地区には小売スペース1万2600坪を持つウェストフィールド・ワールド・トレード・センター(WWTC)と旧ワールド・ファイナンシャル・センター、現在ブルックフィールド・プレース(BP、7,025坪)が姿を現しつつある。

そのBPにサックス・フィフス・アベニューの出店が決まりそうだ。フルライン店舗でBPのアンカーとなる。他にエルメス、フェラガモ、ゼニア、セオリー、スクープ、マイケル・コース、ボノボス、ダイアン・フォン・ファステンバーグ、カリプソ、ジュディス&チャールズにお声がかかっているようだ。

一方WWTCではアルマーニ、トム・フォード、ティファニーの名前が挙がっている様子。こちらはアンカーをもたないと推測されている。サックスのアウトレット部門、オフ・フィフスはこちらに出店する計画で、マンハッタン初出店だ。場所はNYローカルのアウトレット・チェーン、センチュリー21の近くだ。

共に詳細は明らかにされていないが、BPは来年の開業を予定している。

永らくマンハッタンには新規のラグジュアリー・ショッピング街開発が行われなかった。最も最近の開発は2003年開業のコロンバス・サークル(アッパーウェストサイドとミッドタウンの境界)のタイム・ワーナーセンターだろう。ただし、開業当時は「マジソン街に近過ぎる」という理由で、なかなかラグジュアリー系のブランドが入店しなかった。1F中央入り口の角地ベストロケーションを、聞いたこともない葉巻とネイティブ・インディアンの飾り物等を売っている店が入居し、10年リースが切れてようやくマイケル・コースが現在工事中である。

マジソン街もかつての勢いが衰え、一時期の空き店舗は埋まってきたものの、新規出店はコンテンポラリー系ブランドが目立つ。フィフス・アベニューは20世紀の終わりには既にファストファッションやショッピングモール系ブランドの通りとなってしまった。

今まで観光客はもとより、地元の人間も寄り付かなかった34丁目ハドソン川沿いに、ハドソン・ヤードという一大プロジェクトが進行中だ。ここもアップスケールな開発を予定していて、ニーマン・マーカスが検討中とのこと。

ニューヨークは長いこと、パリ、ロンドン等と比べてラグジュアリー・ショッピングでは随分見劣りがしていたが、久々の景気のいいニュースである。
(写真:ブルックフィールド・プレースのウェブサイト、brookfieldplaceny.comより)


 2014/04/27 06:10  この記事のURL  / 

ファッションも頑張るアマゾン
アマゾンの2013年度決算報告が発表された。アマゾンと言えば本、そしてキンドルを代表としたエレクトロニクス機器販売というイメージが強い。事実、今年の秋には3D機能のついたスマホを発売する計画も公表された。

決算報告書の冒頭を飾る、ジェフ・ベゾスCEOの巻頭言には21の戦略がリストアップされている。「プライム会員特典」、「キンドル・コンテンツ(本)」、「プライム・インスタント・ビデオ」、今月発売した「ファイヤーTV」、「アマゾン・アップストア」、「オーディブル(オーディオブック)」等、物販を超えたコンテンツと独自に開発したエレクトロニクス機器が上の方にずらずら並んでいるが、リストの下の方に行くにつれ、「フルフィルメントの革新」とか「スピーディな配送」とか、大分現実的な話が登場する。そして15番目の「実験そしてまた実験」というやや意味不明な戦略の次、16番目に「アパレルと靴」が登場する。

曰く、「アマゾン・ファッションはブームを起こしている。プレミアム・ブランドたちはアマゾンを良質な顧客にリーチするために使い始め、一方アマゾン顧客は商品のセレクション、無料返品、詳細な写真、モデルが着用し、実際着た時の動きやドレープの流れ等が見られるビデオ・クリップを楽しんでいる。」

そんな話、聞いたことないな、と思いつつ、アマゾンのレディスのページをブラウズする。すっきりした画面で、高級百貨店などでも取り扱っているエリ・タハリ、マガショニ、トリナ・ターク、ヴィンス・カミュートから、カルヴァン・クライン、ジョーンズ・ニューヨーク、エレン・トレーシー等、年齢、好みを問わず、万人が買いやすそうな品揃えだ。価格は必ずしもマークダウンされていないが、プライム会員であれば、2日以内に商品が届くので便利だ。ちょっと目を引くブランド・商品はサイズ切れだったりするが、まあ、アマゾンだから仕方ない、と思う。

子供服を見た。格段に見劣りがした。しかも写真が無い商品すらある。写真が無いのにどうやってオンラインでモノを買うのだろうか?某有名ブランドの定番品だから、見なくても買えるだろう、ということかもしれない。

再び決算報告書に戻る。「アパレルと靴」の戦略の続きとして、「我々は新たに4万スクエアフィート(約1,125坪)のフォトスタジオをブルックリンに新設し、毎日平均10,413枚の写真を撮っている。スタジオのオープニングを祝して、スティーヴン・コルブ、エヴァ・チェン他の業界のリーダーを審査員に迎え、プラット、パーソンズ、スクール・オヴ・ヴィジュアルアート、FITの学生達を招いてコンテストを行った。」とある。

なぜ、ここまでして、不得意に違いないファッションに力を入れるのだろうか?2013年度の売上構成比を見ると、明らかにこの会社は、結局物販が強いのだ、と思わせられる。やはりアマゾンはあまねくリテーラーの脅威だ。


 2014/04/13 08:27  この記事のURL  / 

ニーマン・マーカスのオムニチャネル戦略
ニーマン・マーカス百貨店は、4月2日、店舗事業とオンライン事業の統合を発表した。これを統括するのは、ニーマン・マーカス部門プレジデント兼チーフ・マーチャンダイジング・オフィサーのジム・ゴールド氏だ。同氏はニーマン・マーカス・グループ店舗事業のプレジデントから昇格した。

オムニチャネル戦略は、アメリカのリテーラーの「必須課題」となっている。顧客がスマホやタブレットを持ち歩き、ここから自由に商品情報を探し、買い物をする時代に対応するには、店舗、ウェブサイト、スマホ、タブレットという、それぞれ異なる販売チャネル間で違和感の無い対応しなければならない。しかし既に構築された店舗チェーン用の組織やシステムを変更することは並大抵のことではない。

同社は既に3年前に既に店舗とダイレクト部門のマーケティング機能を一元化しており、オンライン売上比は全社売上の22%(昨年度)に達している。昨年10月には、店舗、ウェブサイト及びモバイルアプリへのデジタル高度化に向けて向こう数年間で1億ドル(約100億円)の投資を発表した。今回の組織統合で1,120人が働くダラス本社に、187人の社員が異動する。

アメリカでオムニチャネル化がキーワードになり始めたのは4−5年前だが、ようやく形になり始めたのはつい最近のことだ。一見オムニチャネル化とは縁遠そうに思われる高級百貨店チェーンがいち早くこれに取り組み、リードし続けていることは素晴らしい。同社の顧客、高額所得者層が発売と同時に高額なスマホやタブレットを購入し、高級オモチャと共に店内で時間を過ごしている現実に商機を感じなければ、こうはいかなかっただろう。

(写真:ニーマン・マーカスのアプリより)

 2014/04/04 11:01  この記事のURL  / 

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プロフィール

平山幸江(ひらやま・さちえ)

アメリカ小売業コンサルタント

1993年よりニューヨークを拠点に活動。Jクルー・ジャパン(伊藤忠プロミネントUSA)、フェリシモ・ニューヨーク、イオンUSA調査ディレクターを経て2010年に独立。

アメリカ市場でのファッション、小売事業展開の実務経験に基づいた市場調査分析、戦略企画が専門。「販売革新」「ファッション販売」他執筆。米国小売最新情報に関する講演。慶応大学及びファッション工科大学卒業。


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