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「ミナ ペルホネン」の20年が示した、理想の「かたち」 『ミナカケル』





日本人デザイナー、皆川明(みながわ・あきら)氏のファッションブランド「mina perhonen(ミナ ペルホネン)」の作品を集めた展覧会「ミナカケル」が東京・表参道のスパイラルガーデンで6月7日まで開催されています。ブランド創立から20年の節目を迎え、これまでの軌跡を振り返ると同時に、ブランドの全体像に触れることのできる機会ともなっています。

展覧会場を巡り終えて感じたのは、「ミナ ペルホネン」のブレない世界観の心地よさ。「世界観」という言葉は近頃、単なるテーマや雰囲気にも飾り言葉として添えられるようになっていますが、「ミナ ペルホネン」は違います。会場に並べられたたくさんの服を眺めているだけでも、自然と穏やかでリリカルな気持ちに誘われていくのが分かります。

童話や絵本に通じるような、静かでやさしいストーリーが作品1着1着に寄り添っています。のどかなムードを帯びたオリジナル図案のモチーフは心をほどくよう。気立てのよい風合いの生地は、愛情深く身体を包んでくれそうで、見ているだけでもほっこりした気分に浸れるほどです。

素材選びに熱心なファッションデザイナーは珍しくありませんが、皆川氏は生地、ファブリックを作り起こすところから始めるアプローチで知られています。今回の展覧会ではかなり間近で生地の表情を見て取ることができ、創り手の「テキスタイル愛」を感じられました。糸と誠実に向き合う態度は業界のプロたちからもリスペクトを集めていて、会場には業界人らしき来場者の姿も多く見受けられました。

ニュアンスを醸し出す中間色を好んで用いるのも「ミナ ペルホネン」の作品に落ち着きやタイムレスをもたらしています。目先の流行を追わないシルエットが、自分好みの着こなしになじませやすい点も長年のファンに支持されている理由でしょう。











会場奥の高い吹き抜け空間には、ワンピースをはじめとする作品が椅子や傘などと一緒に天井から吊り下げられた形で展示してあり、「ミナ ペルホネン」の宇宙に招き入れられたかのような錯覚に陥ります。ぼんやりと眺めていると、マルク・シャガールの絵画を見るような幻想的な気分がわき上がってきます。

展示作品には皆川氏自身が創作のプロセスやエピソードをつづった解説文が添えられていて、作品鑑賞の奥行きを深くしてくれます。創り手から自作を丁寧に読み解いてもらえる機会は滅多にないので、クリエーションの秘密に触れる意味でも貴重なチャンスと言えます。

スパイラル館内には展覧会に合わせてアーカイブのテキスタイルを使った小物類を販売する期間限定ショップも登場。私が訪れた日も、ファンでにぎわっていました。この展覧会はスパイラルの30周年記念企画でもあり、その意味でも足を運ぶ価値があります。

「ミナ ペルホネン」は顧客からの信頼が厚いブランドとしても有名です。ファンは新作を心待ちにしていて、気に入った品をシーズンごとに買い足していきます。その絆の強さは、流行を超えた美意識や、揺らがない服作りポリシー、着心地への心配りなどに裏打ちされていることが今回の展覧会であらためて感じられました。長いようで短い20年間で、圧倒的な愛着を得た「ミナ ペルホネン」のありようは、ファッションビジネスのひとつの理想型を示しているようにも思えました。



ミナ ペルホネン20周年×スパイラル30周年記念
ミナ ペルホネン展覧会『ミナカケル』

2015年5月20日(水)〜6月7日(日)
11:00〜20:00 入場無料
スパイラルガーデン(スパイラル1F )
http://www.spiral.co.jp/minakakeru/




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 2015/05/27 10:31  この記事のURL  / 

ユニクロ「LifeWear」2015秋冬コレクション 機能性は進化、コラボも深化









ユニクロの「LifeWear」2015年秋冬コレクションが展示会で発表されました。会場ではたくさんのマネキンが天井から見下ろすような形でダイナミックに配置され、これまでとはまた一風変わった雰囲気での披露となりました。

全体に「進化」を感じさせる構成です。オリジナルの素材開発で知られるユニクロらしく、機能面でのレベルアップが印象に残りました。たとえば、保温性の高い「ヒートテック」では、ヒートテック商品で全身を包むトータルコーディネートも提案。帽子やネックウエア、手袋も「ヒートテック」で仕立てて、全身を温もらせます。これまではインナーやソックスのイメージが強かった「ヒートテック」にアイテム種類の厚みが増しています。

生地がソフトで伸縮性に富むデニムをラインアップ。初登場のスマートシェイプジーンズはお腹まわりを引き締め、ウエストラインを美しく見せる効果があるそうです。高品質のセルビッジジーンズにもストレッチ素材を投入しています。ジーンズだけではなく、デニム生地のヨガパンツまでありました。

フリースはパーカやセーターが主流でしたが、コートライクな本格アウターが登場。ダウンウエアはシームレスになり、着心地や着映えがさらに改善しています。フランネルも薄手から厚手までこれまで以上に幅広くそろえました。



有力デザイナーとのコラボレーションプロジェクトでは、フランスのブランド「ルメール(LEMAIRE)」と組んだコレクション「ユニクロ アンド ルメール(UNIQLO AND LEMAIRE)」を発表しました。「エレガントな日常着」を予感させます。

「ルメール」を率いるデザイナーの1人、クリストフ・ルメール(Christophe Lemaire)氏は2015年春夏シーズンまで「エルメス(HERMES)」を任されていた人物。それ以前に在籍した「LACOSTE(ラコステ)」でも高い評価を受けました。「ルメール」のもう1人のデザイナーはサラ‐リン・トラン(Sarah-Linh Tran)氏です。



別の新たなコラボラインでは、ファッションアイコンのカリーヌ・ロワトフェルド(Carine Roitfeld)氏と組みました。こちらは程よいモード感を帯びたラインを予感させます。フランス版「ヴォーグ(VOGUE)」誌の前編集長として知られ、今は『CR Fashion Book』誌の編集長を務める一方、『ハーパーズ バザー(HARPER'S BAZAAR)』誌でもグローバル・ファッション・ディレクターに就いています。トム・フォード氏の創造に刺激を与え続けるミューズとしても有名です。新雑誌を立ちあげる時期に密着したドキュメンタリー映画『マドモアゼルC〜ファッションに愛されたミューズ〜』も話題を集めました。





ユニクロとのコラボプロジェクトして先行しているイネス・ドゥ・ラ・フレサンジュ(INES DE LA FRESSANGE PARIS)氏とのコラボラインはクラシカルな雰囲気の新作が用意されました。「ルメール」、ロワトフェルド氏というフランス発のコラボラインが加わり、落ち着いたフレンチテイストの3ラインがそろった格好です。

素材やデザインにさらなる改良が施される一方で、有力クリエイター、エディターたちとの新たなコラボも展開。ブランドに寄せる消費者の信頼感を確立しつつあることへの自信や責任感が全体に強まった感じがあり、この秋冬の「ユニクロ」は一段と頼もしく映ります。

UNIQLO
http://www.uniqlo.com/jp/


〜関連記事〜

ユニクロ「LifeWear」2015春夏コレクション さらに楽しげにヘルシーに
http://www.apalog.com/riemiyata/archive/160

ユニクロ「LifeWear」2014秋冬コレクション プレイフルなレイヤードルック
http://www.apalog.com/riemiyata/archive/139

ユニクロ「LifeWear」2014春夏コレクション 「イネスとNIGO」が登場
http://www.apalog.com/riemiyata/archive/116

進化系「ユニクロ」を映し出す「LifeWear」2013年秋冬コレクション
http://www.apalog.com/riemiyata/archive/88




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 2015/05/18 05:32  この記事のURL  / 

「2015-16年秋冬パリ、ミラノコレクション」まとめ











2015-16年秋冬シーズンのパリ、ミラノ両コレクションはデコラティブでセンシュアルな傾向が強まりました。シルエットは縦長イメージやアシンメトリーが打ち出され、アイテムでは量感たっぷりのビッグアウターが浮上。70年代やボヘミアンのムードが濃くなる一方で、エフォートレスやミリタリーのロングトレンド化が進み、ミックススタイリングの余地も広がりを見せました。

ランウェイリポートをご覧頂けたら幸いです。

宮田理江のランウェイ解読 Vol.24 2015-16年秋冬パリ、ミラノコレクション

http://www.apparel-web.com/column/miyata/2015aw_paris_milano.html






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 2015/05/10 14:40  この記事のURL  / 

スプツニ子!氏の「光るシルク」アート展に見るテキスタイルの未来







理系感覚のアート作品で高い評価を得ている現代アーティスト、スプツニ子!氏の「Tranceflora - エイミの光るシルク」展が東京・新宿の「グッチ新宿」で5月17日まで開催されています。農業生物資源研究所が開発した「光るシルク」を使って、バイオテクノロジーとファッション、そしてアートが交差する未来予想図を示しています。

「Gucci (グッチ)」がサポートして、3階のイベントスペースで入場無料で公開されています。ファッションブランドが現代アートを支援する動きは世界的に広がっていて、今回はファッションと縁の深いシルクが素材だけに、ぴったりの会場となりました。

薄暗がりの会場に入る手前で、3D映画に使うようなカラーフィルム付きの眼鏡を手渡されます。これを掛けて作品を見ると、鮮やかに色づいた状態で見える仕掛け。眼鏡をはずした状態で見ると、ブラックライトに照らされて青白く均質に見えるのですが、実際にはミステリアスな光が眠っていて、特殊眼鏡を通すと、その妖しい光が「正体」を現してきます。

この「光るシルク」は、紡いだ絹糸を発光染料で染めたわけではなく、もっとすごい技術が注ぎ込まれています。遺伝子組み換え技術でカイコそのものに「光る糸」を吐き出すようにさせ、繭玉の段階から光を帯びるように育てられているのです。光る性質を持つクラゲやサンゴの遺伝子を用いているそうです。この光る絹糸で織ったドレスも展示されています。

同研究所では同様に「バラの香りのするシルク」の開発にも取り組んでいるそうです。展覧会ではさらに未来のシルクとして「恋に落ちる(かもしれない)シルク」も提案されています。ただ、「恋に落ちる」のほうはまだ実現可能性が未知数のようです。

テキスタイルの世界では、こういった新機能を備えた布地が近年、様々な用途向けに開発されています。しばらく前に「100日間、洗わなくても臭くならないシャツ」が話題を集めました。最近も「コーヒーをこぼしても汚れないシャツ」が発表されています。型崩れしない形状記憶シャツは以前から商品化されていますし、速乾性や発熱・保温性に優れた生地は日本メーカーの得意とするところです。

バイオテクノロジーやナノテクノロジーが進んでいけば、着心地や扱いやすさのレベルを超えた、さらに高機能のテキスタイルが誕生するかも知れません。かなり夢物語風ではありますが、「頭がよくなるシャツ」とか、「やせるパンツ」「元気が出るシャツ」「ウトウトしてくるパジャマ」「気持ちがなごむスウェットパンツ」「肌が5歳若返るランジェリー」といった、「あったらいいな」的な服が世界のどこかで企画・研究されている可能性だってあるかも・・・(笑)。

これらの機能性ウエアはまだ存在しないけれど、形状記憶にしてもデビュー当初は驚かされたものです。アイロンがけ不要というメリットは画期的でした。それを思えば、テキスタイルはまだまだ無限の可能性を秘めています。「光るシルク」に続く、驚きの新繊維に期待したいところです。



グッチ新宿で スプツニ子!「Tranceflora─エイミの光るシルク」展
5月17日(日)まで

http://ameblo.jp/guccijp/entry-12017362545.html




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 2015/05/05 17:45  この記事のURL  / 

「山口小夜子 未来を着る人」展で「ウェアリスト」山口小夜子に出会う





東京都現代美術館で6月28日まで開催されている「山口小夜子 未来を着る人」展に行ってきました。近年、ファッションをテーマにした美術展が増えてきましたが、ファッションモデル個人を主題に据えた本格的な展覧会は珍しいと思います。

幅広いフィールドで展開された小夜子さんの活動の全体像をとらえる試みです。生い立ちを示す、幼少期の私物から、モデル時代の主なランウェイショー映像、広告写真、後年の演劇関連資料、舞台衣装などが展示されていて、小夜子さんの人生と仕事ぶりを時系列に乗って追体験できます(アパログ連載陣の写真家・大石一男さんの作品もありました)。

本人が集めていた雑誌や人形なども展示されていて、パスポートまでありました。杉野ドレスメーカー学院に学んだ小夜子さん自身が描いたデザイン画も見ることができます。モデル業で有名になった小夜子さんですが、並行して女優やダンサーなどの仕事もしていて、それらの分野でのパフォーマンスにもいかにも彼女らしいムードがうかがえます。




とても興味深かったのは、「ウェアリスト(着る人)」と名乗った小夜子さんの自己定義です。「人間は心が身体を着ているという言い方もできる」「人間はそれを取り巻くすべてのものを着ている。空気も光も」という言葉には、無数の最新モードをまとってきた人ならではの覚悟と自負がにじみます。たくさんの衣に身を包みながらも、自分らしさを大事にしてきた小夜子さん一流のプロフェッショナリズムが「ウェアリスト」という言葉からは感じられます。

俳優は役柄を演じるといわれますが、その「演じる」という感覚には、本人と役柄の間にやや距離感があります。小夜子さん流の解釈で言うと、俳優も役柄を「着る」ということになり、皮膚感覚での同一感が高まります。役柄のバックグラウンドになじむことは、その役割や居場所を着るという形になり、その「着こなし」が自然であれば、自在のパフォーマンスが可能になります。この「着る」という意識はとても応用の幅が広く、小夜子さんの多面的な活躍を支えたと思われます。

小夜子さんが起用されたテレビCMやキャンペーン写真がたくさん展示されていました。眺めていて感じたのは、アート的な演出が多用されていたところです。たとえば、小夜子さんを京人形に見立てた演出はミステリアスなエキゾチック美を帯びていてショートムービーのよう。

また、別人になりきってのセルフポートレートという独創的な表現で知られる現代アーティスト、森村泰昌氏をはじめ、多くの表現者が小夜子さんにオマージュを捧げています。おかっぱの髪に切れ長の目というトレードマーク的な姿は今や、日本人か共有するイメージアイコンとなっていて、小夜子さんの存在の大きさをあらためて感じさせられます。

ランウェイショーでもダイナミックなダンスパフォーマンスを披露した小夜子さんは、早くから身体表現としてのダンスに関心を持ち、山海塾とのコラボレーションでも知られました。日本舞踊にも通じるような小夜子さんの凜とした所作は身体の隅々にまで行き届いた自意識を感じさせ、いわゆるモデルウォークともまた異なる気品やムードを漂わせています。三宅一生氏をはじめ、ファッションデザイナーは身体表現の一種としてのダンスに強い関心を示してきましたが、ランウェイ上と舞台上の両方で自ら身体を動かしてきた小夜子さんのダンス感覚は別の意味で興味深く感じられます。

ダンスや演劇、音楽、コスチュームなど様々な表現が融け合ったパフォーマンス。白人モデルが主流だったパリコレクションに東洋の神秘的な美を持ち込み、コラボという言葉が一般的ではなかった頃からファッション界の外の表現者と組みました。「ファッションモデル」という仕事の定義も書き換えていったボーダーレスなアプローチは現代のモードを先取りしていたように感じられました。


山口小夜子  未来を着る人
2015年4月11日(土)〜6月28日(日)まで
東京都現代美術館 企画展示室B2F
http://www.mot-art-museum.jp/exhibition/sayokoyamaguchi.html






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 2015/05/04 12:06  この記事のURL  / 

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宮田理江(みやたりえ)
ファッションジャーナリスト

複数のファッションブランドの販売員としてキャリアを積み、バイヤー、プレスを経験後、ファッションジャーナリストへ。新聞や雑誌、テレビ、ウェブなど、数々のメディアでコメント提供や記事執筆を手がける。

コレクションのリポート、トレンドの解説、スタイリングの提案、セレブリティ・有名人・ストリートの着こなし分析のほか、企業・商品ブランディング、広告、イベント出演、セミナーなどを幅広くこなす。著書にファッション指南本『おしゃれの近道』『もっとおしゃれの近道』(共に学研)がある。

公式サイト:http://riemiyata.com/
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