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アマゾンがホールフーヅマーケットを買収
アマゾンがホールフーヅマーケットを買収した。今朝のニュースを聞いた時は思わずエッ!?と声に出たが、137億ドルで460店舗以上の高級自然スーパーマーケットチェーンを手に入れた。アメリカの小売業界では突然市内に爆弾を落とされたかのありさまだ。

全米TVネットのCNBC局では、コメンテイターが「この買収はゲームチェンジャーだ!これからはアマゾンの力で食料品価格がデフレに向かう!ジョン・マッキーCEOは株主との闘いに疲れきって、こんなことをしたんだ!全てが変わる!」と最後の方は声を荒げて大興奮、今にも卒倒しそうな報道だった。

ホールフーヅは近年、業績が頭打ちで7期連続既存比割れ、アクティビスト投資グループ、ジェイナパートナーズから現在の経営者退陣をもちらつかされていた。創始者でありCEOのジョン・マッキーは、我が子と公言するホールフーヅを守るためにアマゾンに身売りした、という話だ。

ウォルマートはCNBCの取材に対して「我々は全米に4500店以上を持ち、オンラインビジネスも急成長中であり、競合環境についても自信がある」と答えた。

ホールフーヅはオンライングローサリービジネスでは遅れを取っているが、彼らの店舗は大都市圏の高額所得者居住地区に立地するため、アマゾンフレッシュやプライムナウの商圏と重なる。アマゾンに取っては自社が顧客情報をたっぷり持っている商圏内に店舗を手に入れることができた。

一方で、高品質だが高価格で知られているホールフーヅと、価格破壊をリードしたアマゾンが戦略的に相いれるのか、という課題を指摘するアナリストもいる。

実はアマゾンは昨年秋からホールフーヅ取得に動いていたそうだが、その時は話が進まなかった。しかし、前述のアクティビスト投資家の強引な動きの中で再度アマゾン側から話を持ち掛け、買収が成立した。

このことは、「アマゾンがいかに食料品店チェーンを手に入れたがっているか、いかに実店舗のメリットを信じていることを物語っている」、とウェッドブッシュ証券アナリスト、マイケル・パクター氏は述べている。これによって「理論的には、5分配送なども可能になる」という解説だが、実際にはこれ以上の配送スピード短縮以外に目的があるに違いない。

アマゾンゴーでは、RFIDやセンサーを張り巡らし、詳細に買い物客の行動をモニターしようとしていた。ブックストアではそこまでのセンサー類は無いように見えるが(実際に什器を調べてみたが)、何かこれはいかにもテックパーソンの知恵であり、チェーンストア経営の知恵とテクノロジー専門家がそれぞれの角度から意見交換したら、もっと合理的で現実的な方法が出てくるに違いない。

当面は大きな変化は無く、マッキーCEOはそのままホールフーヅの経営に携わる。しかし、あのベゾス氏が、ホールフーヅという美味しそうな新素材を前にいかなる戦略を生み出すだろうか。既に「ホールフーヅではいずれロボットがオーガニック野菜の鮮度をチェックするのか?」とか「店中ハイテク什器に置き換わる」「ますますオンラインで食品を買うから店舗がいらなくなるかも?」などなど、根拠のあるなしに関わらず、あれこれ、おもしろい憶測が飛び始めている。これは、頓挫中のアマゾンゴーや今一つ意図不明なアマゾンブックストアなどよりも数十倍おもしろい展開になりそうだ。これだから、アメリカ小売業界研究はやめられない。
 
(写真)ホールフーヅマーケット店内のフードコート。
 2017/06/17 07:46  この記事のURL  / 


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プロフィール

平山幸江(ひらやま・さちえ)

アメリカ小売業コンサルタント

1993年よりニューヨークを拠点に活動。Jクルー・ジャパン(伊藤忠プロミネントUSA)、フェリシモ・ニューヨーク、イオンUSA調査ディレクターを経て2010年に独立。

アメリカ市場でのファッション、小売事業展開の実務経験に基づいた市場調査分析、戦略企画が専門。「販売革新」「ファッション販売」他執筆。米国小売最新情報に関する講演。慶応大学及びファッション工科大学卒業。


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