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アスレジャーと新興オンライン勢とJクルー「前」CEO
昨日、ミッキー・ドレクスラーCEOが辞任を表明、ウィリアムズソノマ傘下のコンテンポラリー家具チェーンのウェストエルム部門トップのジェームス・ブレット氏を後任に任命したことを発表した。

ドレクスラーはギャップ時代にオールドネイビーを作り、同社の売上の柱にまで育てCEOとなったもののギャップを追放され(注:当人の公式見解)、2003年にJクルーにCEOとして着任して以来、保守的なプレッピースタイルにコンテンポラリーな要素を加え、素材にこだわり、一時期はデザイナーブランドより手ごろで長く着られるとして成功を収めた。オバマ大統領一期目の就任式に娘たちが同社のジャケットを着用したり、ミッシェル夫人も公式の場のあちこちでドレスやカーディガンを着て登場したことでさらに人気を高めた。

しかし下図の通り、2013年頃から旗艦ブランドのJクルーが伸び悩み、カジュアルな姉妹ブランドのメイドウェルが健闘したが既存比は10四半期連続でマイナスが続いている。ちょうどこの頃からアスレジャーが台頭し始め、一方で今までには無い新たなビジネスフォーマットを持った新興オンラインアパレルが市場を形成し始めていた。例えば圧倒的に履き心地の良いメンズボトムスからスタートしたボノボスや過激な価格透明性のエバーレーン、オンラインレンタルのレントザランウェイなどだ。

Jクルーはもともとカタログ出身なのでオンライン売上比率は37.7%(eMarketer社調査)と高い。しかし残念ながらオムニチャネル戦略や、デジタルマーケティング強化など、今の時代にふさわしい売りの革新に遅れていた。ドレクスラー氏があまりにもモノづくりに長けていたマーチャントだったからだろうか。

彼自身がドレクスラー時代の終焉をにおわせていたいくつかのコメントがある、2015年から「今はアパレルを売るのが難しい時代」という発言を公の場やプレスインタビューで繰り返していた。また、成長市場として無視しえないアスレジャーについては「我々はやらない」と断言したにも関わらず、現在店頭やオンラインではJクルー・スポートと呼ばれるヨガパンツやタンクトップなどが売られている。

販売革新6月号に書かせていただいた「ネットがもたらす米国大量閉店の今」の通り、アメリカではチェーンストアがどんどん閉店・倒産に追い込まれている。一方で前述の新興オンラインストア組はonline to offline(オンラインからオフライン=店舗へ)という流れを作って出店を加速している。成功している新興組は、商品にも工夫はあるが、どちらかと言うと「斬新な売り方」が決め手となり、人気を集めている。アメリカのファッションの歴史にきっと名前が残るであろうミッキー・ドレクスラーだが、ここを押さえることができなかったのはやはり引退の時、ということだったのだろうか。

しかしドレクスラー氏は2013年からワービー・パーカーの取締役をつとめている。同社に出店を強く進め指導したのも彼だった。WWDの独占取材にも「フルタイムで仕事をしないのには慣れていない」とあり、「新たなことへの挑戦」も示唆しているので、もしかしたら若い起業家たちのバッカーとして第三幕を既に準備しているのかもしれない。

(図表)Jクルー社アニュアルレポートより筆者作成 (画像)jcrew.comのスクリーンショット



 2017/06/07 03:23  この記事のURL  / 

涙の1月、米国アパレルチェーン沈没ニュースに学ぶ
2017年1月、アパレル専門店チェーンでは、これでもか、というほど店舗閉鎖・倒産ニュースに明け暮れた。

◆ The Limited
1月4日にThe Limitedが250店舗全店閉鎖と4,000人解雇を発表、17日に会社更生法チャプター11を申請し、オンラインストアも閉鎖した。唯一の光はシカモアパートナーズがThe Limitedのブランドとオンラインストア資産を購入したので、ブランド名とオンラインビジネスは生き残る可能性があることか。

◆ West Seal
同日、ティーンエイジャーブランド、Wet Sealも全店の3分の2にあたる338店舗の閉鎖と3,700人の解雇を発表。その後20日に全社員の解雇と残りの店舗全店の閉鎖を発表した。同社は2015年1月にチャプター11を申請し、建て直しを図ったものの、試合終了の様子だ。

◆ American Apparel
昨年11月、2度目のチャプター11申請をした同社は今月、2,400人の従業員を解雇した。申請後、カナダのアパレルメーカー、ギルダン社が8,800万ドルでブランド名を買収したが、110の店舗には関心を示していない。同社の存在理由でもあったアメリカ国内生産工場はガーデングローヴ社が購入仮契約を結び、これが最終化すればここの社員300名は命拾いし、工場は編み及び染色工場として蘇る。が、店舗はこのままバイヤーが現れなければ閉鎖となる。

◆ BCBG
18日、BCBGマックス・アズリアは店舗撤退を発表した。ヴィクトリア・ベッカム、ミリー・サイラス、ジェシカ・シンプソンなどセレブご用達のブランドとして人気上昇し、女性高校生のプロム(卒業式謝恩会)用ドレスの定番ブランドでもあった同ブランドだが、近年業績が思わしくなく、昨年末には123人を解雇。今回の店舗閉鎖ではまだ具体的な数字は出ていないが、全米で175店、全世界570店舗の一部から撤退し、オンラインストアに経営努力を集中するという。

今月、メーシーズは1万人の解雇を発表し、シアーズ、コールズも昨年発表した閉店を開始している。何とも寂しい新年のスタートではあるが、彼らから学び、生き残りを目指せ、という天の声でもある。以下は今月私が聞いた天の声だ。

*オンライン、オンライン、オンライン
店舗事業では立地が一番重要、という意味で「ロケーション、ロケーション、ロケーション」という英語がある。しかし消費者は今や検索もショッピングもオンライン(モバイルを含む)にシフトしている。店舗が不要な訳ではないが、店舗をやるなら発想を変える必要がある。

*危険な中価格帯
ことファッションの世界でこの数年間にチャプター11、倒産したブランドは皆、デザイナーブランドとファストファッションの中間的な価格帯だ。昔で言えば「お手頃」「アフォ―ダブル」と言う価値を提供していたが、価格のヒエラルキーが崩壊しつつある中、お手頃であるより、商品の本当の価値で売上を作る時代に入ったのではないか。

*ブランドの適正な規模
店舗をチェーン化する時の理由の1つは、店舗の大量生産による出店コスト低減だった。そういう時代も、ファッションの世界では終焉しつつある。

本日で多くのアメリカ小売業者は2016年度を締める。店舗撤退話も今日までにして、明日からは前向きなニュースが聞けますように。

 2017/01/29 07:05  この記事のURL  / 

開店1か月後のマウジー米国1号店
9月にソフトオープンしたマウジー(バロック社)、10月27日にグランドオープンのイベントが開催された。本当に静かにオープンした9月とはうって変わり、2時間のイベントに約200人が集まったとのこと。イベントもさながら開店後の動向を知りたく、参加した。

イベントはソーホー店内(50坪)で開催され、ニューヨークのイベントらしくDJとアルコールと一口サイズのアペタイザーでスタート。イベントのハイライトは、新鋭の書家、マーヤ・ワカスギによる書の披露だった。文字は「和」と「一」の2作で、ワカスギによる漢字の意味の解説が、そのまま同社のアメリカ出店の意気込みを伝える演出だった。

参加者は下の写真に見られるように、業界関係者と思しき、スラリと背の高い、スタイリッシュな若い人が多かった。しかし混雑でうまく写真がうまく取れなかったが、時々いかにも高そうなブランド品に身を固めたアジア系アメリカ人女性客が友達連れで入店するのが見かけられた。

さて本題だが、バロックUSA社CEO深澤氏に開店後の様子を伺った。まず最初の言葉が、「予想以上にブランドの認知度が高いのが意外だった」とのこと。最大手のユニクロですら、アメリカでは当初、無名との闘いだったので、当然厳しい心構えがあっただろうが、同社にとっては朗報だろう。そして「中国系のお客様が購入客の半数」というのが特徴だそうだ。現地の中国系2世、3世の若い世代だけでなく、中国から観光に来ている友人を連れて来店、というパターンも多いそうだ。

同社の分析では、中国への積極的出店でブランド認知度が中国人の間で高く、その結果とのことだ。実はニューヨークに進出している日系ブランドを長年観察していると、他社でも同様にまず中国系あるいはその他のアジア系が売上構築をリードし、やがて地元のニューヨーカーや非アジア系、ヨーロッパ系アメリカ人に広がっていく、というパターンがあるようだ。

中国の経済環境の変化でアメリカでも少し前のような爆買いは減ってはいるが、中国系による日系ブランドへの影響力はまだまだ無視できない。しかもアメリカを舞台にすると、在米中国系アメリカ人という、地に足のついた客層が大きな塊で存在する。

なお、同社は昨年から西海岸で卸売りも行っているが、1号店開店効果でアメリカの百貨店やセレクトとショップからの引き合いも入ったそうだ。

(写真)筆者撮影


 2016/11/05 01:03  この記事のURL  / 

ギャップがアマゾンでも販売?!
今月19日に発表されたギャップ社の第1四半期決算内容は競合他社同様不振で、全社既存比は▲5%。様々な業績改善策の1つとして、日本ではオールドネイビー全53店舗撤退する。アメリカ本国ではオールドネイビーに加えてバナナリパブリックの店舗削減も検討する。ブルームバーグの報道によると、アート・ペックCEOは株主総会で、今後の経営立て直しについて「新たな販売チャネルの1つとして、アマゾンでの販売も考慮する」と述べた。

アマゾンは皆さんご承知の通り、業種を超えてチェーンストア勢の大敵だ。今月発表された電化製品専門誌TWICEマガジンの調査によると家電市場では昨年上位3位だったアマゾンは、今年ウォルマートを抜かして2位に躍り出た。1位はベストバイだが同社の売上高309億ドル、成長率3.8%に対してアマゾンは231億ドル、28.1%。仮にベストバイが毎年3%、アマゾンが20%成長する場合、2年後の2018年にはベストバイを抜いて1位になる計算だ。

アパレル市場でも状況は同じだ。モーガンスタンリー社のレポートによるとアマゾンはやはり現在ウォルマートに次いで第2位。2020年までには1位になると予測されている。

「敵を知り、己を知る」という戦略かもしれないが、ペックCEOの発言について、アメリカでは懸念の声があがっている。フォレスター・リサーチ社のアナリスト、マルプル氏は「馬鹿げた選択だ。ウォルマート、ターゲット、コストコで売る方がまだまし」とコメント。その理由として、ギャップの営業データがたやすくアマゾンの手中に入り、彼らはそれを分析して自分たちのアパレル販売戦略に活用できるから、としている。

他にも専門家による懸念の声は大きい。もっともペックCEOは可能性の1つとして検討すると述べているに過ぎない。が、ギャップ社が相当シリアスにアマゾンの脅威を感じている、ということだろう。一方で、ギャップ・ブランドはオールドネイビーほど業績は悪くはない(既存比▲3%)し、アスレジャーのアスリータは伸長、といった好材料もある。

ファッションの世界は家電とは異なり、顧客の反応やトレンドにフォーカスして行けば短期間に業績改善も可能だ。そしてギャップには、アマゾンにないファッションビジネスのノウハウと経験がある(はずだ)。長いものには巻かれろ的に販売力のあるアマゾンで売るより、店舗を含めた自社のチャネルを洗練していく方が結局は効果が出るのではないだろうか。

(写真)メモリアルディ休暇中の店内。海開きもあり、夏が始まり、皆で屋外でバーベキューを食べる週末なので、他社の店舗はセールにも関わらずあまり店内が混んでいなかったが、視察したメーシーズ本店はす向かいの店舗ではレジに10人程度の行列ができていた。(筆者撮影)


 2016/05/30 06:28  この記事のURL  / 

メルトダウンするティーンズファッション
毎回、消えゆく・沈みゆくを書くのもどうかと思うが、今時代の変化期なのでここをしっかり見る必要があると思う。(下の図表をご参照ください)

筆者がウォッチしていたアメカジ御三家のエアロポスタルがとうとうチャプター11申請した。正直なところ、リーマンショック後、一番先にヘッドラインを飾るのはアバクロかとも思ったが、エアロは低価格をさらに激しくマークダウンし、マージンが薄いのがアダとなった。アメリカンイーグルは2年前から「えっ、これしかないの?」と思わせるほどマーチャンダイジングを徹底的に見直し、販促も引き締め、現在は業界でもトップクラスに業績を回復させているし、アバクロも創業者をセクシー路線と共に追い出し昨年度から徐々に業績を回復している。
(筆者注:掲載直後にアバクロの第1四半期決算報告があり、全社売上高▲3%、既存比▲4%に転落した。原因は海外観光客の減少だ。)

しかし、ティーンズファッション全体は非常に厳しい局面にある。ミレニアル世代(18歳以上20代半ば)がモノを買わなくなったこと、ショッピングモールに行かなくなったこと、が原因だ。もちろん彼らも裸でいる訳ではないから、アメリカの業界人が信じるところによると、H&M、ザラ、フォーエバー21などのファストファッションが衣料品調達しているそうだ。

5月8日のシカゴトリビューン紙の取材によると、今のティーンエイジャーたちはロゴが嫌いという。理由は「人と同じものを着ているのがバレバレで恥ずかしい」から。筆者の子供もニューヨークの高校に通っているが、確かに学校でロゴを着ている生徒を見かけない。(むしろその親が未だにアバクロのTシャツを着ていたりする。)

投資バンクのパイパージェフリー社の調べによると、ティーンエイジャーが好きなブランドは以下のとおり。

*ナイキ、アメリカン・イーグル、フォーエバー21、ラルフ・ローレン、ホリスター、パシフィック・サンウェア、アーバン・アウトフィッターズ、ヴィクトリアズ・シークレット、H&M、アディダス
*ただし、親の世帯所得別にみると、年収53,000ドル以下の世帯では、エアロポスタルがトップ10に入っていた。やはり安さが魅力だったようだ。

現在業績が手堅いティーンエイジャーファッションは、スマートフォンとオンライン世界に生きる顧客のために、各社はオンラインビジネス、モバイルアプリ開発、ソーシャルメディアに力を入れている。彼らはやがて消費をリードしていく存在だ。大人ブランドたちも、このカテゴリーの動向からは目が離せない。
 2016/05/26 23:37  この記事のURL  / 

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プロフィール

平山幸江(ひらやま・さちえ)

アメリカ小売業コンサルタント

1993年よりニューヨークを拠点に活動。Jクルー・ジャパン(伊藤忠プロミネントUSA)、フェリシモ・ニューヨーク、イオンUSA調査ディレクターを経て2010年に独立。

アメリカ市場でのファッション、小売事業展開の実務経験に基づいた市場調査分析、戦略企画が専門。「販売革新」「ファッション販売」他執筆。米国小売最新情報に関する講演。慶応大学及びファッション工科大学卒業。


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