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一人勝ちのサーファーブランド、ビラボング
先日はクィックシルバー倒産のニュースだったが、サーファーブランド全般、もっと言えばティーンエイジャー・ブランド全体が不振の中、3年に渡る経営再建の末、2011年以来始めて第2四半期でようやく収益化を果たした企業がある。サーファー用衣料品、器具、アクセサリーを販売するビラボングだ。

同社は1973年にオーストラリアで創業、積極的な海外進出、企業買収で成長し、2008年にはニューヨーク、タイムズスクエアにも進出。しかし急激な拡大戦略の一方でグローバルビジネスとしてのインフラ整備の遅れ、経済危機などにより、2012年2月には経営が傾き、抜本的な経営改革の必要に迫られた。

2013年7月に発表された再建計画は、一言で言えばIT投資により世界3地区が独立して経営されていたものを全社一元化して経営効率を上げたことだ。これはERP(エンタープライズ・リソース・プランニング)導入からよりパーソナライズされ、精度が高いEメールキャンペーンまで「全社レベルで効率を求める」ことを追求した。

半年後の12月には7つの戦略が発表され、「より少なく・より大きく・より良く」をモットーにオムニチャネル戦略強化を打ち出した。傘下に治めたブランドをリストラしてビラボング・ブランドに集中し、顧客への直販を主軸としてEコマースを刷新し、新たなオムニチャネル・プラットフォームへの転換を表明した。このため卸売チャネルは重点戦略からはずされた。

さらにCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)にも投資。この段階でiパッド・ミニを用いて、店内でレジ待ちの顧客にモバイルで購入ができるような環境も整えていった。

例えば、ウェブサイトをクィックシルバーと比較して見よう。ビラボングのサイトはショッピングだけではなく、ブログ、イベント情報、ソーシャルメディア等立体的に幅広く顧客と双方向コミュニケーションができるが、あくまでもオンライン・ショップとの立ち位置、シンプルなナビゲーションでわかりやすい。買い物ページでは過去に見た商品やそれに近い商品の推奨等、アメリカ大手チェーンのサイトやオンライン専業のサイトの基本的な設計に従っているので、買い物しやすい。一方、クィックシルバーのサイトは非常にかっこいいが、サーフィング情報やビデオ、ソーシャルメディア等が表に出すぎて、肝心の商品がぱっと目に入らない。

店舗側もしかりで、クィックシルバーの閉店セール対象となっていない旗艦店とビラボング店の比較でも、ビラボングでは商品展開数が絞り込まれているが、クィックシルバーは総花的だ。「品揃えの絞込み」は、同様に最近業績が好転したアメリカン・イーグルでも見られ、絞り込むことで、よりデザインや素材に集中し、顧客側からも選びやすくなっている。

ところでビラボングの再建を2013年からリードしたのは、同社の大株主、オークツリー・キャピタル社だった。同社は今回クィックシルバーの再建計画をリードすることになっており、両社の合併も噂されている。

(写真左)ビラボングのウェブサイト。携帯電話で見る場合でもイメージ発信のトップの部分は小さく、新着商品が大きく表示されている。
(写真右)クィックシルバーのウェブサイト。同じく携帯で見ると、イメージ発信の導入は美しいが、商品を見るまでにもう1クリックしないといけない。

 2015/09/25 21:47  この記事のURL  / 

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プロフィール

平山幸江(ひらやま・さちえ)

アメリカ小売業コンサルタント

1993年よりニューヨークを拠点に活動。Jクルー・ジャパン(伊藤忠プロミネントUSA)、フェリシモ・ニューヨーク、イオンUSA調査ディレクターを経て2010年に独立。

アメリカ市場でのファッション、小売事業展開の実務経験に基づいた市場調査分析、戦略企画が専門。「販売革新」「ファッション販売」他執筆。米国小売最新情報に関する講演。慶応大学及びファッション工科大学卒業。


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