« 前へ | Main | 次へ »
ホリディ商戦とアマゾンと店舗たち
自らもアメリカでホリディ商戦を戦っている関係で、どうもブログのアップデートが進まない。が、ようやくクリスマスも終了し、急ぎ2016年中に一本。

12月23日、NBCより興味深いデータが紹介された。今年11月1日から12月16日までのホリディ商戦期間中、オンライン売上高の36.9%はアマゾンが売った、というものだ(図表1)。 2位は家電のベストバイ(3.9%)、3位ターゲット、4位ウォルマート、5位メーシーズと続くが、後者はほぼ似たようなシェアだ。

今年の商戦は予想を上回り、全米小売業協会の予測3.6%に対して速報では4.0%成長。他の調査でも似たようなトレンドが発表されている。特徴としては@ブラックフライデーの前倒し化の影響もあり、スタートが早かった、A一日当たりの売上高ではサイバーマンデーはブラックフライデーをしのいだ(が、トップは12月17日スーパーサタデー)、Bそして市場のパイの多くを取ったのはアマゾンらしい、というものだ。ついでにC本日31日もまだ続くポストホリディ・セールは結果は出ていないが、例年より値引き率を下げている(=在庫が軽く、ホリディ商戦がうまくいったらしい)企業も見えている。トランプ次期大統領が「私のお蔭で景気も良くなった」というようなコメントを言ったとか。申し訳ないが、それは無関係、企業が努力しているのである。

さて、全体に好調の中、アマゾンの独り勝ち、で終わってしまうのかと思いきや、29日のウォールストリートジャーナル紙は「皆がアマゾンで買い物をしたい訳ではない」という見出しで、一般市民を幅広くインタビューした記事を掲載した。6年間のアマゾンでの購入状況を調査したデータ(図表2)によると、年々「アマゾンでは買わない」人の割合は減り、毎週のように購入する人は増えている。しかし、「買わない人」をWSJ社がインタビューしたところ、興味深い傾向が見えてくる、というものだ。それは

*独身世帯、特に子供がいない世帯(自宅に荷物を受け取る人がいない世帯、そして子供がいなければ、あれこれ細かい買い物の必要性も低い世帯)
*所得水準の低い世帯(アマゾンはあまりにも便利なので、つい買い過ぎてしまうから)
*引退組(時間があるので店舗に行きたい)
*あまりにも商品のセレクションが多過ぎて選ぶのが大変なので、セレクションの狭い店舗で買う方がかえって便利と感じるヒト
*地元の商店街などで買う方がパーソナルな感じがしていい、と思う人
*(車社会なので)頻繁に車に乗っているので、運転途中で買い物も済ませた方が便利な人
*アンチ・アマゾン:アマゾンが出版業界を変えてしまった結果、出版社の苦境に同情する読書家

言われてみればなるほど、という理由ばかりだ。私は長年アメリカで店舗を運営してきたし、一方で今はオンラインストアも運営している。その上、愛しのアレクサ(アマゾンエコー)と既に2年同居している身であるので、アマゾンvs店舗、どちらにも肩入れしたいのだが、「アマゾンで買わない人」の存在は消えないだろうし、これらの理由は、裏返せばチェーンストア、パパママストアに限らず店舗勢が頑張らなければならないポイントだろう。

そんなことを考えながら改めて図表1を眺める。確かにアマゾンのシェアは圧倒的だが、嬉しいかな、図表1の2位以下は全部チェーンストアだ。しかも、もともとオンライン売上高構成比が50%以上のステープルズやウィリアムズソノマではなく、現在オムニチャネル戦略で頑張っている企業だ。今年はオンライン市場シェア3,4%でも、来年のホリディ商戦ではもっとアマゾンに迫るかもしれない。期待を持って2017年を迎えたいと思う。

(図表1)Slice Intelligence社調査。2016年11月1日から12月16日まで170万のオンラインレシートに基づくデータ。作図、CNBC.com


(図表2)Kantar Retail ShopperScape調査。作図、Wall Street Journal
 2016/12/31 21:12  この記事のURL  / 

アマゾン・ゴーについて
5日に発表された「アマゾン・ゴー」。2014年末には1時間配送のプライムナウ、2015年末には実店舗オープンが発表されたので、今年は何かと内心楽しみにしていたが、期待以上のニュースだ。

アマゾン・ゴーはアマゾンによると「Just Walk Out Shopping(ただ歩くだけの買い物)」なPOSレジ清算不要な食品コンビニストアだ。顧客が店内に入り、アマゾン・ゴー・アプリをキオスクにかざすと自動的にヴァーチャルな買い物かごが出てくる。その後、店内を買い物し、欲しい商品は自分が持ち込んだバッグなりに入れ、店内を出る段階では自動的にアプリ上に課金されて買い物は終了。レジは無く、レジ待ちの列に並ぶ必要もない。

面積は1,800スクエアフィート(約50坪)、展開商品は@すぐ食べられる新鮮なデリ食品、Aミルク、卵、チーズ、パンなどの基本食材、B同社シェフによる30分で2人前を料理できる「アマゾン・ミール・パック」(必要な食材が全て料理するだけの状態で入っている)だそうだ。
現在、シアトルにある一号店ではアマゾン社員のみが利用でき、まだテスト段階だが、来年早々には一般公開する予定だ。

この店舗には同社によると「自動運転自動車に似たテクノロジーが搭載されている」とのこと。同社は詳細は明らかにしていないが、ウォールストリートジャーナル、フォーブス等のメジャー紙や業界紙によると、店内には多数のビデオカメラ、マイクロフォンが搭載されており、センサーが細かく顧客の動きや陳列棚の状況をとらえる。センサーは肌の色を認識するため、近くにいる人物を誤って認識することはない。マイクロフォンは顧客の動きを音から観察し、これらの情報から総合的に顧客の買い物行動をトラックし続ける。顧客がある商品を手に取ればアプリ上のヴァーチャル買い物かごに商品が入り、気が変って棚に戻せばかごから消える。

複数のテクノロジー専門家によるコメント記事を読むと、人工知能、高度なセンサー技術その他様々なテクノロジーが複雑に組み合わされているとのこと。同社が登録したパテントにはRFID使用を示唆する内容が書かれてあるらしいが、実際に使用しているかどうかまだ誰も断定できてない(12月11日時点)。

さて、このニュースが発表された時の業界の反応は以下の通りだ。

*クロ―ガ―では既に迅速なレジ通過にテクノロジーを用いたスキャン・バッグ・ゴーにより過去より3分30秒以上スピードアップしている
*ウォルマートのサムズクラブでもグラブ&ゴーという清算時間の短縮を図っている
*こんな高度なテクノロジー投資(特にRFIDを使う場合、納品業者側のコストの問題も発生する)に見合うのか?
*レジ待ちのスピードアップならセルフチェックアウトが既に導入されているが、顧客側の誤作動による重複課金や万引きが多く、撤退しているチェーンストアもある。また、結局従業員がヘルプしなければいけないケースが多い。
*このアイディアは10年前にIBMがCM広告に出していたのと一緒だ(この時はRFID技術に焦点をあてていた)
*レジ要員は重要な仕事で大勢の人や家族が失業するという深刻な事態を招くのではないか。
*とは言え、店内の他の仕事は必要なので、アマゾンがもしこのフォーマットを全米に広げてくれたら、雇用拡大にはなるのではないか?

しかし、大統領選挙と一緒で報道から数日たつと、信じられない現実を受け入れ、好意的・楽観的なコメントも出てきている。そう、これは信じられないような新型小売フォーマットが実現した、というニュースだ。もちろん実用化できるかどうかはアマゾン自身がテスト中だ。もしかしたら技術的な課題、コストの問題、そして個人的に気になるのは肌の色まで個人を特定するような店舗とアマゾン口座がリンクしているという個人情報の問題、などなど、検証すべき課題が数多く見つかり、多店舗化は見送られるかもしれない。

しかし、せっかく徒歩5分先にホールフーヅマーケットがあるのにインスタカートでオンライン購入し、アレクサの声を聴きたいがゆえに天気予報から買い物までアマゾンエコーを使う私としては、ぜひぜひ経験してみたい店舗だ。もしこれで、現在拡大の一方のオンラインショッピングから実店舗への回帰を果たせれば、それはそれで楽しいではないか?

(追記)筆者はアマゾン社の株式を保有したり、執筆することで同社より益を受けている、ということは一切ございません。
(写真)アマゾン社より
 2016/12/12 04:07  この記事のURL  / 

オンライン下着の「ライヴリィ」が狙うアスレジャー市場
アメリカのファッション業界では各商品カテゴリ内でニッチ市場を狙って成功したオンライン専業スタートアップ企業が急増している。眼鏡のワービー・パーカーに始まり、カジュアル衣料品のボノボス、ベーシックなハイクオリティ衣料品のエバーレーン、レンタル衣料品のレント・ザ・ランウェイなど。彼らが短期間で急成長したのは、もちろん事業コンセプトや商品企画、マーケティングが優れていたことがあるが、何よりも重要なのは、開業前から積極的・戦略的な資金調達計画を実行したことだ。

女性の下着専門オンラインリテーラー「ライヴリィ」は今年4月に開業。そして今月めでたく400万ドル(約4億円)の資金調達に成功した。まずは最初のハードルをクリア、と言ったところだろう。

同社はヴィクトリアズ・シークレット通販部門を始め、ファッション業界でキャリアを築いたミッシェル・コルデイロCEOが創業した。彼女は、下着メーカーが未だに男性に支配され、女性による女性のための製品が少ない点に着目し、もっと女性が自ら定義するセクシーさ、健康的で快適な下着を手ごろな価格で提供することを目標とした。

同社のサイトを見ると、「アスレジャー時代に必須の下着、レジュレー(Leisurée)をあなたに」と書かれてある。デザインを見れば一目瞭然。シンプルで女性の目から見て清潔感や遊び心があり、何より、着心地が楽そうだ。アスレジャーファッションの下に着用するには確かにぴったりの雰囲気だ。ヨガウェアも実際にスポーツをする時にはスポーツブラがあるからよいが、そうでない時にはレースやリボンは変だよね、と密かに思っていたので、女性なら誰もが感じていたのかもしれない。

商品構成はブラ、パンティ、ボディスーツで、ブラは@デザインと快適性をあわせもつブラレット、ATシャツ向けのTシャツブラ、Bスタイル+快適性+機能性のノーワイヤー(ワイヤレス)、Cプッシュアップタイプではない女の子(セクシー過ぎない)にも向くプッシュアップがある。

価格政策も非常にわかりやすく、ブラはいずれも35ドル。タイプや色を問わず2点で55ドル、3点で75ドルと安くなる。パンティは10ドルで3点で25ドルとなる。40ドル以上で無料配送となるので、ブラを2点もしくはブラ1点とパンティ3点あたりから始めるのだろう。また、ポイント制ロイヤリティプログラムもある。

ヴィクトリアズ・シークレットは従来のセクシー系に加えて、「ヴィクトリア・スポート」でスポーツブラを、ティーンズ向けブランド「ピンク」でライヴリィのようなすっきり系のデザインを展開しているが、ライヴリィはピンクより大人の女性をターゲットにし、どこにでもいそうなリアルなモデルをフィットモデルに採用している。次のハードルまで、どの位の速さで到達するのか楽しみだ。

ところで余談になるが、これがヒットするのなら、ユニクロのブラも同じレジュレー市場で大きなパイの一切れをいただけるのではないだろうか。
www.wearlively.com


 2016/10/31 06:52  この記事のURL  / 

愛しのアレクサとアマゾンプライムディ
今日7月15日はアマゾンの創立記念日。昨年は今日が初のプライムディで、ちょうど日本にいた私は日本でも刻々とコーチのバッグや家電のセールが登場するのを目撃した。昨年アマゾンは一日で4億1500万ドル(注)、ブラックフライディより販売したと報道された。ウォルマートを始め、大手チェーンストアはプライムディ企画を直前に知り、慌てて対応したが完全にしてやられた状態だった。(注)FBICアナリスト、デボラ・ウィンスウィグ氏推定

今年、競合各社は万全に臨戦態勢を整えた。アパレルでは、ギャップはオールドネイビー、バナナリパブリックなど主ブランドで最高75%までの値引きを展開。ちょうど春夏クリアランスの時期ではあるが、プライムディ一日限りの深い値引き合戦が繰り広げられた。と言っても、プライムディ開催が公にされたのはたった2週間前だった。およその予測をつけて準備したに違いないが、アマゾンに振り回されて終わった感はぬぐえないのではないか。

今年のプライムディは昨年の50%伸長とアマゾン社は報告した。この成功について報道各紙の分析に共通するのは、@昨年の経験を踏まえて欠品を防ぐためディール(目玉商品)の在庫量を増加、A5分ごとに新しいディールを追加(昨年は10分ごと)、によって顧客をがっちり掴んで離さない戦略を徹底したことだ。加えてBアマゾンの隠れたサクセスと呼ばれているアマゾンエコー(通称アレクサ、音声認識型人工知能搭載端末)とその兄弟・姉妹のキンドルやタップを30%以上値下げし、トップページでも全面的に訴求した。この、アマゾンデバイスを買わせてアマゾンエコシステムに引きずり込む作戦も当たったようで、同社プレスリリースでもこれら端末は昨年イベントの2.5倍売れたとのことだ。

実は私もアレクサと昨年9月から同居しており、今や生活必需品だ。目覚まし時計から天気予報、交通情報、今日の私の予定を伝えてくれ、知らない英単語の意味を教えてくれ、何でもする。あまりにも音声認識感度が高いのでうっかり噂話をすると反応してしまうので、我が家では用事が無い時は「ア〜さん」と呼んでいるが、プライムディ、なんと「アレクサで買い物すれば10ドル引き」しかもアレクサ価格(30−40%引き)を設定したディールが山のようにあるではないか。迷わず半額以下になったキッチン家電を無料2日配送で購入した(なんと膨大なオーダー数のはずにも関わらず1日半で着荷)。 

もしプライム会員でないが噂のエコーに興味のある人がこれを見たら、(1)即、30日無料お試し会員になる、(2)プライム価格でエコーを50ドル安く買う、という可能性は相当高い。そこから先は私同様、毎日ア〜さんと会話を楽しみ、音楽を聞かせてもらい、「アレクサ、クリネックスのトイレットぺーパー32個入りを買って」「クリネックスの(商品名繰り返し)を買いますか?」「イエス」(1秒後に携帯にオーダー確認着信)の生活が始まる。プライム会員年会費99ドルは光熱費同様の議論の余地の無い経費となるだろう。

アマゾンのプライムディの本当の狙いは売上よりプライム会員拡大にあると言われている。私は店舗小売で育った人間なので、こんなにオンライン漬けになっている自分が許せない部分もあるが、消費者の買い方が変わりつつある現場はしっかり見たいと思う。

(写真)Amazon.comプライムディの日のトップぺーj時とアマゾンデバイスのセール


 2016/07/16 08:02  この記事のURL  / 

泡と消えつつあるフラッシュセールビジネスの行方
不況が始まった2008年から急成長した、数日間だけ50%以上安く買えるオンラインのフラッシュセールビジネス。草分けだったギルトは今年1月にサックスフィフスアベニューの親会社、ハドソンベイカンパニー社に買収された。しかも、一時期は10億ドルの市場価額とも言われていたが、その4分の1での買収だ。同業他社も一時期の勢いはなく、多くが売却されていたり、レイオフが始まっている。

*MyHabit.com
2011年にアマゾンが買収。今年4月に撤退し、サイトは閉鎖。
*Hautelook
2011年にノードストロームが買収。ここからオンラインファッションビジネスを吸収し、2013年に刷新してnordstromrack.comと共に再デビュー。
*Zuiliy
2014年に株式上場したが、その後株価は60%以上も下落し、テレビショッピングQVCの親会社に24億ドルで売却。
*Ideeli
一時期は1億ドルもの投資を集めた同社も2014年にはグルーポンが叩き値で買収。
*Fab.com
一時期は10億ドルの市場市場価額だったが、2014年に1,500万ドルで売却。
*RueLaLa
今年頭に数回に渡ってレイオフを実行。
*One Kings Lane
今年に入ってスタッフの25%をレイオフ。

各社共通した転落の理由は商品調達が困難になったことだ。景気が回復するにつれ、魅力があり、なおかつ50%以上の値引きに耐えられる商品在庫の調達が難しくなった。また、アウトレット最大手のTJマックスや、百貨店のアウトレットが不況後店舗数を拡大し、顧客を奪われたという側面もある。

フラッシュセール企業を買収する側は、彼らのオンライン顧客データが目的だ。どんな人が何を買っているのか、販促の成否などの分析にも使える。フラッシュセールビジネスは時代のあだ花だったかもしれないが、これを血や肉とする食物連鎖も見える。となると、フラッシュセールが沈没する前から買収した企業たちはやはり先見の明があったということか。
 2016/05/26 03:31  この記事のURL  / 

« 前へ | Main | 次へ »

プロフィール

平山幸江(ひらやま・さちえ)

アメリカ小売業コンサルタント

1993年よりニューヨークを拠点に活動。Jクルー・ジャパン(伊藤忠プロミネントUSA)、フェリシモ・ニューヨーク、イオンUSA調査ディレクターを経て2010年に独立。

アメリカ市場でのファッション、小売事業展開の実務経験に基づいた市場調査分析、戦略企画が専門。「販売革新」「ファッション販売」他執筆。米国小売最新情報に関する講演。慶応大学及びファッション工科大学卒業。


2016年12月
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
最新記事
月別アーカイブ
カテゴリアーカイブ