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ファッション好きなら見逃せない、アン・ハサウェイ主演の映画『マイ・インターン』


女優アン・ハサウェイ主演の映画『マイ・インターン』が日本で10月10日から公開されました。ハサウェイがファッション通販サイトの社長役に扮していることもあって、彼女の装いも注目を集めています。

ハサウェイがファッション関連の映画に出演した前例としては、2006年公開の映画『プラダを着た悪魔』があります。ファッション誌のカリスマ編集長ミランダ(メリル・ストリープ)の新米アシスタント、アンドレアを演じました。最初はモードにあまり興味がないという設定のアンドレアでしたが、徐々にファッションの魅力に惹かれていきます。

今回はあれから9年を経て、自分らしい着こなしを表現できる大人の女性を演じています。だから、ハサウェイが演じたジュールズ社長の装いは「等身大のラグジュアリー」。新興ベンチャー企業であるネット通販会社という企業の個性にふさわしく、企業トップでありながら、気負いすぎていません。でも、実はしっかり優品を選んでいるというあたりにも、ジュールズのキャラクターがうかがえます。

名優ロバート・デ・ニーロと並んだポスタービジュアルでは、真っ赤なミニ丈ワンピースをまとって、強さとたおやかさを並び立たせています。こちらは「Victoria Beckham(ヴィクトリア・ベッカム)」ブランドのドレス。ヴィクトリア自身もファッションビジネスで成功を収めているだけに、ジュールズのキャラクターイメージとクロスオーバーして映ります。この映画ではほかにもたくさんの有力トップブランドが協力しているそうです。







『マイ・インターン』ではNYに暮らす、知的エグゼキティブママのリアル感を漂わせながら、ハサウェイが扮したジュールズの人柄も随所ににじませています。トレンドに敏感であるべき、ファッション通販サイトの経営者という役柄を意識して、近年の流行にも目配りを利かせていて、役柄にリアリティーを加えています。

ジュールズはまだ幼い一人娘を子育て中で、本社はNYのおしゃれエリア、ブルックリンにあるという設定。オフィス内では自転車で移動しているという現実主義の性格。そのキャラクターに似つかわしく、彼女の着こなしはグッドセンスでありつつ、力みやくどさがありません。その一方で、彼女が経営するネット通販企業の社員たちはブルックリンらしいイージーな格好。スーツ姿は見当たらず、ネクタイはほとんど誰も締めていません。







◆時空を超えたマイスタイルが共感へ

デ・ニーロが演じたベンは毎日、きちんとネクタイにスーツ。長年の会社勤めで磨き上げたベンのクラシックなスーツルックは、カジュアルルックしか知らない周囲の同僚に変化をもたらします。人柄、モチベーション、自意識などに服が与えるプラスの効果を、ベンは物静かな態度で周囲に伝えていきます。

ジュールズの装いも仕事ぶりや内面を映し出しています。自転車でフロアを移動しながらあちこちに指示を出す、オフィスでの忙しい日にはミニスカートやパンツでアクティブな着姿に。企業の代表として年配のエグゼクティブ層と会うような、かしこまった場面では、相手に威圧されないような「強め」のコーディネートを選択。夜中までデスクに向かう日は、薄手生地で疲れにくく、仕事に集中しやすそうなパンツ・セットアップと、その日の目的やシチュエーションに応じて巧みに使い分けています。

一方、少しもブレないベンの着姿は誠実さや大人感を印象づけます。ずらりとネクタイを吊るしたラックからその日の1本を入念に選ぶシーンもあります。シャツは裾をウエストアウトして着るものだと思い込んでいたような若い同僚たちがベンにインスパイアされて思い思いにファッションとの向き合い方を変えていくところも隠れた見所となっています。

IT企業らしいTシャツ&ジーンズの装いをしていた、若い男性社員たちはベンの装いに触発され、襟の付いたシャツや、トラッドなネクタイ、クラシックなバッグなどに興味を示していくところも、ファッションの秘める力を感じさせます。いつの時代になっても錆びないいわゆるヴィンテージスタイルは世代を超えて共感できるということでしょう。

衣装デザインを手がけたジャクリーン・デメテリオ氏は、ファッション誌の出版社を舞台にした米国のテレビドラマ『アグリー・ベティ』シリーズでも衣装を手がけました。映画版の『セックス・アンド・ザ・シティ2』にも参加しています。『アグリー・ベティ』ではファッションに明るくない主人公ベティのやや突飛な衣装を、『セックス・アンド・ザ・シティ2』ではファッション好きの主人公キャリー(サラ・ジェシカ・パーカー)たちのグラマラスな装いを整えてみせたわけで、スタイリングの幅の広さがあらためて感じられます。







今回、光栄なことに、配給会社の松竹から依頼を受けて、映画館で販売する公式パンフレットにこの映画とファッション、ブルックリンにまつわるエッセイを2ページ見開きで寄稿させていただきました(20〜21ページ)。『ブルックリンブームがやってきた!USトレンドの鍵はこの街にアリ』というタイトルです。さらに、ブルックリンが舞台の映画特集としておすすめ映画5作品をピックアップして解説しました。上映している劇場のパンフ売り場にありますので、映画を見た際には手に取っていただければうれしく思います。

ファッションはいろいろな映画で「せりふのない主役」を演じてきましたが、『マイ・インターン』でも、ストーリーを構成する大切な要素になっています。ファッション好きにとっては見逃せない作品と言えそうです。

『マイ・インターン』
2015年10月10日(土)、新宿ピカデリー、丸の内ピカデリーほか全国ロードショー
(c)2015 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC.AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC ALL RIGHTS RESERVED




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★個人ブログ「fashion bible」、ほぼ毎日更新中♪
 2015/10/11 15:25  この記事のURL  / 


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宮田理江(みやたりえ)
ファッションジャーナリスト

複数のファッションブランドの販売員としてキャリアを積み、バイヤー、プレスを経験後、ファッションジャーナリストへ。新聞や雑誌、テレビ、ウェブなど、数々のメディアでコメント提供や記事執筆を手がける。

コレクションのリポート、トレンドの解説、スタイリングの提案、セレブリティ・有名人・ストリートの着こなし分析のほか、企業・商品ブランディング、広告、イベント出演、セミナーなどを幅広くこなす。著書にファッション指南本『おしゃれの近道』『もっとおしゃれの近道』(共に学研)がある。

公式サイト:http://riemiyata.com/
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