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ウェストフィールド・ワールドトレードセンターの半年後
昨年8月に9.11から15年の歳月を経て開業した。ウェストフィールド。開業時はまだ開店準備中のテナントも目立ったが、現在ではほぼ全部が開業している。15億ドルの投資物件であり、年間1億人の来場者、年間10億ドルの収入を見込まれているローワーマンハッタン再開発の目玉、ウェストフィールドモールとブルックフィールドプレースについては、その後業績がどうなのかあまりニュースを聞かない。私が月に1回様子を見にいく範囲では、ウェストフィールドモール側の来街者数は多いものの、ショッピングバッグを持った人をあまり見かけない、というのが現時点での様子だ。

例えば日曜日の午後2時から5時までモールの中心部で人の流れをカウントしたが、ショッピングバッグを持っている人の数は30人に一人、という感じで、しかもほとんどが1980年代からワールドトレードセンター前で営業しているオフプライス、センチュリー21の赤いバッグだ。その次に多かったのが、H&M(ウェストフィールドモール内にも出店)、そしてチラホラとセフォラとヴィクトリアズシークレットの袋が観察できた。

一方、同SCの目玉のひとつ、スローフードの殿堂イータリーは押すな押すなの大混雑で、店内の各種レストランやカフェだけでなく、食品のお土産購入も目立った。H&Mはこのイータリーの下の階なのでイータリー効果を享受しているかもしれない。このイータリーはSC内南側ウィングに位置し、道路を隔てて前述のセンチュリー21が窓越しに見える。センチュリー21はむしろウェストフィールドのコバンザメ効果を享受しているのではないだろうか。

ブルックフィールドの方はハドソン川に面したバッテリーパーク沿いで、アンカーにサックスフィフスアベニューウィメンズ、別館メンズもあり、個人的にはここの高級フードコート「ハドソンイーツ」で何か買って大西洋と自由の女神を見ながらお茶をするのが好きなのだが、物販の方はどうも今一つのようだ。ウィンターガーデンは完全に小さいお子さんのいる家族やカップルのくつろぎの場となっており、仲良くなごんでいる人々の間をブランドのショッピングバッグを持って歩くのがはばかれるような気さえする。

同SCの専門店はウェストフィールドより一層ガランとしている。少し前なら中国人観光客がフェラガモ等の高額デザイナーブランドを購入したのだろうが今はマンハッタン内でも彼らの数は減っている。同SCアンカーのはずのサックスのウィメンズ館は9月の開業後、いつ行っても靴売り場以外は物見遊山の客ばかりだ。一方、今年2月にオープンしたウィメンズとは離れたメンズ館はコンテンポラリーな高額ブランドスニーカーやアクセサリーの品揃えが充実しており、30-50代の男性客、20代カップルが10人ほどが品定めをしていた。また、クラブモニコや鎌倉シャツなど価格帯が低いテナントに過去の視察時にも買い物客が入っていた。

世界でも有数のSC運営事業者であるウェストフィールド社のアメリカ不動産収入のトレンドを下図にまとめてみた。明らかに右肩下がりの傾向だ。同社の2016年度業績発表の中では、専門店は強みを発揮しているそうだ。また明らかにイータリーのような食業態も好調だろう。ワールドトレードセンターSCの実績は2017年度にならないと反映されないだろうが、少なくとも昨年ホリディ商戦については期待通りの数値ではなかった様子だ。

ウェストフィールドモールは私もリース用プレゼン資料を見たことがあるが、マンハッタンの地下鉄11路線、ニュージャージーに直結するパストレインのハブで、メモリアルタワーや9.11ミュージアム、バッテリーパークなど観光要素も多く、後背地が高所得者が在住するトライベッカや金融業界勤務者が集まる地区として、約束された立地のように見えた。しかし、同地に足を運ぶたび、人が集まればモノが売れる、という時代は終わったのかという気になる。店舗はもっと消費者が知らない情報、見たことが無い商品を見せるショールームに徹底した方が結果的に売上拡大につながるのではないかと感じた。


(写真)筆者撮影




 2017/03/31 22:25  この記事のURL  / 

アマゾン、店舗事業に本格的参入
3月はアマゾンの店舗絡みのニュースが多かった。アマゾンCEOベゾス氏の資本が入っているビジネスインサイダー紙では内部情報としてポップアップストアが年内に100店舗に広がるのではないか、としている。これを受けて、各業界メディアでは「アマゾンがいよいよ店舗事業に本格進出」と報道し始めている。

アマゾンは特に店舗事業に関しては静かに市場に出して温度を確かめる、というアプローチをとっており、チェーンストアで一般的な華々しい開店イベントなどは行わない。また、テストの結果うまくいかないとわかると潔くプロジェクトを簡単に凍結する。
この数日間に報道された出店絡みのニュースは以下の通りだ。

*「アマゾンフレッシュ」(食品宅配)のピックアップ専用店舗をシアトル市内に2店舗開業。両店舗とも社員専用のテスト店舗で、ウォルマート他のクリック&コレクト業態と同じく、オンラインでオーダーした食品を予約した時間にピックアップに行くと駐車場まで届けてくれる。店舗と言っても現段階ではピックアップのみだ。

*一方で、昨年末に大きな話題となった「アマゾンゴー」テスト店舗は3月に一般公開の予定だったが、しばらく凍結と発表された。理由は店内が混雑すると(わずか20名を超えると)ハイテク装備が機能しなくなることが確認されたから。同店舗はセンサーとRFIDタグで顧客が什器から商品を出し入れする状況を追跡し、最終的に顧客がバッグに入れた商品だけ店舗を出る時に支払決済するシステムだが、小売店舗に不可欠、そしてなくてはならない「混雑」がボトルネックとなると、そもそもの発想から見直さなければならないのだろうか?

*同社が最初に本格的に店舗事業としてオープンした書店は今月シカゴに5店舗目が開業した。マンハッタンを含む5店舗が現在工事中なので、少なくとも今年中に10店舗開業することは間違いない。店舗の内容は一号店と大きく変わらず、絞り込まれた書籍販売+キンドルなどアマゾンPBデバイス販売だ。業態を変えずに多店舗展開するという点では、こちらは本気の勝負だろう。

*前述のビジネスインサイダーの情報だが、家具、家電店舗開発も進行中とのこと。すなわち、アマゾンの配送が不得意な大型商品、ということだが、これは具体的な情報は何もないので、「まだ検討中」ということではないか。

*2014年から本格的に(かつ静かに)拠点拡大を進めているショッピングモール内のポップアップストアは現時点で29か所に広がっており、年内に100拠点という噂もある。空き店舗対策に悩むショッピングモール側はもちろんウェウカム!な話だろう。

という訳で、本ブログでもお伝えしているようにチェーンストアがどんどん店舗数を減らす中、じわじわと駒を進めている様子だ。小売業界全体はオンライン販売に移行しているので、実は価格と利便性だけでは将来が危うい!という危機感もあるのではないだろうか。特にファッションの世界ではボノボスやワービーパーカー等オンライン専業から店舗展開を行っているグループは、既存のチェーンストア専門店のシェアを奪うだけでなく、新たな市場も形成している。彼らこそがアマゾンファッションの将来の最大の敵かもしれない、と見た場合、対チェーンストア対策ではない店舗開発の理由があるのかもしれない。

 2017/03/31 08:23  この記事のURL  / 

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プロフィール

平山幸江(ひらやま・さちえ)

アメリカ小売業コンサルタント

1993年よりニューヨークを拠点に活動。Jクルー・ジャパン(伊藤忠プロミネントUSA)、フェリシモ・ニューヨーク、イオンUSA調査ディレクターを経て2010年に独立。

アメリカ市場でのファッション、小売事業展開の実務経験に基づいた市場調査分析、戦略企画が専門。「販売革新」「ファッション販売」他執筆。米国小売最新情報に関する講演。慶応大学及びファッション工科大学卒業。


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