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「アンダーカバー」とニキ・ド・サンファルの回顧展で感じた「我が道を行く」反骨精神の強さ









◆「LABYRINTH OF UNDERCOVER」

25周年を迎えたファッションブランド「UNDERCOVER(アンダーカバー)」の回顧展「LABYRINTH OF UNDERCOVER」は楽しみにしていた展覧会です。東京オペラシティ アートギャラリーで12月23日まで開催されていますが、未見の人は早めの鑑賞をおすすめします。もう一度見に行きたくなるはずだからです。自然とそう思えるぐらい、中身の濃い展示内容となっています。

「UNDERCOVER」の本格的な個展は国内の美術館では初めてです。映像コーナー以外の大半の展示スペースでは写真撮影が許されている点もうれしい心配り。たくさんのコレクションアーカイブから、四半世紀にわたるクリエーションの軌跡を感じ取ることができます。

「LABYRINTH(迷宮)」と謙遜気味に銘打っていますが、高橋盾(たかはし・じゅん)デザイナーの創作世界に一貫した哲学や志向があることがうかがえる構成です。たとえばファーストコレクションにはフライトジャケットの変形バージョンが含まれていて、以後もしばしばミリタリー風味の作品が登場していることが分かります。ロック音楽やSF・特撮映像への傾倒もクリエーションの根っこになっているようで、強烈なシンパシーを感じます。

歴代のランウェイショー映像が年代別に上映されています。興味深いのは年代ごとの演出や服づくりの違いが見て取れるところ。早い時期の映像と近年のショーを見比べると、モデル選びや素材感の変化が感じられます。ショー映像が驚くほど豊富に用意されているので、ほとんどのシーズンをリアルに振り返ることができます。しっかりショー映像を見たい人はたっぷり時間を確保して出かけるほうがよいでしょう。





高橋氏本人が描いたデザイン画やアイデアスケッチがたくさん展示してあり、クリエーションの原点に触れる体験ができます。ショーへの招待状(インビテーション)を集めたコラージュ展示も、独特のセンスを感じさせます。

全体を通して印象に残ったのは、高橋氏は「反」の人だという点です。「反骨」的な精神に裏打ちされ、モードの常識に反逆を試み、古臭い仕組みには反体制的に臨む。デビュー当初は「裏原系」の看板的な存在とされ、東京ストリートのムードをハイファッションに持ち込んだ「UNDERCOVER」。しかし、25年を経てパリコレクションの常連となり、日本有数のラグジュアリーブランドに成長した今、この展覧会を機にまた新たな「反逆」をたくらんでいるのかもしれないと感じました。






◆「ニキ・ド・サンファル展」

東京・六本木の国立新美術館では「ニキ・ド・サンファル展」が開催されています(12月14日まで)。戦後フランス現代美術シーンで特別な存在となった画家・彫刻家である女性アーティスト、ニキ・ド・サンファル(1930〜2002年)の大規模な回顧展です。ニキは肉感的な体型の女性像「ナナ」と、原色を組み合わせたポジティブな色使いで有名です。

絵画と彫刻を融け合わせた立体的な作品で知られています。パリの総合文化施設「ポンピドゥー・センター」の隣にある可動噴水彫刻「自動人形の噴水」も有名です。後年は巨大彫刻に代表される、サイズが大きい作品を手がけるようになりました。それだけに展示空間を選ぶところがありますが、天井が高く、ゆったりとした国立新美術館は、ニキ作品らしいおおらかさを感じ取りやすい空間で、久々の大型回顧展ということもあって、今回は見逃せない展覧会となっています。

現代アートの変革期となった1960〜70年代にそのムーブメントの中にいたニキの歩みをたどるのは、モダンアートの変遷を感じ取る体験でもあります。絵具を入れた缶や袋を銃で撃つ「射撃絵画」はパフォーマンス・アートの先駆例とされています。今回の展覧会では実際にニキが銃を撃つ貴重な映像も公開されています。

初期のニキの作風として「射撃絵画」は脚光を浴びましたが、やはりニキの表現者としての集大成は「ナナ」シリーズにあるとあらためて感じられます。妊婦の知人から着想を得たともいわれる「ナナ」はぼってりしたフォルムと、大胆なカラーリングが一度見たら忘れられない印象を残します。今回は人間の何倍もあるような巨大サイズの人型作品も展示されていて、サイケデリックなまでに主張の強い色使いがさらに迫力を持って目に飛び込んできます。

「ナナ」では不自然なほどジャンプしたり腕を伸ばしたりと、アクロバティックなポーズが多く、動きの面でも愛嬌と生命感満ちています。そこにパンチの利いたマルチカラーが乗っかって、ポジティブなエナジーがあふれ出してきます。

「女性活躍」がやたらと取り上げられる昨今となりましたが、ニキがアートシーンに登場した頃は女性表現者の地位がまだ低く、彼女が属したアーティスト集団でも女性はニキ1人といった状況。ニキは女性の存在が軽んじられる仕組みや、女性に押しつけられる不利益を受け入れず、差別反対のオピニオンを積極的に発しています。今回の会場ではニキが女性の解放、地位向上の必要性を熱っぽく訴える当時のインタビュー映像も流されました。こういった姿勢は彼女の作品にも色濃く写し込まれています。

ニキは日本と縁が深く、とりわけコレクターで支援者だった増田静江氏との交流からは様々な作品が生まれています。パルコを渋谷に誕生させた立役者である増田通二元パルコ会長の妻でもあった静江氏は熱心にニキ作品を収集し、「ニキ美術館」を那須高原に開きました(今は閉館)。今回の展覧会では2人の交流にも光が当てられています。

女性解放の思いを託した「ナナ」の彫刻絵画はふくよかでカラフル、しかも朗らか。頼もしい腕にだっこしてもらいたくなるような、ほっこりした気分に誘われます。でも、単なるハッピートーンにとどまらない複雑なパッションもにじんでいて、彫刻と絵画のマリアージュが持つ表現力の豊かさを実感します。背中側の表現に別のメッセージを込める工夫は、バックショットにこだわる近頃のモードにも通じるところがあります。



同じ日に続けて「LABYRINTH OF UNDERCOVER」と「ニキ・ド・サンファル展」を見たので、それぞれの持ち味の違いがよりくっきり感じられました。高橋氏とニキは立ち位置も時代も異なりますが、既存の表現におもねらない反骨精神の強さでは共通しています。デザイナー、アーティストといった表現者たちの、「我が道を行く」という資質の大切さをあらためて感じることができました。

LABYRINTH OF UNDERCOVER
2015年10月10日〜12月23日
http://www.operacity.jp/ag/exh181/

ニキ・ド・サンファル展
2015年9月18日〜12月14日
http://www.nact.jp/exhibition_special/2015/niki2015/






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★個人ブログ「fashion bible」、ほぼ毎日更新中♪
 2015/11/03 20:52  この記事のURL  / 


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宮田理江(みやたりえ)
ファッションジャーナリスト

複数のファッションブランドの販売員としてキャリアを積み、バイヤー、プレスを経験後、ファッションジャーナリストへ。新聞や雑誌、テレビ、ウェブなど、数々のメディアでコメント提供や記事執筆を手がける。

コレクションのリポート、トレンドの解説、スタイリングの提案、セレブリティ・有名人・ストリートの着こなし分析のほか、企業・商品ブランディング、広告、イベント出演、セミナーなどを幅広くこなす。著書にファッション指南本『おしゃれの近道』『もっとおしゃれの近道』(共に学研)がある。

公式サイト:http://riemiyata.com/
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