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快進撃のティーンズディスカウンター、ファイブ・ビロウ
2014年10月ブログでご紹介したプレティーンズ(小・中学生)からティーンエイジャーをターゲットとし、全て5ドル以下のディスカウンター「ファイブ・ビロウ」の2015年度業績が発表となった。2014年のナスダック上場時には向こう20年間で2000店オープンも可能、というアナリストの試算に対し、いくら何でもそこまではいかないという議論もあったが、その後も順調に店舗数と業績を伸ばしている。2015年度売上高8億3,200万ドル、前年比122.3%、既存比3.4%。店舗数も5年前の142店舗から437店舗へ増加し、売上・店舗数共に全米大手チェーンストアの仲間入りだ。

同社は平均店舗面積7,500スクエアフィート、子供たちがお小遣いで買える5ドル以下の商品を販売し、「スタイル」(ファッション雑貨)、「ルーム」(生活雑貨)、「スポーツ」、「テック」(スマートフォンやビデオゲーム等のアクセサリー)、「クラフト」、「パーティ」、「キャンディ」(菓子類)、「ナウ」(ハロウィーンやクリスマス等の季節商品)のカテゴリー部門から構成されている。

1年半前に書いたように、オムニチャネルの今時、クレジットカードを持てない子供相手ゆえオンラインストアは提供せず、店舗のみで事業展開している。このため、長期的企業成長を疑問視する声もある一方で「こんなに業績内容の健全な企業を見逃す訳にはいかない」というのが投資家の言い分だ。ちなみに3月24日時点の株価は40ドル、同じティーンエイジャー対象のアメカジ御三家、アバクロ31ドル、アメリカンイーグル16ドル、とうとう今月売却の可能性が報道されたエアロポスタルはわずか21セントだ。ウォルマート68ドル、ナイキ65ドル、アップル105ドルと比較しても企業規模やブランド認知度等を考慮すれば遜色はない。

この店を訪れると感じるのは、昔の駄菓子屋さんに行く時のワクワク感だ。あるいは、100円ショップの子供版と言うべきか。5ドル以下のスターウォーズのキャラクター商品、PEZの新旧キャラクター・コレクション、可愛い生活雑貨やキャラクター付きお菓子、玩具、ファッション小物がずらりと並び、この店で買い物する子供たち(そして大人も多いが)はソーシャルメディアで自分の本日の「お宝探し」の様子を報告したりするようだ。彼らはここではスマホで価格比較をしたり、ショールーミングをする必要がない。目の前の商品を見て触って楽しんで買う。

小売市場の調査をする人間は私を含めてオムニチャネル戦略が全てであるかのように語っている昨今だが、オムニチャネル発祥のアメリカで、こういう店舗だけ業態が「健全に業績伸長」しているのを見るのは、心のどこかでホッとするものがある。

(写真)店内の様子(ファイブ・ビロウ社)
(図表)ファイブ・ビロウ社アニュアルレポートより

 2016/03/28 05:58  この記事のURL  / 

オフプライス業態、再度ブームに
昨年、メーシーズがオフプライス業態への参入を発表して以来、アメリカの百貨店業界ではオフプライス業態が再度注目されている。メーシーズの「バックステージ」は現在ニューヨーク、ニュージャージ地区に6店舗営業しており、今後全国規模での出店に備えている。

同社傘下にあるブルーミングデールズも今年春にオフプライスへの参入を発表し、1号店はマンハッタンのアッパーウェストサイド。B社によると11月感謝祭前に開業の予定が、工事の遅れにより12月になるそうだが年内の開業を目指しているとのこと。

そして昨日、ロード&テイラーが「ファインド@ロード&テイラー」の名称で来年オフプライス業態を展開すると発表した。

百貨店のオフプライス業態と言えば、ニーマン・マーカスの「ラストコール」、サックス・フィフス・アベニューの「オフ・フィフス」、ノードストロームの「ノードストローム・ラック」が先発組で、もともとの百貨店店舗数を上回る程の店舗展開をしている。オフプライス業界全体を見渡すと、リーダーのTJマックス社(年商4兆円以上)が全米および世界7カ国で7業態、計3,461店舗網を敷いている。

後発組にとって幸いなことに、オフプライス市場では市場競争の結果、脱落組が出てきている。全米でも高所得者の人口密度の高いニューヨーク、ニュージャージー地区では、2012年、2013年にリージョナル・チェーン大手だったダフィーズ(倒産当時19店舗)、ローマンズ(ピーク時には100店舗)が相次いで倒産した。両社共に大手との競争で魅力あるブランドの獲得が難しくなったことが原因だ。その跡地が後発組にとっては絶好の出店用地となり、スピーディな出店、過去の顧客の獲得が可能だ。

百貨店系オフプライスはいずれも3万スクエアフィート前後、大雑把にオリジナルの百貨店の3から5分の1のサイズだ。価格ポジショニングは、ロード&テイラーもメーシーズも「TJマックス(低価格)とノードストローム・ラックの中間」というあたりを狙う。前者がブランドTシャツ10ドル台に対して後者が30-40ドル台、その中間というあたりか。

下図のように、もともとは高級百貨店が在庫処分チャネルとして早くからオフプライス業態を開発・拡大してきたが、メーシーズやロード&テイラーのような中価格帯百貨店は後手に回っていた。もともとデザイナー・ブランドをより手の届く価格で販売してきた百貨店にとってオフプライスをいかに舵とりするのか、興味深い。

この点でロード&テイラーのオフプライス業態には1つ見所がある。同社の系列会社、サックス・フィフス・アベニューはすでに89店舗オフ・フィフスを営業しているが、「このマーチャンダイジングチームがファインド@L&Tのマーチャンダイジングも行う」というものだ。ウィメンズ・ウエア・デイリーの取材によると「これによって経費効率よく経営できる」とのことだが、価格帯の違う2つの業態を管理することでマーチャンダイジング面でも攻めのシナジー効果が出るのではないだろうか。
 2015/10/29 07:10  この記事のURL  / 

子どもをターゲットとした5ドルショップ「ファイブ・ビロウ」
「ファイブ・ビロウ」は、5歳から19歳をターゲットとした、子どものための5ドルショップだ。「スタイル」(ファッション雑貨)、「ルーム」(生活雑貨)、「スポーツ」、「テック」(スマートフォンやビデオゲーム等のアクセサリー)、「クラフト」、「パーティ」、「キャンディ」(菓子類)、「ナウ」(ハロウィーンやクリスマス等の季節商品)のカテゴリーで、子ども達がお小遣いで買える5ドル以下の商品を販売するチェーンストアで、店舗面積は平均7500スクエアフィート。2000年創業で2002年に一号店オープン。2012年4月にナスダックに上場した。2014年2月現在、北東部、中西部、南部に304店舗を展開する。

ファイブ・ビロウ社は、アメリカのトレンドとは逆に店舗事業のみでオンライン販売を行っていない。子どもをターゲットにしているため、クレジットカード他のオンライン決済が難しいためだろう。2013年度に60店舗、2014年度は62店舗出店予定で、クレディスイス銀行他のアナリストの試算では向こう20年間に2000店も可能、といわれている。

その急成長ぶりにもかかわらず、今まであまり表舞台に出てこなかったが、今月になって急に報道が増えた。その理由は売上既存比の低下だ。既存比に一喜一憂するアメリカの金融業界では、株価が高すぎるのではないか、とか、2000店体制への成長戦略を疑う声が高まっており、その結果報道が増えた形だ。図表でも2013年度既存比は4%で、直近の第2四半期では3.4%に下がっている。

ファイブ社の成長を支えてきたのは、子ども達がわくわくする品揃え、安い価格、積極的な出店戦略だ。出店については、既存の大手チェーンが不採算店舗の削減傾向にある中、ショッピングモール側としはありがたい存在だろう。一方で、今後の成長性に陰を落とす要因があるとすれば、1にも2にも、マーチャンダイジングにわくわく感・魅力が無くなること(商品は生活不必要品で構成されているので、エモーションの高揚のみが頼りだ)。また、入店しているショッピングモールそのものの動員力の低下も不安材料だ。アメリカでは16歳から自動車運転免許証を取得できるとは言え、多くの場合は親と一緒に車でショッピングモールに行くので、親のモールへの来店回数が減れば、自動的にファイブ社の来店客数は減る。全米で益々オムニチャネル化が進んでいる現在、有店舗のみのビジネスモデルには成長の限界がありそうだ。

とは言え、2000店は無理そうでも、まだしばらくは成長しそうな業態だ。昔の駄菓子屋さんがiフォン・カバーやキャラクター柄ネール(つけ爪)等も販売し、全てが5ドル以下となれば、確かにそそられる。しかし、親がダラーショップ(1ドル)で買い物する間、子どもは5倍の予算でショッピングとは、アメリカもなかなか子どもには甘い。

www.fivebelow.com



 2014/10/26 02:06  この記事のURL  / 

ウォルマート・ラボの13番目の買収
ウォルマートと言えばディスカウンター、今までファッション領域の強化を、著名デザイナーやセレブとのコラボで試みてきたが結果は芳しくなかった。やはりディスカウンターのDNAはファッションとはそぐはない、というが業界の印象だった。

ところが先月半ば、ウォルマートは、子会社ウォルマート・ラボを通じて、Stylrという、顧客の近くにある衣料品店情報を検索できるアプリ制作会社を買収した。全米でモバイル・ショッピングが拡がっているため、強力なモバイル・アプリやモバイル対応のEコマースを買収し、そのノウハウを得れば、短期間で売上拡大が期待できる。

実は、ウォルマートは過去にラボを通じて他にもInkiru, OneOps, TastyLabs等の12社の買収を行っている。同社は買収を通じて、最新のリテール・プラットフォームを構築する戦略を採用している。例えば2011年のKosmix買収によって、様々なソーシャルメディアをトピックス別にふるいにかけ、ターゲットとする消費者が興味を持つ情報提供を可能とした。またGrabble買収では、eレシート・ソリューションを入手、消費者がモバイルでEレシートを簡単に受け取れる機能を付加した。その一ヶ月後のSmall Society買収では小売業向けのモバイル・アプリ制作ノウハウを獲得した。

このように、ウォルマートは現在の目まぐるしく進化を遂げるオムニチャネル環境の中で、必要な機能を最新IT技術やデジタルマーケティングの起業を買収することで、短期間に必要なツールを得ている。これが全世界最大規模のリテーラーでなければ、オムニチャネルの先駆者の動向、で話は終るかもしれない。いかし、ウォルマートがこのような動きをとっているとなると、話は別だ。同社が必要な機能を買収で揃えた暁には、小売業界は大きな地殻変動を目の当たりにするのかもしれない。


 2014/07/13 22:06  この記事のURL  / 

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プロフィール

平山幸江(ひらやま・さちえ)

アメリカ小売業コンサルタント

1993年よりニューヨークを拠点に活動。Jクルー・ジャパン(伊藤忠プロミネントUSA)、フェリシモ・ニューヨーク、イオンUSA調査ディレクターを経て2010年に独立。

アメリカ市場でのファッション、小売事業展開の実務経験に基づいた市場調査分析、戦略企画が専門。「販売革新」「ファッション販売」他執筆。米国小売最新情報に関する講演。慶応大学及びファッション工科大学卒業。


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