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オムニチャネル戦略人事に広がるアジア系移民(メーシーズ編)
既存比割れが続く百貨店メーシーズが先週、攻めの人事を発表した。新CEOジェフ・ジェネット氏に交代して初めてのメジャーな動きだ。

まず、オムニチャネル戦略をテクノロジー面から支えるヤサール・アンワール氏のCTO(チーフテクノロジーオフィサー)からEVP(エグゼクティブバイスプレジデント)&CTOへの昇格だ。アンワール氏はもともウォルマートの出身で、サムズクラブやウォルマートのウェブサイトの設計リーダーからスタートし、ウォルマートラボで同社グローバルEコマースの次世代プラットフォーム開発の指揮を取った。その後2012年5月にメーシーズに転職してオンラインのエンジニアリング・バイスプレジデントに着任、2014年4月にはシニアVP、デジタルテクノロジーに昇格し、2017年2月にCTOに昇格した。つまりはアメリカの小売業界テクノロジーのトップクラスのキャリアを持つ人材だ。

次に、メーシーズEコマース部門のEVPデジタルテクノロジー・カスタマーエクスペリエンス&サイト・マーチャンダイジングだったマイク・ロビンソン氏をEVPプロダクトマネジメント&カスタマーエクスペリエンスとしてデジタル部門から切り離した。マーチャンダイジングと顧客経験に特化し、デジタルテクノロジー部門はアンワール氏に任せる形だ。

ジェネットCEOは「テクノロジーの力を最大化し、デジタル&モバイルプラットフォームの成長を続けていくことはメーシーズにとって最高のトッププライオリティだ。我々はこれを支えるためにテクノロジーチームを再構築する」とコメントしている。また「メーシーズのテクノロジーチームをヤサールの指導下に集めることで、より迅速に事業トランスフォメ―ションのためのプラットフォームを確立する」とも述べている。

ロビンソン氏はビジネススクールを卒業後、IBMなどを経て2005年10月にギャップに入社しIT戦略&事業計画のVPを務め、メーシーズには2010年2月にSVPテクノロジーとして転職している。5年後の2015年2月には同社EVPに昇格し、今回の人事に至った。ビジネススクールを卒業後、5年ごとに転職と昇格を果たし、いかにも模範的なアメリカのキャリアアップの道を歩んできた人材である。しかし今回の人事では、メーシーズに2年後に入社したアジア系移民のアンワール氏に追い越されたかっこうだ。もともとプロダクトマネジメントやカスタマーエクスペリエンスのキャリアがある訳ではないようなので、この分野に強い若い人材(特に女性)の競争相手が出てきたら、を想定すると、ロビンソン氏はそろそろ次の5年計画を考える時かもしれない。

今回の人事発表は、いかにアメリカのテクノロジー分野で移民が力を発揮しているか、の典型的な事例でもある。特に小売業界を見渡すと、南アジア系移民が多い。セフォラ、ノードストロームやアマゾンなど、筆者が毎年参加している全米小売業協会年次総会でも一目瞭然だ。これは「アメリカ人は理数系が不得意なのね」などというナイーブな話ではない。「アメリカのチェーンストアの死活問題がかかっているオムニチャネル戦略の要所で多くの移民が鍵を持っている」ということだ。移民の才能と大統領の話になると横道にそれるので避けるとして、メーシーズの新CEOが適切な能力を持つであろう人材に重任を預け環境を整えた点については評価し、今後百貨店の業績改善なるかを注目したい。

それにしても、オムニチャネル戦略を唱える日本のチェーンストアが、外から有能な人材を連れてきてでも目の前の目標に挑戦する事例があるのだろうか。勉強不足ゆえ、調べてみようと思った。
 2017/06/12 01:45  この記事のURL  / 


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プロフィール

平山幸江(ひらやま・さちえ)

アメリカ小売業コンサルタント

1993年よりニューヨークを拠点に活動。Jクルー・ジャパン(伊藤忠プロミネントUSA)、フェリシモ・ニューヨーク、イオンUSA調査ディレクターを経て2010年に独立。

アメリカ市場でのファッション、小売事業展開の実務経験に基づいた市場調査分析、戦略企画が専門。「販売革新」「ファッション販売」他執筆。米国小売最新情報に関する講演。慶応大学及びファッション工科大学卒業。


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