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NYモードを「パターン」で支える「大丸製作所2(oomaru seisakusho 2, inc)」を訪問





2016年2月に開催されたNYファッションウイーク中、パターンメーカー「oomaru seisakusho 2, inc(大丸製作所2)」のアトリエを訪ねました。新たに立ち上げたコートだけのプロジェクト「THE GRATEST OVERCOATS PROJECT(ザ グレイテスト オーバーコート プロジェクト) by oomaru seisakusho 2 inc.」が制作されている現場を見に行きました。

大丸製作所(おおまるせいさくしょ)2はNYモードを支える「黒子」のような存在です。公式サイトに公開されている顧客リストにあるだけでも、「3.1 PHILLIP LIM」「ALEXANDER WANG」「JASON WU」「PUBLIC SCHOOL」「THOM BROWNE」「Proenza Schouler」「Calvin Klein」など、NYを代表するクラスのブランドが大丸製作所2の取引先に名を連ねています。同社の確かなパターン作りが信頼を得ていることの証明と言えるでしょう。

アパレル関連企業が集まっていることから、「ファッションアベニュー」と呼ばれる7番街に、大丸製作所2のアトリエはあります。4階のアトリエでは創業者で社長の大丸隆平さんが自ら案内してくれました。大丸さんは2008年にNYで同社を設立。着実に評価を高め、2015年の第33回毎日ファッション大賞では「ファッション界にあって、長らくその発展に寄与し、功績のあった人(グループ)」に贈られる鯨岡阿美子賞を受賞しています。








「PATTERNMAKING, SAMPLE SEWING, DESIGN CONSULTING」と、公式サイトに説明されている通り、同社の主な仕事はパターン制作です。でも、ただ依頼を受けるのパターンメーカーではありません。実際には有力ブランドから「ファッションショーのランウェイ構成作りから参加してほしい」といった要請を受けて、クリエーションの根っこから関わるケースが少なくないそうです。

実はもともとNYブランドの多くは日本人パタンナーを頼りにしてきました。仕事ぶりがきめ細やかで手際のよい日本人パタンナーは引っ張りだこ。大丸製作所2で働く人たちも日本人ばかり。「THE COMPANY INHERITS AND REINTERPRETS JAPANESE TRADITION OF CRAFTMANSHIP IN MAKING CLOTHES.」とうたっているのも納得です。








いよいよ新作コートを見せてもらいました。以前、伊勢丹新宿店での展示会で見て、ずっと気になっていたのです。16-17年秋冬で3シーズン目になります。「THE GRATEST OVERCOATS PROJECT」という名前は大げさに見えるかも知れませんが、このコート作りはその名前にふさわしい取り組みです。なぜなら、「サイズ」や「性別」という、服にまつわる制約を取り払う試みだからです。

コートはサイズが合っていないと、かさばって見えて、「着られ」てしまいがち。腕の長さ次第で、袖丈とのバランスが難しくなるところもあって、購入に当たってデリケートな丈詰めが必要になることも。自分の体型にフィットするシルエットのコートに巡り会うにはかなりの手間がかかり、妥協してしまうことも珍しくありません。

ところが、大丸製作所2のコートはこういった欠点を素敵に乗り越えています。見事なパターンメーキングのおかげで、身長が高くても低くても、骨太体型でもスレンダー型でも、不思議とボディーラインになじんで見えるシルエットが生まれました。






秘密はオーバーサイズ気味の穏やかフォルム。パターンがきれいだから、性別さえ関係なく着られて、カップルで1着をシェアすることだって可能です。これはちょっとした「発明」のレベル。実際に私が着ているコートを大丸さんが着ても、逆に大丸さんのトレンチを私が着てもちゃんと様になります。

アームホールの特殊な工夫が性別や体型の違いを越えた着心地に一役買っています。袖先にはカフスを切っていないので、腕の長さに応じて袖まくりして袖丈感を調整できる仕掛け。腕が割と短い人でも自在に着こなせます。

なぜこのコートを作ったのかと尋ねてみると、「寒さの厳しいNYでは、街中でダウンウエアを着ている人が多い。でも、ダウンは特有のイメージが出てしまいやすいうえ、着て行ける場所やシーンも限られる。そういうことを気にせずに済むコートを作りたかった」という答えが大丸さんから返ってきました。確かにダウンは暖かいのですが、カジュアル感やアウトドアムードが強くなりがち。その点、大丸さんのコートは出番を選びません。しかも、アウターの上から羽織れるオーバー仕様だから、極寒の日でも重宝しそうです。

こちらのコートはオーダーメードで販売されてきましたが、東京にもショールームができるそう。日本がつちかってきた服づくりの手仕事技が世界的な評価を得ていることをあらためて実感できた、大丸製作所2への訪問でした。


oomaru seisakusho 2, inc(大丸製作所2)
http://oomaruseisakusho2.com/


〜関連記事〜

「挑戦的ものづくり」に光 第33回(2015年)毎日ファッション大賞
http://www.apalog.com/riemiyata/archive/199



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 2016/03/14 07:39  この記事のURL  / 

「2016-17年秋冬NYコレクション」まとめ














2016-17年秋冬NYコレクションはNYらしいテイストミックスに楽しさや洗練度が上乗せされました。キーワードは「ノールール」。従来の約束事をあえて踏み出すようなシーズンレス、シーンフリー、ジェンダーレスのアレンジが一段と広がりました。使い勝手を重んじる「ユーティリティー」や、あえて垢抜けない表情を押し出す「ダサかわ・Tacky(タッキー=悪趣味)」といった新テイストも。全体にアレンジの自由度が上がる中、ロック音楽やテクノロジー、ヴィンテージ、米国史、SF的未来感覚、ダークファンタジー、ゴシック、クラフトマンシップなどにファッション表現のコアを見いだす創り手も相次ぎました。

ショーで発表したその日から買えるという新手法がマーケティング面で関心を集める一方で、クリエーションもスマートフォンユーザーの視線を意識せざるを得ない状況となり、派手めに振れる兆しが現れています。スーパーロング袖やオフショルダーは「スマホ受け」しやすいデザインとも映ります。パジャマやランジェリーの街着化といった、ややトリッキーな提案にもスマホ視線への目配りが感じられ、この傾向は来シーズン以降もデザインを左右する密かな「エンジン」となる気配を感じさせます。

宮田理江のランウェイ解読「2016-17年秋冬NYコレクション」

http://www.apparel-web.com/column/miyata/2016-17aw_ny_01.html



〜関連記事〜

2016-17秋冬NYコレクション 次トレンドはコレ!(キーワードまとめ)
http://riemiyata.com/fashion/6111/

2016-17年秋冬NYコレクションリポート(前編)〜「ルール」を崩してモード進化
http://www.yomiuri.co.jp/komachi/beauty/fcolumn/CO005410/20160303-OYT8T50043.html

2016-17秋冬NYコレクション〜すぐ買える、体験型、シーン提案…多様化するNYの「プレゼンテーション」編
http://www.fashionsnap.com/inside/201617ny-presentation/

2016-17年秋冬NYコレクション〜レビュー前編・中編・後編
http://riemiyata.com/work/5965/

「REBECCAMINKOFF」が起こした“ファッションショー革命”
http://www.apalog.com/riemiyata/archive/208



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 2016/03/06 05:55  この記事のURL  / 

最後の「UNIQLO AND LEMAIRE(ユニクロ アンド ルメール)」、2016年春夏コレクションが発売







「エルメス」や「ラコステ」でアーティスティックディレクターを務めた実力派デザイナーのクリストフ・ルメール氏と、サラ-リン・トラン氏が手がけるフランスのブランド「LEMAIRE(ルメール)」と「UNIQLO(ユニクロ)」のコラボレーションライン「UNIQLO AND LEMAIRE(ユニクロアンドルメール)」は、2015年秋冬シーズンの発売にあたって行列ができたり、たちまち完売になったりして、大きな話題を集めました。その人気を受けて、16年春夏コレクションは国内の取扱店舗を大幅に増やして、3月4日に売り出されました。実は今回が最後の企画となります。発売前日のお披露目イベントに行ってきました。











ルメール氏らしさを最も印象づけるのは、巧みなカッティングでしょう。シンプルでありながら、さりげないシルエットメーキングが無意識のうちに「どこか違う」と感じさせます。ゆる感ときちんと感が同居する絶妙のバランス。ディテールへの繊細な目配りもこのコレクションの持ち味となっています。たとえば、ポロシャツやニットトップスの襟ぐりに漂う、自然なのどかさ。雨の日も安心な、水をはじくコートもベルトの位置を通常のジャストウエストより少し下の方にずらしてあり、着姿に変化をもたらしています。こういった細部へのこだわりが「UNIQLO AND LEMAIRE」を特別な存在にしています。

今の世界的なおしゃれのトレンドをしっかり反映させている点でも先進的。肌当たりにすぐれるシアサッカー生地や、ユニクロが品質を磨き上げてきたスーピマコットンは別格の着心地で、快適さを重んじる「コンフォート」志向を映し出しています。性別を意識しないで着られるデザインには「ジェンダーレス」の意識がうかがえます。今回初めて登場したシューズもユニセックス仕様です。シアサッカーやオックスフォードといった、メンズの伝統的な生地も取り入れています。実際、15年秋冬では女性がメンズ物を買う動きが目立ったそうです。

ラストコレクションとなる16年春夏は73店舗と公式オンラインストアでフルラインを取り扱います。前シーズンのほぼ2倍となる規模で、「UNIQLO AND LEMAIRE」を手に取ることができるようになりました。実際に商品を手に取って、シーンやシーズンにとらわれない「7days、24hours」の着こなしに生かしてみたくなります。




UNIQLO AND LEMAIRE
http://www.uniqlo.com/jp/store/feature/uq/uniqloandlemaire/women/




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 2016/03/04 12:01  この記事のURL  / 

COTTON USA × VOGUE JAPAN × ANREALAGEの新プロジェクト「POWER of COTTON」がスタート




斬新な素材使いで知られるブランド「ANREALAGE(アンリアレイジ)」と上質なアメリカンコットン「COTTON USA」が組んで、コットン素材を用いた進化系ワークウエアを制作しました。新プロジェクト「POWER of COTTON」はワークウエアを通して日本の伝統工芸の新しい職人像を提案します。

洗練されたコットン製ワークウエアを制作するプロジェクトです。COTTON USAのブランディング活動の一環。伝統的なアメリカ綿で未来につながる新しいワークウエアを企画制作。減少しつつある日本の伝統工芸の新しい職人像を提案しようという試みです。

今回開発されたワークウエアは、工房の床や壁、職人の衣服に偶発的についたシミをデザインに起こしています。一見真っ白なコットンのユニフォームですが、特殊プリントを組み合わせることで「再帰性反射」を実現し、フラッシュや蛍光灯の光を反射すると、まったく異なる模様が鮮やかに浮かび上がります。

シミはその工房に積み重ねられてきた職人たちの“勲章”であり、それを光としてまとうことで、次世代に職人魂を継承してほしいという願いが込められています。物語性やディテールを重んじるANREALAGEらしい切り口です。

機能性が重視され、デザインは後回しになりがちなワークウエアですが、その飾らない表情はモードのクリエーションでも重要なインスピレーションソースとなりつつあります。今回は逆にモードの創り手が仕事着を新発想でデザインしました。シーンや用途を超えて自在の着こなしを求める時代の気分が感じられます。

COTTON USA 「POWER of COTTON」サイト
http://cottonusa.jp/powerofcotton

ANREALAGE
http://www.anrealage.com/


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 2016/03/03 08:14  この記事のURL  / 

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宮田理江(みやたりえ)
ファッションジャーナリスト

複数のファッションブランドの販売員としてキャリアを積み、バイヤー、プレスを経験後、ファッションジャーナリストへ。新聞や雑誌、テレビ、ウェブなど、数々のメディアでコメント提供や記事執筆を手がける。

コレクションのリポート、トレンドの解説、スタイリングの提案、セレブリティ・有名人・ストリートの着こなし分析のほか、企業・商品ブランディング、広告、イベント出演、セミナーなどを幅広くこなす。著書にファッション指南本『おしゃれの近道』『もっとおしゃれの近道』(共に学研)がある。

公式サイト:http://riemiyata.com/
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