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大学と小売業(1)
規模の面で全米第5位、クリスチャン系大学としては世界最大のリバティ大学(ヴァージニア州リンチバーグ)が18日地元のショッピングモール、リバーリッジを買収した。同大学は既にモールの一部、シアーズの跡地を買収し、大学のオンライン通信教育のオペレーションセンターとして活用していた。当初、モールを所有するCBL&アソシエーツプロパティ社より、大学が所有するシアーズ跡地を売却しないかという打診があったことをきっかけに、逆にモール全体の買収に踏み切った。

リバーリッジ・モールはリンチバーグで唯一のエンクローズ型モールで1980年開業。当初はJCペニーやシアーズをアンカーとし、近隣のSCからも客を奪うほど集客力の高いモールだったが、施設の老朽化や、モール全体が集客力を失う中で過去数年は収益力低下が目立っていた。現在はペニーやシアーズは撤退し、南部の有力リージョナル百貨店ベルク、全米最大のオフプライスチェーンTJマックス、全米2位のクラフト専門店ジョアン他80店舗以上の専門店とレストラン、フィットネスクラブ等が入店している。

リバティ大学はモール株式の75%を所有するが残り25%はCBLが保有し、モールのオペレーションを継続する。両者はモールの一部、導入口にあたるエリアをオープン型モールに改装し、モール全体を再活性化する計画を立てている。これにより、モールの収益力回復と地元コミュニティの活性化を実現する予定だ。

全米ショッピングセンターは消費者のオンラインショッピング化が高まる中で集客力が落ちており、将来が案じられている。しかし全体像とは別に個別にモールを見ると、立地条件、魅力あるテナント揃え等々で独自強みを発揮し、十分にサバイバルの余地があるモールが存在する。今回の事例の場合、大学というコミュニティの利便性や魅力を向上させ、しかも小売ビジネスの収益を大学経営に活用する、という2度3度おいしいビジネスモデルだ。

下記のグラフに見られるように、中央集権型のチェーンストアやショッピングセンターは以前ほどパワフルでなくなり、オンラインショッピングが優勢となりつつある。消費者のニーズや買い物の選択肢が多様化する中、仮に全国均一ネットワークが崩壊する日が訪れるとしても、こうした地元に根付いたコミュニティ主導による個別生き残り戦略で小売業は活性化できるのではないだろうか。その意味で、消費の今後のカギを握る若い世代が集まる大学コミュニティは注目される。

(写真)リバティ大学(出所:大学提供)
(図表1)2010年から13年までの来店客数(ショッパートラック社データをウォールストリートジャーナル編集、2014年1月16日掲載)
(図表2)US、Eコマース売上高(10億ドル、フォレスター社調査)



 2016/03/21 04:49  この記事のURL  / 

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プロフィール

平山幸江(ひらやま・さちえ)

アメリカ小売業コンサルタント

1993年よりニューヨークを拠点に活動。Jクルー・ジャパン(伊藤忠プロミネントUSA)、フェリシモ・ニューヨーク、イオンUSA調査ディレクターを経て2010年に独立。

アメリカ市場でのファッション、小売事業展開の実務経験に基づいた市場調査分析、戦略企画が専門。「販売革新」「ファッション販売」他執筆。米国小売最新情報に関する講演。慶応大学及びファッション工科大学卒業。


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