« 前へ | Main | 次へ »
ウォルマート・オムニチャネル戦略の大きな方向展開
昨年9月、ウォルマートは30億ドル(約3000億円)で将来のアマゾンの敵とも噂されていたJet.comを買収した。ジェットは2015年に、おむつ専門オンラインストアDiaper.comや生活用品専門オンラインストアSoap.comの親会社Quidsiの共同経営者の一人だったマーク・ロアー氏がクィジィ社をアマゾンの売却後設立した会社だ。

ジェットは販売商品展開数1,200万SKU、2,400以上のショップおよびブランドとの提携を有する総合オンラインストアで、買収された当時、ミレニアル世代や大都市圏の40万人以上が購入しており、毎日25,000件以上のオーダーがあった。

過去10年近く、ウォルマートはテクノロジーやデジタルマーケティングのスタートアップ企業を10数社買収しながらオンライン事業強化を図っていたが、期待ほどの売上成長が見られず、オンライン売上ではアマゾンとの差をつけられる一方だった。オンラインストアが一定以上の規模にならなければオムニチャネル戦略は先行投資で終わってしまう。そこでジェットに目をつけたのだろうが、正直なところ、業界ではウォルマートが本当に最新のオンラインリテーラーをうまくかじ取りできるのか期待と疑心暗鬼の半々と言ったところだった。

買収後、ウォルマートはジェットのロアー氏をウォルマート本体のグローバルEコマース部門CEO兼プレジデントに抜擢し、同組織を大改編させた。彼はウォルマートの本社組織のスリム化と意思決定・実行のスピードアップを図るため、同部門の人事部をアウトソーシングに変更、人事スタッフは解雇となった。また、ジェットのチーフ収益オフィサーのスコット・ヒルトン氏をwalmart.com, Jet.com, Hayneedle.com全販路での直販・第三者出店者・デジタルストア運営を掌握するシニアバイスプレジデントに昇格、グローバルEコマース部門チーフテクノロジーオフィサーだったジェレミー・キング氏を米国店舗およびオンライン事業のチーフテクノロジーオフィサーに昇格させ、ウォルマート傘下の全Eコマースの統合を図っている。

その後12月、ウォルマートはジェットを通じてアマゾン傘下のザッポスの対抗馬とも言えるShoebuy.com、今年2月にアウトドアアパレル専門オンラインストアMoosejaw.com、3月17日にサイズ展開幅が広くミレニアル世代に人気のModCloth.comの買収を行った。これらの一連の買収決定にはロアー氏の影響が大きいのではないだろうか。いずれもウォルマートのコア顧客より若く、都会的な感覚で可処分所得も多い層が中心顧客と言われており、オンライン事業成功の上で欠かせないターゲット層だ。当然ながら、買収を通じてオンライン売上高を短期間に大きく増加させる効果もある。

ウォルマートは一方で、2年弱継続した、アマゾンプライム対抗の会員制無料配送「シッピングパス」を止め、今年1月より会員にならなくても35ドル以上のオーダーに対して無料2日配送サービスを開始した。また生鮮食品のオンラインストアにも力を入れ始めている。

ウォールストリート(金融業界)では「アマゾンの真似をし始めたウォルマート」と揶揄る声もある。10年以上かけてオンライン事業拡大のためにラボを設立したり、あれこれ取り組んできたが、結局自社で事業を育てるより外部専門家集団を丸ごと買い取った方が早い、という結論に至ったのだろうか。そうであれば、買収先がオリジナルの魅力を失わないよう、カネは出すがクチは出さないお父さんを演じつつ、全販路統合を目指してもらいたいものだ。

(写真)ShoeBuy.com, Moosejaw.com, ModCloth.com各社のウェブサイトより


 

 2017/03/25 06:39  この記事のURL  / 


« 前へ | Main | 次へ »

プロフィール

平山幸江(ひらやま・さちえ)

アメリカ小売業コンサルタント

1993年よりニューヨークを拠点に活動。Jクルー・ジャパン(伊藤忠プロミネントUSA)、フェリシモ・ニューヨーク、イオンUSA調査ディレクターを経て2010年に独立。

アメリカ市場でのファッション、小売事業展開の実務経験に基づいた市場調査分析、戦略企画が専門。「販売革新」「ファッション販売」他執筆。米国小売最新情報に関する講演。慶応大学及びファッション工科大学卒業。


2017年03月
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
最新記事
月別アーカイブ
カテゴリアーカイブ