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「山口小夜子 未来を着る人」展で「ウェアリスト」山口小夜子に出会う





東京都現代美術館で6月28日まで開催されている「山口小夜子 未来を着る人」展に行ってきました。近年、ファッションをテーマにした美術展が増えてきましたが、ファッションモデル個人を主題に据えた本格的な展覧会は珍しいと思います。

幅広いフィールドで展開された小夜子さんの活動の全体像をとらえる試みです。生い立ちを示す、幼少期の私物から、モデル時代の主なランウェイショー映像、広告写真、後年の演劇関連資料、舞台衣装などが展示されていて、小夜子さんの人生と仕事ぶりを時系列に乗って追体験できます(アパログ連載陣の写真家・大石一男さんの作品もありました)。

本人が集めていた雑誌や人形なども展示されていて、パスポートまでありました。杉野ドレスメーカー学院に学んだ小夜子さん自身が描いたデザイン画も見ることができます。モデル業で有名になった小夜子さんですが、並行して女優やダンサーなどの仕事もしていて、それらの分野でのパフォーマンスにもいかにも彼女らしいムードがうかがえます。




とても興味深かったのは、「ウェアリスト(着る人)」と名乗った小夜子さんの自己定義です。「人間は心が身体を着ているという言い方もできる」「人間はそれを取り巻くすべてのものを着ている。空気も光も」という言葉には、無数の最新モードをまとってきた人ならではの覚悟と自負がにじみます。たくさんの衣に身を包みながらも、自分らしさを大事にしてきた小夜子さん一流のプロフェッショナリズムが「ウェアリスト」という言葉からは感じられます。

俳優は役柄を演じるといわれますが、その「演じる」という感覚には、本人と役柄の間にやや距離感があります。小夜子さん流の解釈で言うと、俳優も役柄を「着る」ということになり、皮膚感覚での同一感が高まります。役柄のバックグラウンドになじむことは、その役割や居場所を着るという形になり、その「着こなし」が自然であれば、自在のパフォーマンスが可能になります。この「着る」という意識はとても応用の幅が広く、小夜子さんの多面的な活躍を支えたと思われます。

小夜子さんが起用されたテレビCMやキャンペーン写真がたくさん展示されていました。眺めていて感じたのは、アート的な演出が多用されていたところです。たとえば、小夜子さんを京人形に見立てた演出はミステリアスなエキゾチック美を帯びていてショートムービーのよう。

また、別人になりきってのセルフポートレートという独創的な表現で知られる現代アーティスト、森村泰昌氏をはじめ、多くの表現者が小夜子さんにオマージュを捧げています。おかっぱの髪に切れ長の目というトレードマーク的な姿は今や、日本人か共有するイメージアイコンとなっていて、小夜子さんの存在の大きさをあらためて感じさせられます。

ランウェイショーでもダイナミックなダンスパフォーマンスを披露した小夜子さんは、早くから身体表現としてのダンスに関心を持ち、山海塾とのコラボレーションでも知られました。日本舞踊にも通じるような小夜子さんの凜とした所作は身体の隅々にまで行き届いた自意識を感じさせ、いわゆるモデルウォークともまた異なる気品やムードを漂わせています。三宅一生氏をはじめ、ファッションデザイナーは身体表現の一種としてのダンスに強い関心を示してきましたが、ランウェイ上と舞台上の両方で自ら身体を動かしてきた小夜子さんのダンス感覚は別の意味で興味深く感じられます。

ダンスや演劇、音楽、コスチュームなど様々な表現が融け合ったパフォーマンス。白人モデルが主流だったパリコレクションに東洋の神秘的な美を持ち込み、コラボという言葉が一般的ではなかった頃からファッション界の外の表現者と組みました。「ファッションモデル」という仕事の定義も書き換えていったボーダーレスなアプローチは現代のモードを先取りしていたように感じられました。


山口小夜子  未来を着る人
2015年4月11日(土)〜6月28日(日)まで
東京都現代美術館 企画展示室B2F
http://www.mot-art-museum.jp/exhibition/sayokoyamaguchi.html






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★個人ブログ「fashion bible」、ほぼ毎日更新中♪
 2015/05/04 12:06  この記事のURL  / 

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宮田理江(みやたりえ)
ファッションジャーナリスト

複数のファッションブランドの販売員としてキャリアを積み、バイヤー、プレスを経験後、ファッションジャーナリストへ。新聞や雑誌、テレビ、ウェブなど、数々のメディアでコメント提供や記事執筆を手がける。

コレクションのリポート、トレンドの解説、スタイリングの提案、セレブリティ・有名人・ストリートの着こなし分析のほか、企業・商品ブランディング、広告、イベント出演、セミナーなどを幅広くこなす。著書にファッション指南本『おしゃれの近道』『もっとおしゃれの近道』(共に学研)がある。

公式サイト:http://riemiyata.com/
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