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「アンディ・ウォーホル展 永遠の15分」の問いかけから、現代ファッションを感じる




先日、やっと行ってきました。「アンディ・ウォーホル展 永遠の15分」
(六本木ヒルズ・森美術館で5月6日まで開催)

国内最大級の約700点という規模で、ポップアートの象徴的存在だった
アンディ・ウォーホル(1928〜87年)の作品世界を回顧する大型展です。


代表作の「キャンベル・スープ」シリーズをはじめ、マリリン・モンローや
エルヴィス・プレスリーといった著名人の肖像、米ドルマークや
電気椅子などのシルクスクリーン作品が集められていて、
ウォーホルのアーティスト活動の全容をつかむことができる構成です。

彼がアーティストになる以前の仕事も紹介されていて、
意識的に「アーテイスト」になっていった軌跡がうかがえます。
壁のあちこちに彼の遺した有名な言葉が解説されているのも、
優れた発言者であったウォーホルの鋭敏な時代感覚を知る手がかりに。

本展のタイトルにも選ばれている
「やがて誰でも15分間は有名になれる時代になる」から、
彼は後にこの言葉に飽きて、
「15分間のうちに誰でも有名人になれるだろう」と言い換えました。
現代のソーシャルメディアの広がりを予言したかのようなメッセージです。

アーティストを特別な表現者と認めず、「ただの仕事」と言い切るような
数々の刺激的な言葉は、意図的にセルフプロデュースしていたことを
うかがわせます。自分がめざす表現のスタイルにはっきりとした
「定義」や「意義づけ」を与えてクリエーションに臨むプロ意識の高さ。
ファッションの世界ではトレンドが話題になりやすいものですが、
本当のクリエイターは新たな方向感を指し示しつつも、しっかりと
それぞれの「軸」を持っているものであり、ウォーホルの
「浮かれないポップ」と通じ合うところがあります。

全体を見て再確認できるのは、ウォーホルの鮮やかな色彩感覚です。
肖像画では映画スターや著名人の表情に、実際の顔色とは異なる
蛍光色を乗せて、内なるキャラクターを引き出しています。
絵柄とカラーが交錯して別のイメージが立ちのぼるという重層的な
仕掛けが、見る者の内側に、複雑な感情を呼び覚まします。
過剰なまでに高発色のネオンカラーがかえって冷ややかでシニカル。

アトリエを「ファクトリー(工場)」と呼んだウォーホル。
たくさんの作品を生み出せる版画手法を好んだのも、その意識の表れでしょう。
実際、彼が制作した作品の数は膨大ですが、「キャンベル」のスープ缶や
洗剤「ブリロ」の箱のようにありふれた大量生産の「商品」が、
逆にオリジナリティーがはっきり出たのです。



ファッションデザイナーも自分らしさを打ち出す作家性と、
消費者が受け入れやすい、癖のない商品性との狭間で常に
悩ましい立場にあります。ウォーホルの「自分消し」の試みは
クリエーションという行為の不思議さや手強さもあらためて感じさせました。

ポップアートがアートの市場と消費を変えたという点は、
オートクチュールからプレタポルテへと裾野が広がった、
ファッションの一般化の道筋と通じる・・・と、以前、こちらで書きました。

2014-15秋冬・パリコレクションでは「CHANEL(シャネル)」のショーが
スーパーマーケットを模したセットを組んで開催され、話題を集めました。
デザイナーのカール・ラガーフェルド氏は
「私にとってスーパーマーケットは現代のポップアートだ」と語ったそうです。
大量消費を象徴するスーパーの売り場は、ウォーホルが題材とした
キャンベル缶やブリロ洗剤箱も並ぶ場であり、ポップアートの原点とも言えます。
同様に、ジェレミー・スコット氏が手掛けた「Moschino(モスキーノ)」の
初ランウェイショーでは、ファストフードの「マクドナルド」や、
チョコレートの「ハーシーズ」、米国アニメの「スポンジ・ボブ」などの
見慣れたデザインが大胆に取り入れられました。
こちらもポップアートの発想に捧げたオマージュのようにも映ります。
ウォーホルのポップ精神は形を変えて現代ファッションにも
受け継がれているように感じました。

「アンディ・ウォーホル展 永遠の15分」
http://www.mori.art.museum/contents/andy_warhol/

〜関連記事〜

「アメリカン・ポップ・アート展」で当時の熱気をファッションと合わせて追体験
http://www.apalog.com/riemiyata/daily/201308/19



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 2014/03/17 07:08  この記事のURL  / 

「250年にわたるファッショントレンド」展と「1930年代のファッション」展


NYファッションウィークのタイミングに合わせて、
いつも質の高い展覧会を企画してくれる、
有名ファッション校Fashion Institute of Technology
「ファッション工科大学(FIT)」の美術館。

この2月に開催されたのは、永久保存のコレクションから
選り抜いた100点を通して、過去250年にわたるファッショントレンドの
変遷を振り返った「Trend-ology」
(2013年12月3日〜14年4月30日)。

単にモードの流行を追うだけではなく、それぞれの時代の社会や産業、
文化とのかかわりにも光を当て、世の中の移り変わりが
ファッションをどう動かしてきたかを照らし出す構成です。

直近の21世紀からさかのぼる形式で展示されていて、
セレクトショップの「Opening Ceremony」や「Colette」が
これまでのファッション流通の仕組みを変えたことや、
「Rodarte for Target」のような「ハイ&ロー」の試みの
新しさなどにもあらためて気づかされます。
「Louis Vuitton」と現代アーティスト・村上隆氏の
コラボレーションのような取り組みもファッション界の
流れを変えた事例として紹介されています。

全体を眺めて感じたのは、歴史的にはファッションに
制約やルールが多かったということです。
階級や性別などに準じて細かく決まりが設けられていた時代が長く、
ファッションは身分証明書のような役割を果たしてきました。
でも、20世紀に入ると、前時代的な階級社会が崩れ、
さらに第2次世界大戦後は女性の社会進出が進んで、
装いにも一気にアクティブ感や機能性が強まってきます。

つまり、ファッション、とりわけ女性の装いが劇的に多様化したのは、
この60年間程度の出来事だと、この展覧会は分かりやすく示しています。
各時代を象徴するような作品が集められていて、
時代のニーズを背景にクリエイターたちがどんな提案をして、
それが次の変化を呼び起こしたかを、タイムマシンに乗って
250年間を駆け抜けるかのような気分で感じ取れます。



同時期に開催されたもう1つの展覧会
「Elegance in an Age of Crisis: Fashions of the 1930s」(2月7日〜4月19日)は、
タイトルの通り、1930年代のファッションにフォーカスした内容です。

1929年の大恐慌があって、経済的には大変な時代だった
30年代ですが、ファッションの世界ではエレガンスの成熟期ともなりました。

紳士服のテイラーリングがさらに洗練され、
ウィメンズでもグラマラスな演出が花開きました。
きらびやかなパーティーシーンが印象的だった映画
『華麗なるギャツビー』(2013年)の原作小説が発表されたのが
1925年であり、あの映画の雰囲気からもアメリカの少し浮かれた気分や
おしゃれモチベーションの高まりがうかがえます。

伝統的な装いへの郷愁と、新たなおしゃれの担い手が求める革新性が
入り交じって花開いた30年代モードを、貴重な収蔵品から再現しています。
リゾートやスポーツなどのシーン別の着こなしが発達した時期にも
当たっていて、シーンをまたぐ装いが浸透しつつある
現代のスタイリングを考えるうえでも参考になります。

30年代は続く40年代の世界大戦期へと向かっていく時期でもありました。

恐慌の傷跡が深く、展覧会の副題が示す通り「危機の時代」
とも言えるのですが、不景気や社会不安が必ずしもファッションを
ダークムード一辺倒に陰らせてしまうわけではなく、
そんなネガティブなムードの中にあっても、ファッションは発展と
成熟を重ねていくのだということもこの展覧会は訴えかけてきます。

どちらの展覧会もまだ4月まで続いているので、
この期間にNYを訪れる方は足を運ぶ価値があるでしょう(入場無料)。
FITのミュージアムは常に鋭いキュレーティングの催しを
企画しているので、私もNYファッションウィーク中は、毎回チェックしています。
NY訪問の前には公式サイトで展覧会カレンダーに
目を通しておくことをおすすめします☆


「Trend-ology」(2013年12月3日〜14年4月30日)
https://www.fitnyc.edu/21786.asp

「Elegance in an Age of Crisis: Fashions of the 1930s」(2014年2月7日〜4月19日)
https://www.fitnyc.edu/21912.asp




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 2014/03/13 10:05  この記事のURL  / 

2014-15年秋冬NYコレクションまとめ





猛烈な寒さの中、2月に開催された2014-15年秋冬・NYコレクション
全体を包んだのは、エレガンスとくつろぎを兼ね備えた、
「リッチラックス(リッチ&リラックス)」
「フレンドリュクス(フレンドリー&リュクス)」と
形容したくなるようなムードでした。

14年春夏に急浮上した、力みを遠ざける「エフォートレス」を
さらに成熟させ、上質素材や手仕事美でグラマラスを上乗せ。
さらに、ワークウエアやスポーツ、アウトドア、ミリタリーなどの
気取らない雰囲気を落とし込む流れも加速し、NYモードは
イージーグラマーな独自の方向感を一段と強め、
世界モードをリードする勢いに加速度がついたように見えました。

4大コレクションのトップを切って新モードを発信する
NYコレクションの新潮流に触れていただけたら幸いです。

宮田理江のランウェイ解読Vol.14 2014-15年秋冬NYコレクション

http://www.apparel-web.com/column/miyata/2014aw_ny.html


〜関連記事〜

2014-15年秋冬NYコレクション・リポート「ハイライト1〜4」
http://apparelweb-collection.tumblr.com/tagged/riemiyata

2014-15年秋冬NYコレクション! 次トレンドはコレ
http://fashionbible.cocolog-nifty.com/blog/2014/02/alexander-wang3.html

デジタル先進国・米国が映し出す「NYコレクション」の現在形(2014年秋冬レポート)
http://www.fashionsnap.com/inside/ny-14aw-report/

2014-15年秋冬NYコレクションの新潮流(前編)
http://www.yomiuri.co.jp/komachi/fashion/column/20140306-OYT8T00359.htm




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 2014/03/09 14:39  この記事のURL  / 

デジタルで予習、リアルで盛り上がる 「Cynthia Rowley(シンシアローリー)」2014-15秋冬NYコレ











多彩なプレゼンテーション(展示会)形式で魅せるNYコレクション。
「Cynthia Rowley(シンシアローリー)」も毎回手法が凝っています。
以前は「シンシアローリー」の新しいコンセプトショップ、
キャンディーショップ「CuRious(キュリオス)」のお披露目を
兼ねてコレクションを発表するという方法でした。

そして、2014-15秋冬コレクションは、ナイトクラブ
「Diamond Horseshoe」を貸し切っての発表でした。

こちらは、1930〜50年代に人気を博した伝説のナイトクラブ。
最近までクローズしていましたが、再オープンして話題になっているスポットです。

セクシーなポールダンスが披露されたり、バーカウンターで
カクテルをつくってくれたりと、リッチで艶やかなムードのなか、
モデル達が作品をまとって現れ、会場内は一気に盛り上がりました。
スクリーンに映像が映し出され、デジタルなムードも。









実は、ショー開催数日前に、私たちゲストには、
全ルックの写真撮影・配信がメールで届き、既にチェック済み。
当日はショートフィルムやモデルルックをおさらい感覚で見て、
さらにイメージをつかむという、NYらしい新手法がユニークでした。

月の虹(Moonbow)モチーフをコレクション全体に用いて、
楽観的で幸福、ロマンチックなイメージを投影しました。
そして、スポーティーグラマラスなボンディング素材に加え、
レザー、ファーも取り入れて、異なる素材をミックス。
レインボーの装飾、葉っぱのアップリケなどもあしらって、
まるでパズルのように素材やモチーフを組み合わせる着こなしが印象的でした。

Cynthia Rowley
http://www.cynthiarowley.jp/

〜関連記事〜

2014-15年秋冬NYコレクション・リポート「ハイライト1〜4」
http://apparelweb-collection.tumblr.com/tagged/riemiyata

デジタル先進国・米国が映し出す「NYコレクション」の現在形
http://www.fashionsnap.com/inside/ny-14aw-report/

Cynthia Rowley 2014春夏NYコレクション
http://allabout.co.jp/gm/gc/438874/




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 2014/03/07 12:09  この記事のURL  / 

グラマラス&デカダンスな世界へ 「alice + olivia(アリス アンド オリビア)」2014-15秋冬NYコレ




オリジナリティ豊かなプレゼンテーションが多い、NYコレクション。
中でも、Stacey Bendet(ステイシー・ベンデット)氏が手がける
人気ブランド「alice + olivia(アリス アンド オリビア)」は、毎回大盛況。
デザイナー自身がファッションアイコンとしても知られています。

国内でも、2013年12月5日に東京・表参道に旗艦店がオープンし、
3月1日には、高島屋大阪店・京都店もオープンし、話題が続きます。

今回のNYコレクションの会場は、チェルシーのギャラリー街にある
古い洋館ホテル「McKittrick Hotel」でした。
どきどきした気持ちで中に入ると真っ暗な暗闇の世界へ・・・。
このホテル、実は、普段は観客が仮面をつけて部屋を巡りながら
謎めいた演劇を見るのに使われているのだそう。

そんなミステリアスな空間で披露された作品は、
まるで魔法にかかったかのようなムード。
ライブ演奏が入り、シャンパンやドリンクが振る舞われ、ナイトクラブのようでした。
白の折り紙で造られたピースが床を埋め尽くし、
海賊の世界に迷い込んだかのような気分にさせられます。
森の中でさまようような雰囲気のゾーンでは、
リンゴがたくさん並べられ、白雪姫を連想させる演出。
『不思議の国のアリス』っぽいダークファンタジーの世界に誘ってくれました。






コレクションテーマは、
“Enchanted:A Midwinter Night Dream”(魔法にかけられて:真冬の夜の夢)
“森の奥までついてきて: 魔法のミストのベールに包まれて、
紫の月明かりの下で。私たちのお城の中で、あなたのハートを守って。
すべての欲望をみつけてしまうから。”




ヴィンテージ、ビクトリアン、ボヘミアンなど
自由奔放な精神がミックスされた作品が披露されました。

メタリックなエンブロイダリー、幻想的モチーフのプリントなどが
施され、魔法物語の登場人物気分にいざなわれます。
ファー、ベルベット、ビーズ刺繍を多用し、レースやラッフルなどは
デカダンスなムードを立ちのぼらせました。クロップドジャケット、
サイハイブーツなどのトレンドアイテムにも注目です。
アクセサリーやバッグもアイキャッチーでした。

ステイシー・ベンデット氏は「今シーズンはセクシーさとファンタジー。
ウェアラブルなラグジュアリーとデカダンス」と語りました。

「アリス アンド オリビア」の魅惑のストーリーを堪能したNYでした。
プレゼンテーションの動画はこちらから見られます☆
http://www.look-inc.jp/aliceandolivia/video/2014-fall-presentation/


alice + olivia
http://www.look-inc.jp/aliceandolivia/


〜関連記事〜

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http://apparelweb-collection.tumblr.com/tagged/riemiyata

デジタル先進国・米国が映し出す「NYコレクション」の現在形
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alice + olivia 2014春夏NYコレクション
http://allabout.co.jp/gm/gc/438874/2/




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 2014/03/04 05:45  この記事のURL  / 

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宮田理江(みやたりえ)
ファッションジャーナリスト

複数のファッションブランドの販売員としてキャリアを積み、バイヤー、プレスを経験後、ファッションジャーナリストへ。新聞や雑誌、テレビ、ウェブなど、数々のメディアでコメント提供や記事執筆を手がける。

コレクションのリポート、トレンドの解説、スタイリングの提案、セレブリティ・有名人・ストリートの着こなし分析のほか、企業・商品ブランディング、広告、イベント出演、セミナーなどを幅広くこなす。著書にファッション指南本『おしゃれの近道』『もっとおしゃれの近道』(共に学研)がある。

公式サイト:http://riemiyata.com/
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