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メーシーズCEO交代に伴う5つの新サバイバル戦略
いよいよ来週から長年メーシーズに君臨したテリー・ランドグレンCEOに代わり、ジェフ・ジェネット氏がCEOとしてメーシーズの厳しい経営の指揮をとる。これに先立ち、3月14日、バンクオヴアメリカ・メリルンリンチ・コンシューマー&リテールテクノロジーコンファランスで、ジェネット氏は5つの新サバイバル戦略を紹介した。

1.「ラストコール・アクト」
売場にクリアランス専用のセクション「ラストコール・アクト(最後の出演)」を設け、古い商品の最終クリアランスセールを常設で行う。ここでは他のクーポンは使用できない。当初10店舗でテストし、2017年度中に追加で30店舗に拡大する。

2.販促の改革
参加対象ブランドが全て20%オフ、という販促から、50ドル買えば10ドルオフ、という段階的販促に転換する。これによって、セール除外ブランドが無くなり、また一定の金額まで値引き額は固定されるので相対的に値引き率は小さくなる。

3.靴売場にセルフサービス導入
全サイズを売場に陳列し、顧客が自分でサイズを探して購入する方法にシフトする。既に一年前から小型店舗で実験しており、これを広げる予定だ。靴売場だけでなく、化粧品売場への導入も検討している。

4.化粧品部門の強化
化粧品売場でもっと顧客が自由に試すことができるよう、同社PB「インパルス」の化粧品売場を導入。また同社が買収した高級化粧品専門店ブルーマーキュリーのコーナー展開も拡大し、特にミレニアルと呼ばれる若い世代の来店を喚起する。

5.インショップの拡大
専門店のサングラスハットやフィニッシュラインのインショップ展開が成功していることから、この方向を強化。今年は眼鏡専門店のレンズクラフターズを拡大する計画だ。

こうしてみると皆が驚くような改革というよりは、良く言えば地に足がついた改革内容となっている。アメリカの百貨店業界では、本ブログでも2014年3月に紹介したが、JCペニーが元アップルストア経営幹部ロン・ジョンソン氏を登用して行った過激な改革が大失敗し、その後黒字化まで数年かかるほどの大けがをした「あの事件」が今でも取沙汰されている。今回の地味な改革も、その意味では前任者ランドグレン氏が敷いたレールから大きくはみ出さない方向なので、逆にちょっと安心、という空気が流れている。

一方で同氏は百貨店業界の顧客を奪いつつあるオフプライス業態への対抗として、アウトレット業態「バックステージ」の出店戦略継続・拡大も表明している。これについてはアウトレット市場が既に大手によって占拠され、拡大している中、「遅すぎた参入」として疑問視する声もある。今回のコンファランスのプレゼンには出なかったが、「もっと店舗数を減らした方がいいのでは」など中長期的なサバイバルのためにスリムダウンする厳しい戦略の必要性を指摘する声もあり、新CEO指揮下のメーシーズの将来が明るく輝いて見えるにはまだもう少し時間がかかりそうだ。

(写真)メーシーズ、靴売り場。ここがセルフサービスになると、せっかくのサロンのムードがディスカウンターっぽくなるのでは?
 2017/03/20 01:44  この記事のURL  / 

メーシーズに売却のうわさ・2日目
昨日のメーシーズ売却の噂に関するニューヨークポスト紙の報道を受けて、今朝ウォールストリートジャーナルが「ハドソンベイがメーシーズに打診している」ことを報道。一気にメジャーな媒体が本ニュースに注目し報道し始めた。

メーシーズはご存知の通り、この1年間に100店以上の閉鎖・1万人以上の解雇というリストラに着手しており、売上低下に歯止めがかからない中、メイ百貨店買収時から13年間君臨したランドグレンCEOの引退を目前に経営側と株主の間で将来についての意見が分かれている。

しかしハドソンベイとて決して楽な経営ではない。同社はアメリカ市場ではサックスフィフスアベニューとロード&テイラーを運営しているが、消費者のインターネット購入の拡大に伴い、来店客数の低下・販促の増加に悩まされている。

株価を見ると、メーシーズは2015年7月ピーク時の72ドル31セントから今回の報道直前には29ドル11セントにまで下がっていたが、ハドソンベイもピークの28ドル67セントから9ドル50セントにまで落ちていた。(両社とも報道の後、今朝午前11時30分現在で、それぞれ33ドル22セント、10ドル42セントに回復している。)ウォールストリートジャーナルの試算によるとハドソンベイの市場価額は18億ドル、メーシーズは98億ドル。もし買収が成立すればハドソンベイは市場価額110億ドル以上の企業となる。

今朝のNBC局ブレーキングニュースでは「今回の報道には、アメリカ小売業界のオーバーストア現象という厳しい環境が反映されている」として、今回のニュースの行方に注目すると同時に、トランプ新政権下で約束されている税制改革が実施されたら小売業界も一息つけるのか、はてまた多くの企業が抱える負債への控除枠が小さくなり、経営は悪化するのか、などの疑問を提示した。

と言う訳で、昨日の「うわさ」は「事実」であったらしい。CEOが交代するメーシーズは将来のサバイバルに向けて、現在取り組んでいるリストラ以上の何かしらの手を打たなければならない状況に面しているようだ。しかし、小売業界を変えている大きな潮流はオンライン化なのだから、百貨店チェーン同士の買収合併=明るい将来だろうか?もっとも、ハドソンベイがメーシーズが投資してきたオンラインビジネスとオムニチャネルプラットフォームの方に目を向けているのなら、別な話ではある。

(写真)昨年9月にオープンしたワールドトレードセンター地区にあるサックスフィフスアベニュー、ブルックフィールド店の化粧品売り場。ブランドを自在に試しやすい新フォーマットの売場だ。
 2017/02/04 01:29  この記事のURL  / 

メーシーズに売却のうわさ
NYポストのすっぱ抜き記事なのであてにはならない部分があるが、まもなく引退するランドグレンCEOが最近、好意的企業買収のオファーに対して扉を開き始めている、という噂が今朝報道された。これでメーシーズの株価はNY株式市場取引開始前に5%上昇し、テレビのNBC局や地元ニューヨーク1局が朝のニュースに取り上げた。

数年前から、ランドグレン氏は34丁目本店を含む同社の不動産売却を要求するアクティビスト株主ジェフリー・スミス氏(スターボード・バリュー社)と対立関係にある。スターボードの試算によると同社全体の不動産価値は210億ドル、これに対してメーシーズ全社の市場価額は90億ドルしかない。メーシーズの業績不振により株価も猊下している中、投資家たちから不動産売却のプレッシャーがかかるのも自然ななりゆきではある。ちなみにメーシーズ880店舗のうち約半分が自社物件だ。

昨年メーシーズはフォーコーナーズ・プロパティ・トラスト社という不動産投資会社のCEOウィリアム・レネハン氏を役員に迎え入れ、また年末にはブルックフィールド・アセット・マネジメント社を雇い、不採算店舗50店舗売却交渉を行った。

しかしランドグレン氏は引退にあたり、彼自身のレガシーおよびメーシーズのレガシーを守るため、「(スターボード社に資産をばら売りされるより)むしろメーシーズ百貨店として他社に売却した方がよい」というコメントをした、という彼に近い筋からの情報が今回の報道につながった。

なお、ここから先は益々根拠はないが、ニューヨークポスト紙は売却先はハドソン・ベイではないかとのことで同社に確認を取ったがノーコメントとのこと。金融系メディア、ザ・ストリート社は、経営内容が良いオフプライス百貨店チェーン、ロスストアであればメーシーズ社が拡大したがっているアウトレット事業を即座に拡大できるとして独自の分析を報道している。

ランドグレン氏は引退後も役員会委員長として残るため、いきなり不動産の大放出や企業売却話が現実になるとは考えにくいが、このようなうわさが出るということは、それらの選択肢も経営側が検討している、ということだろう。

私個人の思いとしてはメーシーズにはもちろん生き残って欲しい。ただ、全米800店舗もメーシーズになる必要はなかった。例えば1852年創業のシカゴの貴婦人、マーシャル・フィールズは2006年メーシーズ買収後地元から大きな反対運動があったにも関わらず、無理やりメーシーズに名前を変えさせられた歴史がある。その後反対住民は毎年メーシーズの年次株主総会に出席し、ボイコットや反対を表明し続けた。10年たった現在でも反対運動の拠点のウェブサイトには「シカゴ人の79%はフィールズのファンだ」というデータと共にデモ運動の写真が掲載されている。

直近ではメーシーズに買収されたポートランドの名店マイヤー&フランクが今年閉店の憂き目にあっている。

百貨店は長い歴史を持つ業態で、それぞれの出身の土地の文化も反映している。それを十把ひとからげにメーシーズにしてしまった段階で、間違っていたのではないかと思う。ランドグレン氏の引退も、彼のリーダーシップの限界が見えているための計らいだったかもしれない。次のガネットCEOには、ぜひメーシーズを本当の意味で再生させてもらいたいものだ。

(写真)筆者がメーシーズ本店店内にて展示物を撮影。1938年のメーシーズ感謝祭パレードのバルーン
 2017/02/03 01:45  この記事のURL  / 

ロード&テイラーのファストファッション戦略
ロード&テイラーは昨年、エクセルブランズ社(Xcel Brands Inc.)と提携し、アイザック・ミズラヒを含む複数のエクスクルーシブブランド開発を発表、9月のニューヨークファッションウィーク中に販売開始した。

エクセルブランズ社はブランド管理およびメディア企業で、製品のデザイン、生産、ライセンス事業からマーケティングまで行う。現在の年商は約28億円で既にナスダックに上場している。2011年ロバートW.ローレン氏が立ち上げ、IMNYC Isaac Mizrahi(アイザック・ミズラヒ), Judith Ripka(ジュディス・リプカ), H Halston(Hハルストン), Highline Collective(ハイライン・コレクティブ), C. Wonder(Cワンダー)ブランドを所有。 同社はショッピング、エンターテインメント、ソーシャルを一体化したビジネスモデルの構築を目標とし、オムニチャネル戦略に力を置く。しかし今回注目されるのは、アパレル製造とサプライチェーンマネジメントも同社が管理する点で、ザラの親会社インディテックスに学んだ製造・ロジスティクスの徹底した短期化を実現する。

29日のウォールストリートジャーナル紙によると、今回立ち上げたブランドの1つ、IMNYC Isaac Mizrahiのオフショルダーのブラウスが欠品となった際、6週間で補充したとのこと。過去には9か月かかっていたそうだ(筆者注:恐らく正式立ち上げ前、夏のテストマーケティング時の実例である)。エクセル社はインディテックスの元社員を複数迎い入れ、デザイン開発段階から百貨店バイヤーと週2回会議をするだけでなく、製造工場のテクニカルデザイナーをエクセル社本社に常勤させてコレクションを短期間で最終決定する。さらにリードタイムを短縮するため製造後は工場から直接各店舗に出荷する。唯一インディテックスと異なるのは、インディテックスが自営工場であるのに対し、エクセル社はアジアの提携工場から買い付けている。

ロード&テイラーはバーゲンハンターのおばさん御用達の百貨店だったが、現在若返りの一貫でミレニアル世代と呼ばれるティーンエイジャーから大学を卒業したばかりの若い世代に照準をあて、ソーシャルメディアマーケティングにも力を入れている。昨年3月には商品単価が100ドル未満のトレンディなブランドを集めた編集型売場「デザインラボ」を立ち上げ、同じペイズリー柄のドレスを50人のブロガーに自分なりのコーディネーションで着用してもらうインスタグラム・キャンペーンで大きな反響を得た。ただしこの販促はブロガーに謝礼を払っていたことが公表されていなかったため、後日連邦公正取引委員会の追求を受けたが、それほどインパクトがあったということだろう。

ロード&テイラーのマーチャンダイジングは確かに以前に比べて改善されている。過去は雑然とブランドが並んでバーゲン会場エブリディ、という感じだったが、現在はコンテンポラリー売場を始め、各売場内に意図をもってブランドが編集されている。また、エスカレーター回り、売場メイン通路のマネキンでのヴィジュアルプレゼンテーションを戦略的に活用しており、9月末時点ではIn Real Life(実際の生活)というテーマで、トレンドを押さえながらも現実感あふれるコーディネーションを見せている。

わかりやすい売場作り、独自の編集型売場導入、そして市場で知名度のあるブランドとのコラボによるファストファッション・モデルの導入。加えてソーシャルメディア他のマーケティングも強化し、目に見えた成果が出るのかどうか、ホリディ商戦後の結果を注目したい。

(写真)ロード&テイラーNY五番街本店、筆者撮影







 2016/09/30 21:36  この記事のURL  / 

メーシーズがビューティオンデマンドと提携
メーシーズがヘア&メークアップのオンデマンドサービス、beGlammedと提携した。beGlammedはロサンゼルス、ニューヨーク、サンフランシスコ、マイアミ、シカゴ、ダラス、アトランタ、ボストン等、全米22都市に1200人のスタイリストのネットワークを有しており、モバイルアプリで予約、自宅でヘアスタイリングやメークアップを行う。サービス料金は25ドルから185ドル程度だ。

提携により、メーシーズのウェブサイト上からもこのサービスにアクセスすることができる。またメーシーズ店内サインやソーシャルメディア上で訴求していく。

まだ2014年に起業したばかりのbeGlammedが800店近いチェーンストアおよび顧客を持つメーシーズと提携するメリットは容易に理解できるが、メーシーズにとってのメリットは何か?
メーシーズに限らず、アメリカでも百貨店はサイフの紐が固くなった消費者、衣料品にあまり興味の無い若年層(こちらではミレニアル世代)、ファストファッションの普及と飽和市場、という理由で主力の衣料品売上で苦戦している。これを補うために各社それぞれ工夫をしているが、メーシーズは化粧品売場の拡充という選択肢を選んだ。ニューヨークの旗艦店では売場を拡大しただけでなく、LEDパネルをふんだんに使い、イベントや新商品をドラマチックにヴィジュアルコミュニケーションしている。また昨年3月には約210億円を投資して60店舗を展開する高級化粧品チェーン、ブルーマーキュリーを買収。現在同ブランド店はメーシーズ4店舗でインショップ展開しているが、今年度中に18店舗追加の予定だ。

物販面の強化がブルーマーキュリー買収とすると、beGlammedとの提携により、百貨店を超えたサービスの提供が可能となる。現在百貨店のみならず、アメリカ小売業界全般でオンデマンドサービスとの提携が盛んになっており、小売業者は自社ではできないサービスを顧客に提供しようと試みている。

さて、消費者の立場から見てみよう。来店頻度は減ったがたまたまメーシーズに買い物に行ったら、beGlammedのサービスを知った。興味を持ち、早速試してみるかもしれない。しかし、beGlammedのサービスを気に入ったからと言って、必ずしもメーシーズで前より頻繁に化粧品を買うだろうか?もちろんメーシーズはbeGlammed客に割引やギフトなどで販促をかけるだろう。だが、メーシーズが提供している化粧品ブランドのほとんどは他社でも買えるものだ。よほどの動機づけがないと、beGlammedのサービスに満足して終わってしまうような気がする。

一方、ブルーマーキュリーならブランド揃えだけでなく、専門店としての接客や情報提供力があるので、ブルーマーキュリー側が主体的に編集した化粧品群をbeGlammedで使ってもらう、などの発展も可能だ。もしかしたら、せっかく買収した、顔の見える顧客データを持つブルーマーキュリーとオンデマンドを絡めた方がより戦略性の高い事業提携だったかもしれない。ところでブルーマーキュリーが買収後1年以上たつのに、メーシーズ内の店舗展開数が少ないのが気になる。それとも何か、まだ発表しない秘策があるのか?昨年の買収も含めて今回のビューティ部門拡充第二段、その後のストーリー展開が楽しみだ。

(写真)メーシーズ社ウェブサイトより




 2016/09/26 05:56  この記事のURL  / 

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プロフィール

平山幸江(ひらやま・さちえ)

アメリカ小売業コンサルタント

1993年よりニューヨークを拠点に活動。Jクルー・ジャパン(伊藤忠プロミネントUSA)、フェリシモ・ニューヨーク、イオンUSA調査ディレクターを経て2010年に独立。

アメリカ市場でのファッション、小売事業展開の実務経験に基づいた市場調査分析、戦略企画が専門。「販売革新」「ファッション販売」他執筆。米国小売最新情報に関する講演。慶応大学及びファッション工科大学卒業。


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