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トーリー・バーチはアメリカのシャネル?
ウィメンズ・ウエア・デイリー紙が例年開催するCEOサミットの記事の中で、トーリー・バーチと共同CEOのロジャー・ファラ氏の対談に目が留まった。ファラ氏はラルフ・ローレン社の副社長まで上り詰め、いったんは引退したが、昨年トーリーが口説き落として現職についた業界の重鎮の一人だ。

トーリーのデザインは「プレッピー・ボホ(ボヘミアンの略)」と呼ばれ、気楽に着られ応用が利くスタイルだ。彼女を有名にしたのは頭文字のTをモチーフにしたロゴのメダリオン。日本でもこれがついたバレエ・フラッツ(靴)やバッグを持っている人は多いだろう。確かに彼女のデザインには独自な世界があるが、ブランドの急成長を下支えしたのは、彼女自身のライフスタイルやパーソナリティ、投資家の父と女優の母は結婚前にはそれぞれグレース・ケリーやスティヴ・マックィーンとデートしていた等の話題性に基づくマーケティングの力も大きかったようだ。

2度目の結婚相手で投資家だったクリストファー・バーチから200万ドル(2億円)を提供してもらい2004年にブランドを立ち上げ、翌2005年にはTV界に多大な影響力を持つオプラ・ウィンフリーがブランドを賞賛したことで人気急上昇。2006年に同社の急成長の原動力となったロゴ付きリーヴァ・フラッツを発売し、2008年には25万足を販売、2013年には500万足以上販売したという。現在推定年商は10億ドル、企業市場価額は35億ドルといわれており、全米に49店舗、海外24店舗、百貨店や専門店1,000箇所以上に卸売販売を行っている。

さて、ファラ氏は対談の中で「トーリーはアメリカのシャネルになれる」と語った。その根拠は魅力的な商品だけでなく、美貌も含めて人をひきつけるパーソナリティ、ファッション業界やセレブリティとの広範囲なネットワーク、その結果、業界からの受賞、TV出演、新商品デビュー・キャンペーンへの協力確保などあらゆる段階で「バズ・メイキング=評判を盛り立てる支援」を勝ち取るパワー、そして、へこたれずに働き続けるエネルギー、のようだ。

トーリー・ブランドは、アメリカ市場ではあまりにもロゴが普及してしまったので、ある日急落下もあり得るのではという懸念の声もある。ブリッジの価格帯だけに、商品の品質もお世辞にも最高級とは言えない。靴やバッグ、サングラスなどアクセサリーは好調のようだが、衣料品はどうだろうか。今年夏には「トーリー・スポーツ」というアクティヴウェア市場にも参入したが、
特に市場で人気という話は聞かない。

トーリー自身も急成長の10年間に続く「次の10年が大切」と語っていたが、確かにこれからが正念場のようだ。しかしブリッジという難しいカテゴリーの中でどう駒を動かしていくのか、興味深いファッション・ブランドだ。

(写真)トーリー・バーチ・スポーツのマンハッタンにあるポップアップストア。来年にはマンハッタンに直営1号店を出店する計画だ。(出所:トーリー・バーチ社)
 2015/10/30 22:54  この記事のURL  / 


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プロフィール

平山幸江(ひらやま・さちえ)

アメリカ小売業コンサルタント

1993年よりニューヨークを拠点に活動。Jクルー・ジャパン(伊藤忠プロミネントUSA)、フェリシモ・ニューヨーク、イオンUSA調査ディレクターを経て2010年に独立。

アメリカ市場でのファッション、小売事業展開の実務経験に基づいた市場調査分析、戦略企画が専門。「販売革新」「ファッション販売」他執筆。米国小売最新情報に関する講演。慶応大学及びファッション工科大学卒業。


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